婚約破棄を望む伯爵令嬢と逃がしたくない宰相閣下との攻防戦~最短で破棄したいので、悪役令嬢乗っ取ります~

甘寧

文字の大きさ
11 / 12

想定外の結末

「俺の婚約者になれリリー」

真剣な面持ちで言うウォルターにリリーは戸惑った。

確かにウォルターは包容力もあって経済力も問題なし。
顔も悪くないし身体付きも最高。
一度でも婚約破棄をしてしまえば、その名は傷つき新たな婚約者を探す障害になるだろう。
今ここでウォルターの申し出を断れば、ウォルター以上の優良物件は見込めない。
両親の事を考えれば二つ返事で了承したい所だが……

「──そんな事許すはずがないでしょう?」

壇上の上から怒りを含んだ声が聞こえた。

「リリーも何故すぐに断らないんです!?」
「えっ?──あ、ちょっと!!」

ルーファスは怒りに任せてリリーの腕を掴むと会場を出て行ってしまった。






「まったく、世話の焼ける二人だな」

ウォルターは出て行く二人を見ながら頭を掻いていると、

「ウォルター……君、わざと煽ったね?」
「ははっ……当て馬役はやっぱり性にあわんな」

ローベルトがウォルターを労う様に肩を叩くと、ウォルターは苦笑いを浮かべた。




❊❊❊❊




「ちょ、痛い!!離して!!聞いてる!?ルーファス様!?」

腕を掴まれ早足で歩かされている為、息が上がり辛いと訴えてもその言葉など聞こえていないのかルーファスは前を向いたままこちらを見向きもしない。

(なんなの!?リリーに愛はないはずでしょ!?)

腕は痛いし疲れたし……段々腹ただしくなってきた。

「ルーファス様!!!」

パシッとリリーがルーファスの手を払うと、ようやく我に返ったのかルーファスが顔を見せた。
しかしルーファスの目に映るリリーの表情は明らかな怒りを含んでいた。

「いい加減にしてください!!一体私の何が気に入らないと言うんです!?」
「は?」
「だってそうでしょ!?私に対する態度は明らかに冷たいものでしたもの!!お互い嫌いな者と一緒になるのは本望ではないもの!!だから何度も婚約破棄を打診してきましたが答えはいつもノー!!私に対するいやがらせとしか考えられません!!」

今までのうっ憤を晴らすべく息を切らしながら捲し立てると、ルーファスは目を見開いて驚いていた。
今更何をそんな驚くことがあるのかとリリーが呆れているとグイッと腕を引かれ、態勢を崩したリリーはそのままルーファスの胸の中に納まった。

「──なッ!!!」

今までない行動に頬を染めながら慌てるリリーだが、離さないようにぎゅと力強く抱きしめられ逃げられない。

「……まったく、そんな勘違いをしているなんて……」
「へ?」

耳元で囁くように言われ、そっと頬に手を添えられた。
そのルーファスの表情はとても柔らかく優しく初めて見るもので、不覚にもドキッとしてしまった。

「いいですか。私が想う者はただ一人……………貴方だけです」
「え……?」

リリーは自分の耳を疑った。
そして最初に思ったものは「原作と違う!!」という事。

まあ、ヒロインのシルビアが断罪された時点で原作の効力はないものだと思ってはいたが、この結末は想定外。

「今も昔も貴方一人だけを想っているのに貴方という人は婚約を破棄したいと言ってくるんですから……私がどれだけ裏で貴方の為に動いていたか知らないでしょう」
「え?なにそれ?こわいんだけど……」
「ふふっ。貴方を繋ぎ留めておく為ならば悪魔に魂を売る事だってできますよ?」

クスッと笑うルーファスは冗談を言っているような感じはしない。──……というか、異常な執着を感じる。

「え、だ、だって、ルーファス様は私に冷たかったし愛情なんてなんにも……」
「それは貴方が幼い頃に寡黙な男が好みだと言ったじゃないですか」

「そんな事言った?」とリリーですら忘れていた言葉をルーファスは覚えていてリリーの好みの男になろうと努力していたのだと、この時初めて知った。
それと同時に思った事がある……

「あの、こんなこというのも何ですが、ルーファス様のは冷然で寡黙とは言わないのでは……?」
「は?」

あれ?この人寡黙の意味知ってる?と心配になった。

「寡黙というのは確かに口数は少ないですが婚約者を無碍にしたりしませんよ?」
「いや、しかし……!!」

無碍にしていたつもりはなかったが、婚約者本人に言われればそうだったのだろうか?とルーファスは血の気が引き狼狽えた。
こんな狼狽えているルーファスを見るのは初めてで思わずクスクスと笑みがこぼれた。
初めて見たリリーの笑顔にルーファスの胸は高鳴った。

「しっかりしていると思われている宰相様も人の子でしたのね。安心しました」

今だ笑いが止まらないリリーは目に溜まった涙を拭いながらルーファスを見ると、潤んだ目とほのかに染まった頬が可愛らしく妙に艶っぽくルーファスは息を飲んだ。

そして無意識にリリーの頬を撫でていた。

「……リリーお願いします。私を選んでください。貴方に好いている人がいても構いませんから……」

悲痛な表情で言うルーファスにリリーは困惑した。

「私に好きな人?そんな人いませんよ?」
「は?し、しかし、先日確かに──……!!」
「ん~、きっと言葉の意味を差し違えたんじゃないんですか?好きな人も気になる人もいませんよ?」

そんなこと言ったっけ?と頭の記憶を巡らせたがそんな記憶はなかった。
ルーファスは目を見開いて固まっていたが、しばらくするとフッといつもの表情に変わった。

「そうですね……リリーに限ってそんなことありませんね」
「むっ!!その言葉は失礼ですよ!!私にも一人や二人好きな人ができるかも──……わッ!!」
「二人もいりませんよ」

言い切る前に再びルーファスの腕の中に閉じ込められた。

「どうやらリリーには私の気持ちが伝わっていなかったようなので、これからは嫌という程分からせてあげますね。……覚悟していてください」

そう微笑むルーファスはまるでまるで魔王のような笑みを浮かべていた。
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

恋愛戦線からあぶれた公爵令嬢ですので、私は官僚になります~就業内容は無茶振り皇子の我儘に付き合うことでしょうか?~

めもぐあい
恋愛
 公爵令嬢として皆に慕われ、平穏な学生生活を送っていたモニカ。ところが最終学年になってすぐ、親友と思っていた伯爵令嬢に裏切られ、いつの間にか悪役公爵令嬢にされ苛めに遭うようになる。  そのせいで、貴族社会で慣例となっている『女性が学園を卒業するのに合わせて男性が婚約の申し入れをする』からもあぶれてしまった。  家にも迷惑を掛けずに一人で生きていくためトップであり続けた成績を活かし官僚となって働き始めたが、仕事内容は第二皇子の無茶振りに付き合う事。社会人になりたてのモニカは日々奮闘するが――

婚約破棄!ついでに王子をどん底に突き落とす。

鏡おもち
恋愛
公爵令嬢パルメは、王立学院のパーティーで第一王子リュントから公開婚約破棄を突きつけられる。しかし、周囲の同情をよそにパルメは歓喜した。

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

これって私の断罪じゃなくて公開プロポーズですか!?

桃瀬ももな
恋愛
「カタリーナ・フォン・シュバルツ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 卒業パーティーの最中、第一王子アルフォンスから非情な宣告を突きつけられた公爵令嬢カタリーナ。 生まれつきの鋭い目つきと、緊張すると顔が強張る不器用さゆえに「悪役令嬢」として孤立していた彼女は、ついに訪れた「お決まりの断罪劇」に絶望……するかと思いきや。 (……あれ? 殿下、いま小さく「よっしゃあ!」ってガッツポーズしませんでした!?)

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

姉と妹の常識のなさは父親譲りのようですが、似てない私は養子先で運命の人と再会できました

珠宮さくら
恋愛
スヴェーア国の子爵家の次女として生まれたシーラ・ヘイデンスタムは、母親の姉と同じ髪色をしていたことで、母親に何かと昔のことや隣国のことを話して聞かせてくれていた。 そんな最愛の母親の死後、シーラは父親に疎まれ、姉と妹から散々な目に合わされることになり、婚約者にすら誤解されて婚約を破棄することになって、居場所がなくなったシーラを助けてくれたのは、伯母のエルヴィーラだった。 同じ髪色をしている伯母夫妻の養子となってからのシーラは、姉と妹以上に実の父親がどんなに非常識だったかを知ることになるとは思いもしなかった。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。