偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧

文字の大きさ
3 / 41

3

「ユリウス様!!」

 ユリウスの姿を見て、真っ先に動いたのはカミラだった。

「どうしてここへ!?まあ、どうしましょう…わたくしの屋敷にユリウス様が…いえ、そんなことより、お茶の準備を!!最高級のものをご用意いたしますわ!!」

 頬を染め上目遣いで猫撫で声まで出して、寄り添うようにして傍に寄る。これが一般的な女性の模範的反応だ。

 カミラは急いで使用人達にお茶の準備や、席の用意をするように指示を出している。かたや、何故ここにいるんだ?という怪訝な表情で見つめるティナの姿。

 そんなティナの傍へ寄ると、目の前に置いてあるカップに目をやった。

「…これは?」

 泥水のように濁り、ドロッと粘り気のある飲み物だか食べ物なのかよく分からないものを眺めながら問いかけた。

「そ、それは……」

 カミラは目を泳がせながら口ごもっている。チラッと助けを求めるように取り巻きらに視線を送るが、こちらとてユリウスに嫌われるのは嫌だと見えて、顔を背け目が合わないようにしている。

(女の友情も男が関わると簡単に崩れる…)

 カミラは睨みつけるようにして見ているが、助けがいないと分かると、血が滲みそうなほど強く唇を噛みしめている。

「言えない代物ですか?」
「い、いえ、そんな訳では…」

 何とかこの場を切り抜けようとしているが、上手く言葉が出てこないようだ。

「…そうですか。では、先ほどが言ったように、まずは貴女が試飲してくれますか?」

 ユリウスはそう言うと、笑顔でカミラの前に差し出した。

 なんかサラッと凄い事言われた気がするが、そこを突っ込めるような雰囲気ではない。

 カミラの方と言えば、憧れのユリウスに強要されたことで、顔面蒼白になりながらカップを眺めている。

「おや、おかしいですね。私の耳が確かなら、貴女の所では客人に得体の知れないものを出さないと宣言したはずですが?……まさか、嘘と言う訳ではありませんよね??」

 笑顔で問い詰めるが、その目はまったく笑っていない。

 綺麗な顔をして中々嫌な言い方をする…ティナは苦笑しながら、今にも泣きだしそうなカミラを見た。好きな人に責められ、嫌われるなんてどんな拷問より辛いだろう。

 ティナ自身も十分気が済んでいる。これ以上は過分になりすぎる。

「その辺にしてあげてください」

 ユリウスの服の裾を引っ張り、止めに入った。

「恋する女性が嫉妬に狂うのは世の常。それに元を正せば、ユリウス様が美しすぎるのが悪いんですよ。じゃなきゃ、こんな面倒な争いごとにはなりませんでした。自分の責任を他人に擦り付けるのは止めていただけます?」

 完全に責任転換。だが、あながち嘘も言っていない。

 ユリウスはジッとティナを見つめると「ふっ」と微笑んだ。

「なるほど、それは私が悪いですね。申し訳ありませんでした」

 そんな素直に頭を下げられたら、なんだか後ろめたさを感じてしまって、ユリウスの目が見れない。

「時に…ティナ。貴女も私を美しいと思いますか?」

 急に話を振られ「え、ええ」と思わず反射的に応えてしまった。その言葉にユリウスは満足そうに微笑んだ。

 まあ、この人を美しいと言わないで誰を美しいと言うのだろうか。女であるティナですら、時間をかけて念入りに化粧を施しても勝てる気がしない。

「仕方ありませんね。目を瞑りましょう。…まあ、次は分かりませんがね…」

 刺すような視線で言われたカミラと取り巻き達は地面にしゃがみこみ、顔面蒼白で震える体を寄せあっていた。

 多少憐れには思うが、まあ、自業自得。これ以上の情けをかけてやる義理はないので、速やかにその場を後にした。


 ❊❊❊


「…何処まで付いてくるんです?」

 ティナの後ろにピッタリ張り付き、付いてくるユリウスに声をかけた。

 予定より早い解散に迎えの馬車が間に合わず、仕方なしに歩いて屋敷を目指しているが、後ろの男が気になって仕方ない。

「私の事はお気になさらず」
「気になるから声をかけたんです」
「それは嬉しいですね。気にかけて頂けるなんて」

 ニコニコとしながら的外れな答えを返してくる。こういう人間タイプは口を濁すより、はっきり伝えないと延々と付き纏ってくる。

 ティナはピタと足を止めて、ユリウスに向き合った。

「先日もお伝えした通り、貴方とお付き合いするつもりは微塵もありません。微かな希望すらも有り得ませんので、付き纏われるだけ迷惑なんです」

 顔を顰め、嫌悪感を前面に出して言うが、ユリウスは顔色ひとつ変えない。

「そんな蛇蝎の如く嫌われたら、流石の私も自信を無くしてしまいますね」

 心にも無いことを、平然と言ってのける。

「──ですが…一つ、忠告しておきます」

 そう言って距離を詰めてくる。

「狩人は逃げる獲物を追いかけ仕留めますよね?それと同じです。逃げれば逃げるほど、追い詰めたくなる…」

 目を細め、ほくそ笑む姿に首筋にゾクッとしたものが走る。

「いくら逃げようと無駄ですよ。必ず私の虜にしてみせます」

 耳元で息がかかる距離で言われたことで、執着されている理由が判明した。

(あ~…はいはい)

 公衆の面前でフラれ、彼のプライドは粉々に砕かれた。百歩譲って、絶世の美女クラスなら致し方ないと言えるが、相手は美女とは無縁の雑草クラス。

 恥をかかされた怒りを私にぶつけようという魂胆か。惚れさせて今度は自分がこっぴどくふってやるって所か…

(これだから無駄に自信のある奴は…)

 そもそも、誰にでも好みと言うものはある。世の女性皆が自分に気があると思ったら大間違いだ。

 ティナは鋭い眼光でユリウスを睨みつけた。

「…死んでも、あんたなんか好きにならない」
「いいですね、その表情…ゾクゾクします」
感想 11

あなたにおすすめの小説

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない

斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。 襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……! この人本当に旦那さま? って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。

甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。 だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。 それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。 後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース… 身体から始まる恋愛模様◎ ※タイトル一部変更しました。

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 そう名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  ✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 ✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️