偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧

文字の大きさ
20 / 41

20

「金輪際関わるなとお伝えしたはずですが?貴方の耳は飾りですか?」

 ティナは冷ややかに言う。

「先日は申し訳ありませんでした。ああするしかなかったんです」

 真っ先に謝罪され、どういう事かと話を聞く事に。

 それによると、ユリウスにはアンティカが送り込んだ見張りの目があり、行動が制限されていたらしい。撒く事や捕縛する事は簡単だったが、自分に気を引き付けておけばティナに向ける目が少なくなると考え、敢えて見ぬふりをしていた。

 そんな中、ティナが自分を訊ねてやって来た。

「抱きしめたい衝動を抑えるのは、どんな拷問よりきつかったですね…」

 その顔は嬉しそうに艶然と微笑んでいる。

 どんな理由であろうと、ティナが自らの意思で来てくれた事実が嬉しかった。かといって、甘い顔は出来ない。そこで、いっその事興味を失ったと思わせて、ティナから離してしまおうと考えた。ティナには嫌な思いをさせるが、これもティナを護る為だと容赦なく演じたのだ。

「冷たくあしらうのが、こんなにも苦痛に感じたのは初めてですよ」

 それだけ伝えるとユリウスはティナの手を引き、自分の腕の中に引き寄せた。

「ようやくです……ようやく、貴女のに私の姿を映す事が出来た」
「は…?何を言って──?」

 ティナを抱きしめジッと瞳を見てくるユリウスだが、嬉しそうに頬を緩めているのに、何故だろう…今にも泣きだしそうだった。一体何故そんな表情をするのか理由が分からず、ただただ困惑しながら吸い込まれそうなほど綺麗な翡翠の瞳を見つめていた。

「姉さんから離れろ」

 見つめ合う二人の間を割くように、鋭い刃が目の前に飛び込んできた。横をみれば、そこには今にも殺さんばかりの殺気を放ったグイードが立っていた。

「義兄に刃を向けるものではありませんよ?」
「僕はお前を兄だと認めた覚えはない」
「認めようが認めないが、結果は出ています」
「…………………………」

 したり顔で言うユリウスとは反対に、グイードは悔しそうに顔を歪めている。

 国王陛下から婚約者だと公言されてしまった以上、ユリウスの婚約者はティナだ。それはもう覆す事のできない事実。しかし陛下が認めたと言う事で、文句を言ってくる者が格段に減るという利点もある。

 陛下が憐れむような目でティナを見ていたのは、この男が裏で何かしたに違いない。陛下まで巻き込んで囲い込むなんて…

(冗談の域を超えてる…!!)

「もう逃げれませんよ?ティナ」

 ユリウスはティナの手の甲にキスを落としながら微笑んだ。

 夢なら早く覚めて……!!



 ❊❊❊



「一睡もできなかった……」

 次の朝、ティナは昨日の事が頭から離れず、眠る事が出来なかった。正直、どうやって帰って来たのかさえよく覚えていない。

 疲れた顔で部屋を出ると、食堂に向かうグイードと会った。

「あ、姉さん……おはよう……」

 こちらもこちらで酷い顔をしている。

 二人で食堂へ行くと、そこにはとても朝食とは思えない程のご馳走が並んでいた。先に席についていた父と母に目をやると、溢れんばかりの笑みを浮かべている。周りの使用人達も同じように頬を緩めている。

「えっと……」

 冷や汗が止まらない。

「ティナ、婚約おめでとう」
「ティナちゃん、おめでとう」

「「おめでとうございます」」

 父の言葉を皮切りに盛大な拍手とお祝いの言葉が飛び交う中、席に通される。隣のグイードはただならぬオーラを放ちながら席についた。

「本当、羨ましいわぁ」
「おいおい、君には私がいるだろ?」
「あら、やきもちですか?可愛らしい事」

 喜び全開の両親はこちらの顔色など気にしている素振りは全くない。それどころか、目の前でいちゃつく始末。仲がいいのはいいことだが、寝起きに見る者の気持ちにもなって欲しい。グイードなんて無の境地に陥っている。

 周りが終始こんな感じなので、すぐにでも席を立ちたいティナは掻きこむように朝食を口に入れた。味もなにも分かったもんじゃない。

 後を追うようにグイードも席を立ち、ティナの部屋へやってくると、二人とも血の気の引いた顔でソファーに座りながら頭を抱えた。

「冗談じゃないわよ。このままじゃ本当に嫁ぐことになっちゃう」
「残念ながら今のままじゃその可能性が高いね。……うちは所詮、伯爵だからこちらから破棄することは出来ない。というか、あの両親二人の喜び具合だと絶対にありえない」

 この婚約は王家公認のもの。白紙に戻すには、ユリウス以上の人物を見つけて納得させるしかない。そんな者がこの国にいるとは考えにくい……というかいるはずがない。

『絶望』この二文字が浮かんだ。

「──ちょっと待って。いるじゃない」
「は?」
「あの騎士より強くて頼りになる人!!」

 目を輝かせて言うグイードを見て「あ」と思い出した。

「ギルベルト」

 ティナが言葉にすると「そうだよ」と嬉しそうに立ち上がった。

「ギルベルト兄さんなら、あの騎士も認めざるを得ないはず!!」
「でも、ギルに悪いわ……」

 確かにギルベルトなら名実共に、ユリウスに匹敵するものがある。

 ギルベルトは頼めば聞いてくれると思う。そういう人だから。でも、いくら婚約を白紙に戻す為とは言え、巻き込むのはどうしても気が引ける。

 渋るティナを見たグイードは「大丈夫」と口にした。

「絶対悪い方向にはいかない。僕を信じて」

 真剣な眼差しで言われたら、信じるしかない。ティナは納得出来ないものの、渋々グイードの案を飲んだ。
感想 11

あなたにおすすめの小説

一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。

甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。 だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。 それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。 後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース… 身体から始まる恋愛模様◎ ※タイトル一部変更しました。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 そう名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  ✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 ✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

愛されないはずの契約花嫁は、なぜか今宵も溺愛されています!

香取鞠里
恋愛
マリアは子爵家の長女。 ある日、父親から 「すまないが、二人のどちらかにウインド公爵家に嫁いでもらう必要がある」 と告げられる。 伯爵家でありながら家は貧しく、父親が事業に失敗してしまった。 その借金返済をウインド公爵家に伯爵家の借金返済を肩代わりしてもらったことから、 伯爵家の姉妹のうちどちらかを公爵家の一人息子、ライアンの嫁にほしいと要求されたのだそうだ。 親に溺愛されるワガママな妹、デイジーが心底嫌がったことから、姉のマリアは必然的に自分が嫁ぐことに決まってしまう。 ライアンは、冷酷と噂されている。 さらには、借金返済の肩代わりをしてもらったことから決まった契約結婚だ。 決して愛されることはないと思っていたのに、なぜか溺愛されて──!? そして、ライアンのマリアへの待遇が羨ましくなった妹のデイジーがライアンに突如アプローチをはじめて──!?

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

ある日突然、醜いと有名な次期公爵様と結婚させられることになりました

八代奏多
恋愛
 クライシス伯爵令嬢のアレシアはアルバラン公爵令息のクラウスに嫁ぐことが決まった。  両家の友好のための婚姻と言えば聞こえはいいが、実際は義母や義妹そして実の父から追い出されただけだった。  おまけに、クラウスは性格までもが醜いと噂されている。  でもいいんです。義母や義妹たちからいじめられる地獄のような日々から解放されるのだから!  そう思っていたけれど、噂は事実ではなくて……