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「あの子はティナ。貴女です」
そう告げられたが、ティナ本人は何が何だか……
「あの当時、ティナはギルベルトにベッタリで私には目もくれてませんでしたから……」
寂し気に言っているが、ティナは理解が追い付かない。
(待って待って!!)
どういうこと?あの当時?確かに、幼い頃はギルベルト以外、目もくれなかったのは事実だ。という事は、その当時に会っていたって事?
ティナは幼い頃の思い出を巡らせた。
***
「ギル!!待って!!」
「ティナ。今日は遊んでやれないと何度も言ってるだろ?」
「嫌だ!!ティナも行く!!」
ティナが五歳。ギルベルトはその当時、優秀な騎士になる為に学園に通っていた。自分の屋敷から通っていたギルベルトは、毎回一緒に付いて行こうとするティナに手を焼いていた。
「帰って来たら遊んでやると言っているだろう?」
「い~や~だ~!!」
「はぁぁ~……困ったな」
地面に転がり駄々を捏ねるティナに頭を抱えていたが、いよいよ時間なくなり困ったギルベルトは「今日だけだぞ!!」と急いでティナを抱きかかえて学園へと向かった。
「………………ギルベルト、その子は?学生の分際で隠し子か?」
当然、五歳の子供が学園に来れば話題になる。教室へ入れば、騎士の卵達にあっという間に囲まれた。知らない人に囲まれた挙句、物珍しい目を向けられティナはギルベルトの背後に隠れて小さくなっていた。
その中でも、特に敵意を向けてきた者がいた。顔はいいのに、この世にいる人間全員敵だ。みたいな顔していて、目が死んだ魚のように光を失っている奴だった。
「アホか。こいつは知り合いの子だ。先生達には事情を話して、今日だけ許してもらった」
「相変わらず甘いな。戦場では命取りになるぞ」
「お前こそ相変わらずだな。少しはティナのように素直になれよ。なぁ?」
ティナに同意を求めるように問いかたが、ティナはキョトンとした顔で他の学生らと和気あいあいとしていた。
「ふんっ、子供なんて我儘で煩いだけだ。僕はお前のように甘ちゃんになるつもりはない」
捨て台詞を吐いて、教室を出て行った。
ティナはギルベルトが馬鹿にされてムッとしていたが、憎まれ口を叩かれたぐらいで気にしていたらギルベルトに笑わてしまう。それに、もう会う事もない奴だ。気にするだけ無駄。
──そう思っていた。
「…………………………」
「どうした?」
ギルベルトと出掛けた先で待っていたのは、先日の非常識な男。ティナを見るなり、睨みつけてくる。堪らず前に出て、一言物申した。
「女性を睨みつけるなんてクズのすることだわ」
「──なッ!!」
「あはははは!!ティナの言う通りだ!!」
「ふんっ」と胸を張りながら言い切ったティナを、ギルベルトは拍手で讃えてくれた。
それからも、その三人で会う事が多くなった。男の方も、それが当然のようになってきたのか、ティナにも声をかける事が増えた。だが、ギルベルトと二人になりたいティナとしては面白くない。
話しかけれても、素っ気ない返事や聞こえないフリをして過ごしていた。
そんな時、ギルベルトが実技の授業で大けがを負った事があった。
「ギルベルトが死んじゃうぅぅぅ!!」
ティナは号泣しながらギルベルトの部屋を訪れた。
「おいおい、人を簡単に殺すな。これぐらいじゃ死なん」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔のティナを宥めるように頭を撫でる。ベッドの横にはあの男もいたが、相変わらず無表情で何を考えているのか分からない。もしかして、こいつが怪我を負わせたのか?と完全に悪者に仕立て上げていた。
「先に言っておくが、この怪我は俺が悪い。誰のせいでもない」
ギルベルトはティナの思考を見たかのように、他人のせいにするなと諭してきた。幼いティナには納得が出来なかったがギルベルトに言われた手前、頷くしかなかった。
それから、毎日お見舞いに訪れたが、必ずと言っていいほどあの男がいた。二人で仲良く話していて、笑い声が部屋の外に漏れている事もあった。ティナはギルベルトが取られたと、幼子心に嫉妬心が芽生えたほどだ。
「今日は、あいつと遊んで来い」
ある時、ギルベルトがティナに向かって一言言った。
「え、ヤダ」
「そう言うな。おい」
「………仕方ない。行くぞ」
ティナの言葉など完全に無視の二人に、半ば強引に連れ出された。部屋を出る時に見たギルベルトの笑顔は今でも忘れない。
「そうむくれるな」
「………」
半泣きのまま男に引きずられるような形で外に出たはいいが、どうやら無計画だったらしく行き場を失ってしまっている。
ティナは寂しさと帰りたいのとで、ぽろぽろ涙が零れてくる。それを見た男は、ティナを抱き上げ「泣くな」と優しく拭ってくれた。
思いもよらない優しさに驚いた。
そのままティナを抱いたまま歩き続け、暫く行った所で「あっ」と声が上がった。
「ほら見てみろ」と指差す方を見ると、真っ青なネモフィラの花が一面に咲いていた。
「うわぁぁ……!!」
下ろしてとせがむと、ゆっくり下ろしてくれた。
一目散にネモフィラの花畑の中に入り「綺麗ね!!」と微笑み返した。男の方も、そんなティナを優しく微笑みながら見つめていた……
そう告げられたが、ティナ本人は何が何だか……
「あの当時、ティナはギルベルトにベッタリで私には目もくれてませんでしたから……」
寂し気に言っているが、ティナは理解が追い付かない。
(待って待って!!)
どういうこと?あの当時?確かに、幼い頃はギルベルト以外、目もくれなかったのは事実だ。という事は、その当時に会っていたって事?
ティナは幼い頃の思い出を巡らせた。
***
「ギル!!待って!!」
「ティナ。今日は遊んでやれないと何度も言ってるだろ?」
「嫌だ!!ティナも行く!!」
ティナが五歳。ギルベルトはその当時、優秀な騎士になる為に学園に通っていた。自分の屋敷から通っていたギルベルトは、毎回一緒に付いて行こうとするティナに手を焼いていた。
「帰って来たら遊んでやると言っているだろう?」
「い~や~だ~!!」
「はぁぁ~……困ったな」
地面に転がり駄々を捏ねるティナに頭を抱えていたが、いよいよ時間なくなり困ったギルベルトは「今日だけだぞ!!」と急いでティナを抱きかかえて学園へと向かった。
「………………ギルベルト、その子は?学生の分際で隠し子か?」
当然、五歳の子供が学園に来れば話題になる。教室へ入れば、騎士の卵達にあっという間に囲まれた。知らない人に囲まれた挙句、物珍しい目を向けられティナはギルベルトの背後に隠れて小さくなっていた。
その中でも、特に敵意を向けてきた者がいた。顔はいいのに、この世にいる人間全員敵だ。みたいな顔していて、目が死んだ魚のように光を失っている奴だった。
「アホか。こいつは知り合いの子だ。先生達には事情を話して、今日だけ許してもらった」
「相変わらず甘いな。戦場では命取りになるぞ」
「お前こそ相変わらずだな。少しはティナのように素直になれよ。なぁ?」
ティナに同意を求めるように問いかたが、ティナはキョトンとした顔で他の学生らと和気あいあいとしていた。
「ふんっ、子供なんて我儘で煩いだけだ。僕はお前のように甘ちゃんになるつもりはない」
捨て台詞を吐いて、教室を出て行った。
ティナはギルベルトが馬鹿にされてムッとしていたが、憎まれ口を叩かれたぐらいで気にしていたらギルベルトに笑わてしまう。それに、もう会う事もない奴だ。気にするだけ無駄。
──そう思っていた。
「…………………………」
「どうした?」
ギルベルトと出掛けた先で待っていたのは、先日の非常識な男。ティナを見るなり、睨みつけてくる。堪らず前に出て、一言物申した。
「女性を睨みつけるなんてクズのすることだわ」
「──なッ!!」
「あはははは!!ティナの言う通りだ!!」
「ふんっ」と胸を張りながら言い切ったティナを、ギルベルトは拍手で讃えてくれた。
それからも、その三人で会う事が多くなった。男の方も、それが当然のようになってきたのか、ティナにも声をかける事が増えた。だが、ギルベルトと二人になりたいティナとしては面白くない。
話しかけれても、素っ気ない返事や聞こえないフリをして過ごしていた。
そんな時、ギルベルトが実技の授業で大けがを負った事があった。
「ギルベルトが死んじゃうぅぅぅ!!」
ティナは号泣しながらギルベルトの部屋を訪れた。
「おいおい、人を簡単に殺すな。これぐらいじゃ死なん」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔のティナを宥めるように頭を撫でる。ベッドの横にはあの男もいたが、相変わらず無表情で何を考えているのか分からない。もしかして、こいつが怪我を負わせたのか?と完全に悪者に仕立て上げていた。
「先に言っておくが、この怪我は俺が悪い。誰のせいでもない」
ギルベルトはティナの思考を見たかのように、他人のせいにするなと諭してきた。幼いティナには納得が出来なかったがギルベルトに言われた手前、頷くしかなかった。
それから、毎日お見舞いに訪れたが、必ずと言っていいほどあの男がいた。二人で仲良く話していて、笑い声が部屋の外に漏れている事もあった。ティナはギルベルトが取られたと、幼子心に嫉妬心が芽生えたほどだ。
「今日は、あいつと遊んで来い」
ある時、ギルベルトがティナに向かって一言言った。
「え、ヤダ」
「そう言うな。おい」
「………仕方ない。行くぞ」
ティナの言葉など完全に無視の二人に、半ば強引に連れ出された。部屋を出る時に見たギルベルトの笑顔は今でも忘れない。
「そうむくれるな」
「………」
半泣きのまま男に引きずられるような形で外に出たはいいが、どうやら無計画だったらしく行き場を失ってしまっている。
ティナは寂しさと帰りたいのとで、ぽろぽろ涙が零れてくる。それを見た男は、ティナを抱き上げ「泣くな」と優しく拭ってくれた。
思いもよらない優しさに驚いた。
そのままティナを抱いたまま歩き続け、暫く行った所で「あっ」と声が上がった。
「ほら見てみろ」と指差す方を見ると、真っ青なネモフィラの花が一面に咲いていた。
「うわぁぁ……!!」
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