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教会に戻ったのは、日が昇り始めた頃だった。
レオナードに抱えられているシャルルを見たルイスは、怪我の心配よりも先にシャルルの行動を心配をした。このルイスの態度にダグが文句を口にし始めた。
「おいおい。いくらなんでもその言い方はあんまりじゃないか?多少……大分常識から離れてるとはいえ、姉御は女だぞ?怪我の心配が先じゃねぇのか?」
「そうっスよ。可愛い顔に傷が付いたら、他に褒めるとこないっスよ!?」
「傷もので、暴れ馬みたいな聖女様なんて貰ってくれる奇特な人はいませんよ?」
「……貴方達、それで庇っているつもりでしょうか?」
言いたいことは分かるが、シャルルが起きていたら怒鳴りつけられるのは自分達だという事に気付いているだろうか……
「語弊があったようなのでお伝えしますが、あの人は腐っても聖女ですよ?自分の命に関わるような傷ならば自分でどうにかします。まあ、あの人の生命源はレオナード様なので彼が傍にいる以上死ぬことはありえません。というか、あの人なら死んでも息を吹き返しますよ。きっと……」
遠い目をしながら語るルイスの言葉は妙な納得感があり、全員が「ああ~……」と頷いてしまった。
そうは言っても、ルイスとて心配してない訳じゃない。
(本来なら側仕えの僕が部屋まで連れて行くのが普通ですけど……)
気を失っているとはいえ、抱いてくれているのがレオナードだと分かるのかシャルルの表情は幸せそうだった。それに、レオナードの表情も少し違った。とても「代わります」とは言えなかったのが本音。
「起きたら起きたで大変でしょうね」
***
シャルルが目を覚ましたのは昼を回る少し前。
「何で起こしてくれなかったんですのぉ!!」
「レオナード様に起こすなと釘を刺されましたので」
「優しさが紳士!」
嬉しいけど嬉しくない!と訳の分からない事を言いながら枕に顔を埋めるシャルルにルイスの冷たい視線が刺さる。
「そうですわ!リオネル様は!大丈夫でした!?」
思い出したように顔を上げて訊ねた。
レオナードはシャルルをベッドに寝かすと、すぐにリオネルと共に屋敷へ戻って行ったらしい。リオネルもここで預かると提言したらしいのだが、目が覚めた時に知らない所だと不安がると言う理由で連れ帰ったと聞いた。
「応急処置はしてくださったのでしょう?そのおかげで大分楽に治療が済みました」
「ああ、良かった……」
ホッと息を吐きながら微笑んだ。その姿をルイスは黙って見つめていた。
「何です?」
「聞きたいことがあるのではと思いまして」
素知らぬ顔をしながら、こちらの心を見透かした言い方をする。随分と狡い言い方だが、これは聖女から聞いてきたという証言が欲しいからなのだろう。
公に出来ない一般人が聞くことのできない話……
「面倒臭いですわね」
「知りたくなければいいんですよ」
「嘘です!聞きます!」
自分で聞いておいて、鬱陶しく顔を歪めてくる。この側仕え、主をなんだと思っているのでしょう……
「単刀直入に言いますが、リオネル様はレオナード様の実子ではありません」
それは何となく察していた。リンファのあの言葉が気になっていた。
「今度は貴方の子が欲しい」
彼女ははっきりそう言った。
では、彼は一体……?
「彼の本当の父親は行きずりの芸者だったようです」
当時のキュラサは演劇やミュージカルなどが流行っていたらしく、他国から沢山の演者や芸者が訪れていた。その中で、レオナードと同じ髪色を持った男がいた。
リンファがレオナードの事を想っているのは本当だったらしく、その男にレオナードを重ねたのだ。男かすれば皇女からの誘いなんて一生に一度あるかないかの事。二つ返事で了承すると、熱い夜を二人で過ごした。
後にリンファは妊娠。妊娠が分かった時、彼女は「父親は二人要らない」そんな理由で実の父の男を殺害し、レオナードとの子として出産した。
「……胸糞悪い話ですわ」
「自分勝手にもほどがありますが、キュラサでは普通の事なんです」
「腐ってますわ。……じゃあ、リオネル様がレオナード様の元に来た理由って……」
「ええ、父親だという自覚を持ってもらうため生まれたばかりのリオネル様を屋敷前に置いて行った。というのが表向きですが、本当は赤子の世話が思った以上に大変で手放したのでは?と言われております」
「なんてこと……」
自分で産んでおいて捨てるなんて……人のすることじゃない。
リオネルも手のかからない年齢になったし、世間からもリオネルはレオナード様の実子と認知されている。ここで自分が母だと名乗りを上げれば、二人共手に入る。と言うのがあちらの思惑だろう。
「なんと言う浅はかな考えを……」
もはや溜息しかでない。
「まあ、あとはあちらがカタを付けるでしょう」
「……」
「大丈夫ですよ。貴女の恋した相手は無分別な行動を起こす方ではないでしょう?」
「そうですけど」
「まあ、大人しく待っていなさい」
ルイスはそれだけ言うと部屋を出て行ってしまった。
レオナードに抱えられているシャルルを見たルイスは、怪我の心配よりも先にシャルルの行動を心配をした。このルイスの態度にダグが文句を口にし始めた。
「おいおい。いくらなんでもその言い方はあんまりじゃないか?多少……大分常識から離れてるとはいえ、姉御は女だぞ?怪我の心配が先じゃねぇのか?」
「そうっスよ。可愛い顔に傷が付いたら、他に褒めるとこないっスよ!?」
「傷もので、暴れ馬みたいな聖女様なんて貰ってくれる奇特な人はいませんよ?」
「……貴方達、それで庇っているつもりでしょうか?」
言いたいことは分かるが、シャルルが起きていたら怒鳴りつけられるのは自分達だという事に気付いているだろうか……
「語弊があったようなのでお伝えしますが、あの人は腐っても聖女ですよ?自分の命に関わるような傷ならば自分でどうにかします。まあ、あの人の生命源はレオナード様なので彼が傍にいる以上死ぬことはありえません。というか、あの人なら死んでも息を吹き返しますよ。きっと……」
遠い目をしながら語るルイスの言葉は妙な納得感があり、全員が「ああ~……」と頷いてしまった。
そうは言っても、ルイスとて心配してない訳じゃない。
(本来なら側仕えの僕が部屋まで連れて行くのが普通ですけど……)
気を失っているとはいえ、抱いてくれているのがレオナードだと分かるのかシャルルの表情は幸せそうだった。それに、レオナードの表情も少し違った。とても「代わります」とは言えなかったのが本音。
「起きたら起きたで大変でしょうね」
***
シャルルが目を覚ましたのは昼を回る少し前。
「何で起こしてくれなかったんですのぉ!!」
「レオナード様に起こすなと釘を刺されましたので」
「優しさが紳士!」
嬉しいけど嬉しくない!と訳の分からない事を言いながら枕に顔を埋めるシャルルにルイスの冷たい視線が刺さる。
「そうですわ!リオネル様は!大丈夫でした!?」
思い出したように顔を上げて訊ねた。
レオナードはシャルルをベッドに寝かすと、すぐにリオネルと共に屋敷へ戻って行ったらしい。リオネルもここで預かると提言したらしいのだが、目が覚めた時に知らない所だと不安がると言う理由で連れ帰ったと聞いた。
「応急処置はしてくださったのでしょう?そのおかげで大分楽に治療が済みました」
「ああ、良かった……」
ホッと息を吐きながら微笑んだ。その姿をルイスは黙って見つめていた。
「何です?」
「聞きたいことがあるのではと思いまして」
素知らぬ顔をしながら、こちらの心を見透かした言い方をする。随分と狡い言い方だが、これは聖女から聞いてきたという証言が欲しいからなのだろう。
公に出来ない一般人が聞くことのできない話……
「面倒臭いですわね」
「知りたくなければいいんですよ」
「嘘です!聞きます!」
自分で聞いておいて、鬱陶しく顔を歪めてくる。この側仕え、主をなんだと思っているのでしょう……
「単刀直入に言いますが、リオネル様はレオナード様の実子ではありません」
それは何となく察していた。リンファのあの言葉が気になっていた。
「今度は貴方の子が欲しい」
彼女ははっきりそう言った。
では、彼は一体……?
「彼の本当の父親は行きずりの芸者だったようです」
当時のキュラサは演劇やミュージカルなどが流行っていたらしく、他国から沢山の演者や芸者が訪れていた。その中で、レオナードと同じ髪色を持った男がいた。
リンファがレオナードの事を想っているのは本当だったらしく、その男にレオナードを重ねたのだ。男かすれば皇女からの誘いなんて一生に一度あるかないかの事。二つ返事で了承すると、熱い夜を二人で過ごした。
後にリンファは妊娠。妊娠が分かった時、彼女は「父親は二人要らない」そんな理由で実の父の男を殺害し、レオナードとの子として出産した。
「……胸糞悪い話ですわ」
「自分勝手にもほどがありますが、キュラサでは普通の事なんです」
「腐ってますわ。……じゃあ、リオネル様がレオナード様の元に来た理由って……」
「ええ、父親だという自覚を持ってもらうため生まれたばかりのリオネル様を屋敷前に置いて行った。というのが表向きですが、本当は赤子の世話が思った以上に大変で手放したのでは?と言われております」
「なんてこと……」
自分で産んでおいて捨てるなんて……人のすることじゃない。
リオネルも手のかからない年齢になったし、世間からもリオネルはレオナード様の実子と認知されている。ここで自分が母だと名乗りを上げれば、二人共手に入る。と言うのがあちらの思惑だろう。
「なんと言う浅はかな考えを……」
もはや溜息しかでない。
「まあ、あとはあちらがカタを付けるでしょう」
「……」
「大丈夫ですよ。貴女の恋した相手は無分別な行動を起こす方ではないでしょう?」
「そうですけど」
「まあ、大人しく待っていなさい」
ルイスはそれだけ言うと部屋を出て行ってしまった。
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