城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧

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侍女兼便利屋

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「ヤンさん、喉乾きませんか?」

「……………」

「そうですか、こっちはレモン水なのでどうぞ」

ヤンさんにレモン水の入った水筒を渡します。

「いやいやいや、おかしいだろ!!なんで話してないのに分かるんだよ!?」

「嫌ですね、ジェムさん。分からないんですか?」

ヤンさんは無口ですけど、表情を読めば分かります。
因みに、先程のヤンさんの答えは「確かに喉が渇いた。サッパリしたもんがいいな」と仰ったのでレモン水の入った水筒を手渡しました。

「……この間から思ってるけど、お前何者だ?」

「城勤めの侍女兼便利屋の従業員ですが?」

おかしな事を言う人ですね。

「いや、絶対違うだろ!!」

「……………」

「ヤンさんが、『でかい声を出すな。奴に気付かれる』と申しております」

ガサガサッ

……どうやら遅かった見たいです。

茂みから顔を出したのは真っ赤な6つの眼を光らせた大きな蜘蛛です。

「で、出た!!」

「ジェムさんが大きな声出すからこんな事になるんですよ?」

「俺のせいか!?」

今はそんな事言ってる暇は無さそうです。
早速攻撃を仕掛けてきますよ。

シュッ!!

口から糸を出し、私達を捕まえようとしているみたいです。

「ほら、ジェムさん!!早く脚を取ってください!!」

「お前、無茶ぶりにも程があるぞ!!」

ジェムさんは真っ青な顔で逃げ回ってるばかり、それではいくら経っても研修は終わりませんよ?

「……………」

「──ヤンさんが、『俺が囮になる。その間に脚を取れ』ですって」

「あ゛~もう!!分かったよ!!やればいいんだろやれば!!」

初めからそう言ってますけど?
何を聞いていたんですかね?

「……………」

「『行くぞ』」

「いつでも来い!!」

ヤンさんはピョンピョンと大蜘蛛の体の上を跳びながら、気を引きます。
そして、大蜘蛛がヤンさんを追って後ろを向きました。

「ジェムさん!!今です!!」

「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

ジェムさんが素早く、一本の脚を切り取りました。

ギァァァァァァァァ!!!

大蜘蛛は脚を切られた事により、敵意がヤンさんからジェムさんへ変更された模様。

「ジェムさん!!すぐ離れてください!!」

「へっ?──ぐぼっ!!!」

大蜘蛛の前脚がジェムさんに直撃し、ジェムは飛ばされ木に激突してしまいました。

「ジェムさん!?大丈夫ですか!?」

「……なん、とか、な……」

うん。肋が何本かイッたかも知れませんが、命に別状は無いですね。

「……………」

『これは、もう無理だ。俺らで処理しよう』とヤンさんが仰りました。

「そうですね。そうしましょう」

大蜘蛛は更に暴れ回っていて、このままでは大変危険です。
すぐさま、私とヤンさんで大蜘蛛の処理にかかります。

ヤンさんが素早く残りの脚を切り落とし、私はピョンピョンと大蜘蛛の頭の上へ移動します。
そして、大蜘蛛の脳天目掛けて剣を刺します。

ギャァァァァァァァ!!!

ドサッ

「……すっげ……瞬殺かよ……」

ジェムさんは一部始終を見て、絶句しております。
これぐらい出来ないと、裏の任務遂行の際は命を落としかねません。

「…………」

「『大丈夫か?初めてにしては上出来だ』と仰っております」

「……そんな事ねぇよ、俺はまだまだだ……」

あらあら、落ち込んでしまいましたね。

「…………」

「『初めは皆、こんなもんだ。焦ったとこで腕は上がらん。努力あるのみだ、頑張れ』と励ましております」

ヤンさんはジェムさんの頭をワシャワシャしながら微笑んでおります。
やはり優しい方ですね。

「……兄貴……」

おや?なんかジェムさんの雰囲気が……

「ヤンの兄貴!!俺に戦い方を教えてくれ!!いや、教えて下さい!!」

おやまあ、土下座までして頼み込むとは……
これは、本気ですね。

ヤンさんは狼狽えてますが、どうするんでしょうか。

「…………」

「『……俺は、教えるのは苦手だ。しかし、その熱意は受け取った』と申しております」

「……えっ?それってどういう……?」

「まあ、簡単に言えば、ジェムさんの熱意に負けたと言う事ですかね」

なんだかんだ言って、面倒見が良いんですからヤンさんは……

──もしかして、これはゴリさんの計算の内では?

ジェムさんは元とは言え侯爵家の人間です。
侯爵家の人間がこんな戦い方を知るはずありません。戦い方を知らなければ、便利屋には置いとけないですからね。
そこで、面倒見のいいヤンさんに押し付けようと、この研修が計画されたのでは?

──大方、私はヤンさんの通訳に選ばれたという所ですかね。

まったく、あのゴリラの考えそうな事です。


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