上 下
90 / 91

90

しおりを挟む
アレッシオとの話を無理やり終わらせ、私はパウルの待つ部屋へ戻ってきた。

パウルはベッドに横になり眠っていた。
起こすのは悪いと思い、パウルはそのまま寝かせておいて、私は窓の外に目を向けた。

私達の部屋からは騎士演習場が見渡せた。

久々に騎士達の演習を見ると、ついつい口を出したくなる。
こればっかりは団長の癖が抜けない。

「コルネリア~!!」

「──ぬおっ!?」

いきなり後頭部に衝撃が走った。
声を聞く限りドランの様だが、相変わらず姿が見えんから不便だ。

「ドランか!?戻ったのか!?」

「はいっす。アルベールの居場所は掴めたっすよ!!南棟の地下にいるっすね」

ドランは無事にアルベールの居場所を突き止めて来てくれたらしい。

「そうか。ありがとな」

ドランの頭を撫でたくても、姿が見えないので撫でることが出来ない為、笑顔で感謝を伝えた。

「アルベールは元気だったっす。コルネリアが来たことを伝えると驚いてたっすよ」

「そうか。元気そうなら良かった」

まあ、アルベールは転んでも団長だからな。そんな簡単に衰弱するような奴ではないかのは分かっていたが、やはり元気だと聞くと安心する。

「今から行くっすか!?」

すぐにでも助け出したい所だが、多分私らは見張られている。
ここにいる以上、下手な動きは出来ん。

「……いや、今はまだ動かん。決戦は三日後。ここを去る瞬間だ」

「……そうっすか」

ドランは何処が残念そうだったが、ここは我慢してくれ。
私一人なら行動に移していたかもしれんが、今回はパウルが一緒だ。
私の行動がパウルを危険に晒すことになりえる。

「そんな焦るな。奴らはアルベールを殺しはしない。殺したら自分たちの命が危うくなる事ぐらい勘づいているだろう?」

「もういっそ城ごと潰した方が早そうっすよ?」

「……お前は本当に父親ラコードに似てるな」

ラコードあいつはどんな育て方をしたんだ?

そんな物騒な話をしていると、パウルが目を覚ました。
パウルは、私の姿を目にするとホッとした様だ。

「……コルネリアさん、おかえりなさい」

「あぁ、パウルは大丈夫か?」

ゆっくりと体を起こすパウルに問いかけた。

「……えぇ、何とか……」

「夕食までゆっくりしていろ。私もここにいるから」

「自分もいるっすよ-」と、ドランも声を掛けてきた。
パウルはここに来てようやく笑顔が戻った。

「……そう言えば、アルベールさんの居場所は分かったんですか?」

パウルが水差しの水を飲みながら聞いてきた。

「あぁ、南棟の地下にいるらしい」

私はベッドに腰掛けて、アルベールの居場所を伝えた。

パウルは「じゃあ、すぐに助けに行かないと!!」と、立ち上がった。

──どいつもこいつも、急ぐんじゃない。

私はドランにも伝えたことをパウルにも同様に伝えた。

「そうですよね……。焦っても、解決するとは限らないですものね」

物分りが良くて助かるな。
これが、ブラウやラルスならばまだ揉めている所だ。

「……しかし、クラウディアは安心させてやらねばな」

私はそう言うと、机の上に置かれたペンと髪にクラウディア宛の手紙を書き、それを鳥の姿に変えた。

「おぉ!!流石はコルネリアさん!!」

「へぇ、こんな事も出来るっすねぇ~」

パウルは鳥に変わった手紙を穴が開きそうなほど眺めていた。
私は、それを窓の外に飛ばしクラウディアに届けるよう伝えた。

──これで、少しは安心するはずだ。
しおりを挟む

処理中です...