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「お前はこのまま自分の意思を無視して、他人の言いなりになるつもりか?」

私はアレッシオに問いかけた。
アレッシオは少し考えた後、ゆっくり話し出した。

「──……私の意見などあってないようなものだ。私は幼い頃から国の為に尽くしてきた。それはこれからも変わることは無い」

国の為と言えば聞こえは良いが、都合のいい駒でしかない。
こいつは幼い頃から、駒として育てられたのかもしれん。

はぁぁ~、と溜め息が出た。

「……いいか、例え王子だろうと、一人の人間だ。人間誰しも、自分の意思というものがある。自分の意思はちゃんと言葉にしろ。反対されても、拒絶されてもいい。言葉にすることが大事なんだ」

私はゆっくりアレッシオに語りかけた。

「……その昔、ある騎士がいた。そいつは、国の為に尽くしていた。だがな、それが間違いだった。国の奴らはそいつに面倒事を全て押し付けるようになっていったんだ。国王など、名だけでただの無能だった。そして、ある日そいつは討伐に失敗して死んだが、その後が悲惨だ。面倒事を押し付ける相手がいなくなったからな。──その国はどうなったと思う?」

「……分からん」

「一瞬で他国に攻め入れられ滅んだよ」

ズズッと茶を啜りがら話を進める。

「お前は今、その騎士になりつつあるんだぞ?何でもかんでも国の為と思っているのなら大間違いだ」

──私のように捨て駒にはなるな。

そう思いながら、アレッシオに語った。
正直、この程度でこいつの心を動かせるとは思っていない。
だが、少しでもいいから自分の意思を言える奴になってもらいたい。

再び沈黙が訪れた。

「……私は、父上を尊敬している。国の為、民の為に尽力を尽くしている。私も、そんな風になりたいと思っていたのだが、それが間違いなのか?」

沈黙を破ったのはアレッシオだった。
アレッシオは自分の父親を目標にしているらしい。
それは、素晴らしいことだと思う。

だが、本当に国王父親は国の為、為のために尽力を尽していると言いきれるか?
自分の息子の意見を聞かん父親だぞ?

「お前は頭が堅い。いいか?男という物は親に反抗するものだ。──お前は少しでも、反抗した事あるか?」

「そんなもの、出来るわけない!!」

思った通りの返事が返ってきた。
真面目にも程がある。……いや、違うな。根性無しか……

「……今ここには、お前と私だけだ。お前の父親もいない。お前は、私と本当に婚約したいのか?しっかり私の目を見て、自分の意見を述べろ」

私がアレッシオの目を見ながら言えば、アレッシオもしっかり私の目を見てきた。

暫くすると、意を決した様に話し始めた。

「……私は、今はまだ誰とも婚約するつもりは無い。百歩譲って、形だけでもいいから作れと言われたら、それなりの身分の者と婚約するつもりでいる。お前のように教養のなっていない女は絶対に御免だ」

──言えるじゃないか。
何か失礼な事言われたが、まあ、聞かなかったことにしておく。

「──だが、父上は何がなんでもお前をこの国に縛り付けたいようだ」

それは、重々承知している。
まあ、一筋縄で行く相手なら良かったが、私が相手だからな。

──三日後が楽しみだな。

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