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アレッシオに連れていかれたのは、執務室だった。
部屋に入るなり、ドカッとソファに座り私にも座るよう託した。

──婚約の話かと思ったが、違ったか?

私はてっきり婚約の話をされるのだろうと思って付いてきたが、付いた先が執務室なら婚約の話ではなく、常政だな。

王子付きの侍女が手際よく茶を入れてくれた。
しかし、当の王子が何も話してこない。
仕方なく私は茶を啜りながら話し出すのを待った。

………………………。

「──なんか喋れ!!!」

あまりにも喋らず、私が先に根を上げた。
バンッとテーブルを叩きながら言えば、アレッシオは一瞬驚いた顔をしたが、一言も喋らん。

「私に話があって連れ出したのではないのか?話がないなら失礼するが?」

そう言いながら腰を上げると「待て」と一言、言葉が返ってきた。

──なんだコイツは!?

「──……いや、すまん。まずは、改めて名乗らせていただく。私は、アレッシオ・ギラルディ。この国の王子のだ」

「……私は、コルネリア。しがない薬屋だ」

改めて自己紹介をするが、その後が続かない。

──……こんな時にバジャーがいればなぁ。

アイツはこんな重苦しい空気を物ともせず、目の前の菓子を頬張るだろうなぁと、想像したら「クスッ」と笑みがこぼれてしまった。

「……何か、私の顔に付いているのか?」

アレッシオは自分が笑われたと思ったらしく、不機嫌な顔で言ってきた。

「あぁ、すまん。私の知り合いの奴が、菓子に目が無くてな。この菓子を見せたら飛びつくんだろうなと思ったら、可笑しくてな」

城の菓子なんて、滅多に食えるもんじゃないからな。
まあ、リラとクラウディアの作ったもの方が美味いと思うがな。

「……そうか。では、帰りに土産として持たせよう」

「そいつは、嬉しいね。バジャーあいつも喜ぶ」

バジャーの話のお陰でだいぶ馴染んだらしく、そこからは普通に話し始めた。

──アイツはこんな所でも役に立ったな。

「単刀直入に聞くが、コルネリア殿は私との婚約をどう考えている?」

「私の事はコルネリアでいい。婚約の事だが、私は生涯誰とも結婚するつもりは無い。──……お前とて、こんな何処の馬の骨か分からん女を嫁にするのは嫌だろ?」

私は茶を啜りながら、アレッシオの問に答えた。
アレッシオは次期国王だ。黙っていても女が寄ってくる。
私は次期王妃などの器ではないし、国に縛られるのも御免だ。

「……私は、父上……。陛下の言葉に従う。この国の為になる事が、私の役目なのだ」

「……そこには、自分の考えはないのか?」

アレッシオの言葉を聞く限り、自分の意思が見えん。
国の為に結婚するだと?私が国に悪をもたらす人物だとは考えんのか?

──そもそも、私は国の為に自分の力をつもりは無い。

「陛下の言葉は絶対だ。私の気持ちなど関係ない」

まぁ、どこの国もそうだが王子というものは自分の意見が中々言えんものだ。
だが、自分を殺してまで国を守るのは違うんじゃないか?
自分の意思ちゃんと持ってる奴の方が、国は発展する。

このままだと、周りに流され都合のいいお飾りの国王になってしまうぞ?

これは、教育が必要だな。
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