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十七
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次の日、レオさんは仕事場からにこやかに帰宅してきた。
どうしたの? と聞いても、後でねと教えてくれない。
そのにこやかの原因は夕飯の後にわかる。レオさんは食卓に書類を広げた。
「ティー、これに名前を書いて、後母印もね」
「レオさん。ここに『婚約の誓いの書』と、書いてありますけど」
「そうだよ。両親への報告には半年あるからね。先に婚約だけ済ませよう。実は指輪も用意したんだ」
シャツの胸ポケットからお揃いのシルバー指輪を出した。この指輪は雑貨屋のモコさんの手作りで、魔法がかかった指輪だとレオさんは言った。
「魔法の指輪なのですか?」
「そうだよ。僕に合わせてサイズが変わるんだ。だから、獣人と半獣の時に指輪を取らなくていい、ずーっとティーと同じ指輪を付けることができるんだ」
レオさんと同じ指輪。
「ティー、左手を出して」
「はい」
左手を前に出すと、レオさんは薬指にシルバーの婚約指輪をはめてくれた。
次に僕にも付けてと、レオさんにつけている途中で、嬉しくって込み上げて来た涙が溢れた。
「嬉しい、レオさん」
「僕も嬉しいよティー。君を抱きしめさせて」
立ち上がって、手を広げたレオさんの胸に「レオさん、大好き!」と飛び込んだ私を、レオさんは優しく受け止めてくれた。
「僕だって大好きだよ。ティー、一緒に幸せになろうね」
「はい、私がレオさんを幸せにします!」
「言ったね、僕だってティーを幸せにするんだからな」
すりすりと鼻を振り合わせて、誓いのキスをした。
♢
「「レオ、ティーさん婚約おめでとう!」」
婚約の書類も無事に受理された。
レオさんの仲間は婚約の祝いパーティーを王都の獣人街、ミヤさんの定食屋さんで開いてくれた。
たくさんの料理、祝ってくれる大勢のみんな。
「ありがとう、みんな」
「ありがとうございます」
「レオ、大切にしろよ!」
「泣かすなよ!」
「「そんなの当たり前だ!」」
みんなの温かい言葉に幸せで嬉しくって、そこでも大泣きしてしまった。その涙を優しくレオさんは拭いてくれた。
「私、すごく幸せ」
「僕もだ。ティー踊ろうか」
「え、レオさん?」
いつの間にか生演奏が始まっていた。
レオさんに手を引かれて、定食屋の真ん中のスペースで手を取り合って踊る。
「はははっ、楽しいな!」
「うん、楽しい!」
店の外にまで仲間は溢れて、踊る、飲む、食べる。
その日、獣人街では音楽と楽しい声が上がり、定食屋は夜遅くまで明かりが消えなかった。
♢
その闇夜に紛れる様に馬車が一台。遠くでその楽しげな灯りを眺める様に、止まっていたことに誰も気が付かなかった。
♢
たくさん笑い、飲んで、食べて帰りは明け方なった。
私よりも仲間にたくさん飲まされた、レオさんはベッドに倒れ込んだ。
「ふぅ、酔っ払った」
「レオさん、お水」
「ありがとう、ティーも結構お酒飲まされてたろ」
うんと、酔って頬が赤いレオさんを見つめて頷く。
「ふふっ、私はレオさんほどでは無いわ」
「そうかな? ティーの頬が赤い」
手が伸びて来て、レオさんに頬に触れられて肉球の冷たさに「んっ……」と、声が漏れる。
「レオさんの肉球、冷たくて気持ちいい。もっと撫でて……」
「ティー気持ちいいの? とろんとした瞳をしてる。可愛い」
「それは、レオさんもだよ」
幸せを噛み締めてキスをした。
どうしたの? と聞いても、後でねと教えてくれない。
そのにこやかの原因は夕飯の後にわかる。レオさんは食卓に書類を広げた。
「ティー、これに名前を書いて、後母印もね」
「レオさん。ここに『婚約の誓いの書』と、書いてありますけど」
「そうだよ。両親への報告には半年あるからね。先に婚約だけ済ませよう。実は指輪も用意したんだ」
シャツの胸ポケットからお揃いのシルバー指輪を出した。この指輪は雑貨屋のモコさんの手作りで、魔法がかかった指輪だとレオさんは言った。
「魔法の指輪なのですか?」
「そうだよ。僕に合わせてサイズが変わるんだ。だから、獣人と半獣の時に指輪を取らなくていい、ずーっとティーと同じ指輪を付けることができるんだ」
レオさんと同じ指輪。
「ティー、左手を出して」
「はい」
左手を前に出すと、レオさんは薬指にシルバーの婚約指輪をはめてくれた。
次に僕にも付けてと、レオさんにつけている途中で、嬉しくって込み上げて来た涙が溢れた。
「嬉しい、レオさん」
「僕も嬉しいよティー。君を抱きしめさせて」
立ち上がって、手を広げたレオさんの胸に「レオさん、大好き!」と飛び込んだ私を、レオさんは優しく受け止めてくれた。
「僕だって大好きだよ。ティー、一緒に幸せになろうね」
「はい、私がレオさんを幸せにします!」
「言ったね、僕だってティーを幸せにするんだからな」
すりすりと鼻を振り合わせて、誓いのキスをした。
♢
「「レオ、ティーさん婚約おめでとう!」」
婚約の書類も無事に受理された。
レオさんの仲間は婚約の祝いパーティーを王都の獣人街、ミヤさんの定食屋さんで開いてくれた。
たくさんの料理、祝ってくれる大勢のみんな。
「ありがとう、みんな」
「ありがとうございます」
「レオ、大切にしろよ!」
「泣かすなよ!」
「「そんなの当たり前だ!」」
みんなの温かい言葉に幸せで嬉しくって、そこでも大泣きしてしまった。その涙を優しくレオさんは拭いてくれた。
「私、すごく幸せ」
「僕もだ。ティー踊ろうか」
「え、レオさん?」
いつの間にか生演奏が始まっていた。
レオさんに手を引かれて、定食屋の真ん中のスペースで手を取り合って踊る。
「はははっ、楽しいな!」
「うん、楽しい!」
店の外にまで仲間は溢れて、踊る、飲む、食べる。
その日、獣人街では音楽と楽しい声が上がり、定食屋は夜遅くまで明かりが消えなかった。
♢
その闇夜に紛れる様に馬車が一台。遠くでその楽しげな灯りを眺める様に、止まっていたことに誰も気が付かなかった。
♢
たくさん笑い、飲んで、食べて帰りは明け方なった。
私よりも仲間にたくさん飲まされた、レオさんはベッドに倒れ込んだ。
「ふぅ、酔っ払った」
「レオさん、お水」
「ありがとう、ティーも結構お酒飲まされてたろ」
うんと、酔って頬が赤いレオさんを見つめて頷く。
「ふふっ、私はレオさんほどでは無いわ」
「そうかな? ティーの頬が赤い」
手が伸びて来て、レオさんに頬に触れられて肉球の冷たさに「んっ……」と、声が漏れる。
「レオさんの肉球、冷たくて気持ちいい。もっと撫でて……」
「ティー気持ちいいの? とろんとした瞳をしてる。可愛い」
「それは、レオさんもだよ」
幸せを噛み締めてキスをした。
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