「悪役令嬢は愛おしきモフモフ♡へ押しかけたい‼︎」(完結)

深月カナメ

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「おチビ、ちょっと出てくる」

 そう言った彼は獣人の姿ではなく。耳もいつも揺れているしっぽもなく。
 金髪美形男子になり、引き締まった上半身の筋肉が丸見えの格好で、クローゼットを開けていた。

 髪も濡れているから、あの猫足のお風呂も入ったんだ。クローゼット前で着替え中の彼が、ベッドに近付き手を出した。

「おチビが、いま着てるシャツを俺にくれ」

「私が着てる、シャツ?」

「そっ、ちょうだい」

 クローゼットの中にたくさんあるのに? と思ったけど、脱いで渡すとそのシャツをばざばさと振った。

 嘘! 

 わたしが昨日1日着ていてついた、数々のシワが一瞬で消えた。

 マジックだ、彼はマジシャンだったの?

「見過ぎだよ、おチビ」

 と、わたしの着ていたシャツを着なから「クック」と喉で笑い。持ってきた新しいシャツをわたしに手渡した。

「ありがとう……?」
 
 新しいこっちを着ればいいのに、と彼の行動を不思議に思っていた。
 そんなわたしを見て口元を緩ませた。

「で、おチビはいつまでその格好でいるんだ? 俺は別にそのままでもいいけど」

「その格好?」

 言われて見た、わたしの姿……

「あにゃっ!」

「はははっ」

 彼に笑われながら新しいシャツを慌てて着た。下着と、ぷにぷにお腹が丸見えだった。

「みちゃだめ!」

「すまん、もう見た後だ」

「⁉︎」

 うわぁ、恥ずかしい。
 
「ははっ、慌てて着るからボタン、掛け違えてるぞ」

「ほんとうだ、ありがとう」

「ははっ、そうだ、おチビ。風呂入りたかったら遠慮なく使っていいから」

 お風呂! あの猫足のお風呂に入っていいの!

「ぜひ、後で使わせてもらいます」

「うん、それと、浴室の置いてある水色の入れ物から、白い粒を一つお湯に入れると泡風呂になって、楽しいぞ」

「泡風呂⁉︎」

「そう、試してみるといい」

「はい、試します!」

   彼は準備が終わり出かけるのか、洞窟に出る扉の前に移動した。

「腹が減ったら、冷蔵庫に切った果物が入ってるから、好きに食べて。それと、俺が帰るまでこの扉を開けるなよ」

「わかりました。虎くん、いってらっしゃい」

 奥の部屋から顔を出して言うと、玄関先でこっちを向き、私に手招きした。

「ちょっと、来て」

「なんですか?」

 何だろうと近づくと目の前で屈んた。
 彼の頬が、ぷにっとわたしの頬にくっつき耳元で「このシャツ、どこもかしこも、おチビの匂いがするよ。まっ俺にしかわからないけどね」

 そう言って、今度は鼻と鼻を、ぷにっとくっつけた。

「みやぁ~!」

「ふふっ、じゃーいってくるね」

「い、い、いってらっしゃい」

 楽しそうに笑い、彼は出かけて行った。

「は、はぁ……びっくりした」

 わたしの匂いがするだって。
 このシャツだってあなたの匂い付きだよ……いま、互いの香りに包まれるってことだ。

「……あわわっ、恥ずかしい」

 香り、だなんて。
 もう、スケベ。


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