「悪役令嬢は愛おしきモフモフ♡へ押しかけたい‼︎」(完結)

深月カナメ

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「「マークレ、おチビを離せ!」」

 獣人化した彼はわたしとマークレ殿下を引き離し、騎士に向けて殿下を投げ飛ばした。

「ぐっ!」

「マークレ殿下、大丈夫ですか?」
 
 投げ飛ばされて、はぁ、はぁと息をあげて、マークレ殿下は騎士たちに向けて叫んだ。

「次期、国王となる僕を投げ飛ばすなど不敬だ! 奴を捕らえよ、僕の手で自ら終身刑にしてやる!」

 騎士達は命令通りに剣を構えた、彼とマークレ殿下が睨む合う。


「「ガルルル! 貴様こそ俺の番に何をした! 恐怖に満ちた顔をしている、許さない!」」


 ガキィィーーンと、彼の爪と騎士の剣がかち合う音が静かな森に響く、騎士の剣を受けて彼の体に傷が付き血が流れる。

 さすがは国の騎士だ、彼がおされている。
 だけど、彼も負けずに爪を振るう。騎士が彼につかまれて投げ飛ばされた。

 このままだと、どちらかが、わたしのために大怪我をしてしまう。 

(そんなの、やだ、やだ!) 

「何をしている! 早く、ルケーイをやれ!」

「マークレ、貴様!」


「「「やめて!」」」


 わたしは走り騎士と彼の間に立ち塞がった。

「おチビ!」

「やめてください、マークレ殿下! わたしのルー兄を気付けないで!」
 
 わたしが出て来るのを待っていたのか、マークレ殿下がニヤリと笑った。

 本当に嫌な人だ。

「カルノ、交渉かい? 君が僕についてくると言うのなら考えてもいいぞ」

 頷き、マークレ殿下の元に行こうとすると、彼が手を引きわたしを胸に隠した。

「だめだ、おチビ。奴の元に行くな、人形の様な扱いを受けるぞ!」

「そんなの、どうでもいい。ルー兄が生きてさえいれば……好き、大好き。あなたがこの世からいなくなってしまって、わたしがどれだけ悲しんだのか……」

 これを見上げて、ぽたぽた涙が溢れた。初めお会いした時に一目惚れをしたの。

 その彼がある日、消えてしまった。

(いゃあ、ぁぁぁ! ルー兄……)

 泣いても、どんなに泣いてもルー兄はいない。


 それから時が経ち、わたしは婚約者候補としてマークレ殿下と会い、前世の記憶が蘇った。わたしは殿下が嫌いで、獣人のルイさんのお嫁さんになりたくて、ここに会いに来た。

 その彼が、前世でも今世でも愛しくてたまらない人だった。もう二度と失いたくない、怪我をしてほしくない。生きていて欲しい。

「やめて、ルー兄。マークレ殿下は一度、ルー兄を毒で殺そうとしたわ。今度も何をするかわからない」

「はぁ、毒だと? マークレは俺に毒を飲ませたのか?」

 彼の瞳が驚きで開かれて、体がカタカタ怒りで震えていく。

「マークレそれは本当か!」

「はははっ、今頃気付いたの? 案外鈍感なんだね。兄さんは熱で倒れたんじゃない、僕が盛った毒によって高熱を出したんだ! どうしも、カルノを兄さんに渡したくなかった。この手にカルノを入れたかった」

(えっ、わたしのせい?)


「「貴様はどこまで落ちれば気が済むんだ!」」





 森の中で睨み合いが続く。わたしの涙は枯れる事がなく、いまも流れ続けていた。

 その森に別の足音と馬の蹄の音が響いた。


「マークレを捉えよ」


 そして、凛とした低い声が響く。騎士達は現れた人物に逆らわずマークレ殿下を捕まえた。

 馬に乗って現れた人物ーーあの方は国王陛下だわ。騎士に捕まったマークレ殿下は声を上げる。

「父上! これは何の真似ですか? 僕は婚約者を迎えに来ただけです」

 そう言ったマークレ殿下を冷ややかに見て。

「馬鹿なことを言うでない。兄のルケーイに毒を盛ったことを聞いた後だ。弁解の余地無し……マークレーーお前には失望したよ。連れて帰り牢屋にぶち込め!」

「かしこまりました!」

「嫌だ、父上! カルノ助けて!」

 彼の腕の中のわたしにまで、マークレ殿下は助けを求めた。

 わたしは。

「今日のことは許せても。あなたがルー兄に毒を盛ったことは許せません」

「カルノ!」

 騎士は泣き叫ぶマークレ殿下を連れて森を去っていった。

「魔導師よ、ルケーイにヒールをかけよ!」

「はっ!」

 魔導師が彼の傷を治すのだけど。なぜが、彼は頑なに私を離そうとはしなかった。

「ルー兄?」

「おチビには後で話がある」

 ぶんぶんと尻尾を揺らして、怒った様子。彼の傷が全て治り。国王陛下は彼に頭を下げた。

「ルケーイ、すまなかったな」

「頭をお上げください、父上。それよりマークレをどうされるのですか? この国の後継問題もです」

「それは心配要らぬ、私の側室に5歳となる子がーーそれも男の子いるんじゃ。危ないマークレと妻には秘密にしておるがな。マークレは廃嫡し、妻とは離縁する。その子と側室を王妃に迎えてしっかりとした教育を受けさせる……隠居はもう少し後になるがな」

「そうですか……俺にもう1人弟がいるのですね、よかった」

また、会おうルケーイと国王隷下は帰られた。

「俺たちも戻ろう」

わたしはルー兄に手を引かれて、奥の部屋に向かっていた。
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