7 / 30
七
しおりを挟む
「祈りを終えるとその聖女は城から馬車に乗り去っていった。跡を追おうとしたが、肝心な時に傷が開き動けなかったんだ」
と、腹をさする彼に傷を治すだけで、瘴気を払う力が残っていなかった。そして私を闇雲に探して道端で力尽きた。私があなたを見つけられなかったら、どうする気だったのだろう。
「もし、私が見つからなかったらどうしての?」
その問いに、彼はあっけらかんと笑って答えた。
「いやぁ俺はついてる。こうして聖女に会えて運がよかった」
「運が良かったって……」
「だってそうだろう? 俺の傷が治って聖女には会えた……いやぁヒーラギが人々を思いやれる聖女でよかったよ」
「私が人々を思いやれる聖女? 王城から役目を放り出して逃げできたのに?」
「役目を放りだしてか……クックク、それは置いといて。お前、ここに来るまでゆっくり移動しているだろ?」
(私がゆっくり移動していた? 彼はそれまで気付いたの)
「た、たまたまよ。たまたま移動手段がなかっただけよ」
「嘘だな、魔力を持つ俺にはわかる。倒れて傷で動けなくなった俺は温かな魔力を感じた。土地の浄化と作物の実りの願う、温かな魔力が移動してるってな」
温かな魔力? そんな大したものじゃない。
「私は偽善者よ。自分が悪者になりたくないの、私が祈りを止めたせいで、この土地が枯れて欲しくないの。王族、上級貴族たちはどうなってもいいけど、悪者になりたくないじゃない」
「ケッ! その想い上がりが偽善者だヒーラギ。この国には何年も祈りを捧げ、癒し、怪我を治してきたお前ではなく、ポッとでの異世界人のアリカを次の聖女だと王族、聖職者、騎士団が決めたんだ。国民に何があったらヒーラギのせいではなく、そうした王族たちのせいた。聖女という肩書きがなくなったヒーラギは既に一市民だ。貴族だろうがなんだろうが王族に守られる立場だ、お前が一人で国民を心配して体を張らなくていいんだよ」
えっ。体を張らなくていいんだと言った彼の言葉が心に響く。私はずっと逃げたいと思っていた"でも、私がいま祈りをやめたら?"と思うだけで怖かった。
聖女でなくなった私は国王陛下、王妃、王子が決めた、聖女アリカに役目を任せていいんだ。
「私は自由になってもいいの?」
「いいんじゃね、なってもいいんじょねぇか? あっちにはあちらが決めた聖女がいる。その女性に任せて、ヒーラギは自由になればいい……まっ、俺の国は助けて欲しいけど」
私は彼の国に行って彼の国を助けたい。
「わかった、あなたの国に行くわ。その前にあなたの名前を教えて」
「あ、そういや俺の自己紹介してなかったな。俺はゴルバック国の第三王子ブラン・ゴルバックだ、ブランと呼んでくれ」
ゴルバック国の第三王子……王族。
「ブラン様、私の力がどれくらいお役に立てるかわかりませんが。よろしくお願いします」
スカートを持って、彼にカテーシーをした。
それを見たブランは口を尖らせて、もふもふな尻尾をブンブン振る。
「ヒーラギはかたっ苦しいな、ブランでいいよ。それも呼び捨てじゃないと俺は返事しねぇ。さて行くか」
「はい」
と、返事したのだけど"キュルルルル"と私のお腹が盛大に鳴った。
と、腹をさする彼に傷を治すだけで、瘴気を払う力が残っていなかった。そして私を闇雲に探して道端で力尽きた。私があなたを見つけられなかったら、どうする気だったのだろう。
「もし、私が見つからなかったらどうしての?」
その問いに、彼はあっけらかんと笑って答えた。
「いやぁ俺はついてる。こうして聖女に会えて運がよかった」
「運が良かったって……」
「だってそうだろう? 俺の傷が治って聖女には会えた……いやぁヒーラギが人々を思いやれる聖女でよかったよ」
「私が人々を思いやれる聖女? 王城から役目を放り出して逃げできたのに?」
「役目を放りだしてか……クックク、それは置いといて。お前、ここに来るまでゆっくり移動しているだろ?」
(私がゆっくり移動していた? 彼はそれまで気付いたの)
「た、たまたまよ。たまたま移動手段がなかっただけよ」
「嘘だな、魔力を持つ俺にはわかる。倒れて傷で動けなくなった俺は温かな魔力を感じた。土地の浄化と作物の実りの願う、温かな魔力が移動してるってな」
温かな魔力? そんな大したものじゃない。
「私は偽善者よ。自分が悪者になりたくないの、私が祈りを止めたせいで、この土地が枯れて欲しくないの。王族、上級貴族たちはどうなってもいいけど、悪者になりたくないじゃない」
「ケッ! その想い上がりが偽善者だヒーラギ。この国には何年も祈りを捧げ、癒し、怪我を治してきたお前ではなく、ポッとでの異世界人のアリカを次の聖女だと王族、聖職者、騎士団が決めたんだ。国民に何があったらヒーラギのせいではなく、そうした王族たちのせいた。聖女という肩書きがなくなったヒーラギは既に一市民だ。貴族だろうがなんだろうが王族に守られる立場だ、お前が一人で国民を心配して体を張らなくていいんだよ」
えっ。体を張らなくていいんだと言った彼の言葉が心に響く。私はずっと逃げたいと思っていた"でも、私がいま祈りをやめたら?"と思うだけで怖かった。
聖女でなくなった私は国王陛下、王妃、王子が決めた、聖女アリカに役目を任せていいんだ。
「私は自由になってもいいの?」
「いいんじゃね、なってもいいんじょねぇか? あっちにはあちらが決めた聖女がいる。その女性に任せて、ヒーラギは自由になればいい……まっ、俺の国は助けて欲しいけど」
私は彼の国に行って彼の国を助けたい。
「わかった、あなたの国に行くわ。その前にあなたの名前を教えて」
「あ、そういや俺の自己紹介してなかったな。俺はゴルバック国の第三王子ブラン・ゴルバックだ、ブランと呼んでくれ」
ゴルバック国の第三王子……王族。
「ブラン様、私の力がどれくらいお役に立てるかわかりませんが。よろしくお願いします」
スカートを持って、彼にカテーシーをした。
それを見たブランは口を尖らせて、もふもふな尻尾をブンブン振る。
「ヒーラギはかたっ苦しいな、ブランでいいよ。それも呼び捨てじゃないと俺は返事しねぇ。さて行くか」
「はい」
と、返事したのだけど"キュルルルル"と私のお腹が盛大に鳴った。
92
あなたにおすすめの小説
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。
ぽっちゃりおっさん
恋愛
公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。
しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。
屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。
【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。
差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。
そこでサラが取った決断は?
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
聖女の妹によって家を追い出された私が真の聖女でした
天宮有
恋愛
グーリサ伯爵家から聖女が選ばれることになり、長女の私エステルより妹ザリカの方が優秀だった。
聖女がザリカに決まり、私は家から追い出されてしまう。
その後、追い出された私の元に、他国の王子マグリスがやって来る。
マグリスの話を聞くと私が真の聖女で、これからザリカの力は消えていくようだ。
【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!
夏灯みかん
ファンタジー
生まれながらに強い魔力を持つ少女レイラは、聖女として大神殿の小部屋で、祈るだけの生活を送ってきた。
けれど王太子に「身元不明の孤児だから」と婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
「……え、もうお肉食べていいの? 白じゃない服着てもいいの?」
追放の道中で出会った冒険者のステファンと狼男ライガに拾われ、レイラは初めて外の世界で暮らし始める。
冒険者としての仕事、初めてのカフェでのお茶会。
隣国での生活の中で、レイラは少しずつ自分の居場所を作っていく。
一方、レイラが去った王国では魔物が発生し、大神殿の大司教は彼女を取り戻そうと動き出していた。
――私はなんなの? どこから来たの?
これは、救う存在として利用されてきた少女が、「自分のこれから」を選び直していく物語。
※スピンオフ外伝を連載中です
『悪食エルフと風魔法使いの辺境遺跡探索記』
肉も魔物も食べる“悪食エルフ”エドラヒルと、
老魔法使いオリヴァーの若き日の出会いと冒険を描いた物語です。
▼外伝はこちら
https://www.alphapolis.co.jp/novel/417802211/393035061
※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。
【2025.09.02 全体的にリライトしたものを、再度公開いたします。】
巻き込まれではなかった、その先で…
みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。
懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………??
❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。
❋主人公以外の他視点のお話もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。
❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。
〖完結〗聖女の力を隠して生きて来たのに、妹に利用されました。このまま利用されたくないので、家を出て楽しく暮らします。
藍川みいな
恋愛
公爵令嬢のサンドラは、生まれた時から王太子であるエヴァンの婚約者だった。
サンドラの母は、魔力が強いとされる小国の王族で、サンドラを生んですぐに亡くなった。
サンドラの父はその後再婚し、妹のアンナが生まれた。
魔力が強い事を前提に、エヴァンの婚約者になったサンドラだったが、6歳までほとんど魔力がなかった。
父親からは役立たずと言われ、婚約者には見た目が気味悪いと言われ続けていたある日、聖女の力が覚醒する。だが、婚約者を好きになれず、国の道具になりたくなかったサンドラは、力を隠して生きていた。
力を隠して8年が経ったある日、妹のアンナが聖女だという噂が流れた。 そして、エヴァンから婚約を破棄すると言われ……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
ストックを全部出してしまったので、次からは1日1話投稿になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる