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(なになになになに⁉︎)

 ふかふかオフトゥンの上で考えたけど王子の行動がわからない。王子はジャケットを脱ぎタイを外し、シャツのボタンを外した。

(にゃ?)

「ミタリア」

「ほへっ? で、で、殿下!」

「名前で呼べって言っても、聞かない奴だな」

 横に寝転がり猫の私を腕にそっと抱きしめた。近くに狼じゃない王子が優しげに私を見つめていた。

 ーー王子、これはだめだよ。

 でも、その時に王子の顔がしっかり見えた。王子のくたびれた面持ちと目の下にはクマができていた。

(王子……もしかして、疲れてる?)

 次の国王となるから学園に入るまでは、朝から晩まで執務室で書類確認が忙しい。それとも夜眠れていない。

 前世の私は会社に行くのが怖かった。机の上の書類の山、それすら終わらないのに次から次と、面倒な書類が来た。

(王子もそうなの?)

「なんだよ、俺に気にせず好きに寝てくれ……おわっ、なんだよミタリア?」

「目の周りのマッシャーじだにゃ」
 
 王子の顔に直に触れたから、緊張して変な言葉だ。でも、目の周りを爪を出さず肉球で、もにもに揉んだ。

「マッサージ? やめろ、そんなのいらない」

 ーーそう言われてもやめなかった。王子はきっと触ることはできても、触られることに慣れていないんだ。

「殿下は眠れたないのかにゃ? 目の下クマができてるにゃ」

「これは仕方がない。俺はまだ難しい文書とか執務になれない……だからって、どうしてお前に言っても仕方がない」

 そうだけど胸の中が痛い。私も経験したことがある自分では能力的にできない書類。でもそれをやらないと上司に呼ばれて「なんで出来ない」と責められた。私は会社に事務職で入社した……しかし働きは始めれば、それ以上のことを求められた。

 ーー出来なければみんなの前で罵られた。

(あの頃は出来るようにならないとって、必死に本を買って読んでいたなぁ)

「リチャード殿下、無理な時には人に頼るのですよ」

(私は出来なかった。人と話すこと話しかけることが苦手で、何も言えず、机の上で必死に仕事をこなしていた)

「ミタリア、俺は頼ることは出来ない。みんな俺に期待してる。俺の側近リルも不慣れな仕事に悪戦苦闘だ」

「頼ってもいいにゃ。国王陛下に聞くのが無理ならその近くにいる大人を頼るにゃ、王妃でもいいと思うにゃ」

 自分に出来なかったことを王子に言うなんて、私はなんて傲慢ーーだけど、それだといつかは疲れてしまう。

 隣に寝転ぶ王子の声が一段と低くなり、声は震えていた。

「母上か……母上は俺が生まれてからずっと療養中だ」

「生まれてから?」

「狼王族と犬族、隣国の姫で。母上は原種の血が濃く、獣化する俺を産み体を壊したと乳母から聞いている」

「えっ、獣化をする子を産むと体を壊すの? 私のお母様は元気だけど……あっ」

(この話は禁句だった!)

 でも……あれっ、ゲームではヒロインと王妃に会いに行く話がなかったかな。

 たしか、王妃には獣化する兄がいて毎月の検査、薬など周りの理不尽な言葉で苦労を見てきた。そして、自分の息子がそうなってしまったと気を病んでしまった。ゲームでは心を休めるために別荘で療養中の王妃に、2人で会いに行く話があった。

「何度か、母上の誕生日にプレゼントと会いたいと手紙を書いたけど、会えないと返ってきた」

「でも会いたいにゃ。殿下が会いたいのだったら辛抱せずに会いに行くにゃ。王妃も会いたいにゃ」

「そんなこと、なぜお前に分かる!」

(いきなり過ぎて、怒らせた?)

「で、殿下は毎年、肖像画描いてないかにゃ?」

「はぁ? なぜ、それをミタリアが知っている?」

(乙女ゲームでとは言えない……なんて言う?)

「えーっと、なんとな~く、カンにゃ。その肖像画が王妃の手に渡っているとかないかにゃ?」

(ゲームでは王妃の部屋に、子供の頃からの王子の絵が約15年分飾られていた、ちょっとそのスチルで引いた)

「そう、だといいな」

「確かめに行くにゃ、もしなかったら私が責任をとって、王子に尽くすにゃ」

(王子の肖像画があるの知ってるもの)

「へぇ、尽くしてくれるのか……ミタリア!」

(うにゃぁぁああぁあぁあ!)

 王子が私の脇に手を差し込み持ち上げて、もふもふの胸に顔を埋めた。エッチ、これはヘソ天に顔を乗っける以上。

エッチです。
アウトです。

「3日後、母上に会いに別荘へ行く、お前も来い!」

「……わかったにゃ」







 私の胸に顔を埋めた王子はそのあと寝落ちした。すーすーと私の胸元で寝息が聞こえる。

(くすぐったいよりもお腹のアザの部分がむずむずする)

 お風呂で擦っても薬を塗っても消えなかったアザ。いまそこがむずむずした。王子もさっきから時折、同じ所をぽりぽり寝ながらかいていた。

(王子もむず痒いにゃ)

 そんなことを思いながら、私も寝落ちした。
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