(完結)オフトゥン大好き黒猫令嬢と狼王子。王子は私を婚約者に選ばないでください! (手直しをしております)

深月カナメ

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二十六

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 チョコは――昔は平気に食べれけど、猫族の獣人となったいまでは中毒を引き起こす食べ物かもしれない。

 みんなの動きを止めるには、どうしたらいい?
 私の力では無理な話。

 ――でも止めたい。
 
『ミタリア・アンブレラ、王族の我が命ずる跪け』

 あ、王族だけが使える声がゲームの中であった。

 婚約破棄後に「ミタリア・アンブレラ私の足元に跪け」と王子に名を呼ばれた。一瞬だけ、体が動かないと言ったミタリアだけど、その効果はミタリアに効かず。逃げだそうとして側近リルに捕まる。

 そうだ、これを使えばみんなの動きを止めれる。ただし、国王陛下には効かない。多分、ゲームの中で効かなかった私にも効かないと思う。

(でも、この手段は王子の協力がないと成功しない)

 よし、善は急げだ。ダンス中にぐいっと王子に近寄った。より近づいたことで胸が王子の胸板にムニッとくっつく。

「おい! ミタリア? そんなにくっ付いてどうした?」

 ……あ、尻尾を揺らした、王子は嬉しい? 可愛い尻尾――って! ……ダメダメ、いまは集中しないと。

「あの、リチャード様にお願いがあるんです。訳を聞かずに、ここにいるみんなの動きを止められませんか?」

「……はぁ、動きを止める?」

 何を言い出したと言った表情、王子のこの反応は正しい。私はいきなりおかなしな事を言っている。

 だけど。

「舞踏会で支度された料理の中に、私たちが食べてはいけない食べ物が紛れています。それが何かいまは分からなくて、みんなが手をつける前に探さなくてはなりません」

「用意された料理の中に俺たちが口にしてはならない食べ物だと? 何故ミタリアはそう思うんだ? 料理はみな王城のコックたちが準備したものだ」

 そうだ、王城のコックたちがそんなことはしない。

 どう伝えたら? ……会場に微かに香る、甘い香り。

「リ、リチャード様、会場に漂う嗅ぎ慣れない、甘い香りがしたませんか?」

「嗅ぎなれない甘い香りだと?」

 すんすんと王子は匂いを嗅ぐ、微かに薫りを感じ取ったのか私を見た、どうやら知らない香りがしたようだ。

「ミタリアに言われないと気付かなかった。知らない甘い香りがしている……この香りの食べ物を食べてはならないのだな?」

 私はこくりと頷く。

「分かった、ここにいる者の動きを止める……使用するのは【狼吠】か……」

「狼吠(ロウホ)?」

 王子が説明してくれた『狼吠』とはーー王族だけ使用できる声。私たち獣人はその声の重圧に押されて、皆はガクッと膝を折り服従する。

「……しかし、狼吠をやるのはいいが。後で怒られる覚悟はあるのか。父上は睨み一つで俺もミタリアも動けなくなる」

 私は覚悟はあると王子に伝えた。その時――はっと、王子は壇上に視線をやった。

「ミタリア――父上がいまカーエン王子殿下に勧められていて、いまにも食べそうなアレは大丈夫なものか?」

 陛下が? 目線を送るとカーエン王子に勧められて、茶色い何かをを摘もうとしている姿が見えた。

 ーーあの見かけはチョコだ。

「ダメ、だと思います。いま私が獣化してお止めいたします。私が止めに走ったら、リチャード様は『狼吠』をお願いします」

「この場で獣化するのか……?」

「獣化した方が、早く動けるわ!」

「くっ、ミタリアの獣化を皆に見せたくはないが、父上が危ないのであれば……分かった」

「ありがとう、リチャード様」

 私は背伸びして王子の頬にスリッと頬を寄せた後、カチッと腕輪を外して王子に渡した。瞬時に姿が変わり、髪飾り、宝飾品、ドレスがコトッと床に落ちる。

 王子のパートナーの姿が消えて、みんなの視線が集まった王子の息を吸う音が聞こえた。

「【我、王族となる権限。この会場にいる者たちよ、俺の足元に跪け】」

 突然の王子の行いに陛下の手は止まった。カーエン王子と側近は王子の支配下でも【狼吠】は効いていないようだ。

 私は体と尻尾をまんまるにして、必死に走り、飛び、陛下が摘みいまにも口にしそうな四角い食べ物を、両手で挟み陛下から奪い取った。

「やった!」

 すぐにそれの匂いを嗅ぐと、それはまさしく、懐かしい甘い香りがした。
 
(やっぱり、チョコだ。それも高級なチョコの香り)

「君は何をしている?」

「黒猫ちゃん~!」

 突然の黒猫の襲撃に陛下は眉をひそめて、カーエン王子は私を見て、ニンマリ笑みを浮かべた。

(ひぃー、この対象的な2人の瞳が恐ろしい!)

「リ、リチャード様、リチャード様来て!」

 余りの怖さに王子を呼んだ途端に、ふわりと軍服の上着で包まれ抱き締められた。

「ミタリア……」

「リチャード、これはなんの真似だ! お前が考えた何かの余興か?」

 陛下の鋭い瞳が王子と私をいる。

「父上、これには訳があります。いま、ミタリアが手に持つ食べ物を口にしてはなりません。これは我ら獣人が口にすると毒になります」

「毒? なんだと?」

「はぁ? このチココが?」

 チココ……こっちではチョコとは呼ばないんだ。でもいいチョコの香り、少しくらい舐めてもいいかな? チョコ好きだったんだぁ。

 ペロッとしたい。

「ミタリア、舌をしまえ、それを舐めるな!」

「ペロッだって、可愛い」

 ひょぉ! カーエン王子が言うと何か怖い。

「リチャード、この珍しい人族の食べ物ーーチココに毒があるというのか?」

「そうかも、しれないとだけ伝えます。確証がないまま、僕の一段で舞踏会を止めてしまい、父上すみません。カーエン王子もお土産にと持ってきていただいた物にこのような事を申して、すみません。1度、調べて何事もなければ僕はどんな罰でも受けます」

「あ、私も受けますにゃ。何もなかったら王子よりも、私の罪を大きくしてくださいにゃあ!」

「すぐにこのチココを調べろ、すぐに結果を出せ! ふうっ、――皆のものに告げる、今日の舞踏会は中止とする。また、開催日が決まりしだい招待状を送る!」

 国王陛下の声で王子の『狼吠』は解除された。動けるようになった、貴族たちは土産にと準備されていた焼き菓子(王城でコックが作った)と、じゃがいも一袋とレシピが渡された。

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