名もなき青い花。

深月カナメ

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第2話 男の独り言

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 また同じ時間に会いに来た。
 笑顔で儂を迎える精霊。

 この子は何者かに守られている、結界がこの木には張り巡らされいる。

「今日は団子とお茶を持って来た、供えよう」

「ありがとう、うまあーい」

「おい、全部団子を食べるな!」

 この子に供えようと品物を出すと、一度はこの結界を張ったものの所にゆくのだろう?

 悪い物ではないか調べられてから、この子に渡されると、いったところだろうか?

 箱入り娘なのか?
 だったら、こんな所に1人置いて置くのか?

 人間に枝を折られているのに。

 それにあの格好はどうにかならんか、殆ど裸ではないか…見える奴には見えるんだぞ儂の様に。
 昨日供えた俺のローブはどうしたのだ?

 胸と腰の辺りに申し訳なく布を巻いただけだと…嫌、去年は裸に薄青の薄布一枚だっだな。

「精霊よ、なんでそんな格好だ…昨日供えただろう?」

「だってあの服着ると汚れちゃうもん、初めてのお供え物だから、わたしの宝物にした」

「だからって昨日も言ったが、目のやり場に困る」

 お前は気にしないかもしれないが、儂は気にするのだが?

「優しいあなたには見られても平気よ」

 クルッと儂の周りを回った時に、脇腹に昨日までない傷を見つけた…青い花の木を見ると折られた後があった。

「チィッ、また人間か…」

 儂は背負って来た箱から塗り薬を出した、この花の液と薬草を混ぜた簡単なものだ。この花が何に効くかはまだ研究中、いまわかるのは傷に効く、風邪薬になる事だけ、まあ、少ない花からそれだけ分かれば良い。

「精霊よ、こっちに来い」

「なに?」

 精霊に直に触れようとしたが、ビリビリと電気が体をめぐる、そうか…お触りは禁止か…傷薬も供えないとダメかな。

「傷薬を供える」

「傷薬?」

 精霊にではなく花の木の傷に薬を塗ると、精霊はくすぐったいのか悶えていた。

「やだ、そこはダメ…んんっ、あははは!」

 精霊が見える者から守られた木。
 見えない奴からも守って、もらいたいものだな。

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