名もなき青い花。

深月カナメ

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第3話

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わたしたちの付き合いも相当、長くなった。

「ねえ、この前慌てて帰ったけど何があったの、大丈夫だった?」

「ああ、あれか俺の仲間をこの国で見つけて、人間から助けたんだ」

「そう、で?……助かったの?」

彼は目を細めて頷くと笑った。かなり前になるけど『お前は何者だ』と

『…どうして、あなたは歳をとらないの?』

思いっきり聞いちゃった。
彼ってわたしと同じで、見た目が変わらないのだもの。

人間の人だったら…もうとっくのとうに居なくなっている。彼がいない時に花見に来る、あの人も、またあの人もいつのまにか歳をとり来なくなる。

それは仕方がないと思っても。

少し寂しくて、胸がチクチクするって言ったら、彼は笑って「ああそうか…精霊に言うの忘れてた」と、自分は人間ではなく亜人種族のエルフだと彼は言ってた。

エルフ?

『まあ、人間よりも寿命がかなり長い…だから、急にいなくなるなんて当分ないからな、安心しろ!』

と、彼は笑っていた。

    ♢♢♢

彼が花を拾い終えるまで大人しく待ち、終わったら話しかける。

「ねえ、ねえ。ところで助けた人って…エルフなの?」

「ああ、まだ子供でな。いまは俺が保護しているよ」

「そっか、その子達助かってよかったね」

嬉しくなり、喜び飛び回った。

「あーっ。こら、精霊よ花を散らすな。まだ、咲いたばかりなのに花が散って無くなるぞ」

って言うけど、その舞い落ちた花びらを、あなたは持って帰れるじゃない。

ダメなの?

両手を上げて「もう、飛ぶな」と言いながらも、やっぱりカゴに花を拾い出した。

「全く落ちた物は全て拾うが、今日はもう絶対に花を落とすな!」

「はーい、わかったから。そう、怒らないの」

「お前は……でも、ありがとう」

「えへへっ、どういたしまして」

この人が自分の仲間を大事にしてるのも知ってる。それだけ長い時間をこの人と過ごしたんだもの。

「精霊よ。今日は花見酒とツマミを持って来た、供える」

「まあ、昼間っからお酒!?…好きだけど」

「明日は忙しくてな、夜にでも来ようと思ったが…無理だ…すまん」

わたしに頭を下げて謝らなくてもいいのに。まったく、あなたは優しいな。

「じゃあ、いまから飲もう」

「ああ、飲もう!」

その日は2人で昼間酒を楽しんだ…やはり彼は忙しいのだろう、次の日から来てすぐに、供え物をすると帰ってしまう日々が続いた。

「はぁ、最近ここでゆっくり出来ないな」

残念そうに言うけど見るからに疲れているよ。休めばいいのにここは心を鬼にして。

「あのね。別に無理しなくてもいいんだよ、あなたもゆっくり休まないと…あと少しで終わりだしお供え物も沢山もらったから、来なくてもいいよ」

もう少しで花の季節も終わる、私も眠りにつくからと彼に言った。

「そんなことを言うな!」

彼は声を荒げて首を横に振り。

「最後まで来る、この時期を逃したら来年まで会えないんだ…お前が眠った後にゆっくりするから、そんな悲しいこと言うなよ」

その言葉に喜び体が震えた。嬉しい、なんて嬉しいことを言うの。もう、あなたに休めなんて言えないじゃない。


「待ってる…ここで待ってるから会いに来て……えへへっ、嬉しいな」


彼は本当に花が散りわたしが眠るまで、毎日会いに来てくれた。

「おやすみ、また来年」

「ああ、ゆっくり休め……来年に会おう」

うん、待っててね。
来年はもっと、もーっと綺麗に花を咲かせるからね。

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