竜人さまに狂愛される悪役令嬢には王子なんか必要ありません!

深月カナメ

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第三章 獣人の国に咲いた魔女の毒花編

第9話 セルト様とルル

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自分の知らない事ばかりで困惑するフォルテ様。ギリっと音が聞こえるくらいに唇噛む。

「フォルテ王子…今回色々知れたんだ、これからはあなたが改善をすれば良い」

「そうだが…シーラン王子」

フォルテ様にこの事が大きすぎて心配なのだろう。シーラン様はフォルテ様の肩に手を置き。

「大丈夫だ俺達もいるだろう。いま現状に起こってる物事を一緒に力を合わせて解決をしていこう」

「そうです1人で解決をするのではなく、私達にも頼ってください、みんなで力を合わせましょう」

ヘルさんは胸に手を当てフォルテ様の前に跪き頭を下げた。

「ありがとうみんな…俺もこの問題を解決したい力を越してくれ」

「ああ、先ずは屋敷の中を確認してしまおう」

屋敷の中を見てから、アル様に魔女の毒花を届けなくてはいけない。

それに、赤い花についての報告もしたほうがいい。


「行きましょう」


タサさんにみんなでと言っても、待ちきれないのか足早に屋敷へと向かって行く、その後を追って屋敷のエントランスへと向かった。

タサさんは「ナリーっ」と叫ぶとエントランスを抜けて奥に行ってしまう。

後を追いかけようとエントランスに入ってすぐに、トクンと痛いくらいに鼓動が鳴り胸を押さえた。

エントランスの上にあるステンドグラスに光が差し込み、前の壁に写る…男の人と女の人?

それを見た途端にトクンと鼓動が鳴る
 
何故だかはわからないけど、私はここを知っている。


「シャルロット嬢?」

「フォルテ王子!?」

ヘルさんの声で横を向くと、フォルテ様も同じ様にステンドグラスの光を見て胸を押さえ困惑の表情を浮かべた。


何が起きているの?


一瞬、視界が揺れ真横のフォルテ様が違う人物に見えた。

いまのフォルテ様とは違う、衣装に線の細いライオンの獣人の方。

名前も知らない獣人の人なのに、勝手に口が動いた。

「…セルト様」

「…ルル?」

振り向いたフォルテ様も私を見て違う名前を呼んだ。

セルト様、ルル?

誰だか分からない。

でも、フォルテ様の口から出たルルという名前を聞いた時に、体全体に鳥肌が立った。

私では無い、誰かの涙が流れた。

 
ぎゅっと胸を掴まれる感覚が体の中を突き抜ける。


「ひやぁぁ、胸が、胸が潰れそうなほどに痛い…シーラン様!」

「シャルロット嬢」

倒れそうになり手を伸ばすと、体をシーラン様は支えてくれた、心に浮かぶ後悔、懺悔…悲しみ、嘆き…。

誰かが嘆き、悲しみに泣いている。

全部私が悪いのと、この毒の花を作ってしまった自分への後悔。

愛しいあなたを死に追いやってしまった懺悔。


「会いたかった、ルル、こっちを向いて」

「ごめんなさいセルト様…あなたに顔向けなんて出来ません」

「違う、違うんだルル泣かないで…元々この花は毒草ではなかった、ある日突然に変わったのだ」


普通の花がある日突然、毒花に変わったという事?

私の体は急に動きシーラン様の腕の中から離れて、フォルテ様の元に走った。
 
彼の手を掴み見上げる。

「どういう事ですの、セルト様?」

「俺にもわからない、悲しまないでルル。俺が死んだのはルルのせいじゃ無い…それだけは本当だ」

「…セルト様が死んだのは、私のせいじゃ無いの?」

「ああ、そうだ」


その言葉に心が軽くなると同時に恐怖が体を襲う。

「私が作った花が毒花では無かったら、一体誰がこんなことをしたの?私でさえ気が付かずに花が魔女の毒花に変わった…」

「わからない…俺が言えるのは一刻もこの採取をした毒花をアルボルに届けることだ、あいつならなんとか出来るかもしれぬ」

と、アル様の名前が出た。


このセルト様とルルさんはアル様を知っている。アル様が毒花の研究をしている事も?

「しかし、あの赤い花は俺もルルも知らない花だ…迂闊に触ってはいけない様な気がする」

「そうね」

この人達は勝手に私とフォルテ様を動かして、体に触れて2人で話、2人で納得をしている。

側で見ていたシーラン様は黙ってはおれずに声を上げた。

「いい加減にしろ!お前達は誰なんだ俺のシャルロット嬢に触るな!」
 
「そうですフォルテ王子を返してください!」

シーラン様とヘルさんは勝手にことを進めていく2人を止めた。

「おお、この前に会った竜の子では無いか」

「すまない…この体はお前の主人なのだな」

いま返すと2人はまた会おうといい、見つめあうと、ぎゅっとお互いを抱きしめあった。

え、ええ!?

それは私とフォルテ様の体だ、あの2人には良かったかもしれないけど…始めて会った時に出会い頭でぶつかったことはあったけど…。

流石にこれは

「ごめんなさい、フォルテ様」

「いや、シャルロットお嬢さん」

勝手に動いていた体が戻って来た、しかもあのまま抱き合った状態でだ、私とフォルテ様はなんだか、いたたまれない気持ちになった。
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