竜人さまに狂愛される悪役令嬢には王子なんか必要ありません!

深月カナメ

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第三章 獣人の国に咲いた魔女の毒花編

第33話

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 町はアル様や竜人王様達が元に戻した。後は青花の木を持って帰るだけ。
「みんなは青桜の木の所に、先に行って待っていてください」
 アル様は乗って来たホウキを片手に持って言う。
「わかったわ、先に行っているわね」
 エシャロットさんとラーロさんはホウキにまたがり飛び上がり、竜人王様は空を飛ぶ。
 わたし達は集まり、コッホ騎士団長の隊員の人にお城まで【転送】をしてもらう事になった。

 みんなが城へ行ったのを確認すると「【花の覚醒】」と唱えて、コツンとホウキを地面に当てた。
 足元に大きな緑色の魔法陣が現れて、真っ白な花ビラが舞う。その花びらはいまだに眠る町の人に降り注ぎ消えていく。
「これで良し、直に人々は目を覚ますでしょう」
 アル様はホウキにまたがると、空高く飛び上がり、みんなと合流するべく城へと向かった。

 魔法が消えた後に人々は徐々に目を覚ました。
 あの男に操られた記憶に、町が壊された記憶などを忘れたかなように、人々は普段の生活に戻っていった。

 アル様も合流して古城の庭園にみんな集まった。

「お待たせ」
「アルボル、大丈夫か?」

 お師匠さんが着いたばかりのアル様はに声をかけた。お師匠さんの近くに行き大丈夫だと言って入るけど、珍しく肩で息をして額にはうっすらと汗が見えた。

「青桜の木の移し替えが終わったら、私は癒やしの木の下で寝ますよ」
「我もだ! しばらく眠る」

 竜人王様頷き、その後わたしとシーラン様を見た。

「後、眠るのはシーラン君とシャルちゃんもそうなるかな? いまから全魔力を使ってもらうからね」

「わたし⁉︎」
「俺⁉︎」

 全魔力を使うとアル様が言った。

「シーラン君にはこの周りに少し厚めの障壁を張ってもらうよ、そして、シャルちゃんは青花の木をもう少し育ててもらおうかな?」

 その後に…頼んだよと、優しく微笑んでアル様は私とシーラン様に言った。

  ♢♢

 そのまま休む事なく、シーラン様は青桜の木の周りにありったけの魔力をを使い【障壁】を張った。
 さっきほど、あの男とやりあった後でシーラン様は障壁を張った後に、魔力を使い切ったのかふらつく。   

「シーラン様!」

 その場に走り彼を支えた。

「悪い、シャルロット嬢が魔力を使い切った…すまない、君を支える事が出来ない…」

 支えていた体から力が抜けて、シーラン様はチヒドラちゃんなり眠った。
「シャルロットちゃん、シーランは俺が預かるよ」
 リズ様に渡して私は青桜の木の前に立つ。
 切り株から芽が出た青桜の木。そこにいまから魔力を注ごうとした時に、障壁の周りに人影か見えた。

 シーラン様の魔力を感じたのかどうかはわからないけど、人間の国の王子達が騎士や魔導士を連れて現れた。

 外から大きな声を出している姿は見えるけど、厚めに張られた障壁の中の私達には声が届かない。何やら外でやっている姿だけが見えるだけだ。

 それにイライラしたのか、竜人王様は声を上げた。

「小賢しい、人間め…」

 厚めにねとアル様に言われて、残りの魔力を使って張った障壁だ、外の騎士達や魔導士達でも、おいそれと簡単には壊せないだろう。

 剣や魔法で攻撃するもびくともしな障壁。しかし、竜人王様のイライラは頂点に達した。

「グッワァァ!」

「ロワ、落ち着いて」
「落ち着けぬ。お主に…アルボルに頼まれて町の連中はやったが、我は大の人間嫌いなんだぁー!」

 竜人王様が怒りの風をまとってしまう、ここで古竜魔法を出されては障壁の中にいる自分達も危ない!
 リズ様、リオさん、コッホ騎士団長達が竜人王様をなだめようと周りを囲む。
 それに続いてラーロさんも周りを囲んだ。
「竜人王様落ち着いてください!」
「そうです、落ち着いてください」

「ええい、うるさい!」

 いくら周りがなだめようとしても、一向に怒りが治らない竜人王様。ラーロさんはどうするかをアル様に聞いた。

「どうします? アル様」
「これは、仕方ないか…」

 このままでは障壁を破ってしまうと、アル様は竜人王様に手をかざした。

「シーラン君が頑張って張った障壁を壊されては困る。ごめんね「【スリープ】」いま、君には寝てもらうよ」

「くっ、アルボル…」

 ドサっと大きな音を立て、地に落ちて眠る竜人王様はなんと、硬い鱗で全身を守る、子竜の姿になっていた。

「シーラン様みたいにチビドラちゃんになるんじゃなくて、竜人王様は子竜の姿になったわ」
「ああ、竜の力が強いと子竜になるんだな」
「ええ、そうみたいですね」
 
 眠るチビドラちゃんを抱っこしながら、リズ様とリオさんは子竜になった竜人王様を真剣に見ていた。

 その横ではアル様ホッとした表情だった。

「良かった【スリープ】が効いたみたいだね…普段のロワだと眠らないな…人間の町の為にありがとう」

 アル様は眠った竜人王様お礼を言った。

「ここじゃ硬くて寝にくいだろうから、誰か他の所にロワを移動をしてあげて」

「はい、かしこまりました」

 アル様の命令を受けて、チビドラちゃんの何倍もの大きさの子竜となった竜人王様を、コッホ騎士団長達が抱えて運び柔らかい草の上に寝かされていた。

「さあ、シャルちゃんの番だ。この木をもう少し大きくしてくれるかな? この木に宿る精霊を復活させて欲しい」

 木に宿る精霊を復活させる? 大変な役が回って来たと、気合を入れた。

「はい、頑張ります」

 とは言ったものの。
 障壁の外で騒いでいる人達が…とても、気になる。
 多分あれはこの国の第1王子に、第2王子だろう。2人とも遠目だけど見た覚えがあった。
 ……いいの? 外で騒ぐ人達は無視で行くの?

「シャルちゃん?」 
「はい!」

 誰も気にしていないなら私も集中することにした、お腹から声を出して木の蘇りを願った。

「青桜の木よ育て、青桜の木よ育って!」

 私の中に残るありったけの魔力を注いだ。
 切り株から生えた芽が私の魔力に反応してゆらゆらと揺れ始めた。

 良し、もう1度だ。

「青桜の木よ育って!」

 メキメキと音を立てて新芽が成長をし始めた。グングンと育ち1メートル以上程育つ。その育った青桜の木からふわりと光の玉が現れる。

 その光はわたしを見て『おはよう?』目覚めの挨拶をしてくれた。

「お、おはようございます」

『ふふ、あなたが私を起こしたの?』

 その光の中からは20センタくらいの小さな女の子がふわふわと飛び現れた。 
 その子はキョロキョロと周りを見て首を傾げた。

『あれ? 私はどうしてここにいるの?』

 状況が掴めずふわふわと浮く女の子。

「そ、その声は…青桜の木の精霊の声か⁉︎」

 女の子の声を聞きアル様の師匠さんが声を上げた。慌てて前に来ようとする師匠さん。彼は体が悪いみたいで、エシャロットさんが側で支えていた。

 彼の声を聞いた女の子はじっと師匠さんを見て腕を組む。

『んん、ん? その声はなぜだか聞き覚えがあるわ…懐かしい声』

「何が懐かしいだ! 1人て勝手に最後を決めて咲いて消えていった…癖に、笑顔だけを残してゆくなよ精霊!」

 師匠さんの声が段々と涙声になっていく…感極まった師匠さんと驚く精霊さん…。

 精霊さんが何かを言っているけど…ふわぁっ…もっと2人を見ていたいのだけど…目が閉じていく、体の力が抜ける。

「あっ…」

 倒れる…

「…シャルちゃん! 魔力が切れたんだね? ご苦労様。後は任せてゆっくりと眠ってね」

 近くにアル様の声を聞いて私は眠りに落ちていった。

♢♢

 目が覚めるとわたしは癒やしの木の下に寝かされていた。
 側にはチビドラちゃんから戻ったシーラン様がいて、その隣にはリズ様、リオさん、竜人王様にアル様⁉︎ 
 きっちり星柄のパジャマで枕を抱えて眠るアル様に驚かされて…少しだけ笑ってしまった。

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