竜人さまに狂愛される悪役令嬢には王子なんか必要ありません!

深月カナメ

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第三章 獣人の国に咲いた魔女の毒花編

第37話

 お師匠様が昔に作った青桜の特効薬が効いて、毒に侵された人達は状態が安定しているとアル様はおっしゃっていた。

 今日も湖の青桜の木の前で、植物を育てる魔法を一通り行ない青桜の木の近くに座り、日向ぼっこしていた。そこに近づく影と足音を聞いて見上げると、シーラン様が来ていた。
「シーラン様も休憩ですか?」
「ああ、十分ほど休憩をもらった」
 と言い、わたしの横に腰を下ろすと青桜の木を見上げた。
「青桜の木は順調そうに育っているな。それと同時にアオさんも大きくなった」
 いま湖近くで薬草を摘む、お師匠様のお手伝いをするアオさん。シーラン様の言う通り、今では百五十センチくらいの身長になっている。
 青龍様のご結婚から一週間、毎日みんなで魔法協会から湖に通い青桜を育ている。青桜は少しずつ変化を遂げて、新しく伸びた枝には蕾も付け始めてきた。
 後何日かここに通い、育てれば、青桜の花は開花するかもしれない。
(青桜の花か……)
 前世、春頃に桜の花は見たことがあるけれど、初めて見る青桜の花。
「シーラン様…もう少し青桜の蕾が膨らめば、花が咲くかもしれません」
「そうなのか? それは楽しみだな。だからと言って、シャルロット嬢はみんなの為にと、張り切りすぎて無理をしないように!」
「はい、わかっています」
(……無理をしないようにか)
 先程『魔吸根』探しに出ている、アル様にミニ水晶玉で報告を入れた時にも言われた。その後、アル様は楽しい提案もしてくれた。
「ねぇ、シーラン様。先程アル様に報告を入れた時に、青桜の花が咲いたら、回収する前にみんなでここに集まって「お花見がしたいね」と、仰ってました」
「青桜の木の下でお花見か…いいな。アル様達の球根集めも順調だと聞いているから楽しみだな」
「ええっ、楽しみです。……では、もう一踏ん張りしちゃおうかなぁ」
 背伸びをしてわたしが立ち上がると、近くで休憩をしていたリズ様がシーラン様を呼ぶ声がした。それに返事を返してシーラン様も立ち上がる。
「シャルロット嬢。俺も一踏ん張り訓練を頑張ってくるよ」
「頑張ってください、シーラン様」
「ああっ!」
 訓練に向かうシーラン様の背を見送り、わたしは青桜の木を見上げた。
(さてと、もう少しがんばるぞ!)

  ♢

「青桜の木よ。伸びろ!」
 魔力を残しつつ、イメージを膨らませて青桜の木を育てた。葉が揺れ木が揺れてまた少し大きくなる青桜。
 今日は水魔法のイメージ練習も兼ねて、青桜の木の周りに霧雨を降らせた。
(ふうっ…ウォーターのイメージもマシになってきた? 一度ラーロさんに見てもらおうかな?)
 青桜の木の周りに降らせた魔法の雨が止む。わたしはイメージが上手く出来たことに、ほっと息を吐いた。

「梅、梅!」
「なんですか? 旦那様」
 水辺の辺りでは人型となった青龍様と梅さんが、仲良く寄り添うように梅の木の下に座っている。
 梅さんの身長も五十センチになり、二人はますます幸せそうで何より。
 森の開けた場所ては竜人様が、シーラン様達に檄を飛ばし訓練を再開させている。
 今日は魔法や剣術をメインの訓練をするらしい。
(さてと、ここも終わったから見学にでも行こうかな?)
 わたしは青桜の木を離れて、シーラン様達の近くに向かった。



 シーラン様が魔法では無く今日は竜人様と剣を交えていた。その表情は真剣そのものでその姿に息を呑んだ。
 その近くではリズ様とリオさんが、二人で同じくらいの魔力を高めて、前に見た魔闘士を会得しようと奮闘している。
 みんなは段々と強くなっている。わたしも強くなって、みんなの横に立ちたい。
 魔力は十分にあると聞いた、わたしに足りないのは経験もあるけど、いまは魔力の安定とイメージだ。
 しかし、いまのわたしには青桜の木を育てるのに魔力消耗して、魔力は残りわずかだ。
 そんな時は…
『イメージトレーニングをするといいよ。君の周りには魔力を持った者がいる、彼達の魔力を感じる訓練をするといいよ』

 アル様も毎日行なっていると言っていた魔力訓練。わたしは目を瞑り、心を落ち着かせて周りに集中をした。
 竜人様とシーラン様の剣の重なり合う音。リズ様とリオさんの赤と黄色の魔力の大きさ。近くの木の上には見張りをするフォルテ様とヘルさん。
 森の奥のカタバミが生える所にはお師匠様とアオさん。二人並んで仲良く採取してるみたいだ。
 もっと見たくて目を瞑り、心を澄ます。みんなの魔力の色が見えてきた。
 その時、ブゥゥーンと羽音を聞いた。
『おい、小娘。儂とアオの何を見ておる? おぬしは暇なのか?』
(ひやっ!)
 驚き目を開けると『蟲声』が目の前に飛んでいた。
「すみません。魔法のイメージトレーニングをしていました」
『ふーん、でっ? その成果は出てきたのか?』
「はっ、はい! 出てきております」
『それなら良いか……まあ、焦らず。しっかりと、基礎をやるこったな』
 お師匠様は「頑張るが良い」と一言、言うと『蟲声』はわたしの側から消えた。
(ふーっ。お師匠様は鋭いな、ドキドキしちゃった…)
 もう一度と、トレーニングを再開した。湖の近くには青龍様と梅さん。
 明日は魔力を残して梅の木を育てよう。
 イメージトレーニングは順調に進んでいた、近くで剣と剣が「ガギィーーーン」と激しくぶつかる音を聞いた。

「おい、チビ竜よ! それで誰を守る気だ! 貴様の剣は生ぬるすぎるぞ!」
「くっ…はぁっ!」

 シーラン様の声と剣が落ちる音を聞き、トレーニングを止めて目を開けた。

「あっ!」

 竜人様の刃が、シーラン様の頬をかすめたのか、頬から血が流れていた。
「シーラン様!」
 立ち上がり、側に近寄ろうとしたけど彼は「来てはダメだ」と手を出した。シーラン様はわたしを見て笑い、そして、また鋭くなるサファイア色の瞳。

「大丈夫! かすめただけだ、シャルロット嬢!」

 落ちた剣を拾いまた竜人様に挑むシーラン様。彼をよく見ると今日の訓練で、あちらこちらに傷が出来ていた。
 それはリズ様やリオさんもだった。
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