竜人さまに狂愛される悪役令嬢には王子なんか必要ありません!

深月カナメ

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第三章 獣人の国に咲いた魔女の毒花編

閑話 禍々しい者

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 みんなが楽しく花見をする中、遠くのこの森の木の上に黒い影が現れた。
 その身は暗い霧を纏い、口元は弧を描く。

「ふふふっ、竜人王祭かぁ、いい事を聞いちゃった! 本当は青桜の花をぜーんぶ枯らしちゃうぞ作戦だったんだけど! そっちの方が断然面白そうだ!」

 竜人王祭の時にシャルロット、お前を潰してやるよ!
 あの方はお前などいらない、お前の器だけを欲している。

「覚悟しなさい、シャルロット!」


 お前なんかよりも、あたしにはあの方に与えられた力が有るんだよ!

「はははっー! あたしが直にお前を消してやるよ!」

 その、首根っこ洗って待っているがいい!



 竜人や獣人、魔法協会の人々が集まる、それは楽しげなうたげの最中…悪しき影が落ちた。

「⁉︎」

 アルボルは笑みを絶やさずに、辺りを警戒し、気付いた者のと魔力の波長を合わせて会話を始めた。

(皆、聞こえる?)

(ええ、アル様、ラーロ! 何このドス黒い気!)
(大丈夫。エシャロットはそんなに尻尾を膨らませて毛を逆立てない! 慌てないで落ち着いて…私の声が聞こえる者に告ぐ。私達に紛れる様にして何者かが、この水龍様の森に入りました)

(アル様、ドス黒く、気味が悪い禍々しい気を感じた)
(ラーロも落ち着いて、手に力が入ってお酒が溢れていますよ)

(おい、アルボル!)

(あっ、ロワ。あなたも気付きましたか…あっ、こら動かないで。わたしの指示があるまでは、そのままでお願いします)
(…うむ、分かった)

 ここでロワを止めておかないと、我先にとその場に、一番に飛んで行ってしまう。

(アルボル…)
(師匠どうなされました?)

(今し方。儂の蟲声を飛ばしたが…そいつに消されたみたいだ)
(師匠の蟲声がですか…厄介ですね。今は悪しき者の出方を待つしか有りませんね)
(そうだな…奴が襲撃して来たら直ぐにここにアルボルは障壁を張るんだ。儂はアオと青桜を守る)
(はい、分かりました)

(エシャロットは奴が来たら、一番にフォルテ王子に獣人を守れ)
(はい、お師匠様)

(すみませんが師匠。蟲声でチビ竜達とシャルロットちゃんを探していただけませんか?)

(この場にいないのか…わかった蟲声で探そう)

 ピリリと肌に痛い位に感じる、悪しき者の殺気を感じた。

(くっ! 奴が来るのか⁉︎)
(大丈夫だ、我が打つ!)

 更に力を感じて、ラーロとロワが辺りを見回した。

(ロワ、動かない! ああっ、やはり今ので竜人の騎士団長が勘付きましたか?)
(マリーさんや仲間を守る様に腰の短剣を握りましたね。アル様、一瞬の悪しき気を感じるとは流石ですね)

(そうであろう! はははっ!)
(ロワ、うるさいです)

 気を沈めて何かあれば直ぐにでも、対処できる様に気を練っていた…が。

(…っ…奴の気が消えたか?)
(ええ、消えましたね)
(…なんだ、消えたか)

(そいつは…アオの花を狙ったのではないのか?)
(フォルテ王子を狙っていた、訳でも無いわね)

(念の為に儂の蟲声を森中に放っておく)

(…ありがとうございます師匠)

(それとアルボル…チビ竜達に小娘は大丈夫みたいだ、少し森の奥に居るがな)

(そうですか、ありがとうございます師匠。しばらくしたら、彼らもこちらに戻って来るでしょう。さてと私達は花見の続きをしましょうか)

((賛成!))
 
 会話を終了して花見を再開した…その後は悪しき者の気を感じることなく、花見は終了した。

 ホッと、張っていた気を解放する。

「あっ…」

 水辺でも気を解放した、水龍様が静かに水の中へと、戻って行く姿が見えた。

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