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第三章 獣人の国に咲いた魔女の毒花編

閑話 モフカのタネ(2)

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 ーーあたし、モフカは最近まで人間だった。

 聖女の力を奪われ、泣いている所に現れた変わった男。
 その男に渡された種を飲み込んだあたしに異変が起きた、身体の中が焼けて、溶けてしまいそうなくらいに熱い。燃える、燃えてしまう…誰か、助けて。
 声を出すことが出来ず、必死に目で体で訴えたけど、誰も苦しむあたしの方を見向きもしなかった…あたしは一人ぼっちなのか…
 でもこのまま死にたく無いと体を動かして、馬車に乗り込み家へと戻り、自室のベッドに仰向けに寝転がった。

「……はぁ」

 吐いた息が紫色に見えた…なんで? 湧き上がる苛立ち。
「なんで! あたしがこんな目に合わなくちゃいけないのよぉー! 折角、女神に聖女の力を貰って、乙女ゲームのヒロインとして可愛く生まれ変わったのに!」
 今頃、学園で攻略対象達のフラグを立てて、イケメン達と楽しく学園生活を過ごしているはずだったのに!
 それなのに…まさか自分の失態で重要なイベントを取り忘れるとは……焦り過ぎた。
 そのフラグだって後で回収すれば済んだんだ。しかし、そこには誤算があった、悪役令嬢シャルロットまでが転生者で、あたしの知らない所でシーランに色目を使って取り入るなんて…くそっ!

「許さない、シャルロット! 絶対にシーランは返してもらうからね!」

 冷めない熱に侵され意識が朦朧とするなか、そこにさっきの男が何処からともなく現れた。

「いた、いた…探したんだよ~♪」

 陽気な声に態度で、熱に苦しむあたしの側に近づき、上からあたしを覗いた。
 その男の目はピクリとも笑わず、口元だけがニヤニヤも笑う、なんとも不気味な男だ。

「…お前は誰なんだよ、あたしをこんな目に合わせて何がしたい!」

 言葉で噛み付いてもヘラヘラと笑い。
「あははっ、気にしない、気にしない! それにしても君凄いねぇ~♪…人への恨み、辛みの方があるのにも関わらず、赤花にならなかった人間かぁ…珍しいや」

 恨み? 赤花? この乙女ゲームに赤花なんて出てこない、この男は何を言っているの?
 
 男はあたしを見ながら、勝手に悩み始めた。

「どうして? この女に俺様の作り上げた種が馴染んだのだぁ?」

 首をコテン、コテンと傾げながら、あたしを不思議そうにしばらく眺めて、何かに気が付き声を上げた。

「あーあ、そうか、そうか~♪ その胸にポッカリ開いた穴に種がぴったりと収まったのか…そこから馴染み、君は魔族化したんだぁ?」

 何かに気付き、答えを出し、納得したのか今度は首を縦に振る。

「はははっ、凄いねぇ~♪これなら君もあの方の役に立てるよ、僕のお仲間ちゃ~んいらっしゃ~い!」

 じゃーあの方の所に行こうねと、男は動けないあたしを肩に担いで、何処かへと連れて行く、そこであの方と出会った。

 あの方はあたしを認めて、力を褒めてくれた人。この人の言う事なら何でも聞く。

 シャルロットが欲しいのなら連れてきてあげる。
 全ての人間共に絶望を見せてあげる。

 全てはあなた様のために…
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