竜人さまに狂愛される悪役令嬢には王子なんか必要ありません!

深月カナメ

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番外・シャルロットの休暇 (短編)

桜の種を求めて (その六)

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 男はカラカラと笑った。

「まぁ、見破られちまったら仕方がない、でっ、おたくらは俺に何をさせたいんだ? 新種の種か? 回復の種か? どの種が欲しいんだ?」

 種? この男は種を生み出すことが出来るという事ですね。

「いいえ、私達はお礼を言いにきたんです。あのピンクの種を咲かせた彼女は涙を流して喜びました」

 男の瞳は驚きで開き、そのあと細まる。
 やはりあのお嬢さんが桜を咲かせたのかと嬉しそうだった。

「お礼なんていらないね。俺の方がお礼を言いたいくらいだ。まだ若いが珍しい黒竜の竜人にも会えたんだ……それと同胞とな」

 同胞? 誰のことを指すのでしょうか?

 まさかね。

「アルボル様、この方はチビ竜達の変身魔法を見破っていたのか……人の中にも強力な力を持った人がいるんですね」
「そうだね」

 もちろん私もだけどラーロも驚いている。
 私だけではなく最近力を上げてきたチビ竜達の変身はかなりのものだ。
 それを見破ったのですからね。

 この男は只者じゃない。ぜひ、私達の国に来て手伝って欲しいですね。
 あの怠け者の竜人王のロワより、しっかりしてそうです。


 男は何か思い出したのか隣の猫の獣人に話しかけた。

「そうだミリ。俺の部屋に行ってノートを持ってきてくれる?」
「ノートとはあれの事ですか?」

「んっ? そうだ、あのノートだ。ついでに新品のも頼むよ」

 彼女は、はいと扉を開け奥にノートを取りに向かった。
 それ見送り男に聞いた。

「彼女もそうですが、この村には他にも獣人の方がいますね、後私と同じエルフと、オーク、人間の方も数名いらしました」

「あぁ、みんな俺の仲間だ。一人になった俺を助けてくれた、大切な家族なんだ」
「仲間、家族ですか」

 そうだと彼は頷いた。
 彼だけではなく家族で移住となると、竜人の森近くの土地を渡せばいいかな。
 それとも魔法協会の近くか……是非とも彼に来ていただきたい。

 かたっ、と扉が開き彼女が戻る。

「シンさん、戻りました」
「おかえり、ミリありがとうね」

 彼女が持ってきたノートを受け取り彼は床に並べて置く。
 置かれたのは古びたノートと新品のもだった。
 彼は古びたノートに手をかざして『読み取り』と魔法を唱えて、新品のもに『複写』と魔法を唱えた。

「これでよし。このノートをあのお嬢さんに渡して。もしかしたらお嬢さんはこの文字が読めるかもしれない」

 そう言って彼から受け取ったノートには、初めて見る綺麗な文字と挿絵が並んで記されていた。

 この文字をシャルちゃんが読める。

「それと一つお願いがある。もし、お嬢さんがこの文字を読めても、深く追求しないでやってくれないか?」

「追求ですか?」
「そうだ」

 私の目を真っ直ぐに見て話す、男の瞳は真剣そのものだった。

 まさか、この男とシャルちゃんは何処かで繋がっているのだろうか……いいやそこは追求せずに濁して、あやふやなままで良いのだろう。

 私はシャルちゃんに嫌われるのはイヤだからね。

「わかりました彼女には追求はいたしません。シンさんとミリさん、今日は私達を受け入れてくださり、ありがとうございました」

「いや、こっちも楽しかったよ」

「帰る前に、一つ提案を言ってもいいでしょうか。私たちの国はここから遥か東にある、魔法使い、魔女、亜人種族の国です。もし、この土地が嫌になりましたら移り住んでください。いくらでも歓迎いたします」
  
 彼は私の提案に驚いたようだ。
 しかし亜人のとこには感心を示したようだ。
 だから魔法協会で使用する紙を数枚、彼に渡した。

「遅くまでお邪魔いたしました、帰りましょうラーロ」
「はい、アルボル様」

 帰り間際、男が腰に付けていた巾着袋を手渡してきた。

「この中にはいろんな種類の種が入っている。これをお嬢さんに渡してくれ」
「よろしいのですか?」

「あぁ、種を撒き咲かせれば、きっとお嬢さんは喜ぶだろうよ」
 
「ありがとうございます」

 私とラーロはもう一度、男に礼を言って村を後にした。
 村の男から渡された不思議なノートと種。

 果たしてシャルちゃんは喜ぶのだろうか? 



 次の日。
 貰ったノートと種を渡したら案の定シャルちゃんは、目を輝かせて大喜びだった。

 いくら読もうとしても読めなかったあの文字。
 どんなに昔の資料を出して調べても、何百年と生きた私でさえあの文字は読めなかった……のに。

 シャルちゃんはパラパラと私の前でノートと開き、目を通すと。

 巾着袋を覗き種を手に出して。

「へぇ、お米の種は植えたらお水をたっぷり撒くのね!」
「これは梅の木の種? 水龍様の花梅とは違い、大きな梅の実をつける梅の木になるのか……ふむふむ」

「待って! シャルちゃんはそのノートに記された文字が読めるのですか?」
「あっ、一応ですが読めます」

 彼女はものすごく慌てて誤魔化していましたが。
 その時の私はあの文字をすらすらと読める、シャルちゃんに大人げなく嫉妬したのは……内緒です。

(さすがに悔しいですね)

 後で、ラーロと一緒に文字を習う約束は取り付けましたけどね。
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