竜人さまに狂愛される悪役令嬢には王子なんか必要ありません!

深月カナメ

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番外・シャルロットの休暇 (短編)

不思議なノートと種

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 桜の種を貰った村に行ってから二日後。
 お昼前にアルボル様に魔法協会に呼び出されて、ホウキに乗り向かった。

 魔法協会。アル様がいる執務室の扉をコンコンと叩くと、部屋の中から慌てた声で「ちょっと待ってね」と返ってきた。

「はい、外で待ってますね」
「わざわざ来てもらったのに、ごめんねシャルちゃん」

 わたしはホウキ片手に壁に寄りかかり、中央にそびえる癒やしの木を眺めた。
 そんな私の前を。

「この書類はどこに運ぶんだい?」
「えーっと……それは、西の倉庫に仕舞うやつだ」

「分かった、しまってくるよ!」

 あっちからも、こっちからも、忙しくパタパタ走る魔法局員たち。
 今日も魔法協会は忙しそうだ。

 それを眺めて欠伸をしてると、カチャッと扉が開きアル様が出てきた。

「いらっしゃい、シャルちゃん」
「おじゃまします、アル様」

 執務室に通されて、そこで一冊のノートとタネの入った巾着袋をアル様から渡された。
 手に持っていたホウキを立て掛けて何のノートだと開くと、驚くことにノートの中の文字はすべて日本語で書かれていた。

 久しぶりに見た日本語、それも綺麗な大人の人の文字だった。

(誰が書いたのだろう?)

 ぱらぱらページをめくると、そのノートには醤油、お酒、お米の精米の仕方など詳しく挿絵付きで書かれていて。
 また違うページには梅干しの漬け方、うどんに餃子の皮の作り方、米粉のパンの焼き方まで、あらゆる料理のレシピまで乗っていた。

 焼うどん、たこ焼き、お好み焼き食べたいなぁ。
 私の頭の中は日本食というか、前世で好んで食べていた料理で頭の中は埋め尽くされていた。

「アル様、このノートをどうしたのですか?」
「二日前、桜の種のお礼に行った村のおじいさんからシャルちゃんにだって、渡されたんだ」

「おじいちゃんがわたしに? では、このノートと種はわたしが貰ってもいいのですか?」

 アル様はいいよと頷いた。
 これがあればシーラン様に珍しい料理が作れる。

 瞳を大きくして驚くの「何だ、これは?」って、その後は笑って美味しよ、と言ってもらいたいなぁ。

 こっちの巾着袋のなかみは? と結んであった紐を解き袋を開けた。

(いろんな種類の種だ)

 それも、ごちゃ混ぜに無造作に入っていた。

 でも、これは見覚えがある桜の種だ。
 こっちは梅の種かな? この白い粒はお米の種? コレは? 種類が多すぎてわかんない。

 そうだ今から森に行って、チシャの葉を収穫した後に種を育ててみよう。


「アル様、ありがとうございました。わたし今から竜人の森に行って来ます!」


 早速、森に向かおうとホウキを握った。
 

「あ、待ってシャルちゃん。君はこの不思議な文字が読めたの?」

「えっ? 不思議な文字? ……あっ!」


「そっか、読めたんだよね」
  

 ギクッ……やばい、喜びすぎて肝心なところを忘れてた。

(アル様にどう説明する? たまたま読めちゃいましたじゃ、ダメよね) 

 正直にわたしには昔の記憶がありまして、その中でこの文字を使っていましたとか説明してみる? ……うん、それで行こう。

「あの、アル様わたしはですね……」
「説明はいいよ。私もシャルちゃんに無理には聞かないから。それよりも、その文字を私に教えてくれないかな?」


「わたしがアル様に⁉︎ いいですけど……教えるの下手ですよ」


 じゃっ、決まりだね。その文字はラーロと二人で習うから後で、手元に時間表送るねと、にこやかに笑ったアル様に「仕事に戻るから、ごめんね」と執務室から、やんわり追い出された。

 しまって直ぐ中から、ぱたぱたと歩き回る足音が聞こえた。
 いつ来ても忙しそう、お疲れ様ですアル様。
 

「さてと、わたしは貰った種を撒きに森へと向かいますかね」


 ホウキに乗り魔法協会から竜人の森へと飛んだ。

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