竜人さまに狂愛される悪役令嬢には王子なんか必要ありません!

深月カナメ

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番外・シャルロットの休暇 (短編)

不思議なノートと種 (そのニ)

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 竜人の森の中で一人。
 やらかした、と起き上がれずにいた。
 これは何度か経験しているから分かる、魔力が枯渇したんだ。


(えぇ、ノートの裏にもしっかり書いてありました)


 この種はこの世界にない食物の種だと、次元を曲げて作っていると、半端なく魔力を使いますと……

 でも、見知った食物が生えて嬉しかった。
 それで調子に乗って魔力は枯渇した。

「どうする?」

 このブレスレットで、シーラン様を森に呼ぶ?
 時刻は大体お昼前か、過ぎだと思う。今、彼は忙しいかもしれないし、あまり使いたくなかったのだけど。

「ごめんなさい、シーラン様。後でしっかり謝ります、ここに来てください」

 謝り、彼を叫んで私は眠りに落ちた。


 ♢

  
 誰かが私の頬をさわさわする。くすぐったい。

「クーッ、クーッ」

 この鳴き声はチビドラちゃん? ……って、体は軽いし動く。

 シーラン様が来てくれて魔力を分けてくれたんだ。ありがとうと、と伝えようとしたのだけど。

「グー」
「クゥー」

 シーラン様だけの声が聞こえた。
 私、リズ様、リオさんまでチビドラちゃんに変えてしまった。

「ごめんなさい、今すぐ魔法協会までホウキで飛ぶから、わたしに掴まって!」

 シーラン様は胸に掴まり、リズ様とリオさんは背中に掴まった。

「しっかり掴まっていてね」
「クーッ」
「グー」
「クゥ、クゥ」
 
 わたしは急いでホウキに乗り魔法協会まで飛んで向かった。


 ♢


 その日の夕食。
 みんなが癒やしの木でチビドラちゃんから戻り、もう一度畑に向かった。

「そこでこの大根が育っていたの、生でも食べれるからサラダにしましょう」

 大根の葉に近いところが甘いのよね。そこを薄切りにして、いつものひよこ豆のサラダに混ぜて、なにも付けずに味わいたい。

 大根をおろす、おろし金はないから薄く切って、鶏肉のステーキに乗せてもいいかな。

 そうだ。

「マリー、少し先端を薄く切って」
「はい、かしこまりました」

 それを持って、みんなが休んでいるソファーまで行った。

「シーラン様、リズ様、リオさん、これを食べてみて? って、ずるい」
 
 みんなはかたまって図鑑を見ている。
 わたしも混ざってスライムが見たい。

「ごめんな、魔力がどれくらいに上がったか見ていたんだ。兄上がレークス様まで見えるようになった。だけど、次のドラゴンはまだ誰も見えないがな」

 レークス様まで。

「凄い、リズ様」
「そう、自分でも驚いたよ。でもさぁ、やっとシーランとリオに追いついたな」

「では、次の訓練に行けますね」

 わたしは驚いていた。知らない間にみんなが強く変わっていく。
 
(悔しい)

 わたしだって、みんなと進みたいのに。

「シャルロット、大丈夫だ。俺達はみんないつまでも一緒だろ」
「でも、悔しいわ!」

 本音の気持ちをぶつけた。

「はぁ、シャルロットちゃん? それは逆だよ。俺の方が何倍も悔しい!」
「シャルロット様、私だって悔しいですよ。だからと言って負けませんからね」

「ちょっと落ち着こうよ。ほら、みんなの癒しのスライム見てさ」

 シーラン様はそう言ってスライムのページを開く。
 そこにはあいも変わらず、プルルルーンと揺れ動くスライムがいた。

「ぷっ、くくっ……」

 やはり、わたしはそれを見て大笑いしたのだった。


 ♢


「この大根てシャキシャキ、瑞々しいな」
「鶏肉ステーキがさっぱりいただけます」

「これが……村で食べた沢庵にもなるのか」

 みんなとマリーも大根を気に入ったみたい。

「シャルロット様、美味しいです」

 みんなは大喜びで食べてくれた。

「ふうっ、魔力枯渇まで頑張った甲斐があったね」


 その一言でわたしは墓穴を掘った。


「シャルロット!」
「シャルロットちゃん!」
「シャルロット様!」


「ごめんなさい。みんなまで巻き込んだのは反省してるよ。……でも、楽しかったの」


 いろんな見知った野菜が育っていき、わくわくしてドキドキた。
 
「はぁー今度からは気を付けろよ。何かあったら、そのブレスレットで俺を呼べばいいよ」

「はい、よろしくお願いします。シーラン様」

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