竜人さまに狂愛される悪役令嬢には王子なんか必要ありません!

深月カナメ

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番外・シャルロットの休暇 (短編)

不思議なノートと種 (その三)

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 人里のおじーちゃんに貰った種を撒き始めて一週間。
 あれから魔力の枯渇もなく、森の畑にはごちゃ混ぜな野菜が実っていた。
 サツマイモ、かぼちゃ、れんこん、生姜など、大豆と小豆、稲穂も見える。

 れんこんは水の中で育つ事は知っていたから、土の中にサツマイモの様に育ち驚いた。

(なんでも、ありなんかーいってね)

 サツマイモは焼き芋にしても良かったのだけど、簡単に塩茹でをして食べたり、かぼちゃのスープ、れんこんバーグなども作った。

 大豆と小豆は森に布を引いて天日干しにしている。
 お米は脱穀、もみすり、精米をしなくちゃいけなくて、もう一度村に行っておじいちゃんに習おうと思っている。


「おーい、シャルロット」
「シャルロットちゃん!」
「シャルロット様」

「シーラン様! リズ様とリオさんもお疲れ様!」


 みんなは食べるサツマイモと、サツマイモ掘りが気に入ったらしく。
 芋掘り専用を畑の一角に作り、いまは三株実っている。

 今日の朝訓練前にそのことを伝えると訓練と用事の後。
 お昼頃、森にサツマイモを掘りに来ると言っていた。


 畑近くに降りで羽をしまい、足元に実る野菜に指をさした。

「シャルロット、これはなんだ?」
「丸い、縞々だ?」

「不思議な野菜ですね」

 みんなは大きく実った食べ頃のスイカを見て驚いていた。

「これはスイカと言うの。サツマイモと一緒に持って帰って、氷魔法で冷やしてお昼に食べましょう」

「ほう、これはスイカと言う食べ物なのか。また面白いものが実ったな」
「初めて見るね」

「結構な重みです」

 それ以外に聞くことは? 

 ないのか……うーん? またすんなりみんなに受け入れられた。
 どうして私が野菜の名前を知っているのか、疑問にも思わないのかな?

 聞いてこないから私も変に畏まらなくで済むから、いいのだけど。
 もしかして気遣ってくれているのなら「ありがとう」と、みんなに心の中で感謝した。

「シーラン、早く来いよ。サツマイモを掘るぞ!」
「待って兄上! この前みたいに俺のサツマイモまで掘るなよ!」

「私はこの株にします」

 みんなは手と尻尾、訓練着まで土で汚しても気にせず畑に入り、サツマイモ掘りを楽しんでいる。

「見て、兄上、リオ。こんなにデカイのが掘れたぞ!」
「いいや、シーラン。俺の方が大きくないか?」

 また、シーラン様とリズ様は二人で競ってる。

「おやめください。私のサツマイモの方が今日は大きいですよ」

 と、いつも止め役のリオさんまで参戦した。
 ああなると、しばらく収まらないから、その間にスイカをひと玉収穫しちゃおうと。

 数分後、終わったのかみんなはサツマイモを持って集まてくる。


 本日はサツマイモを十本と、スイカひと玉の収穫ができた。



「今回のサツマイモも美味そうだな」
「シャルロットちゃん塩茹で? それとも別の食べ方?」

 別か? サツマイモを素揚げにして蜂蜜を絡めた大学芋風なんてどう? 後は私の好きな塩茹で。

「今日は塩茹でと素揚げの蜂蜜かけ、なんてどうですか?」

「素揚げ? 蜂蜜かけ! 美味そうだ、早く食べたいなぁ」

「素揚げの蜂蜜かけ? それは美味しそうですね。さっそく収穫したものを持って帰って、サツマイモとスイカを食べましょう」

 森の畑から収穫したサツマイモとスイカは、訓練後腹ペコのみんなのお腹を満たした。

「素揚げしたサツマイモの蜂蜜かけ美味しかったなぁ」
「揚げてサクサクなサツマイモに塩をかけたのも美味しかったです」

「スイカも瑞々しくて塩をかけたら、さらに甘くなって美味しかったな」

 みんながこんなにも喜んでくれる、明日も頑張っちゃお!

「こら、無理は禁物だからなシャルロット」
「えっ?」

 顔に出ていたのか、シーラン様に釘をさされた。

「前みたいな無理はしないよ」

「シャルロットの顔がそう言っていない。頑張りすぎるな俺達はもう慌てなくていいんだ、ゆっくりしていいんだからな」

「そうだよ、シャルロットちゃん。俺達も竜人王様によく言われてるもんな。焦るな、ゆっくり自分に合った訓練をしろってさ」

「はい、今までゆっくりできなかった事を私達で、一つずつ楽しみまましょう」

 できなかった事を楽しむ。

「そうだね、みんなで楽しもうね」
 

 その日の夕食は、前に森で収穫したレンコン。
 刻んだレンコンと潰したレンコンを、豚のひき肉に混ぜ込んだレンコンバーグと焼き立てのパン、ひよこ豆のスープ。


 ♢

 
 森に小豆を干して三日目。
 その小豆を持って帰り、砂糖と小豆、塩と水で簡単あんこをマリーとリオさんで炊いてみた。
 小豆を水洗いしてコトコト煮込み、しっかり柔らかくなったら砂糖を入れて、最後に塩を入れる。

 小豆を炊くには色んな工程はあったのだけど、マリーとリオさんのお陰であんこは失敗することなく無事に炊けた。
 
 後は焼き立てのパンにバターとあんこを乗せたり、挟んで食べれば最高の逸品。

 食べたみんなの一言
 

「「あんこが、なんとも言えない風味だ!」」


 バターとあんこが合う、と作ったあんこは直ぐにみんなで食べてしまった。
 
 実ったお米が精米できていたら、ぼた餅を作れるのにな。
 小豆と一緒に天日干した大豆を擦り、きな粉にして牛乳を混ぜれば、きな粉牛乳も最高の味わいだった。


 ♢


 ごちゃ混ぜ畑も整頓された頃。森の横に新しい村ができるらしい。
 
 次の日シーラン様達と魔法協会に呼ばれた。
 アル様に人里の村でお世話になった、おじーちゃんのお孫さん達がこの国へと移り住んでくると伝えられた。

 村の代表のシンさんと副代表のミリさん夫婦とその仲間達。
 その村ではおじーちゃんとおばーちゃんのいた村の様に、お米を始め醤油などの調味料も作っているらしく。

 村のお手伝いをすれば新米とお醤油、お味噌がもらえるらしい。
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