野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ

文字の大きさ
19 / 171
第一章

16話

しおりを挟む
 夕食後、部屋へ戻った私に、眉をひそめたアール君は言った。

「エルバ様、パパ様はリリンゴを好物とおっしゃっていましたが。――ほんらいリリンゴは魔族の森の奥、ドラゴン族が守る果物で、魔王様以外は口にするのが難しい果物です。パパ様は樽いっぱい食べていたとおっしゃっていましたが……どうやって集めたのでしょう?」

(ドラゴン? 魔王様?)

「ま、まま、魔族の森に……魔王様とドラゴンがいるの?」

「はい、魔族の王――魔王様。魔族の森を守る守護者ドラゴン族……他にもたくさんの魔物の種族がおります」

 魔王様とドラゴンなんて、ファンタジー。
 でも、アール君のいうのが正しいのなら。
 
 パパはリリンゴをどう集めていたのだろう。
 見た目が、都市の人達より体がひと回り大きく、仕事が休みの日には朝から体を鍛え、大きな斧を振り回しているけど……

 はっ! まさか。パパはリリンゴ欲しさに……魔物の森の奥でドラゴンに勝負を挑んで勝って、リリンゴを貰っていた? ……食いしん坊のパパならありうる。

「エルバ様のパパ様は優しく、お強い」
「うん、パパは優しいね」

 ドラゴンと戦うパパを一度見てみたいと思うけど……逆に考えて、怒らせるとママよりも怖いのかも。
 アール君とママもだけど、パパも怒らせないようにしようと話した。









 今回――人が作った改良リリンゴでは博士からタネがもらえないとわかった。タネが欲しかったら――原種の植物、果物じゃないとダメ。
 だけど、野生リリンゴは魔族の森奥、ドラゴンを倒さないとなると手詰まり。でも、パパとママにいつか許可をもらえたら、魔族の森をアール君と探索したいな。

 いや、その前に魔法都市を隠すようにぐるりと囲む『シシリアの大森林』が先かな。

 まだ見ぬ、沢山の植物かぁ……エルバの畑、エルバのレシピ帳、後は調合スキルもあったし、魔法も。

(やりたいことはたくさん! なんて、異世界って楽しいのだろう)







 

「アール君、お風呂空いたよ」

 私のベッドの上で調理の本を読んでいる、アール君に声をかけた。

「はい。では、お風呂にいってきます。――あ、エルバ様、髪をちゃんと乾かさないと……風邪をひきますよ」
 
「わかってる、ごゆっくり」

 アール君がお風呂にいったので、タオルでチャチャっと髪を拭きベッドに転がった。そして気になっている、調理スキルを確認することにした。

「ステータスオープン!」

 目の前に現れる、ステータス画面。

 ふむふむ。私のレベル、攻撃などの数値は変わっておらず。スキルランに調理レベルが1と"エルバのレシピ帳"の項目が増えていた。
 これが、さっき博士が言っていたレシピ帳か、どうやって見るのかな?

 何気なくレシピ帳をタッチすると――ステータス画面が消えて、目の前に図鑑くらいの暑さの本があらわれた。
 今、あらわれた本の表紙には"エルバの調理レシピ帳"と書かれている。

 私は勢い良く、ベッドから起き上がり。

「この本に触れるの?」

 ドキドキしながら、本の表紙をタッチした……

〈エルバの調理レシピ帳へようこそ。このレシピ帳はエルバ様がエルバの畑で採れた植物を使用して、調理されたレシピが記されていきます〉

 少し明るめで、博士と似た声が頭の中に聞こえた。
 

「へえ、このレシピ帳に載るのは"エルバの畑で採れた植物"なんだ……」
 

〈レシピ帳をタッチ致しますと、ページがめくれます〉
 

 これをタッチするのね。私はワクワクしながらタッチすると、レシピ帳が開く。その中にシュワシュワの作り方が記されていた。

[まずピッチャーなどの容器に『水または魔法水』を適量入れて、エルバの畑で採れたシュワシュワの実を一粒入れたら、あっという間にシュワシュワの完成!]

 1ページに簡単な説明と、作り方の絵が載っていた。

 小さな妖精がピッチャー、シュワシュワの実などを説明してる。
 

「わぁ、料理手順の絵が……手描きみたいで可愛い!」
 

〈お褒めいただき、ありがとうございます〉

 え、この絵、博士が描いたの? 
 万能博士?
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~

みちのあかり
ファンタジー
10歳で『ルゥ』というギフトを得た僕。 どんなギフトかわからないまま、義理の兄たちとダンジョンに潜ったけど、役立たずと言われ取り残されてしまった。 一人きりで動くこともできない僕を助けてくれたのは一匹のフェンリルだった。僕のギルト『ルゥ』で出来たスープは、フェンリルの古傷を直すほどのとんでもないギフトだった。 その頃、母も僕のせいで離婚をされた。僕のギフトを理解できない義兄たちの報告のせいだった。 これは、母と僕と妹が、そこから幸せになるまでの、大切な人々との出会いのファンタジーです。 カクヨムにもサブタイ違いで載せています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...