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四十七
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お父様は私がいなくなって1週間経ったとおっしゃった。
「あのーお話し中、失礼いたします。お嬢様は王城からお屋敷、森から山の山頂、森から私の家、その家から森へと転送を何度かされて時空の歪みに触れて、1週間もの時が経ってしまったのですよ」
「アルカさん」
「専門医様」
私たちの話し声が中まで聞こえたらしく、執務室にいたアルカさんとシルベスター君が現れた。
この香りは女神の涙を焚いた解毒剤の香りなのね。
(良かった、完成したんだ)
「一瞬で転送、移動したように見えても、そのつど時空の歪みに何度か触れたので、ロレッテ様が1日と感じていても、実質1週間経っていたということです」
「時空の歪みですか……私にはよく分かりませんが。多分専門医様に説明されても分からないですね」
私もわからないわ。
「いいのですよ、分からなくても仕方がないことです。それよりもグラッド公爵夫妻、ロレッテ様に話があります。重要な話ですので場所を移動致しましょう。シルベスター君はここに残り、オルフレット王子を見ていてください」
「はい、師匠」
執務室にシルベスター君を残して、私たちは応接間へと場所を変えた。
「専門医様、私たちに話とはなんでしょうか」
2人掛けのソファーにお父様とお母様、私とアルカさんでテープを挟み座った。
彼女がいまからは何を話すのかわからないけど、さっきまでとは違う声のトーンに緊張が増した。
「今回、ロレッテ様の稀な力のおかげでこの国の王子、側近、城の使用人が助かりました」
そう私の両親に言うと、オルカさんはテーブル近くまで深く頭を下げた。
私のおかげ?
「ロレッテの力? それはどう言うことでしょうか?」
「公爵様のお嬢様には特別な力が宿っております。今回の事件は隣国で栽培されている、サンム草という草の過剰摂取によるものです」
「えっ、あのリラックスが出来るお香がですか?」
お母様は肩を震わせ驚いた。
それもそうだ、王都ではサンム草のお香はリラックスが出来ると売られ、貴族たちの間でも流行りのお香。
「そうです、普通に使えばなんでことのない草です。しかし大量に焚き、その煙を吸うと深い眠りに陥るという草なのです。私がその効果を見つけた1人。私しか知らないサンム草の別効能。それが何者かが、何故か知り、悪用したものと考えれます」
「それは誰だ? 城の中にいるものか?」
「いま調べている途中ですので、お答えすることはできません。私はもしものことを考えて万能薬草を見つけました。今炊いているのがその女神の涙という草です」
アルカさんしか知らないサンム草の効果。
誰がどうやって知ったの?
図鑑は王都の古本屋でオルフレット様が購入した。
隠し文字のとこは私と著書のアルカさんとシルベスター君しか知らない、
「私でさえもまだ本物を見つけるのに手間取るなかで、一発でそれを見抜いたのがロレッテ様です。ほんとうなら1ヶ月いや半年かかっていたかもしれません」
「アルカさんでも、ですか?」
「怪我を治し、毒も麻痺も解除する万能薬草、あれの周りに咲く見た目も同じな偽物が多い。ロレッテ様がシルベスター君に案内された場所は私の訓練場所だったのですよ」
訓練?
「ロレッテ様も見たでしょう? 温室に咲く女神の涙の草の中にも偽物が混じっていたことを……私では見分けが難しく、薬を作る時は1本ずつ採り作りながら、本物かそうでないかを見分けます。それなのにあなた様は確実に本物の草を10本お採りになったのです」
「娘がですか……」
お父様が驚くのもわかる、私も驚いているもの。
温室の草を見た時に偽物があったから、まだアルカさんに試されているのだと思っていたわ。
「この力はもしかすると争いの火種になる。他の者、他の国にバレてはならない、特別なものだと私は考えます」
アルカさんの言葉に、お父様とお母様は深く頷く。
「わかっております、他言無用ですな」
「えぇ娘を守るため、誰にも言いませんわ」
「そのようにお願いします」
みんなが息を呑んだとき、ガリガリと応接間の扉が乱暴に叩かれた。
「師匠、師匠、ロレッテ、目を覚ましたよ! オルフレット君が目をしたよ!」
オルフレット様が目を覚ました!
私は応接間を出て、執務室へと走った。
「あのーお話し中、失礼いたします。お嬢様は王城からお屋敷、森から山の山頂、森から私の家、その家から森へと転送を何度かされて時空の歪みに触れて、1週間もの時が経ってしまったのですよ」
「アルカさん」
「専門医様」
私たちの話し声が中まで聞こえたらしく、執務室にいたアルカさんとシルベスター君が現れた。
この香りは女神の涙を焚いた解毒剤の香りなのね。
(良かった、完成したんだ)
「一瞬で転送、移動したように見えても、そのつど時空の歪みに何度か触れたので、ロレッテ様が1日と感じていても、実質1週間経っていたということです」
「時空の歪みですか……私にはよく分かりませんが。多分専門医様に説明されても分からないですね」
私もわからないわ。
「いいのですよ、分からなくても仕方がないことです。それよりもグラッド公爵夫妻、ロレッテ様に話があります。重要な話ですので場所を移動致しましょう。シルベスター君はここに残り、オルフレット王子を見ていてください」
「はい、師匠」
執務室にシルベスター君を残して、私たちは応接間へと場所を変えた。
「専門医様、私たちに話とはなんでしょうか」
2人掛けのソファーにお父様とお母様、私とアルカさんでテープを挟み座った。
彼女がいまからは何を話すのかわからないけど、さっきまでとは違う声のトーンに緊張が増した。
「今回、ロレッテ様の稀な力のおかげでこの国の王子、側近、城の使用人が助かりました」
そう私の両親に言うと、オルカさんはテーブル近くまで深く頭を下げた。
私のおかげ?
「ロレッテの力? それはどう言うことでしょうか?」
「公爵様のお嬢様には特別な力が宿っております。今回の事件は隣国で栽培されている、サンム草という草の過剰摂取によるものです」
「えっ、あのリラックスが出来るお香がですか?」
お母様は肩を震わせ驚いた。
それもそうだ、王都ではサンム草のお香はリラックスが出来ると売られ、貴族たちの間でも流行りのお香。
「そうです、普通に使えばなんでことのない草です。しかし大量に焚き、その煙を吸うと深い眠りに陥るという草なのです。私がその効果を見つけた1人。私しか知らないサンム草の別効能。それが何者かが、何故か知り、悪用したものと考えれます」
「それは誰だ? 城の中にいるものか?」
「いま調べている途中ですので、お答えすることはできません。私はもしものことを考えて万能薬草を見つけました。今炊いているのがその女神の涙という草です」
アルカさんしか知らないサンム草の効果。
誰がどうやって知ったの?
図鑑は王都の古本屋でオルフレット様が購入した。
隠し文字のとこは私と著書のアルカさんとシルベスター君しか知らない、
「私でさえもまだ本物を見つけるのに手間取るなかで、一発でそれを見抜いたのがロレッテ様です。ほんとうなら1ヶ月いや半年かかっていたかもしれません」
「アルカさんでも、ですか?」
「怪我を治し、毒も麻痺も解除する万能薬草、あれの周りに咲く見た目も同じな偽物が多い。ロレッテ様がシルベスター君に案内された場所は私の訓練場所だったのですよ」
訓練?
「ロレッテ様も見たでしょう? 温室に咲く女神の涙の草の中にも偽物が混じっていたことを……私では見分けが難しく、薬を作る時は1本ずつ採り作りながら、本物かそうでないかを見分けます。それなのにあなた様は確実に本物の草を10本お採りになったのです」
「娘がですか……」
お父様が驚くのもわかる、私も驚いているもの。
温室の草を見た時に偽物があったから、まだアルカさんに試されているのだと思っていたわ。
「この力はもしかすると争いの火種になる。他の者、他の国にバレてはならない、特別なものだと私は考えます」
アルカさんの言葉に、お父様とお母様は深く頷く。
「わかっております、他言無用ですな」
「えぇ娘を守るため、誰にも言いませんわ」
「そのようにお願いします」
みんなが息を呑んだとき、ガリガリと応接間の扉が乱暴に叩かれた。
「師匠、師匠、ロレッテ、目を覚ましたよ! オルフレット君が目をしたよ!」
オルフレット様が目を覚ました!
私は応接間を出て、執務室へと走った。
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