35 / 59
35話 隠されたパン
しおりを挟む
子どもたちが、ぞろぞろとやって来た。
どの子も痩せていて、ろくに食べさせてもらっていないのだと、思えるような子どもたち。
一度に入れるのは三十人ほど。
食堂内に入った子どもたちは、料理の匂いに目を輝かせた。
騎士様が、子どもたちを順番に座らせていく。
今日のメニューは、肉と野菜が入ったシチューとパン、それに牛乳。
目の前に出された料理を見て、子どもたちは歓声を上げた。
「わー、お肉だ! お肉なんて久しぶりー。」
貴族にとっては質素なメニューであっても、貧民街の子どもたちにとっては、最高のごちそうである。
「さあ、みんな、よく噛んで食べるんだよ。」
アンナさんも、とても嬉しそうだ。
私も嬉しくなって、子どもたちを見ていたのだけれど、キョロキョロと目を動かしている挙動不審な男の子を見つけた。
やせ細った腕が今にも折れそうなその子は、七歳くらいだろうか?
いったい何に怯えているのか、不安げな目とブルブル震える手で、その子はパンを食べずに、サッと服の中に隠した。
食堂に来る子どもたちには、出された料理を全部食べてもらうために、持ち帰ってはいけないことを知らせている。
食べきれない場合は、残った料理をまた煮込んで、次の子どもに回すことにしているし、パンも食べかけであっても、次の子どもに食べてもらう。
前世のように、食べ残したら捨てるなんてことは、この貧民街では考えられないことなのだ。
持って帰ってはいけないから、カバンを持ってくることを禁じている。
その子は服の中にパンを隠したまま、シチューを食べ牛乳を飲んだ。
だけど、隠したパンには、一切手を付けなかった。
食べ終わった子どもから、食器を使用済み棚に片付け、次の子どもが入ってくることになっている。
私はその子が食器を片付けた際に、声を掛けた。
「ぼうや、ちょっとお話ししてもいい?」
男の子はビクッとして、目をキョロキョロと動かした。
「じゃあ、あっちのお部屋に行こうか?」
私は隣の控室に、子どもを連れて行った。
ガトーさんも心配してついてきた。
私はしゃがんで、目線を子どもに合わせた。
「ぼうや、パンを隠してたけど、それはあなたのパンなのに、どうして食べなかったの?」
男の子は下を向き、こちらを見ようとはしない。
「あの・・・、僕のおばあさんが病気なので・・・持って帰ろうと・・・」
私はアンナさんを呼んだ。
「アンナさん、この子には病気のおばあさんがいますか?」
「いいえ、この子のおばあさんは三年前に亡くなりましたよ。今は父親と二人暮らしです。」
「ぼうや、どうして嘘をついたのかな? 怒らないから、正直にお話してくれる?」
私はできるだけ優しい声を出して、男の子に問うた。
男の子は、ポロポロと涙を零して泣き出した。
「ご、ごめんなさい。パンを持って帰らないと、父さんに怒られるんだ。食べずに持って帰れって言われたんだ。本当にごめんなさい。」
「そっか・・・。お父さんに言われたことをしたのね。あなたのせいじゃないから、泣かないでいいのよ。ねえ、お姉さんに身体を見せてくれないかな?」
私はできるだけ優しく、男の子を刺激しないように言った。
「う、うん・・・」
男の子が服を脱いで見せてくれた身体には、あちこちに無数のあざがあった。
どの子も痩せていて、ろくに食べさせてもらっていないのだと、思えるような子どもたち。
一度に入れるのは三十人ほど。
食堂内に入った子どもたちは、料理の匂いに目を輝かせた。
騎士様が、子どもたちを順番に座らせていく。
今日のメニューは、肉と野菜が入ったシチューとパン、それに牛乳。
目の前に出された料理を見て、子どもたちは歓声を上げた。
「わー、お肉だ! お肉なんて久しぶりー。」
貴族にとっては質素なメニューであっても、貧民街の子どもたちにとっては、最高のごちそうである。
「さあ、みんな、よく噛んで食べるんだよ。」
アンナさんも、とても嬉しそうだ。
私も嬉しくなって、子どもたちを見ていたのだけれど、キョロキョロと目を動かしている挙動不審な男の子を見つけた。
やせ細った腕が今にも折れそうなその子は、七歳くらいだろうか?
いったい何に怯えているのか、不安げな目とブルブル震える手で、その子はパンを食べずに、サッと服の中に隠した。
食堂に来る子どもたちには、出された料理を全部食べてもらうために、持ち帰ってはいけないことを知らせている。
食べきれない場合は、残った料理をまた煮込んで、次の子どもに回すことにしているし、パンも食べかけであっても、次の子どもに食べてもらう。
前世のように、食べ残したら捨てるなんてことは、この貧民街では考えられないことなのだ。
持って帰ってはいけないから、カバンを持ってくることを禁じている。
その子は服の中にパンを隠したまま、シチューを食べ牛乳を飲んだ。
だけど、隠したパンには、一切手を付けなかった。
食べ終わった子どもから、食器を使用済み棚に片付け、次の子どもが入ってくることになっている。
私はその子が食器を片付けた際に、声を掛けた。
「ぼうや、ちょっとお話ししてもいい?」
男の子はビクッとして、目をキョロキョロと動かした。
「じゃあ、あっちのお部屋に行こうか?」
私は隣の控室に、子どもを連れて行った。
ガトーさんも心配してついてきた。
私はしゃがんで、目線を子どもに合わせた。
「ぼうや、パンを隠してたけど、それはあなたのパンなのに、どうして食べなかったの?」
男の子は下を向き、こちらを見ようとはしない。
「あの・・・、僕のおばあさんが病気なので・・・持って帰ろうと・・・」
私はアンナさんを呼んだ。
「アンナさん、この子には病気のおばあさんがいますか?」
「いいえ、この子のおばあさんは三年前に亡くなりましたよ。今は父親と二人暮らしです。」
「ぼうや、どうして嘘をついたのかな? 怒らないから、正直にお話してくれる?」
私はできるだけ優しい声を出して、男の子に問うた。
男の子は、ポロポロと涙を零して泣き出した。
「ご、ごめんなさい。パンを持って帰らないと、父さんに怒られるんだ。食べずに持って帰れって言われたんだ。本当にごめんなさい。」
「そっか・・・。お父さんに言われたことをしたのね。あなたのせいじゃないから、泣かないでいいのよ。ねえ、お姉さんに身体を見せてくれないかな?」
私はできるだけ優しく、男の子を刺激しないように言った。
「う、うん・・・」
男の子が服を脱いで見せてくれた身体には、あちこちに無数のあざがあった。
22
あなたにおすすめの小説
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました
ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。
幼馴染の勇者に「魔王を倒して帰ってきたら何でもしてあげる」と言った結果
景華
恋愛
平和な村で毎日を過ごす村娘ステラ。
ある日ステラの長年の想い人である幼馴染であるリードが勇者として選ばれ、聖女、女剣士、女魔術師と共に魔王討伐に向かうことになる。
「俺……ステラと離れたくない」
そんなリードに、ステラは思わずこう告げる。
「そうだ‼ リードが帰ってきたら、私がリードのお願い、一つだけなんでも叶えてあげる‼」
そんなとっさにステラから飛び出た約束を胸に、リードは村を旅立つ。
それから半年、毎日リードの無事を祈り続けるステラのもとに、リードの史上最速での魔王城攻略の知らせが届く。
勇者一行はこれからたくさんの祝勝パーティに参加した後、故郷に凱旋するというが、それと同時に、パーティメンバーである聖女と女剣士、そして女魔術師の話も耳にすることになる。
戦いの昂りを鎮める役割も担うという三人は、戦いの後全員が重婚の認められた勇者の嫁になるということを知ったステラは思いを諦めようとするが、突然現れたリードは彼女に『ステラの身体《約束のお願い》』を迫って来て──?
誰がどう見ても両片思いな二人がお願いをきっかけに結ばれるまで──。
獅子の最愛〜獣人団長の執着〜
水無月瑠璃
恋愛
獅子の獣人ライアンは領地の森で魔物に襲われそうになっている女を助ける。助けた女は気を失ってしまい、邸へと連れて帰ることに。
目を覚ました彼女…リリは人化した獣人の男を前にすると様子がおかしくなるも顔が獅子のライアンは平気なようで抱きついて来る。
女嫌いなライアンだが何故かリリには抱きつかれても平気。
素性を明かさないリリを保護することにしたライアン。
謎の多いリリと初めての感情に戸惑うライアン、2人の行く末は…
ヒーローはずっとライオンの姿で人化はしません。
続・ド派手な髪の男にナンパされたらそのまま溺愛されました
かほなみり
恋愛
『ド派手な髪の男にナンパされたらそのまま溺愛されました』、『ド派手な髪の男がナンパしたら愛する女を手に入れました』の続編です。こちらをお読みいただいた方が分かりやすくなっています。ついに新婚生活を送ることになった二人の、思うようにいかない日々のお話です。
ハードモードな異世界で生き抜いてたら敵国の将軍に捕まったのですが
影原
恋愛
異世界転移しても誰にも助けられることなく、厳しい生活を送っていたルリ。ある日、治癒師の力に目覚めたら、聖堂に連れていかれ、さらには金にがめつい師によって、戦場に派遣されてしまう。
ああ、神様、お助けください! なんて信じていない神様に祈りを捧げながら兵士を治療していたら、あれこれあって敵国の将軍に捕まっちゃった話。
敵国の将軍×異世界転移してハードモードな日々を送る女
-------------------
続以降のあらすじ。
同じ日本から来たらしい聖女。そんな聖女と一緒に帰れるかもしれない、そんな希望を抱いたら、木っ端みじんに希望が砕け散り、予定調和的に囲い込まれるハードモード異世界話です。
前半は主人公視点、後半はダーリオ視点。
侯爵令嬢ヴェロニカの推し活~義弟の恋を応援していたはずが、最初から逃げ場はありませんでした~
春野ふぶき
恋愛
貴族の家督は男子のみが継げる世界。
侯爵家の一人娘ヴェロニカは、家を継ぐために迎えられた義弟ルートヴェルを、前世日本人の感覚で「推し」として崇拝していた。
容姿端麗で完璧な義弟には、いずれふさわしい伴侶が現れる。
そう信じ、彼の恋を応援し続けるヴェロニカは、自分が選ばれる未来など想像もしない。
しかし彼女の献身は、義弟の静かな執着と独占欲を確実に育てていた。
「姉上は、最初から僕のものですよ」
勘違いに気づいた時には、すでに逃げ道は閉ざされている。
甘く、重く、逃がさない――義弟の歪んだ執着に囚われるTL短編。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる