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第三章
兎神社のみなしご狐 2
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「狐坂さんが陰陽師協会に依頼を出すなんて、いったいどういう風の吹き回しですか!?」
事務所に着き、始業と同時に電話をかけた紬は、開口一番にそう質問をぶつけた。
『ふあ……? なんだよう……。まだ八時半じゃんか……。一応あんたからの着信は音が鳴るように設定しといたけど、こんな朝早くからかけてくるなんて聞いてねえぞ……』
耳に当てたスマホからは半ば寝ぼけたような喬の声が返ってくる。紬は頬を膨らませて言い返した。
「こんな時間まで寝てらっしゃるなんて、いいご身分ですね! そんなことより、これって本当に狐坂さんが依頼されたんですか? 何かの間違いじゃなくて?」
『妖狐絡みの内容なんだから、僕が出した依頼だって聞かなくても分かるだろ……。用件がそれだけなら、そろそろ二度寝させてもらってもいいか?』
「ええ!? まだ惰眠をむさぼるつもりなんですか!? 今すぐご自宅に向かおうと思っていたのに!」
『来るな! 頼むから二度寝させてくれ!』
「じゃあ、九時半なら大丈夫ですか?」
『せめて十時で頼む……』
「まったく、仕方ないですね。では、きっかり十時に伺いますから、絶対に部屋から出てきてくださいよ!」
『ああ……』
そんなやる気のない返事を最後に通話はプツンと切られる。紬が苦笑しながらスマホをデスクに置くと、向かいの席の大森先輩が頬杖をつきながらいたずらっぽい視線をこちらに向けていることに気がついた。
「狐坂くん?」
「ああ、はい」
大森先輩の問いかけに、紬はちょっと肩をすくめて頷く。大森先輩は面白そうに目を輝かせて続けた。
「びっくりだよねえ。あの狐番が自分からこっちに仕事を持ち込んでくるなんて。紬ちゃんと死線をくぐり抜けたことで、なにか心境の変化があったりしたのかな?」
「いやあ……。どうでしょう。自分がやりたくない面倒ごとを私に押し付けようと企んでるだけなんじゃないかと思いますけど」
紬はそう答えて首を傾げたが、大森先輩は楽しげな表情でなおも言葉を継ぐ。
「ふふ。だとしても、彼の信用を勝ち得てるってことなんだから、大したものよ。なんだかんだで、紬ちゃんは狐坂くんといい協力関係を築いていけそうね」
「うーん。協力関係っていうよりは、互いに相手を利用しあう関係になってしまいそうな気が……。今回の依頼も一筋縄では行かないんじゃないかって予感がしていますし」
紬は喬のふてぶてしい態度を思い浮かべ、ぽりぽりと頬をかきながら言った。
***
九時五十五分。紬は喬のマンションに到着した。京都では約束の時間から少し遅れて行くのがマナーだと言う人もいるが、ぐうたらな寝坊助相手にそんな気遣いをしてあげるつもりはない。十時になった瞬間に呼び鈴を押してやると意気込み、紬は車を降りてマンションに突撃した。
喬の部屋の前に待機した紬は、呼び鈴に手を添え、腕時計を睨みながら頭の中で律儀に秒数をカウントする。
(九時五十九分五十七秒、五十八秒、五十九秒……今だ!)
宣言通りきっかり十時〇分〇秒。これで文句あるまいと、紬は扉の向こうでこだますチャイムの音を聞きながら応答を待った。――それから待つことおよそ一分。一向に反応がないので、もう一度押してやろうかと、紬が呼び鈴に手を伸ばしたタイミングでようやく、ガチャッと部屋の中から扉が開けられる。
「ふああ……。いらっしゃい……」
明らかに寝起きの顔をした喬が姿を現した。紬は即座に頬を膨らませて彼に詰め寄って言う。
「お・そ・よ・う・ございます! まったく。狐坂さんはいつもこんなに自堕落な生活を送っているんですか!?」
喬はたちまちムッとした表情を浮かべた。
「自堕落とは失礼な。僕はちゃんと規則正しい夜型の生活を送っているんだぞ。この多様性の時代に早寝早起きを全人類に強要するなんてナンセンス極まりない」
「うぐ。確かにそれも一理ありますけど、あなたの場合、そのせいで朝の仕事に支障が出ちゃってるじゃないですか!」
「別に目付け役は定時で雇われてるわけじゃないんだからいいだろ。世界のトレンドはフレックスタイム制だ。それに知ってるか? アリの社会でも、常に二割の働きアリは仕事を休んで非常時に備えているらしいぜ」
「もう、屁理屈ばっかりこねて。あなたがアリを見習って非常時に活躍してくれたらいいんですけどね! そんなことより、この依頼はいったいなんなんですか?」
紬はそう言って、タブレット端末の画面を喬に突き付けた。
「なにって……。読んだ通りの依頼内容だけど」
喬はすっとぼけた態度で答える。紬はいらだちを露わにして端末をひっくり返し、依頼の文面をそのまま読み上げた。
「『岡崎神社に棲みついた妖狐の遊び相手になってください』――ですか? 確かに読めば内容は分かりますよ。でも、妖狐の遊び相手になってって、どういう意味ですか? そんなの狐坂さんが自分でやればいいじゃないですか!」
「いやあ、そうはいかない事情があってさ」
「聞きましょう」
紬は腕組みして、狐番に申し開きの機会を与える。しかし、喬の返答は拍子抜けするほど短いものだった。
「きつい」
「は?」
「僕の力じゃ、やんちゃ盛りの妖狐とじゃれあうのはきつい」
「はあ~っ!?」
紬は思わず声を大きくする。やっぱりこの男、私に面倒ごとを押し付けるつもりで依頼を出したのか!?
「ふざけないでください! 陰陽師は妖狐とのじゃれあいに付き合っていられるほど暇じゃないんですよ!?」
「え。毎朝、吉田山で見えない敵と戦っているのに?」
「妖狐たちから聞いたんですか? あれはれっきとした訓練です! 別に暇を持て余しているわけじゃありません!」
「そっかー。土蜘蛛事件の時の貸しを返してもらおうと思ったんだけどなあ」
「くっ……。それを今になって持ち出してきますか!」
卑怯な切り札を出されて紬が歯ぎしりすると、喬はニヤリと口角を上げてダメ押しの一手を放ってきた。
「ん? どうした? あの時に、また僕が困った時に助けてくれるって言ったのはあんただぜ?」
――完敗だ。紬は肩を落としてため息交じりに言う。
「はあ……。分かりましたよ。とりあえずその妖狐に会いに行きますから、詳しい事情は現場で聞かせてください」
「よしきた」
喬は憎たらしいほどに晴れやかな笑みを浮かべる。そしていつになく乗り気でサンダルをつっかけると、手ぶらのままでのこのこ外に出てきたのだった。
***
事務所に着き、始業と同時に電話をかけた紬は、開口一番にそう質問をぶつけた。
『ふあ……? なんだよう……。まだ八時半じゃんか……。一応あんたからの着信は音が鳴るように設定しといたけど、こんな朝早くからかけてくるなんて聞いてねえぞ……』
耳に当てたスマホからは半ば寝ぼけたような喬の声が返ってくる。紬は頬を膨らませて言い返した。
「こんな時間まで寝てらっしゃるなんて、いいご身分ですね! そんなことより、これって本当に狐坂さんが依頼されたんですか? 何かの間違いじゃなくて?」
『妖狐絡みの内容なんだから、僕が出した依頼だって聞かなくても分かるだろ……。用件がそれだけなら、そろそろ二度寝させてもらってもいいか?』
「ええ!? まだ惰眠をむさぼるつもりなんですか!? 今すぐご自宅に向かおうと思っていたのに!」
『来るな! 頼むから二度寝させてくれ!』
「じゃあ、九時半なら大丈夫ですか?」
『せめて十時で頼む……』
「まったく、仕方ないですね。では、きっかり十時に伺いますから、絶対に部屋から出てきてくださいよ!」
『ああ……』
そんなやる気のない返事を最後に通話はプツンと切られる。紬が苦笑しながらスマホをデスクに置くと、向かいの席の大森先輩が頬杖をつきながらいたずらっぽい視線をこちらに向けていることに気がついた。
「狐坂くん?」
「ああ、はい」
大森先輩の問いかけに、紬はちょっと肩をすくめて頷く。大森先輩は面白そうに目を輝かせて続けた。
「びっくりだよねえ。あの狐番が自分からこっちに仕事を持ち込んでくるなんて。紬ちゃんと死線をくぐり抜けたことで、なにか心境の変化があったりしたのかな?」
「いやあ……。どうでしょう。自分がやりたくない面倒ごとを私に押し付けようと企んでるだけなんじゃないかと思いますけど」
紬はそう答えて首を傾げたが、大森先輩は楽しげな表情でなおも言葉を継ぐ。
「ふふ。だとしても、彼の信用を勝ち得てるってことなんだから、大したものよ。なんだかんだで、紬ちゃんは狐坂くんといい協力関係を築いていけそうね」
「うーん。協力関係っていうよりは、互いに相手を利用しあう関係になってしまいそうな気が……。今回の依頼も一筋縄では行かないんじゃないかって予感がしていますし」
紬は喬のふてぶてしい態度を思い浮かべ、ぽりぽりと頬をかきながら言った。
***
九時五十五分。紬は喬のマンションに到着した。京都では約束の時間から少し遅れて行くのがマナーだと言う人もいるが、ぐうたらな寝坊助相手にそんな気遣いをしてあげるつもりはない。十時になった瞬間に呼び鈴を押してやると意気込み、紬は車を降りてマンションに突撃した。
喬の部屋の前に待機した紬は、呼び鈴に手を添え、腕時計を睨みながら頭の中で律儀に秒数をカウントする。
(九時五十九分五十七秒、五十八秒、五十九秒……今だ!)
宣言通りきっかり十時〇分〇秒。これで文句あるまいと、紬は扉の向こうでこだますチャイムの音を聞きながら応答を待った。――それから待つことおよそ一分。一向に反応がないので、もう一度押してやろうかと、紬が呼び鈴に手を伸ばしたタイミングでようやく、ガチャッと部屋の中から扉が開けられる。
「ふああ……。いらっしゃい……」
明らかに寝起きの顔をした喬が姿を現した。紬は即座に頬を膨らませて彼に詰め寄って言う。
「お・そ・よ・う・ございます! まったく。狐坂さんはいつもこんなに自堕落な生活を送っているんですか!?」
喬はたちまちムッとした表情を浮かべた。
「自堕落とは失礼な。僕はちゃんと規則正しい夜型の生活を送っているんだぞ。この多様性の時代に早寝早起きを全人類に強要するなんてナンセンス極まりない」
「うぐ。確かにそれも一理ありますけど、あなたの場合、そのせいで朝の仕事に支障が出ちゃってるじゃないですか!」
「別に目付け役は定時で雇われてるわけじゃないんだからいいだろ。世界のトレンドはフレックスタイム制だ。それに知ってるか? アリの社会でも、常に二割の働きアリは仕事を休んで非常時に備えているらしいぜ」
「もう、屁理屈ばっかりこねて。あなたがアリを見習って非常時に活躍してくれたらいいんですけどね! そんなことより、この依頼はいったいなんなんですか?」
紬はそう言って、タブレット端末の画面を喬に突き付けた。
「なにって……。読んだ通りの依頼内容だけど」
喬はすっとぼけた態度で答える。紬はいらだちを露わにして端末をひっくり返し、依頼の文面をそのまま読み上げた。
「『岡崎神社に棲みついた妖狐の遊び相手になってください』――ですか? 確かに読めば内容は分かりますよ。でも、妖狐の遊び相手になってって、どういう意味ですか? そんなの狐坂さんが自分でやればいいじゃないですか!」
「いやあ、そうはいかない事情があってさ」
「聞きましょう」
紬は腕組みして、狐番に申し開きの機会を与える。しかし、喬の返答は拍子抜けするほど短いものだった。
「きつい」
「は?」
「僕の力じゃ、やんちゃ盛りの妖狐とじゃれあうのはきつい」
「はあ~っ!?」
紬は思わず声を大きくする。やっぱりこの男、私に面倒ごとを押し付けるつもりで依頼を出したのか!?
「ふざけないでください! 陰陽師は妖狐とのじゃれあいに付き合っていられるほど暇じゃないんですよ!?」
「え。毎朝、吉田山で見えない敵と戦っているのに?」
「妖狐たちから聞いたんですか? あれはれっきとした訓練です! 別に暇を持て余しているわけじゃありません!」
「そっかー。土蜘蛛事件の時の貸しを返してもらおうと思ったんだけどなあ」
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「ん? どうした? あの時に、また僕が困った時に助けてくれるって言ったのはあんただぜ?」
――完敗だ。紬は肩を落としてため息交じりに言う。
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