【R18】復讐を決意した傷もの令嬢は、魅惑の王弟殿下に甘く翻弄される 〜契約結婚の条件に夜伽が含まれていたなんて聞いてません!〜

ウリ坊

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バカな婚約者

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 馬鹿だ馬鹿だと思っていた婚約者が、ついに結婚式でまで馬鹿なことをしでかした。

 この時、オリビア・コンバートは二十五だった。
 一つ年上のジャンとは十歳の頃に婚約を結んだ。ジャンはスミス侯爵家の次男で、跡取りのいなかったコンバート子爵家に婿入りする予定だった。
 だがジャンには厄介な癖があった。それは浮気グセだ。
 元々むらっ気もあることはわかっていた。
 オリビアにも婚前交渉を迫っていたが、がんとして結婚してからと断っていた。
 そのせいか他の女性といる姿はたまに見かけていた。
 
(まぁ……今のうちに適当に遊んでおけば結婚する頃には落ち着くよね? 男の人って、たぶんそういうものだし)
 
 早い段階から婚約し、他の女性と付き合うこともなく愛のない結婚するため、貴族の男性は愛人やめかけを外に作る。

 初めこそ怒ったり注意したりしていたが、一向に浮気グセの直らないジャンに途中からオリビアも諦めてしまった。
 それにオリビア自身もジャンのことを好きではなかったのだ。
 だが婚約した手前、他の男に目移りすることもなく、堅実けんじつに生きてきたつもりだ。

 それよりも父親と共に領地を管理することのほうに興味があり、ジャンとはどうせ一緒になるのだからと放置している状態だった。
 コンバート領は海が近く港もあり、国境も近かったため様々な国の人間が出入りしていた。
 そのため領主である父親は多くの国の言葉を覚えていた。
 オリビアもその様子を見て、父親に習うよう必死で様々な国の言葉を覚え、領地に関する事柄を把握するように努めていた。

 二十代になった頃、ジャンが本格的にコンバートへ領地入りしてきた。
 一緒に暮らすようになってわかったが、ジャンはどうしようもないろくでなし男だった。
 これから統治する領地のことを知ろうともせず、屋敷にいても仕事もしないで、しまいには領地へ赴くオリビアに悪態をつく始末。
 たまにどこかへ出かけたかと思えば、知らない女を連れてくることもあった。

 オリビアをはじめ、家族や使用人も呆れ返っていたが、ジャンは侯爵家の家柄ということもあり、強く言うことはできなかった。

 そして迎えた結婚式当日。
 ここで事件が起こる。
 
「オリビア、花嫁を連れてきた」

「はあ?」

「お前はここで待機してろ。ここにいるアリーナが俺の花嫁だ」

「・・・はあぁぁ??!!」

 こともあろうかジャンは、浮気相手に花嫁衣装を着せてやってきたのだ。

 ここからは大惨事だった。
 領地で開かれた結婚式にはもちろん、何も知らない家族や親戚に領地民も周りには集まっていた。
 父親の仕事を手伝っていた領地民はオリビアの顔ももちろん知っていた。
 ジャンの家族とも何度か顔合わせしていたので、式場に入場してきた女性がオリビアでないことは一目瞭然だった。

「これは一体、どういうことなんだっ?!」

 一同騒然の中、オリビアの父親の驚愕の声が式場に響いていた。

 式は当然取りやめになり、当事者であるジャンと浮気相手とオリビアが集められた。
 だがジャンも、ジャンの家族からも謝罪の言葉などはなかった。

 それどころか――
 
「全ての原因はオリビアにある! オリビアは俺に構いもせず、毎日外へ出ていた! 婚約者である俺を置いてだっ! それに、いつも領地の話ばかりでつまらないし、一緒にいてもにこりとも笑わない! 女としての可愛げなんてあったもんじゃないんだっ!」

「「「・・・」」」

 浮気相手の肩を抱いて声を荒らげたジャンに、オリビアたちコンバート家一同は、あまりに大人気ない発言に言葉を失っていた。

 オリビアの父が必死で事情を説明したが、スミス侯爵はオリビアを激しく糾弾してきた。

「女が家も守らず、外へ出て領主の真似事をするとはけしからんっ! 此度の息子の行動は当然の結果と言える!!」

「なっ……!」

「息子を精神的に追い詰めた罪と、これまで無駄に過ごした婚約期間に対する賠償金を請求させてもらうぞッ!!」

 そこからは地獄のような日々が続いた。

 父とスミス侯爵の言い合いが続き、後日両家での話し合いが開かれたが決着はつかなかった。
 最終的に裁判にまでもつれ込んだが、オリビアたちの主張はまったく反映されず、結果としてスミス侯爵家に多額の賠償金を支払う羽目になってしまう。
 これまでも父は婚約した手前、財政に逼迫ひっぱくしていたスミス侯爵家へ援助を送っていた。
 婚約は白紙になったが、今度は賠償という形で莫大な金額を送らなければならなくなってしまった。

「お父さま、ごめんなさい! 私のせいでっ……!!」

「――いや、お前のせいじゃないよ。元々婚約を提案したのは私なんだし、お前はずっとジャンの行動を我慢していただろ?」

 心優しい父はすっかりやつれてしまった。
 自分が汚名を着せられたことよりも、父を苦しめている事実のほうがオリビアをやるせなくさせた。
 
「お父さまっ……私、決心したわっ!」

「どうしたんだ?」

「あいつらに復讐してやるッ!!」

「ふ、復讐?! いや、復讐なんてそんなこと、しなくていいんだよ!」

 裁判所でオリビアたちに賠償金を支払うよう判決が下ったとき、ジャンやスミス侯爵たちが当然のことのように嘲笑っていた顔が今でも忘れられない。
 何度思い出しても悔しさと屈辱で体が震えてくる。

「嫌ですッ! お父さまをこんな目に合わせて、負債まで背負わせたあいつらを、絶対に許さないッ!!」

「オリビア……」
 
 この日からオリビアはジャンに復讐するため、計画を練り始めた。  
 
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