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事後
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翌日。
オリビアが動けたのは、その日の夕方だった。何度か目は覚ましたが、体が辛くて起き上がれず、再び布団に包まって寝ることを繰り返していた。
ちょうど目を覚ました頃、コンコンというノックの音と共にイクシオンが訪ねてきた。
「我が妃よ。体は平気か?」
まだ布団に入っていたオリビアはその問いかけには答えなかった。
「おい、起きてるんだろ? 返事もしてくれないのか」
ギシッと音を立ててベッドに腰掛けたイクシオンは、布団から出ないオリビアを横目で見ている。
布団の中で蹲ったオリビアは、問いかけに対しそっと布団を捲り顔だけ出した。
「殿下は、鬼畜です……」
顔は出したがイクシオンと視線は合わせずに、掠れた声でポツリと独り言のように呟いた。
「ん? なぜだ?」
イクシオンは言葉の意図を問うように、布団に潜るオリビアに向かい首を傾げた。
「初夜で、しかもはじめての相手に、三度も行為を強いるなど、鬼畜の所業としか言いようがありませんっ」
昨晩声を上げすぎたせいか、掠れてしまっているが気にせずに話した。
昨夜のことを思い出すと屈辱的で、どうしても口調が乱暴になってしまう。
「あんなに優しく抱いてやったのに、酷い言われようだな。痛くはなかっただろう?」
心底心外そうに話しているが、昨夜のイクシオンは容赦なかった。
「痛くは、なかったですが……一度でやめてください。体が辛いです」
「お前は感度が良すぎるんだ。イキすぎて体が辛いのだろう。俺のを挿れたまま二度も達したやつはお前が初めてだ。しかも処女でな」
クスリと笑ってあけすけに言葉を放つイクシオンの言い様に、羞恥心が沸き起こり体がふるふると震えてくる。
「――あぁっ! もう、喋らないでくださいっ!」
真っ赤になった顔を隠すようにガバッと布団に潜り込んだ。
「クククッ……! まぁ喜べ、我が妃よ。俺は満足したんだからな」
「殿下の感想は聞きたくありません」
布団の中から話していたオリビアはイクシオンの言葉の意味を理解していない。
「お前を抱く前に言っていただろう? 俺が満足しなければ――」
「ッ!」
イクシオンの言っていた言葉を思い出し、バッと手で布団を払い除けた。
「まさかっ……! じょ、冗談、ですよね……?」
布団から出たオリビアを待ち構えていたイクシオンは、優美な微笑みを浮かべている。
「光栄に思え。俺は来る者は拒まないが去る者も追わない。非常に飽きっぽいんだ。だが、お前はまた抱いてもいいと思った」
「……これも、嫌がらせですか?」
布団から出たオリビアは訝しむように、余裕の笑みを見せるイクシオンの顔に強い視線を送っている。
「俺は嫌がらせで女を抱いたりはしない」
「余計に悪いです。……では、殿下が飽きるまで、付き合えと?」
「そうだな。まぁ、安心しろ。さっきも言ったが、俺は飽きっぽい。お前に満足しなくなったら、もう手は出さないだろう」
「殿下が飽きれば私はお役御免ということですよね?」
「そういうことになるな」
長く息を吐き、イクシオンから視線を外した。
正直な話、これっきりだと思っていた。
イクシオンはどんな美女でも相手をするのは一度きりで、二度同じ女を寝所に呼んだことはなかった。
なので醜態すら晒したと嘆き、今回限りなのだからと自分に言い聞かせていたオリビアに、イクシオンの言葉は意外すぎた。
「……わかりました。話が早くて助かります」
本人も言っている通り、イクシオンは飽きっぽい。
そんなイクシオンが唯一追い求めていた人こそがアフロディーテだった。
ヒロインに相応しい見目麗しい容姿で、イクシオンと並んでも見劣りすらしない。
アフロディーテだからこそ生涯の相手に選んだのだ。
(結局殿下は、私の嫌がる反応を見て楽しみたいだけなんだよね。そのうち嫌でも美女と遊びたがるだろうから、少しの間我慢すればいいだけか)
「まぁ、飽きればの話だがな」
この時、ポソッと呟かれたイクシオンの不穏な言葉は、安心しきっていたオリビアには聞こえていなかった。
オリビアが動けたのは、その日の夕方だった。何度か目は覚ましたが、体が辛くて起き上がれず、再び布団に包まって寝ることを繰り返していた。
ちょうど目を覚ました頃、コンコンというノックの音と共にイクシオンが訪ねてきた。
「我が妃よ。体は平気か?」
まだ布団に入っていたオリビアはその問いかけには答えなかった。
「おい、起きてるんだろ? 返事もしてくれないのか」
ギシッと音を立ててベッドに腰掛けたイクシオンは、布団から出ないオリビアを横目で見ている。
布団の中で蹲ったオリビアは、問いかけに対しそっと布団を捲り顔だけ出した。
「殿下は、鬼畜です……」
顔は出したがイクシオンと視線は合わせずに、掠れた声でポツリと独り言のように呟いた。
「ん? なぜだ?」
イクシオンは言葉の意図を問うように、布団に潜るオリビアに向かい首を傾げた。
「初夜で、しかもはじめての相手に、三度も行為を強いるなど、鬼畜の所業としか言いようがありませんっ」
昨晩声を上げすぎたせいか、掠れてしまっているが気にせずに話した。
昨夜のことを思い出すと屈辱的で、どうしても口調が乱暴になってしまう。
「あんなに優しく抱いてやったのに、酷い言われようだな。痛くはなかっただろう?」
心底心外そうに話しているが、昨夜のイクシオンは容赦なかった。
「痛くは、なかったですが……一度でやめてください。体が辛いです」
「お前は感度が良すぎるんだ。イキすぎて体が辛いのだろう。俺のを挿れたまま二度も達したやつはお前が初めてだ。しかも処女でな」
クスリと笑ってあけすけに言葉を放つイクシオンの言い様に、羞恥心が沸き起こり体がふるふると震えてくる。
「――あぁっ! もう、喋らないでくださいっ!」
真っ赤になった顔を隠すようにガバッと布団に潜り込んだ。
「クククッ……! まぁ喜べ、我が妃よ。俺は満足したんだからな」
「殿下の感想は聞きたくありません」
布団の中から話していたオリビアはイクシオンの言葉の意味を理解していない。
「お前を抱く前に言っていただろう? 俺が満足しなければ――」
「ッ!」
イクシオンの言っていた言葉を思い出し、バッと手で布団を払い除けた。
「まさかっ……! じょ、冗談、ですよね……?」
布団から出たオリビアを待ち構えていたイクシオンは、優美な微笑みを浮かべている。
「光栄に思え。俺は来る者は拒まないが去る者も追わない。非常に飽きっぽいんだ。だが、お前はまた抱いてもいいと思った」
「……これも、嫌がらせですか?」
布団から出たオリビアは訝しむように、余裕の笑みを見せるイクシオンの顔に強い視線を送っている。
「俺は嫌がらせで女を抱いたりはしない」
「余計に悪いです。……では、殿下が飽きるまで、付き合えと?」
「そうだな。まぁ、安心しろ。さっきも言ったが、俺は飽きっぽい。お前に満足しなくなったら、もう手は出さないだろう」
「殿下が飽きれば私はお役御免ということですよね?」
「そういうことになるな」
長く息を吐き、イクシオンから視線を外した。
正直な話、これっきりだと思っていた。
イクシオンはどんな美女でも相手をするのは一度きりで、二度同じ女を寝所に呼んだことはなかった。
なので醜態すら晒したと嘆き、今回限りなのだからと自分に言い聞かせていたオリビアに、イクシオンの言葉は意外すぎた。
「……わかりました。話が早くて助かります」
本人も言っている通り、イクシオンは飽きっぽい。
そんなイクシオンが唯一追い求めていた人こそがアフロディーテだった。
ヒロインに相応しい見目麗しい容姿で、イクシオンと並んでも見劣りすらしない。
アフロディーテだからこそ生涯の相手に選んだのだ。
(結局殿下は、私の嫌がる反応を見て楽しみたいだけなんだよね。そのうち嫌でも美女と遊びたがるだろうから、少しの間我慢すればいいだけか)
「まぁ、飽きればの話だがな」
この時、ポソッと呟かれたイクシオンの不穏な言葉は、安心しきっていたオリビアには聞こえていなかった。
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