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異母兄弟
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どのルートを辿っても、この一年後、ルードヴィッヒ三世は闘病の末に崩御してしまう。
医師を目指していたアフロディーテが懸命に看病をしたが、ルードヴィッヒ三世は危篤状態になり、そのまま他界してしまった。
この時にイクシオンは、自分の想いを異母兄に伝えなかったことをとても後悔していた。
もっと自分が異母兄を尊敬し、憧れていたと言えば良かったと。
この世界がアフロディーテが選んだメルディオルートの道を辿っていたとしても、ルードヴィッヒ三世が病に倒れることはやはり変わらない。
「ハッハッハッ! イクシオンを尻に敷くとはなかなかよのぉ。余が予想しておったどのような女人にも当てはまらなかったぞ!」
「お褒めにあずかり、恐悦至極にございます」
よく笑うところはイクシオンと似ていると思った。瞳の色以外、顔はさほど似ていないが、異母兄弟でもやはり仕草や性格で似ている部分はあるものだと感心していた。
「フラフラしておったイクシオンが、このように堅実な女性を選ぶとは思わなんだ。王弟妃よ、この先も我が愛しき異母弟を、誰よりも大事にして尽くしてやってくれ」
オリビアも母親を早くに亡くし、妹のエリーゼの母親代わりとして面倒をみてきた。
だからイクシオンを見るルードヴィッヒ三世の瞳がとても慈愛に満ち溢れており、イクシオンをとても大事にしていることがよくわかった。
ここでまた良心の呵責に苛まれ、胸がズキズキと痛んだ。
「ご心配には及びません。私を救ってくださいました殿下には、常日頃より感謝しております。未熟者ではございますが、私の全てをもちまして殿下に尽くしてまいりたい所存です」
契約期間内での話だが、イクシオンには全力で尽くしていくつもりだ。
なのでこれまでルードヴィッヒ三世に話したことに嘘は一つもない。
――コンコンッ!
ここで扉からノックの音が聞こえてくる。急ぎなのか、ノックの音も焦りを感じさせる強さと荒さが目立っていた。
「なんだ。談話中だぞ!」
「王弟殿下ご夫妻とのご歓談中、大変申し訳ございません! 至急、陛下にお伝えしたいことがっ……!」
ルードヴィッヒ三世も声を荒らげたが、伝えに来た者もよほどの用件なのか必死に話しかけている。
「俺たちは構いません。急ぎの用件のようなので」
イクシオンの言葉にルードヴィッヒ三世も頷き、声をかけた。
「入れ」
「申し訳ございません、王弟殿下! 実は……」
入ってきた侍従と思われる男性はイクシオンに向かい一礼すると、すぐにルードヴィッヒ三世に近づき耳打ちしていた。
「――なに? 通訳が体調不良だと?」
「は、はい。立ち上がれないほどの腹痛で、代役を立ててほしいと訴えておりまして……」
「リュビーナ語を理解している者は城内に何人もいないのだぞ! これから会談があるというのに、通訳がいなくては成り立たないではないかっ!」
「ひっ……! 申し訳ございませんっ!!」
話を聞いていてこの侍従がとても哀れに思えてきた。
この人が悪いわけではなく、ただ伝えに来ただけなのに先ほどから謝ってばかりだ。
「急ぎで戻り、ロイズを連れてまいりますか? ロイズでしたらリュビーナの通訳はどうにかできます。しばし会談を延ばしていただければ……」
「リュビーナ国の人間は気が短くて有名なのだ。そうでなくとも無理にこの時間に約束をこちらから取り付けた。それをまた先延ばしにすることなど、最早交渉する余地もないっ」
黙って聞いていたオリビアは、しばらく考えていた。
ここで自分が出しゃばることがいいことだとは思えない。
変に目立つことはしたくないし、あと数ヶ月でいなくなる身としては、辛うじて記憶に残るくらいの薄い印象で留めておきたかった。
「しかし、あちら側の通訳を同時に介することは得策ではありません」
「うむ。此度は特に重要な会談だったのだ。どうしたものか……」
和やかな雰囲気だったが、一気に緊張感のある切羽詰まる雰囲気に様変わりしてしまった。
オリビアは大きく息を吸い、そして長く深く息を吐いた。
医師を目指していたアフロディーテが懸命に看病をしたが、ルードヴィッヒ三世は危篤状態になり、そのまま他界してしまった。
この時にイクシオンは、自分の想いを異母兄に伝えなかったことをとても後悔していた。
もっと自分が異母兄を尊敬し、憧れていたと言えば良かったと。
この世界がアフロディーテが選んだメルディオルートの道を辿っていたとしても、ルードヴィッヒ三世が病に倒れることはやはり変わらない。
「ハッハッハッ! イクシオンを尻に敷くとはなかなかよのぉ。余が予想しておったどのような女人にも当てはまらなかったぞ!」
「お褒めにあずかり、恐悦至極にございます」
よく笑うところはイクシオンと似ていると思った。瞳の色以外、顔はさほど似ていないが、異母兄弟でもやはり仕草や性格で似ている部分はあるものだと感心していた。
「フラフラしておったイクシオンが、このように堅実な女性を選ぶとは思わなんだ。王弟妃よ、この先も我が愛しき異母弟を、誰よりも大事にして尽くしてやってくれ」
オリビアも母親を早くに亡くし、妹のエリーゼの母親代わりとして面倒をみてきた。
だからイクシオンを見るルードヴィッヒ三世の瞳がとても慈愛に満ち溢れており、イクシオンをとても大事にしていることがよくわかった。
ここでまた良心の呵責に苛まれ、胸がズキズキと痛んだ。
「ご心配には及びません。私を救ってくださいました殿下には、常日頃より感謝しております。未熟者ではございますが、私の全てをもちまして殿下に尽くしてまいりたい所存です」
契約期間内での話だが、イクシオンには全力で尽くしていくつもりだ。
なのでこれまでルードヴィッヒ三世に話したことに嘘は一つもない。
――コンコンッ!
ここで扉からノックの音が聞こえてくる。急ぎなのか、ノックの音も焦りを感じさせる強さと荒さが目立っていた。
「なんだ。談話中だぞ!」
「王弟殿下ご夫妻とのご歓談中、大変申し訳ございません! 至急、陛下にお伝えしたいことがっ……!」
ルードヴィッヒ三世も声を荒らげたが、伝えに来た者もよほどの用件なのか必死に話しかけている。
「俺たちは構いません。急ぎの用件のようなので」
イクシオンの言葉にルードヴィッヒ三世も頷き、声をかけた。
「入れ」
「申し訳ございません、王弟殿下! 実は……」
入ってきた侍従と思われる男性はイクシオンに向かい一礼すると、すぐにルードヴィッヒ三世に近づき耳打ちしていた。
「――なに? 通訳が体調不良だと?」
「は、はい。立ち上がれないほどの腹痛で、代役を立ててほしいと訴えておりまして……」
「リュビーナ語を理解している者は城内に何人もいないのだぞ! これから会談があるというのに、通訳がいなくては成り立たないではないかっ!」
「ひっ……! 申し訳ございませんっ!!」
話を聞いていてこの侍従がとても哀れに思えてきた。
この人が悪いわけではなく、ただ伝えに来ただけなのに先ほどから謝ってばかりだ。
「急ぎで戻り、ロイズを連れてまいりますか? ロイズでしたらリュビーナの通訳はどうにかできます。しばし会談を延ばしていただければ……」
「リュビーナ国の人間は気が短くて有名なのだ。そうでなくとも無理にこの時間に約束をこちらから取り付けた。それをまた先延ばしにすることなど、最早交渉する余地もないっ」
黙って聞いていたオリビアは、しばらく考えていた。
ここで自分が出しゃばることがいいことだとは思えない。
変に目立つことはしたくないし、あと数ヶ月でいなくなる身としては、辛うじて記憶に残るくらいの薄い印象で留めておきたかった。
「しかし、あちら側の通訳を同時に介することは得策ではありません」
「うむ。此度は特に重要な会談だったのだ。どうしたものか……」
和やかな雰囲気だったが、一気に緊張感のある切羽詰まる雰囲気に様変わりしてしまった。
オリビアは大きく息を吸い、そして長く深く息を吐いた。
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