【R18】復讐を決意した傷もの令嬢は、魅惑の王弟殿下に甘く翻弄される 〜契約結婚の条件に夜伽が含まれていたなんて聞いてません!〜

ウリ坊

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悔恨 (イクシオン視点)


 建国祭最終日の翌日。

 イクシオンが王城のベッドで目を覚ましたのは昼も近い時間だった。
 薄っすら瞼を開けると、そこには寝る前にいたはずのオリビアはいなかった。

「オリ、ビア……?」
  
 名前を呼ぶが返事はない。
 隣の布団は冷たくなっており、オリビアがいなくなってから時間が経っていることは明白だった。

「――オリビア?!」

 ガバッと起き上がり再びオリビアの名を呼ぶが、部屋は静まり返り、やはり返答はなかった。

 嫌な予感がしてイクシオンは焦ってベッドを降りた。
 散らばった衣類を適当に身に着けると、急いで部屋から出た。

 近くにいた侍女を呼び止め、焦ったようにオリビアの所在を聞いた。

「あっ、お、王弟妃殿下は、早朝に衣類の着替えを頼まれて、そのまま城を出られたようです」

 服のボタンすらまともに止めていないイクシオンに、頬を赤く染めた侍女が目のやり場に困りながら答えていた。

「ここを出た? 朝早くにか!?」

「は、はい! 他の者からは、そう聞いておりますが……」

「くそッ……!」

「あっ! 王弟殿下?!」

 わき目も振らず走り出したイクシオンを、侍女は呆然と見送っていた。

 廊下を走っていると前から異母兄が従者を引き連れて歩いていた。
 
「どうしたのだイクシオン。そんなに急いで?」

「異母兄上っ」

 あまりに必死なイクシオンの様子に、異母兄は珍しいものでも見るように問いかけてきた。

「オリビアの具合はどうだ? 昨日の出来事で気落ちしてはいまいか?」

「ひとまず……俺が一晩中慰めていたので、どうにか落ち着きは取り戻していました」

 視線を下に落とし、早く探しに行きたいという逸る気持ちをどうにか落ち着かせていた。

「そうかそうか。お前たちの仲の良さには驚かされてばかりだな」

「異母兄上っ。我が妃が先に領地へ戻ったようです。俺も心配なのでこのまま戻ってもよろしいでしょうか?」

 これ以上待っていられないとばかりに急かすように話を進めていく。

「おぉ、それで急いでいたのか。好きにするといい。あの無礼者たちの処遇は追々決めるとするか」

「はいっ! ありがとうございます。ではっ!」

 急ぎで走るイクシオンを、異母兄は笑顔で見送っていた。


 馬に乗り、半日かけて領地へ戻って来た時にはすでに日は暮れていた。
 すぐにオリビアの部屋へ向かったが、部屋には灯りもなく、中は物も少なくガランとしていた。

(やはりいないかっ……そうだ! オリビアの荷物はっ)

 イクシオンは部屋の隅にオリビアが荷物をまとめて隠していたことを知っていた。

 灯りを置いて確認するがその荷物は見つからなかった。
 苛立ちを感じながら、ロイズのいる執務室へと足早に向かう。

「ロイズっ! オリビアはどこだっ!」 
 
 バンッと扉を開くなり声を上げると、机の書類をまとめていたロイズが間の抜けた顔でイクシオンを見ていた。

「へっ……? 妃殿下、ですか?? いつお戻りになられたのですか?」

「早くとも昼間にはここに戻っていたはずだ!」
 
「いえ、私は妃殿下とお会いしてませんが……そんなに焦って、一体どうされたのですか?」

「オリビアが急にいなくなってしまったんだっ!」

「えぇっ?!」

 ロイズに簡単に建国祭での出来事を説明した。ロイズも神妙な顔で話を黙って聞いていた。
 
「――そんな大変なことがあったのですね……」

「昨日まで、こんなにも突然いなくなる素振りは見せていなかったっ! あいつは一体どこに行ってしまったんだっ……!?」

 苛立ちを隠す余裕もなく声を荒らげるイクシオンに、ロイズは困った顔をしながら問いかけた。

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