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建国祭
しおりを挟む朝一番で王城へと馬で移動した。
荷物は遅れて馬車で到着し、これから三日間にかけて行われる建国祭に備える。
一日目、二日目は儀式的なもので、王都で祭りが開かれるが王族は神殿に入り、祭壇の前で祈りを捧げるのだ。
一日目はルードヴィッヒ三世を前に、イクシオン、メルディオ、コンラートの順に祈り、最後はオリビアと続いた。
この日もやはり王妃は現れず、厳かに儀式を終えた。
二日目はこのアプテラ王国を造った建国者の初代ルードヴィッヒ一世の墓石を訪れた。
墓石自体が遺跡のような造りになっており、墓の前にはルードヴィッヒ一世の銅像が建てられていた。
ここでも祈りを捧げるため、たくさんの供物を像の前へ並べ、大司教がこれからの国の繁栄を願っていた。
オリビアは初めてのことだらけだったが、誰もできないような経験をさせてもらい密かな感動を覚えていた。
そして訪れた三日目。
疲れもあったがこれで終わりなのかと思うと感慨もひとしおだった。
この三日目は、国中の伯爵家以上の貴族が王都へ集結し、王城で建国を祝う最後のフィナーレだ。
◇◆◇
王城で用意された部屋で支度を整えたオリビアは、鏡の前で自分の姿を確認している。
最後を飾るドレスは、胸元が広めに空いた純白の生地に、金糸の刺繍が所々に縫い付けてあるとても大人な雰囲気の漂う美しいドレスだった。
祭事での王族や高位貴族の衣装は、慣例で白と決まっている。
生地自体も最高級の布を使い、耳や首に着けられた装飾品も、市場での価値が高いイエローダイヤを加工した物ばかりだった。
これらは全てイクシオンが用意してくれたものだ。
オリビアのような下級貴族なら、一生かかっても身に着けることはできない高級品だろう。
(私にこんなドレスはもったいないけど、イクシオンが選んでくれたものだと思うと、嬉しさが勝ってしまう)
自分が誰よりも輝いているとか綺麗だとかは思わないが、それでも建国祭という門出には相応しい装いで、ドレスに着られていない自分に少しホッとしていた。
化粧はそこそこに、髪はアップにしてもらった。
ここで王族の女性はティアラを付けなくてはならないが、これはイクシオンに頼んで配慮してもらった。
そして支度を終えるとイクシオンが扉から入ってくる。
イクシオンは同じく全身が白基調に、金糸で鮮やかに縁取りと刺繍が成された正装だった。肩半分にまとった濃紺のマントも、肩から腰に掛けられた襷のような上質な赤い布も、イクシオンの魅力を引き立て、より一層高貴な雰囲気を醸し出している。
王弟という自らの地位を誇示するような華美で眩いばかりの服装だが、それに一つも見劣りしない美貌を持っているため、文句なく非常によく似合っていた。
「迎えに来たぞ、オリビア」
椅子に座っていたオリビアの前まで来ると、華麗な動作で手を伸ばしている。
支度を手伝ってくれた侍女たちの感嘆の声が後方から漏れているのが聞こえてきた。
短く息を吐くと、伸ばされた手に自分の手を重ねて立ち上がった。
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