【R18】復讐を決意した傷もの令嬢は、魅惑の王弟殿下に甘く翻弄される 〜契約結婚の条件に夜伽が含まれていたなんて聞いてません！〜

復讐劇 4

「王弟殿下っ、国王陛下っ……！　どうか息子をお許しくださいっ！　これはきっと何かの間違いです!!」

　ここで現れたのはジャンの両親であるスミス侯爵とその夫人だった。
　
「ほう……？　我が妃を愚弄ぐろうし、暴力まで振るう暴挙に出て、何が間違いだと言うのか？」

　美しい顔をしたイクシオンが冷淡に吐く言葉は凍えるように冷たく、雑然としていた会場が凍り付くように静まり返った。
　腕の中で話を聞いていたオリビアでさえ、その場で凍りついてしまいそうだった。

「そ、それは……、息子は何も知らずにやったことで……！」

「知らなければ何をしても許されると思っているのか？　王族に手をあげた者は否応なく極刑だ。そして、その一族郎党すべて同罪だッ！」

　厳しい一言にスミス侯爵も侯爵夫人も顔面蒼白になり、言葉を失って立ち尽くしていた。

「――っ！　で、殿下っ！　ど、どうぞ我らに御慈悲をっ！　あれは、あやつが勝手にやったことで、私共にはなんの関係もございませんっ！」
　
　ここで力が抜けたように膝をついたスミス侯爵は、イクシオンの足にでも縋すがるように必死で弁明している。
　どうやらスミス侯爵は、息子という存在を切り捨てたようだ。

「ハッ！　息子も息子なら、親もやはり同様だなッ」
　　
　オリビアを抱きしめたままイクシオンが冷ややかに言葉を放っている。

「気持ちはわかるが、落ち着けイクシオンよ……」

　ここで横にいたルードヴィッヒ三世がイクシオンの肩にポンッと手を置いた。

「国王陛下っ！　どうか、どうかっ……寛大なるご処置をっ!!　今宵こよいは祝いの席ではございませんかっ！」

　この場をどうにかしてくれるとでも思ったのか、スミス侯爵は必死にルードヴィッヒ三世に縋りついた。

「その祝いの席を台無しにしてくれたのが、おぬしの息子だということだ！　この不祥事、どう始末をつけてくれる？」

　縋ったはずのルードヴィッヒ三世の表情はかなり厳しく険しいものだった。

「この者共もさっさと連れて行け！」

　それを見たスミス侯爵は、伸ばしていた手を力なく床に置いた。

「う、嘘よっ……なんて、ことなのっ……！」

「ぁ……あ、あ……そん、な……！　そいつだっ！　そいつの、その女のせいだッ!!」

　スミス侯爵はイクシオンに抱きしめられているオリビアを指さし、責めるように叫んでいる。

「今後に及んでまだ我が妃を愚弄しようとは、許せんなッ……！　貴様らも相応の罰を覚悟しておけッ!!」

　ガクリと肩を落としたスミス侯爵たちも衛兵たちによって連れて行かれてしまった。