【R18】復讐を決意した傷もの令嬢は、魅惑の王弟殿下に甘く翻弄される 〜契約結婚の条件に夜伽が含まれていたなんて聞いてません！〜

終幕

　ジャンたちは連れて行かれたが、辺りは未だに騒然としていた。
　オリビアはイクシオンの腕に抱かれながら、呆然と会場の扉を眺めていた。

（終わった、の……？　私は何もしていないのに、イクシオンが全部解決してくれた）

　イクシオンの顔を見上げていると、気づいたのかオリビアの叩かれた頬にそっと手を触れ、労わるようにキスを送ってくれる。

「ぁ……」

「大丈夫か？」

「はい」

「大丈夫じゃなさそうだ」

「え……？」

　自分でも知らない内に瞳から涙が溢れていた。

「なっ……どう、して……？」

　気づいた途端、堰を切ったように涙が流れてくる。

「ふっ……！　ぅ、くっ……でん、かっ……！」

　ボロボロと涙を流すオリビアをすぐさま自分の胸に抱きしめると、イクシオンはルードヴィッヒ三世に向かい声をあげた。

「陛下。我が妃が先ほどの一件で深く傷つき、負傷もしております。妃の心身の治療のためにも、この場を退席させてもらってもよろしいでしょうか？」

「おぉ、オリビアよっ……！　大事ないか？　あとのことは考えなくてよいから、今はゆっくり休むといい」

「ご配慮感謝いたします。では我々はこれにて失礼させていただきます」

　ルードヴィッヒ三世に頭を下げてから涙の止まらないオリビアを抱え上げると、イクシオンは出口に向かって歩き出した。

『オリビアっ！　待ってるからねっ！』

　遠くでトゥバラの声が聞こえたが、返事を返すことはできず、イクシオンに抱えられたまま会場を離れた。


　◇◆◇


　イクシオンは王城の医務室に向かわず、自分の部屋へオリビアを連れてきた。

　オリビアをベッドへ一旦座らせると、部屋の扉へ歩いて行き、誰かと話してからまた戻って来た。

　その間もオリビアの涙は止めどなく流れ、ベッドに座って何度手で拭っても、次々と頬を伝いドレスを濡らしていた。

「ひっ、く……ふ、うぅっ……ひっ、ぅ」

　悲しいのか嬉しいのかもわからない。
　ただ涙が止まらない。

　嗚咽を漏らしながらしゃくりあげていると、イクシオンがオリビアの近くまで歩いてきた。

「ほら、来い」

　そう優しく呟くと、イクシオンはオリビアの隣に座り、再び腕の中へと閉じ込めた。