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前途多難
そのままライアーロードまでどうにか馬を走らせた。
城に着くとすぐに自分の部屋へ行き、まとめてあった荷物を取り出した。
自分の机の上には、この前摘んできたハレノニチ草が花瓶の中で花開いていた。
花瓶を手に取ると、そっと持ち上げて匂いを嗅いだ。かすかな甘い香りが鼻をくすぐる。
この花のおかげでイクシオンと共にいることができ、復讐を果たすこともできた。
(これは、このままでいいか。あの時はまだ蕾だったのに、もう花が咲いてる)
花瓶を机に戻すと、残したものがないか部屋を見渡した。
半年間暮らしていた部屋に、自分の痕跡が残っていないかを確認する。
確認を終えると、部屋の扉まで足を進めた。
部屋を出る時はぐッと込み上げるものがあったが、振り返ることはせずにまた外へと向かった。
「オリビア様、また出かけられるのですか?」
ここで声をかけたのは門兵のマルコスだった。
戻ってすぐ城を出て行くオリビアに、外出するのか訪ねてきている。
「えぇ。しばらく、城を空けると思います」
「そうなのですか? ずいぶん急ですね。一体どちらまで?」
つい先ほど帰って来たばかりのオリビアが、時間を置かずにまた馬に乗っていることに疑問を覚えたのだろう。
不思議そうに聞いているマルコスに曖昧に答えていく。
「少し……遠出をするので」
「そうですか。では、どうぞお気をつけていってらっしゃいませ」
よく外出するオリビアを知っているからこそ、マルコスも疑問には思わないのだろう。
ピシッとした姿勢で、笑顔で見送ってくれている。
「……はい。ありがとう、ございました」
馬に乗ったままぼそっと呟くと、オリビアは手綱を握り締めて馬を走らせた。
◇◆◇
しばらくして着いた場所はユニットを送り出したライアーロードから一番近い港だった。
(リュビーナ行きの定期船はたしか三日後だった。とりあえず近くに宿を取って、少し休みたい)
念の為フードを被り、ガーゼの貼ってある顔を隠した。
馬から降りると手綱を引いて宿屋までやってくる。
ここは港町ということもあり、宿屋はたくさん建ち並んでいた。
「すみません。数日部屋をお借りしたいのですが。空いてますか?」
「あぁ、空いてるよ。前払いだけどいいかい?」
「わかりました。馬は小屋に繋いでいいですか?」
「そうしてくれ。干し草は別料金だよ」
「ではそちらも払っておきます」
ひとまず三日分の宿賃と干し草代を払うと、二階の部屋へ案内された。
部屋まで来ると鍵をかけ、荷物を床に置いて狭くて硬いベッドへ横たわった。
(疲れた……さすがに、抱かれたあとで動くのはしんどいな)
ベットに体を沈めて瞳を閉じると、知らない間に眠りについていた。
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