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しおりを挟む大通りまで送ってもらったティアーナ達は、アーサーに勤め先である『宿り木』の場所を教え、その場を別れた。
去り際に念を押して、他の男の誘いには乗らないよう言われた。
ティアーナがコクコク頷くと、アーサーは笑顔で去って行った。
「それで、お嬢様……あのアーサー様とはどういったご関係で?」
二人で並んで歩きながら、アイシャが突然切り出す。
ティアーナは真っ赤になりながら、
「どういったも何も、まだお会いして二回目で、アーサー様の事なんて何も知らないし……」
「そのわりと、かなり親密そうにされていましたが」
ティアーナは更に顔を赤くする。
「あれは、アーサー様がその…迫ってくるから!」
「……お嬢様も満更ではないですよね?」
「もう!今日のアイシャは意地悪だわ!」
真っ赤になって憤るティアーナを見て、アイシャはニヤニヤとしている。完全にからかっている感じだ。
「いえ、私は嬉しいのです。お嬢様は恋愛に関してあまり前向きではないので、こうやって殿方に興味を示してくれているのが新鮮なんですよ」
急に真面目に話すアイシャはやっぱり卑怯だ。文句が言えなくなってしまう。
「別に…興味が無いわけじゃないわ。ただ、どうしても慎重になってしまうのよね……」
そう言って、表情に陰を落とす。
ティアーナの前世は主婦だ。もちろん夫も居たし、子供もいた。
ただ、夫が浮気を繰り返すダメ男だった。
何度も謝っては、また浮気を繰り返し、挙げ句のはて、前世のティアーナはその浮気相手に刺されて命を落とした。まだ20代後半だったと思う。
前世を思い出し、王家の呪いもあり、ティアーナはどうしても気軽に恋愛が出来なくなっていた。
どの時代でもどこの世界でも、男が浮気をする現実はあまり変わらない。逆もあるのだが、圧倒的に男性の割合が多い。
しかも呪いのせいで、ティアーナと契りを交わせば、その相手はティアーナ以外とは一生交わることが出来ない。
もし、相手が心変わりをしても、呪いが解ける事はないのだ。
だから、どうしても相手を選ぶ時には慎重に成らざるをえない。
一生を自分と共に、目移りしないで過ごしてくれる相手など、この世界に存在するのだろうか。
そんな考えがティアーナを臆病にさせていた。
この呪いのことは国家機密なのだ。
婚姻を結ぶ相手にのみ伝えられる。
何代か前の王女は、夫となる人物に裏切られ命を落とした。この呪いは一蓮托生。
相手が死ねば自分も死ぬのだ。例え自分が悪くなくとも。
「お嬢様の立場上、気軽に恋愛するのは難しいかと思います。ですが、私はお嬢様には幸せになってもらいたいのです」
ティアーナはアイシャにだけは呪いのことを話した。前世の出来事も知っている。
「あら、アイシャ。それは私だって一緒よ。貴女には良い殿方と出会って、幸せになってもらいたいわ」
先ほどの陰を払うように明るい口調で言う。
隣を歩いていたアイシャは苦笑する。
「私はお嬢様に、どこまでも着いていきますよ」
「うふふっ、アイシャったら。アイシャが男性だったら良かったのに!」
「私が男だったなら、当の昔にお嬢様を連れ去ってますよ」
艶然と微笑むアイシャに、ティアーナはドキドキしてしまう。
まるで殿方に口説かれているような錯覚をしてしまう。
本当にアイシャが男だったら、二人の未来は変わっていただろう。
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