薔薇の呪印 ~逃亡先の王子様になぜか迫られてます

ウリ坊

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「お嬢様!……ご無事で安心しました!」

 男達が捌けたのか、アイシャがティアーナに駆け寄り、無事を確認する。

「アイ…アシュリー!良かった……無事で、良かった……」

 二人はお互いの安否を確かめるように抱き合った。再びポロポロと涙が溢れてくる。
 アイシャもギュッと抱きしめてくれる。その柔らかな感触と匂いに包まれ、ようやくティアーナは安心できた。

「二人とも、無事な様で良かったよ」

 背後から声をかけられ、ハッとする。
 振り返るとアーサーと、先ほど倒した男達を連行していく、連れの人間が目に入る。

 アーサーは再びフードを被り、あの端正な顔を隠してしまった。

「アーサー様、本当に助かりました……感謝してもしきれません!ありがとうございます」

 アイシャから身体を離し、ティアーナは腰を曲げてお礼を述べる。

「旅のお方、お嬢様を助けて頂き感謝致します」

 二人揃って頭を下げると、アーサーは苦笑する。

「いや、礼には及ばないよ。この近辺は物騒な連中が多いんだ。あまり近づいてはダメだよ」

 慣れてきたとはいえ、二人はまだまだここらの土地勘があまりない。

 今後は絶対近づかないだろう。

「とりあえず大通りまで送るよ」
 
 顔を上げた二人。アーサーの申し出は有り難いが、そこまで甘えてしまっていいのだろうか。助けてもらっただけでも十分なのに。

「あの……お連れの方をお待ちしなくて、大丈夫ですか?」

「え?あぁ、アイツはほっといても大丈夫。さぁ、行こう」

 そう言って手を差し伸べる。エスコートしてくれるのだろう。
 ティアーナは一瞬躊躇するが、伸ばされた手に自分の手を重ねた。







 手を繋ぎながら歩くのが恥ずかしくて、どうしても下を向いて歩いてしまう。
 こんな風に男の人と手を繋ぐのは、前世以来だろうか。あの時だって、ここまでドキドキしなかった。

「そういえば、君達はどうしてこんな場所を歩いていたんだい?」

 隣から話しかけられ、横を見上げるとアーサーと目が合う。
 にこりと微笑まれると、更に胸がドキドキする。

 この人は一緒に居たら色々とまずいタイプだ。

 先ほどのキスといい、これだけの美男子だ、よほど女慣れしているんだろう。
 鼓動を抑えながら、本当の事を言うか迷う。

「少し探し物をしていて……」
「探し物?一緒に探そうか?」
「い、いえ!ご心配には及びません」

 少し後ろを振り向くと、アイシャが口で笑顔を作りながら、生あたたかい視線を送っていた。
 それが恥ずかしくて、すぐに前を向く。

「実は我々は物件を探しているのですが、どこか安心して買える場所はご存知ありませんか?」 
 
 突然アイシャが後ろから声をかけてきた。

「ちょっと、アシュリー!?」

 その言葉にティアーナが慌てる。ほぼ初対面の人間に聞いて良い話題ではない。

「物件?…どんな?」

 ティアーナが止める間も無く、アイシャがどんどん話を進めてしまう。

「へぇ、君達は新たな事業を手掛けるつもりなんだね」

「はい。そのつもりなんですが、それに見合う物件の確保が難しく、こうして歩いては探しているのです」

「なるほどね」

 アイシャの説明に、アーサーは納得したように頷く。
 その横でティアーナは、ハラハラしながら聞いていた。
 何となく巻き込みたくないから、言わずにいようと思っていたのに、アイシャが予想外に包み隠さず話してしまう。

「あの…アーサー様。私達は自分達で何とかしますから、お気に為さらないで下さいませ」

「そういう事なら、力になれるかもしれない」

「ですが……見ず知らずの方に、ご迷惑をかける訳には参りませんわ」

「そんな悲しい事言わないでくれ。ティナ」

 歩きながら本当に悲しそうに言われ、何故だか悪いことをしてしまった気分になる。
 本当の事を言っただけなのに。
 
 アーサーに関しては名前以外何もわからない。
 どこの誰なのか、どんな人物なのか……助けてもらって疑うのは良くないが、何も知らないのも事実だ。

「他の訳のわからない貴族や成金が、パトロンを条件にお嬢様を狙っているんですよ?今は少しでも信用の足りる人物に頼った方が宜しいかと存じますが」

 アイシャが、またもや後ろから爆弾を投下してくれる。それを聞いたアーサーが、声を荒げて迫ってきた。

「それは本当かい!?」

「えっ、あの……えっと……」

「ティナ!俺が何とかするから、絶対に他の男の話に乗ってはダメだよ!」

 急に脚を止め、両手を握られながら言われる。
 その勢いに押され、「はい」と返事をしてしまった。 


 その光景を、満足そうな顔でアイシャは見守るのだった。
 












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