薔薇の呪印 ~逃亡先の王子様になぜか迫られてます

ウリ坊

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 振り払うように身体を捩り、腕から抜け出すと、ティアーナはアーサーから距離を取る。

 アーサーは身体を離され、拒絶されたことにショックを受けているようで、呆然としている。

「アーサー様、はっきりしたいので言わせて頂きますが、私は貴方の捜している方ではございません。ですので、このように無闇に触れるのは止めて頂けますか?」

 少しキツい言い方になるが、ここできちんとけじめをつけないと、アーサーは勘違いして、いつまでも自分にちょっかいをかけてくるだろう。

 それはお互いにとって駄目なのだ。
 ティアーナではない以上、思わせ振りなことを許すのも、騙すような真似をするのも良くない。

 言ってしまってから、ズキズキする胸をギュッと服の上から抑える。
 アーサーを傷つけるだろうことは承知の上だ。
 でも傷つけ傷つくことを怖がっていては、何も解決しない。

「貴方様が私と思い違いをしている方は、別におられるのです。お願いですから、もう私などには構わず、その方をきちんとお捜し下さいませ」

 ティアーナは自分を叱咤し、はっきりとアーサーに物申した。
 アーサーは俯いたまま何も言わない。それが逆に怖い。

 室内がシーンと静まりかえる。
 外で稽古しているだろう、アイシャとギルバートの打ち合う音と声が聞こえてくる。

 沈黙が苦しい。

「あの……アーサー…様?」

「………確かめさせて」

「はい?」

「確認させてほしい」
 
「何を……確認するのですか?」

「その子は、背中の真ん中に痣が2つ並んでいた。それを確認させて?」

「せ、背中ですか?痣など、ないと思います。それに確認するにも……服を…」

 背中を見るとなると、服を脱がなくてはいけない。
 何故背中の痣を知っているのか謎だが、アーサーが嘘をついているようには見えない。

 今着ているワンピース型の服は後ろにボタンがあり、それを外して上を肌蹴ないと、背中を見ることは出来ない。

「俺がやるから、後ろ向いて?」

「えっ!それは!あの、今、アシュリーを、呼びますから」

「せっかく稽古してるのに、呼ぶことはないよ」

 アーサーが近づき、背後に回るとエプロンの紐を外す。

「あ、あの、アーサー様!」

「動かないで……」

 アーサーは器用に後ろのボタンを次々外していく。

 後ろが寛げられ、中に着ていた下着も下ろされ、白い陶器のような肌が露になる。

「ッ……!」
 
 背中から腰の下辺りまで晒され、羞恥に顔を染める。

「良く見せて。小さな痣だったから近くで見ないと確認できない」

「あっ…!」

 そう言ってアーサーに腰をさらわれ、近くにあったベッドの上に強制的に座らされる。

 アーサーは剥き出しになった背中を、指でツゥーと上からなぞるように滑らせていく。

「んっ!……っ…ぁ……」

 擽ったいのと、ゾクゾクするのと、歯痒い想いがティアーナを襲う。

「っ、ん……アーサー様、まだ、ですか?」

 早く終わってほしくて催促するが、アーサーが止める気配はない。

「君の肌はスゴく綺麗だね。いくらでも触っていられる」

 ティアーナの背中に幾つもキスを落としていく。触れられる唇の感触がこそばゆくて、その度にびくびくと身体が反応してしまう。

「やっ!あっ、……いや……」

「ティナ……」

 熱を孕んだ声が鼓膜を揺さぶる。

 与えられる甘い刺激に耐えながら、ギュッと服を握りしめる。
 こんなの、絶対に確認したいわけじゃない。
 現にアーサーは背中にキスばかりして痣があることなど、全く見ていない。

「…アーサー……様……もう……」

 いい加減耐えきれなくて、身体を捩って抵抗する。
 アーサーはクスリと笑って、素直に解放してくれた。

「……うん、ありがとう。きちんと確認できたよ」

 そう言ってティアーナの衣類を着せて、ボタンを次々はめていく。

「それで……その…どうだったのですか?」

 後ろを向いていたティアーナは、アーサーに向き直し、顔を真っ赤にしながらアーサーの顔を見つめる。

 アーサーはその表情に目を細め、ティアーナの頬に手を添える。

「もちろんあったよ。やっぱり君が俺の捜していた少女だ」

 美麗な顔に笑みを讃え、琥珀色の瞳でじっとティアーナを熱く見つめ返す。
 そんな愛おしそうな表情に、ティアーナの心臓が激しく脈打つ。

「ッ……ですが…私の背中に痣は……んっ!」

 全てを言い終える前に唇を塞がれる。

 深く口づけられ、逃げられないように背中に手が回る。
 瞳をギュッと閉じながらアーサーの胸を押すが、力が強くて離れられない。

「…………ッ………ん………」

 唇を離し、角度を変え再び深く奪われる。
 苦しくて口を開くと、すかさず舌が入り込む。

「ん………んっ!…ふぅ………」

 こんなこといけないのに、舌を吸われる感触が心地よくて、身体の奥が甘く疼いてくる。
 
 唇を離されると、そのままアーサーの腕の中に抱きしめられる。
 
「ねぇ、ティナ……君は誰なの?」

 腕の中で呼吸を整えていたティナは、その言葉にビクッと反応する。

「この国の人間じゃないよね?船に乗って移動してたみたいだし、こちらの言葉も使えるから高位貴族のご令嬢なのかな?でも、だとしたらどうして髪まで染めて、こんな場所で働いているの?」

 鋭く質問され、言葉が出てこない。
 先ほどとは違う意味で心臓の鼓動が早くなる。
 一番聞かれたくないことをどんどん質問される。
 
「あ…の……」

「あぁ、ごめん。詮索したいわけじゃなくて、ただ、どうしてなのかなって疑問?」

 端正な顔で優しくニコリと微笑む。
 その美麗な表情は探るような感じは確かにしない。


 だとしても、本当のことなど、この国の王太子に言える訳はないのだ。








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