30 / 35
30
しおりを挟む
*
「もしかして、ティナが昔言ってた『はじめて』って……純潔の事?」
静まり返っていた部屋にアーサーの声が良く響く。
琥珀色の瞳がティアーナを窺うように揺れている。
冷静に質問され、予想していた答えと全く違うことを言われる。
しばらく意味が理解出来ず、アーサーを見たまま止まってしまう。
徐々に言われた事が頭に浸透していき、ティアーナは顔を真っ赤に染めた。
「それは!……あの………」
予期せぬ質問にうまく答えが返せない。
もちろん答えは【YES】なのだ。
だがそれをそのままそうです、と答えてしまうには抵抗がある。
ずっと否定的なことばかり考えていて、約束の事をすっかり失念していた。
「ティナ?」
だがどちらにしてもアーサーの期待を裏切る形になる。
早く伝えられて良かったのかもしれない。
ティアーナの呪いが明るみに出た今、昔の約束は無効になるだろう。
「…………はい。その通りです」
アーサーの顔を見ることが出来ず、俯き加減で視線を逸らす。
「アーサー様…申し訳ありませんが、幼い頃の約束は反故に……」
「ティナ!」
名前を呼ばれ、胸の中に閉じ込められる。
「何を…ッ!」
そのまま唇を奪われ、息も出来ない程荒々しく咥内を舌で蹂躙される。
「んッ!……ふぅ……っ」
突然の行動に頭が追い付かない。予測不可能なことばかり起き対処できない。
アーサーに求められるまま唇を許してしまう。
散々貪れたあとようやく唇を放され開放される。
ティアーナは乱された呼吸を整えるべく、アーサーの胸に倒れ込んだ。
「約束を反故にするなんて絶対赦さない!ティナは幼い頃から俺に全てを捧げる覚悟を決めてくれたんでしょ?それを聞いて嬉しくない訳がないよ」
身体に回された腕が苦しい。痛い程抱きしめられ、ティアーナの胸の内に渦巻く何かが溢れそうになる。
でも駄目なのだ。
自分はアーサーに愛される資格など初めからない。
「アーサー、様……、私の様な呪われた者は、貴方には相応しくありません」
「それを決めるのは俺自身だ。ずっと昔から捜して…追い求めていた人がこうして自分の腕の中にいるのに、手放す馬鹿はいない」
「っ!…ですが、私の呪いは!」
ティアーナを抱きしめながら切実に訴えるアーサー。
まるでアーサーの方が苦しみを抱えている様に、言葉を吐き出していく。
「俺はティナを捜している間、例えどんな人間であろうと君を受け入れる準備をしてきた。ティナが呪われていようと関係ない。ティナは俺にとって、運命の人なんだ……」
激情を込めた熱烈な言葉に、心が震える。
ある種の切り札の様に、呪われた自分の話をした。
きっとこの話をすれば、アーサーが諦めると高を括っていたのかもしれない。
だが、この程度ではアーサーを諦めさせる理由にはならなかった。
(幼い頃…ほんの少しの間お話しただけなのに…)
思い出せないから、どんな会話をして幼いアーサーが何を思ったのかわからない。
だが当然ここまで想われている事に悪い気なんてしない。
(私は一体…どうすればいいの?)
アーサーの腕に抱かれながら、ティアーナは答えの見つからない迷宮に迷い込んでしまうのだった。
「もしかして、ティナが昔言ってた『はじめて』って……純潔の事?」
静まり返っていた部屋にアーサーの声が良く響く。
琥珀色の瞳がティアーナを窺うように揺れている。
冷静に質問され、予想していた答えと全く違うことを言われる。
しばらく意味が理解出来ず、アーサーを見たまま止まってしまう。
徐々に言われた事が頭に浸透していき、ティアーナは顔を真っ赤に染めた。
「それは!……あの………」
予期せぬ質問にうまく答えが返せない。
もちろん答えは【YES】なのだ。
だがそれをそのままそうです、と答えてしまうには抵抗がある。
ずっと否定的なことばかり考えていて、約束の事をすっかり失念していた。
「ティナ?」
だがどちらにしてもアーサーの期待を裏切る形になる。
早く伝えられて良かったのかもしれない。
ティアーナの呪いが明るみに出た今、昔の約束は無効になるだろう。
「…………はい。その通りです」
アーサーの顔を見ることが出来ず、俯き加減で視線を逸らす。
「アーサー様…申し訳ありませんが、幼い頃の約束は反故に……」
「ティナ!」
名前を呼ばれ、胸の中に閉じ込められる。
「何を…ッ!」
そのまま唇を奪われ、息も出来ない程荒々しく咥内を舌で蹂躙される。
「んッ!……ふぅ……っ」
突然の行動に頭が追い付かない。予測不可能なことばかり起き対処できない。
アーサーに求められるまま唇を許してしまう。
散々貪れたあとようやく唇を放され開放される。
ティアーナは乱された呼吸を整えるべく、アーサーの胸に倒れ込んだ。
「約束を反故にするなんて絶対赦さない!ティナは幼い頃から俺に全てを捧げる覚悟を決めてくれたんでしょ?それを聞いて嬉しくない訳がないよ」
身体に回された腕が苦しい。痛い程抱きしめられ、ティアーナの胸の内に渦巻く何かが溢れそうになる。
でも駄目なのだ。
自分はアーサーに愛される資格など初めからない。
「アーサー、様……、私の様な呪われた者は、貴方には相応しくありません」
「それを決めるのは俺自身だ。ずっと昔から捜して…追い求めていた人がこうして自分の腕の中にいるのに、手放す馬鹿はいない」
「っ!…ですが、私の呪いは!」
ティアーナを抱きしめながら切実に訴えるアーサー。
まるでアーサーの方が苦しみを抱えている様に、言葉を吐き出していく。
「俺はティナを捜している間、例えどんな人間であろうと君を受け入れる準備をしてきた。ティナが呪われていようと関係ない。ティナは俺にとって、運命の人なんだ……」
激情を込めた熱烈な言葉に、心が震える。
ある種の切り札の様に、呪われた自分の話をした。
きっとこの話をすれば、アーサーが諦めると高を括っていたのかもしれない。
だが、この程度ではアーサーを諦めさせる理由にはならなかった。
(幼い頃…ほんの少しの間お話しただけなのに…)
思い出せないから、どんな会話をして幼いアーサーが何を思ったのかわからない。
だが当然ここまで想われている事に悪い気なんてしない。
(私は一体…どうすればいいの?)
アーサーの腕に抱かれながら、ティアーナは答えの見つからない迷宮に迷い込んでしまうのだった。
13
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
結婚式に代理出席したら花嫁になっちゃいました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
美希は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、結婚式の友人の代理出席をする予定で式場にいたのに!?
本編は完結してますが、色々描き足りなかったので、第2章も書いています。
魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました
ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる