腐蓉姫の洛中は男色ネタに事欠かない!!

星星糖

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妖狐奇縁 

芙蓉は最近、執筆に使う紙や墨の消費がえげつなく、毎回侍女に買いに行ってもらうのも申し訳ないので散歩もかねてよく外出をしている。
※平安時代の外出は基本陰陽師任せだが、芙蓉は侍女をどうにか説得して行かせてもらっている。
今は買い出しの帰りで竹林の中を散歩しており深緑の空間で拳を回しながら熱唱していた。

竹林で全身に浴びるマイナスぅ~イオ~ン~♪
高いドライヤーからもよく出てるけど~いまいち効果がわからなぁ~ぃぃい~♪
平安は髪が渇きにくぅ~い~♪

気持ちよく熱唱していると不意に声が聞こえた。 
「救命啊~」
なんだ?なんか聞こえる……ちょっと近づいてみよう。
「救命啊~」
ん?なんか中国語くさいな……
「救!命!啊~!」
わっ!?はっきり聞こえてきた!
「ジュウミンアーって助けてって意味だった気がする……」
※大学で芙蓉は第二言語で中国語をとっていた。そして海外BLの濡れ場を見るために語学も勉強していたので英語と中国語は結構わかるのである。

近づくと赤茶色の長い髪をした和服とはちょっと違う服を着ている男の子が倒れていた。
なっ、なんか美少年が落ちてるーーー!!!!!
彼は狐のような大きなつり目で芙蓉を見ている。
着てる服は高そうだけど全身泥まみれ……大丈夫かな?
でっ彼はチュゴクジンデスカ……???
こっ、これは第二言語で習ったフレーズが役に立つかもしれん!
「你……你怎么了?」
(あなたどうしたの?)
早速、芙蓉は倒れている人に話しかけてみた。
「我快饿死了…你有没有食物?」
(お腹が空いて死にそう……何か食べ物持ってない?)
お腹が減ってるのか……たしかおにぎり持ってたっけ!っと言うよりなんでここに中国語喋る人がいるかの方が気になるんだけどね~(^◇^;)
「有啊!我给你我的饭团、我们一起吃吧」
(あるよ!おにぎり分けてあげる、一緒に食べようよ)
「谢谢……」
(ありがとう) 

おにぎりを受け取った男の子と横に並んで座り、彼について尋ね始めた。
「你叫什么?我叫芙蓉」
(あなたなんて言うの?私は芙蓉)
「我叫姚祜」
(僕はヤオフー)
「嗯?姚祜?你的名字和妖狐’的发音一样」
(うん?ヤオフー?あなたの名前と妖狐の発音は一緒だね)
「是的哦是的哦!我是妖怪哦!」
(そうだよそうだよ!僕は妖怪だ!)
ファッ!?!?!?
まさか、自分の目で見るとは!!
やっぱ紫ちゃんや春霞ちゃんの式神の件でも思ったけどこの世界は妖なるものが存在しているようだな……
ロッロマンがとまらん!!!!

「诶!?是吗?但看起来你好像很弱」
(え!本当に?でもなんか弱そうに見えるよ)
この妖狐はボロボロの身なりをしていていかにも弱っている様子で威厳がないように見えた。
耳も尻尾も見えないしね……
「啥?!太没礼貌了!我是中国最凶恶的妖怪!」
(何?失礼な!僕は中国で最恐の妖怪なんだぞ!)
彼がそう言うとボンッと音がして狐の尻尾と耳が出てきた。
えー!!!ガチもんですか?!?!?!ケモ耳可愛いー!!!!
思わず芙蓉は彼の耳をモフって尻尾も撫でていた。
「哇哦!太厉害啊!你有很软的尾巴和耳朵!」
(わお!めっちゃすごい!柔らかい尻尾と耳!)
褒められた姚祜は満足した顔で笑った。
「呵呵呵」
(ふふふ)
「姚祜,你为什么来日本?」
(ヤオフー、なんで日本にきたの?)
「因为我想躲避道士们。他们想驱魔」
(道士から逃げたかったからだよ。あいつら僕を祓おうとしてくるんだ)

話をさらに聞いて行くと彼の姉である妖狐の妲己だっきが中国でやらかして偉い人のお怒りを買い、祓われそうになり彼女に容姿が似ている彼も危うく巻き込まれそうになって一緒に逃げてきたらしい。
そしてなんとか海を渡り東瀛とうえい(日本)にたどり着くが今度は道士の代わりに陰陽師に祓われそうになって彼女と離れ離れになってしまったため探し回っていたら路頭に迷ったと言う。

「都是因为姐姐去戏弄皇帝,才会变成这样的!」
(姉さんが皇帝をおちょくるからこうなったんだ!)
ヤオフーはプンプンしながら狐色の尻尾をふわふわ揺らしている。
困り顔で芙蓉は彼を見つめていたが急に悲しそうな顔をした。
「喂,芙蓉……再这样找下去也不一定能找到姐姐,而且一路上还被奇怪的人纠缠,我已经遍体鳞伤了,也没钱了……我该怎么办啊……?」
(ねぇ、芙蓉。このまま探し続けても姉さんは見つかるかわからないし、途中で妙な奴らに絡まれて僕はボロボロだし、お金もない……僕どうしたらいいの……?)
ヤオフーはうるうるした目で芙蓉を見つめている。
そっ、そんな目で見つめられたら……
助けたくなっちゃうでしょうがぁああああ!!
「唉,真拿你没办法……你能变成普通的狐狸吗?」
(はぁ、しょうがない……あなた普通の狐に化けられる?)
「当然可以!」
(もちろん!)
「好吧!来我家吧!我就跟大家说我养了一只狐狸!你想住多久都可以!」
(分かった!私の屋敷においで!狐を飼うことにしたってみんなには言うから!気が済むまで居ていいよ!)
そうして芙蓉は狐の美少年を拾った。

芙蓉の部屋にて

「姫様~このお稲荷さんは?」
結染が狐になったヤオフーの頬をもちもちしながら尋ねた。
「山でお腹を空かせてたから拾ったの~ねぇ、飼っていい?」
「可愛いですねぇ。私は構いませんよ」
「よかったね!ヤオフー」
芙蓉が笑いかけるとヤオフーも狐スマイルを全開にした。
「ヤオフーって変わった名前ですねぇ」
「あぁ、これ漢語なの」
「えっ、外国語でございましたか。姫様は本当に教養がお有りですね」
「いやいや、そんなことは……!ははは」

ヤオフーは数日間狐の格好で暮らしていたがやがて退屈になったらしく屋敷の外に出て遠くまで遊びに出るようになった。
ある日、ヤオフーが芙蓉のいる部屋の中に戻ってきたときボンっと人の姿に戻り、こう話した。
「在五条堀川附近的宅邸里,有个能听懂我说话的青年哦!今天我也让他教了我一点日语!」
(五条堀川付近の屋敷に僕の言葉を理解してくれる青年がいるんだよ!その人に今日も日本語少し教えてもらった!)
「へぇ~!」
ヤオフーは最近、いつもその青年のもとに行って一緒におしゃべりしているらしい。
「那个人知道你是妖怪吗?」
(その人あなたが妖怪だって知ってるの?) 
「嗯!他一知道我是妖狐就很感兴趣!」
(うん!彼は僕が妖狐だって知ったらすごく興味を持ってくれた!)
その人が陰陽道に心得がある人ならば、信じるのも頷ける。
でも、あのあたりって誰か中国語わかりそうな人住んでたっけ?
「你知道他的名字吗?」
(その人の名前分かる?)
「嗯!他叫サンシャン」
(うん!彼はサンシャンって言ってた!)
サン?三かな?シャンは山?相?上?
芙蓉は頭をフル回転して中国語の音と漢字を当てはめているとハッと閃いた。
そういえば三善さんって人がいた気がする!授業では漢文学者って習ったけど子孫か誰か住んでるかも!!

「用日语的话,应该读作三善(みよし)吧?」
(日本語だとみよしさんじゃないかな?)
「啊!用日语的话确实可能这么读! 」
(あ!日本語だとそう読むかもしれない!)
「他也擅长汉文吗?」
(彼は漢文も得意?)
「嗯嗯!他有很多书哦!」
(うんうん!彼はいっぱい本持ってるよ!)
これは三善さんで当たりかもねぇ

「所以姚祜是教我怎么说的日语的?」
(それでヤオフーはなんて言う日本語を教えてもらったの?)
自信満々の顔でヤオフーはこういった。
「狐可愛い。君も可愛い」
ブッフォッッッ可愛い……ねぇ!なんて言葉を教えてるんだよ……三善さん!
尊すぎるぜ……(*≧∀≦*)
「这个,你懂意思吗?」
これ、意味わかって言ってる?
「我不知道!」
(わから~ん!)
なんか三善さんとヤオフーの関係性が気になり始めたよぉ!
三善さん可愛いヤオフーにメロメロなんか?
まぁいいや、実際会って確かめよう!
「明天带我去三善那里!」
(明日三善さんのとこに連れてって!)
「好啊!」
(いいよ!)

数日後

アポが取れたらしくヤオフーと出かけることになった。
ヤオフーは三善さんに会う時はいつも人の姿らしいのでお出かけ用にいつもと違う山吹色の水干を着せた。
今は芙蓉の前を歩いて五条堀川にある屋敷まで案内してくれている。
なんか木が鬱蒼としてきたんですけど……ちょっとここら辺空き家が多くない?
まだ昼間なのに少し薄暗く、気味が悪くて芙蓉はヤオフーの後ろにピッタリとくっついていた。
「还没吗~?」
(まだ~?)
「就快到了哦」
(もうちょっと!)
ここだよっと案内されたのは立派な松や楓の木陰の中にある大きな屋敷だった。
かなり古い家らしく、改修されたところがたびたび見られ、幽霊がいつ出てもおかしくなさそうだ。
あぁ、ここの人もしかしたら事故物件住みます系の人なのかもしれない……
ヤオフーが来て喜ぶのもそのせいなのでは?

塀の門が開いていたのでひょいっとヤオフーが入っていく。
「今天我把芙蓉也带来了哦!」
(三善ー!今日は芙蓉を連れてきたよー!)
ヤオフーが叫ぶと戸がガラッと開き中から青年が出てきた。
彼を見ると耳と尻尾をぴょこっと出して青年に抱きつく。
「よく来たね~ヤオフー」
ヤオフーを撫でながら藍色の水干を身につけた知性的な青年は芙蓉を見ると穏やかに微笑んだ。
イケメンスマイルめちゃ眩しいー!!切れ目イケメン良いねぇ~
「初めまして。芙蓉様ですね。私、三善明玄みよしみょうげんと申します。よろしくお願いいたします」
「はい。私、芙蓉と呼ばれています。こちらこそよろしくお願いします、三善さん」

芙蓉たちは中へ招き入れられ樹齢50年は超えてそうな柳の木のある庭がよく見える客間に通された。
平安時代なので電気はないため昼間でもこの部屋は薄暗く、般若の面やら天狗の面などが壁にずらっと飾られていて余計不気味だった。
三善さんの家なんか怖いんですけど……三善さん自体はいい人そうなんだけどなぁ。
後ろをチラッと見ると屏風が目に入った。
ひゃっ!これ柳の木の下にやべえ形相の女の幽霊が描いてあるじゃないか……(゚o゚;;
もう、お化け屋敷じゃん。
待っていると三善が茶を持ってきてくれた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「こちらにはお一人でお住まいですか?」
「そうですよ。先代から引き継いだものです。他の家族は別の屋敷にいます」
「みなさんと同じ屋敷には住まないんですか?」
「職業柄、蔵書を置く場所を確保できる方が良いので」
「あと、ここの家出そうでしょう?冗談だと思われそうですけれど幽霊と同居してみたいとちょっと思ってるんです、ははっ」
「私もちょっとお化け出そうだなって思ってました~」
この人絶対内見前に大島⚪︎るで事故物件検索する系の人だよ……
「ははは……でも広くて立派なお屋敷だと思います!」
「そうですね。かなりこの屋敷にはお世話になってて助かってますよ」

当たり障りのない話を少しした後、本題に入るように三善が口を開いた。
「どうして芙蓉様は学者の身にあらずとも漢語を扱えるのですか?」
湯呑みを指を叩きながら三善は興味津々な様子で芙蓉を見る。
「私は読書が好きでして漢文(中華BL)を読むために独学で勉強して身につけていきました。」
「左様でございますか。いとめでたしですね。世には女子に勉学など必要ないとのたまう方もいらっしゃいますが、私はそうは思いません。あなた様のような方がいらっしゃるのだと知って会えるのを心待ちにしておりました」
あぁ、この人はこの時代にしてはとても革新的な考え方を持っているんだ……
女性の身で色んなことを知ってると不都合なことも多い時代だからすごく頼りになりそうだな。
「私もヤオフーを通じて漢文学者の方とお知り合いになれたこと非常に嬉しく思います、ふふ」
「それで、三善さんはヤオフーが妖怪であることはご存知なんですよね?」
「はい。漢文書には人間に化ける妖狐がいると書かれていましたが、日本でそれを見ることはないのだろうと諦めていました。でもある時、彼が目の前に飛び込んで来たんです。もう嬉しくて仕方ありませんでした。」
「そうなんですね!ヤオフーの方は漢語がわかる人がいるって興奮してましたよ」

「あと最近、ヤオフーが日本語をたまに話すんですが三善さんに教えていただいたとか」
「たまに教えてあげる程度ですよ」
目を閉じてお茶をすすりながら三善が言う。
「いい先生じゃないですか!ヤオフーも日本語教えてもらっていつも喜んでますよ!」
照れくさそうに三善が笑った。

二人が日本語で話しているとヤオフーが三善のそばに寄ってきて彼の膝に腰を下ろし、後ろを向いて上目遣いで問いかけた。 
「你们聊什么呢ー?」
(何話してるのー?)
おにショタッッッッ?!えっ、可愛い……♡
まずい……このままでは私の口角が大気圏まで到達してしまっああああ!!
細い彼の腰に手を回しながら三善が答える。
手ッッっ!手ッッッ!手ぇええッッ!
「没什么啦~」
(なんでもないよ~)
この人ヤオフーと話す時、中国語だと声が柔らかくなってえッッッろい…
「今天也玩吧~」
(今日も遊んでよ~)
「一点等哦」
(ちょっと待っててね)
「明玄哥哥……」
(明玄お兄ちゃん)
「理理我吧~」
(僕にかまってよ~)
「はは、困ったなぁ。客人を置いて行くわけには行かないし……」
困ったと言いながら三善は明らかにヤオフーのかまって攻撃にやられかけている。
助け舟を出してあげようっと!
「どうかお気になさらず。私がどうしてもとヤオフーに頼んで連れてきてもらったんです。彼と遊んであげてください。代わりにですが、三善さんの蔵書をこちらで少し読ませていただいても構いませんか?」
「あはっ、すみません。お心遣いに感謝します。書棚はあちらの部屋にありますのでご自由にどうぞ。」
「それでは遠慮なく」

るんるんで奥にある部屋に入るとたくさんの書物が詰まった本棚があり、古本屋の匂いがした。
窓から光が差し込むと埃が舞っているのがよく見える。
「さっすが、漢文学者~!有名タイトル含めていろんな本を持ってるな~」
そしてぇえええ!私が彼の書庫に入った理由はひとぉぉぉつ!!!
それは断袖だんしゅうを探すためーー!!!

※この断袖という言葉は男色を表す言葉ですが、ここでワタクシ芙蓉が読者の皆様にひとつ小話をご紹介しましょう(*゚▽゚)ノ
漢の哀帝には董賢とうけんという妾(男)がおりました。哀帝はそれはそれは彼を愛していたそうで、董賢が哀帝の袖の上で寝てしまった時、彼を起こさないように自分の着物の袖を切ったほどだったといいます。しかし、二人の幸せも長くは続かず、悲しいことに哀帝は25歳で夭折してしまいます。彼の哀帝という諡号しごうはこのように短命だったことからつけられました。その後、哀帝を失った董賢も自殺してしまうという悲しい結末……!!そしてこの二人の話から故事成語として断袖という言葉が生まれました。

「漢文の授業も大学で取ってたから興味あったんだよねーー!」
天の声:「かなり動機が不純だが、彼女の知的好奇心を刺激しているならまぁ、いいだろう」
そんな彼女がまず手に取ったのはもちろんこの断袖について書かれた漢書である。
ガチガチ漢文学の本は屋敷になかったから読める機会を伺ってたんだよね~( ^∀^)ラッキー⭐︎
元の体の持ち主は中華BLを知らなかった可能性もあるのが少し心残りだよ。教えてあげたかったわ(>_<)

あたりを見渡した後、棚にずらっと並んだ史記が目に入って芙蓉は思わず鼻息を荒らげた。
しゃぁあああああ!!管鮑かんぽうの交わりと刎頸ふんけいの交わりで中華ブロマンスを堪能させていただきますぞ~
妄想が捗って最⭐︎高!!

本を持って客間に戻り、外に目を向けると中庭に出た二人が蹴鞠をしていた。
三善が慣れた様子で色とりどりの鞠を蹴っていく。
ポ~ン
「ハイ」
ヤオフーも足を頑張って伸ばして鞠を蹴り上げた。
ポンッ
「ハイッ」
大きな柳の木の下で宙に蹴り上げられる蹴鞠の極彩色が色褪せた庭の景色の中に浮き上がっていた。

「哇!」
(わぁ!)
ヤオフーの蹴りが強すぎたのか蹴鞠が遠くに行ってしまってポンポンポンっと下に落ちた。
蹴鞠を拾って戻ってきた明玄がヤオフーの下にやって来る。
「ヤオフー、蹴鞠上手くなったね。一番長く続いたよ!」
わしゃわしゃ頭を撫でられたヤオフーは実に満足そうな顔をして尻尾を振っている。
「へへへ!あ、あり……がとう?」
「うん。上手、上手」
おにショタの蹴鞠遊び尊い……
鞠になりたくなってきた_:(´ཀ`」 ∠):

このお兄さんはだいぶ子供の扱いに慣れているんだな……
根っからの学者肌なのかと思ったけど違うようだねぇ

芙蓉はその穏やかな様子をニッコニコで客間から眺めていた。

数時間後、縁側で遊び疲れたヤオフーは三善の膝の上で爆睡していた。
めちゃくちゃ懐いとるやんけ~\(//∇//)\
はぁあああああ(*⁰▿⁰*)
あと一時間くらいこうして眺めていたい!
でも三善さんにも迷惑かけられないし、ちょうど史記の⚪︎⚪︎の交わり系の話も読み終わったところでキリもいいしな~
今日のところはこの辺にしておこう……
「日が傾いてきましたのでそろそろお暇しませんと」
後ろ髪を引かれる思いで三善のところに行き、帰る旨を伝えたあと芙蓉はヤオフーを起こし帰り支度をした。

帰り際、門前で三善に呼び止められた。
「芙蓉様、お願いがあるのですが……」
「ん?何でしょうか?」
「ヤオフーに日本語をきちんと教えたいのでこちらで少し預かってもよろしいですか?」
なんという申し出てでございましょうか!
お兄さんとヤオフーの仲をより深めるチャンス!
すかさず芙蓉はヤオフーに訊いてみた。
「喂,姚祜,三善先生说想教你日语,想让你在他家住一阵子,你觉得怎么样?」
(ねぇ、ヤオフー、三善さんがあなたに日本語教えたいから家にちょっと泊まらせたいんだって、どうする?)
「ほんと~!?!?」
キラン(*゚▽゚*)隣にいるヤオフーを見るとめちゃくちゃ嬉しそうな顔をしているじゃあありませんか!
このお兄さんめちゃくちゃ面倒見良さそうだし、きちんとした漢文学者だし絶対任せた方が良いな!
それに何よりヤオフーが喜んでいるもんね。
「ヤオフーもそうしたいようですし、決まりですね。何卒よろしくお願いします」
深くお辞儀をして芙蓉はありがとぉぉぉおおおう!!!!と心の中で叫んでいた。
「いえいえ、こちらこそ」
「那姚祜明天带着行李搬过来吧」
(じゃあ、ヤオフー明日荷物を持って家に引っ越しておいで)
「好啊!」
(うん!)
 
次の日の朝

三善の屋敷の門前にて

親元から離れる子供を送り出すってこういうことなんやなぁ……(ToT)
芙蓉はしみじみとした気持ちになりながら荷物を抱えたヤオフーに笑いかける。
「ヤオフー、再見はなんて言うの?」
明玄に聞かれてヤオフーは元気よく答えた。
「さよなら!」
明玄がヤオフーの頭を撫でながら芙蓉の方にお辞儀をした。
「明玄さん、ヤオフーをよろしくお願いしますね」
「はい。お任せください」
「じゃあねヤオフー。明玄さんに迷惑かけちゃだめだよ~」
二人に手を振って芙蓉は屋敷へ戻っていき、ヤオフーは三善家にご厄介になることとなった。

♡♥︎♡♥︎♡♥︎♡♥︎

「あれ?姫様!お稲荷さんを最近見かけていませんが…どちらに?」
芙蓉の部屋の中をキョロキョロしながら見渡している結染がヤオフーについて聞いてきた。
「ああ!ヤオフーなら五条あたりにある稲荷神社の神主さんに気に入られてね、そこなら友達もたくさんできるだろうから預かってもらうことにしたよ」
「あら、そうだったのですね。一言でも言ってくださればよろしかったのに。もうもちもちできないのが心残りです……」 
「それは申し訳ない……でも、もしかしたらヤオフーの方からうちに遊びに来てくれるかもしれないから楽しみに待ってようよ!」
「そうですね!立派なお狐様になっているかもしれないですし!」 



※平安時代に中国で話されていた言葉と現代中国語は異なりますが物語の便宜上、現代中国語で書かせていただきました。
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