4 / 5
第一章:JKのドラゴン生活
第三話:JKは蜘蛛に出会いましたがなにか?
しおりを挟む
突然ですが皆さん、以前にもお話しに出てきた『ランドロス洞窟』をご存知でしょうか。説明をするとその洞窟は『ランドロス国』の火山地帯の地下にある洞窟だそうで、その洞窟を抜けた先に『アタランテの森』があるそうなんです。ランドロスとアタランテは隣国の様なもの、ドラゴン達が直ぐ攻めてこれるのも頷けるし、ナターシャさんが怯えていたのもわかる気がする。けど幸いな事に、ダンジョンの主となる魔物達はどこの国とも繋がりがない。だから彼等と同盟を結ぼうと考えていた。
「そこで交渉人として、ベビードラゴン、サーヤ、スレインの三人に行ってもらいます。」
何とナターシャさんは私達三人を行かせるつもりでいたらしい。てか私達で大丈夫か!?
「サーヤとスレインは護衛よ。交渉するのはドラちゃん貴女にお願いするわ。」
「私?でもなんで?」
「言ってたわね。前世は別の世界で人間だったって。なら貴女のその知識を役立てて欲しいの。」
そう言う事ですか。なら引き受けましょうと思いきや、兄貴がナターシャさんに聞いて来た。
「ナターシャさん。貴女が行った方が良くないっすか?頭領同士で話をする方が礼儀と言うものでは?」
言われてみれば確かにそうだ。使者を送るなら代表同士で話をした方がいいんじゃないか?
「まあ、何て言ったらいいでしょう。彼女凄く面倒臭いの。」
おい!オバサン!仕事サボるなよ!!てかどんな面倒臭い人だよ!!
「それにドラちゃんやサーヤとスレインにはいい経験になるわ。一度彼女に会ってみるのもいいかもね。」
ナターシャさんがそこまで言うなら・・・・何か上手く載せられた感じはあるけど、仕方ない行ってみますか!
それから私達三人は、ダンジョンの入り口へと辿り着いた。普段は立ち入り禁止になっている所だから、私達もこれが初めての洞窟探検となる。勿論灯など一切ないから、薪に火を付けて進むくらいしか無かった。洞窟は狭い空洞と言うより、広い空間が広がっていた。道幅も広く歩く分には申し分なかった。
「でも『ランドロス洞窟』の代表ってどんな人なんだ?」
確かにナターシャさん名前は疎か種族も話さなかったからな。嫌な予感がする。だから私は二つの予測を二人に話した。
「私が思うにこの洞窟を支配しているのは恐らく『アラクネ』か『地龍』だと思う。」
「地龍は聞いた事ないから多分違うと思う。」
「だとしたら蜘蛛の女王アラクネか。ここら辺蜘蛛だらけって事だよな。」
考察しながら進むと人らしき影が座り込んでいた。灯を照らしてみると、なんかくノ一装束を着た女性が座り込んでいたが何か苦しそうだ。しかも怪我をしている。
「貴女!大丈夫!」
サーヤが直ぐに回復魔法を掛けてあげたが、それと同時に千里眼で彼女のステータスを確認していた。するととんでもない事実がわかった。
「この子・・・・アラクネよ!?」
「え!?嘘だろ!?何でダンジョンの親玉が手傷負って倒れてるんだ!?」
何といきなりアラクネと遭遇したのだ。いや確かにそうだ!ダンジョンのボスが何で手傷なんか負って倒れてるの!?因みに彼女のステータスはこんな感じです。
呼称
『アリア』
個体名
『アラクネLv.50』
属性
『闇』『地』
種族
『蜘蛛』
固有スキル
『蜘蛛の糸』『人化』『危機感知』『広範囲視覚』『気配探知』『動体視力』『超直感』『暗殺』『不死』
スキル
『魔眼Lv.5』『加速Lv.5』『超加速Lv.5』『瞬足Lv.5』『貪食Lv.5』『予知Lv.1』『脱皮Lv.5』『産卵Lv.5』『隠密Lv.5』『再生Lv.5』『超高速再生Lv.MAX』
魔法
『毒霧Lv.5』『ポイズンレインLv.5』『ポイズンランスLv.5』『ポイズンマシンガンLv.5』『ポイズンショットLv.5』『硫酸Lv.5』『硬化Lv.5』
武技
『末脚Lv.5』『奥義 全身全霊Lv.MAX』『緊急回避Lv.5』『影移動Lv.5』『音速Lv.5』『奥義 瞬歩Lv.MAX』『回し蹴りLv.5』『飛び蹴りLv.5』『膝蹴りLv.5』『多連脚Lv.5』『毒の牙Lv.5』
固有奥義:あやとり
『蜘蛛の巣』『首吊り』『束縛』『骰子肉塊』『錦糸十連斬死』『あやめ駕籠』『ワイヤートラップ』『黒糸牢』
ウソ・・・・サーヤやスレインより強くない?色々ヤバイよね?何だよどいつもこいつも!!てか何だ固有奥義って!?
「この子凄いわ。独自の固有奥義覚えてる!!」
「アタシ等よりレベル高いな。」
いいな!いいな!私なんて武技がただの攻撃なんだよ!!ふざけてるとしか言いようないよね!!
「あっ!気が付いたよ!」
どうやらアラクネの目が覚めた様だ。何か事情が有りそうだし、話を聞かないといけないしな。
「すまない。迷惑を掛けた。」
「貴女お名前は?」
「アリアだ。助けてくれて感謝する。」
アリアは黒髪でアイシャドウが特徴の蜘蛛?いや今は人か?でもどうやって人の姿に?
「ねえ?貴女アラクネなんだよね?」
「それがどうかしたか?」
「いやアラクネって蜘蛛に人間の上半身がくっ付いた種族の筈だけど?」
「恐らく私の固有スキル『人化』だろうな。それが無かったら、お前の言う通りの姿だぞ。」
いいなあ。私もそのスキル欲しい。何でレベル90で覚えないんだろ?
「それよりお前だ!お前!」
え!?私!?何!?
「何だお前のステータスは!?デタラメなレベルをしてるくせにスキルと魔法も覚えてないのか!それに武技は初期レベルで覚えてるものしか無いってどう言う事だ!!」
「んな事知るかぁ!!ゴミ作者に聞け!!こっちが文句言いたいくらいだ!!」
「いや。すまなかった。」
彼女は申し訳無さそうにしていた。少し言い過ぎたかな?でも魔眼で相手のステータス覗こうなんて不謹慎だな。
「悪い。このドラゴン、最近それが原因で機嫌悪いんだ。勘弁してくれ。」
スレインが私の代わりに謝ってくれた。最近ちょっとイライラしていたかな。反省しよう。
「それはそうと、彼女に大事な話があるんじゃないの?」
おっと!そうだった!さっそく交渉に入らないと忘れる所だった。
「さっそく何だけどさ。貴女をこの『ランドロス洞窟』のリーダーと見込んで話があるんだけど。」
「ん?誰と勘違いしてるかは知らんが、私はここの主人ではない。」
ん?でも彼女アラクネ何だよね?だったらここのリーダーの筈だけど?
「もう一度私のステータスを見てみろ。称号が付いていないのが何よりの証拠だ。」
てな訳でサーヤとスレインに確認してもらったら本当に無かった。そりゃ失礼した。ん?じゃあアリアはここのボスの眷属の蜘蛛なのか。
「いや、おかしくね?眷属がアラクネに進化するか?」
「私も今さっきアラクネに進化したばかりだからな。未だに自分のステータスがどうなっているのか把握もし切れていない。」
そうか。こっちの世界じゃ、眷属が魔王と言う地位に就くのは珍しい話なんだ。その例外が現れた。それがアリアなのかもしれない。それに彼女自身がそれを一番望んでいた。その証拠がさっきの手傷か。明らかに同族に襲われたと言うべきだな。
「アリアは、もしかして自由になりたいの。」
「ッ!?」
反応からしてやっぱりそうだ。彼女は自由になろうとしている。眷属と言う呪縛から抜け出したいんだ。でも私は知っている。蜘蛛に転生した女子高生が異世界の危機を救うお話を!途中まで見てて殺されたけどね!!本当に惜しい事した!!
「流石はランドロスのドラゴン殿。良き観察眼をお持ちだ。」
洞窟の暗闇に紛れて、誰かの声が聞こえた。得体の知れない存在に、私達は警戒していた。だがアリアは呆れた様子でいた。もしかして知り合いか?
「聞いていたなら出て来たらどうだ!ヴラド!!」
アリアが叫ぶと、それに応えて潔くこちらに飛来して来た。その正体はコウモリだった。
「いけませんなアリア殿。ちゃんと三世を付けていただきませぬと。」
何者だ?とアリアに尋ねると嫌な顔されて渋々答えた。
「こいつはヴラド三世!!ただの意地汚いコウモリ・・・・いや害虫だ。」
何で今言い直した!?よっぽど嫌いなの!?確かにあの感に触る喋り方はイラッと来るけどそこまで!?
「いやはや手厳しいお人だ。」
あっさり流したけど?
「お初にお目にかかります。私この『ランドロス洞窟』の案内役を勤めています。『ヴラド』と申します。以後お見知り置きを。」
「正確には、ここに訪れる人間の冒険者を騙して他の魔物に食わせる死の案内人、又は獲物を誘き出す餌だ。」
嫌な魔物だな!!騙された冒険者が気の毒でならないよ!!
「これはまた手厳しい!ですがそれでこそ貴女はこのダンジョンの魔王となる存在です。」
確かにアラクネに進化したアリアなら、魔王としての資格があるけど、こいつ何を企んでるんだ?
「貴女がこのダンジョンを統べる者として、魔王になる素質が有るお方とお見受けしたのです。そうすれば貴女の望みも叶う事でしょう。そう!『自由』を手にする事が出来るのですよ!!」
まあ、アリアがしたい事は何となく予想はしていたけど、こいつの魂胆も何となく理解できた。アリアを利用して裏から実権を握ろうとする世渡り上手な詐欺師みたないなタイプの奴だ。まあこ言う奴は最後は痛い目見るパターンが多いからな。絶対ロクな死に方しかしない。
「差し支えなければ、このヴラド三世が貴女様の願いにご助力すると約束しましょう。」
この悪徳セールスは詐欺働く気満々じゃねえか!?アリアはしっかりしてるし、大丈夫だと思うけど騙されちゃダメだからね!!
「ヴラド。私はお前が嫌いだ。お前の言葉は何もかもが嘘に聞こえる。だが、今のお前からは本心から語ってる様にも聞こえる。魔王になる約束は出来ないが、私を逃す協力をしてくれるか。」
「ありがとうございます!このヴラド三世!貴女の脱獄に誠心誠意協力しましょう。」
ダメダメダメ!!OKしちゃダメぇぇぇぇ!!ヤバイ止めないと!!
「ダメだよアリア!!こんな奴の話に乗っちゃダメ!!」
「ん?何故だ?」
「話聞いてるといい人っぽいけどな?」
「確かに怪しいけど、悪い人には見えないよ?」
「その「優しさに~♪包まれたなら~♪」を信用しちゃダメなの!!詐欺師の手口だから!!」
アリアだけじゃなくてサーヤもスレインも信じようとしてた!?アブなッ!私以外全員騙される所だったよ!?
「なるほど、初対面に対してこの警戒よう。これ程に信用されて無いとは流石の私も傷付きますな。貴女の人生は余程誰かに裏切られて来たのでしょう。お労しい限りです。」
まあ確かにこいつの言う通り、小学校から高校までクラスの男子からカツアゲ、女子からは騙されてお金を取られる毎日だったよ。それもあるけど!お前の話が私や読者にも解りやすいくらいの詐欺の内容なんだけど!?もう騙す気満々だよねってくらい!!
「では何故、私が嘘を付いていると確信していたのでしょうか。」
「アンタへの見返りが無いからよ!そうやって親切心で付け込もうとする奴は必ず約束を破り裏切る。それが詐欺師の手口だからよ!」
「貴女は血も涙も無いドラゴンですね。損得だけで人を選ぶとはあまりに無慈悲!!私はその親切心で動いていると言うのに酷い人だ。ですが、決定権はアリア殿にあります。貴女の出る幕はありません。」
状況が悪くなれば無理矢理話を戻そうとする。ここまで手口が解りやすい詐欺師は初めてだな。
「貴女よりアリア殿とお付き合いが長いのはこの私ですよ?それを今し方お会いしたばかりのドラゴンが何を言いますか。」
そんな言葉で私が動揺するかっての!なんか段々と殴り飛ばしたくなって来た。と思った時だった。
「ヴラド。お前の親切心には感謝する。だが、私はこのドラゴンを信じる事にした。こいつは、私が語らなくても私の願いに気付いた。だから私はこいつを信じる。すまないな。お前の期待に応えてやれなくて。」
アリア!いや騙されなくて良かったよ。信じてくれてありがとう!と感謝している間に、ヴラドの気配が変わった。
「そうですか。それは残念です。では皆さん!出番ですよ!!」
ヴラドの合図で三体の蜘蛛が一斉に飛び出て来た。最初からこうなる事がわかってた様な手際だ。流石は詐欺師、次の手に討って出て来たのだ。私達四人は直ぐに構えたが何てでかい蜘蛛だ。姿形もまるでタランチュラだ。
「こいつ等『ポイズンタランチュラ』だ!」
「かなり上位の魔物よ!!」
サーヤとスレインのその魔眼と千里眼便利だよね!?欲しいよそのスキル!!てかやっぱりアイツ等タランチュラだった!!
「アリアぁぁぁ!!」
すると一体のポイズンタランチュラがアリアに向かって叫んだ。
「イルマ。」
「アンタ!本当にここを出て行く気!!」
『イルマ』と呼ぶ彼女は、アリアに何かを訴えていた。
「悪いな。私は外の世界に出ると決めた。もうお前とも会う事はない。」
「ふざけるな!勝ち逃げする気かコラァ!!」
あの子かなりライバル視してるな。まあアリアのこのステータス見たら同族としては負けてられないか。
「責めて私に倒されてから行きなさい!!」
おいおい、アリアったらアイツにどんだけ負かしてんだよ。彼女も気の毒だな。
「なあドラ子!さっきのコウモリ何だけど、魔眼が妨害されて奴のステータス見れないんだけど!!」
「うそ!?」
「本当よ。『著作権』と『プライバシー』のスキルを使って隠してるみたい。」
抜かりないとは思っていたけど、ここまでやるとは!てか何その日本の法律みたいなスキルは!?
「ヴラドは無視していい!それより目の前の連中に警戒しろ!」
アリアの怪我は多分こいつ等が原因だと思う。それはアリアが集団から抜けるとか言い出したから制裁を受けたんだと思う。こいつ等はアリアを追撃しに来たんだ。なら遠慮はいらない!
「スレイン!あれ行くよ!」
「おお!ドラゴンマシンガンだな!!」
てな訳でトランスフォーム!!スレインと合体!!
「喰らいやがれぇぇぇぇ!!」
はい!火の粉連射!!蜂の巣になりやがれぇぇぇぇ!!と三体のポイズンタランチュラ共に浴びせた。抵抗虚しく三体共立てなくなっていた。
「何あの赤ちゃんドラゴン。反則でしょ。」
「わからない。レベルが以上だから普通の火の粉じゃない。」
「もう・・・・動けない。」
そりゃレベル90の火の粉受けて真面に生きてるのアンタ等くらいだよ。後はヴラドだけだな。
「って!?あのコウモリいねえぞ!!」
嘘!?いつの間に!?引き際うまいと言うか逃げるの早!?
「奴は放っておけ、その内ひょっこり現れるだろう。」
いや・・・・現れても面倒臭いんだけど?それより、早くアラクネのボスに会わなきゃ。
「では行くぞ。」
あれ?アリアさん?そっちは私達が入って来た方角だけど?
「どうした!外に出るのだろ!!」
いや私達まだ用事済んでない!!戻れや!!
「ストップ!!アタシ等まだ仕事があるんだよ!!」
「そう言えば話しが如何とか言っていたな。奴に話をしても無駄だ。」
何で?ナターシャさんの言っていた面倒臭い人?そんなに頑固なの?まあでも帰るわけにもいかないからな。後々ナターシャさんからも面倒臭い事になるし、とりあえずアリアに案内だけでもしてもらうか。
「断る。奴とは顔も見たく無いからだ。」
だがアリアは断る一方だった。彼女の様子からして、このダンジョンのボスは理不尽極まりない様子だ。でもちゃんと話して行かないと後々後悔する。アリアの為にも私は引かなかった。
「独り立ちするならちゃんと挨拶くらいはして行こう。それって凄く大事な事だと思うから。」
「大事?バカバカしい。奴にそんな慈悲は無い。私達を所詮道具にしか見ていないのだからな。」
そう言う奴か。じゃあ逆にこれで吹っかけてみるか。
「だったら尚更だよ!!アリアを殺しに全軍で攻めてくるかもだよ!それもしつこくね!!」
「わかった。ちゃんと話をしてから抜ける。」
「あっさりかよ!?」
スレインはズッコケてたけどこれでいい。このままアリアを連れて帰ったら敵を増やしそうだしな。それだけは避けたい。
その後、私達は彼女の案内でアラクネのいる場所に向かっていた。すると途中から洞窟に灯が灯された場所に出ていた。私達はうっとりとその不思議な輝きに魅了され、眺めながら進んでいた。サーヤ達から聞いた話だと、洞窟が光っているのは『魔鉱石』と言う石が眠っているからだ。魔力を流す事で反応し、その効力を発揮するらしい。因みに洞窟にあるのは『光の魔鉱石』らしい。星の様に埋め込まれた魔鉱石が神秘的でまるでプラネタリウムに来ているみたいだった。こんなに嬉しい光景は無い。
そんな私達は、道中で洞窟を案内しているアリアにアタランテで起きている現状を話した。すると彼女はわかっていたかの様に答えた。
「なるほどな。やはりブリタニアは本格的に侵攻を始めた訳だ。と言う事は、ランドロスの『四皇』の一人、『死神の炎鳥 ケンタッキー』を瞬殺した噂のベビードラゴンは貴様であったか。」
勿論、私の事も噂になって聞いていたらしい。いや~有名になったものだな。てかアイツそんな異名の付いたドラゴンだったの!?私の中じゃただの食い物だよ!?
「そんな強いドラゴン寄越してたのか!?」
「ベビードラゴンがブリタニア兵士を全滅させたのか、よっぽど危機感を感じたらしい。」
スレインが驚くのも無理は無い。更にそのドラゴンを倒しちゃったから、もう諦めてるんじゃ無いか。ん?でも何でその事を知っているんだ?
「常にダンジョン周辺の情報は、把握している。外にいる『スモールタランス』達が偵察に出ているからな。」
ちょっと!それって私生活覗かれてたって事!?覗きは犯罪なんだぞ全く!!にしても情報筒抜けって訳か。そんだけ原始的かつファンタジーな電子ネットワーク張ってたら、情報戦に関しちゃそっちが上手か。ん?でもそれだったら私達が来る事知ってるはずだけど?
「だが、ナターシャ様の集まる家だけは何故か連絡が無い。恐らく、彼女に気付かれて殺されてるだろうな。」
怖っ!ナターシャさん怖っ!小さな蜘蛛でも察知するの!?何その感知スキル!!私も欲しいよ!!
「これはこれは驚きました。まさかあのケンタッキー殿を圧倒するベビードラゴンは貴女でしか。」
そんな時、ヴラドの声が聞こえた。洞窟の天井を見てみると私達の頭上を飛び回っていた。また何しに来たんだ?
「なるほど、通りでポイズンタランチュラの御三方を圧倒した訳ですね。それも、アリア殿と互角に渡り合うイルマ殿まで倒してしまうとは見事です。」
何だこいつ。現れたかと思ったらいきなり私を煽てて来て何考えてんだか。
「何しに来たヴラド!また私達に媚に来たのか。」
「滅相もございません。私はただ忠告と報告に来ただけです。」
私達に忠告と報告?ど言う事?
「単刀直入に申し上げます。御三方はアリア殿を連れてアタランテにお戻りになるべきです。」
何でいきなりそんな話を?何か嫌な予感がする。
「アリア殿言う通り、『ザフィーラ』殿に話をつけるなど無駄な事ですよ。それならアラクネへ進化しているアリア殿の方がよろしいかと。」
なるほど、そのザフィーラって言うアラクネがボスって事だね。でもアリアの方がいいってどう言う事?
「アリア殿が進化した今、魔王の称号を与えられ、やがては眷属を持ちます。その様な方と同盟を結ぶ方が得策と存じますが。」
そう言う事か。そのザフィーラが面倒臭いから、聞き分けがいいアリアが魔王になった方が効率が良いと思ってる訳か。
「それとこれは先程手に入れた情報ですが、既に『四皇』の一人『紅蓮のサラマンダー』ナツ様がアタランテに向かっているそうです。」
また四皇差し向けて来たのかよ。どうせ私よりレベル低いんだから諦めてもいいと思うけど、まだ一体派遣されたばかりだからしばらくは粘るか。まあ、敵の主力を全滅させれば流石に諦めるだろう。
てかヴラドの忠告と報告はこれで終わりか?けどザフィーラさんは会ってみないとわからないし、サラマンダーの方は狙いは私だからしばらく待ってるだろうし、特に問題ないだろう。
「アンタの情報は有難いけど、やっぱり私はザフィーラさんに話付けに行くわ!」
「おや!?それは何故!?」
「私にとってはデカい商談なので、これを逃したら後はない!!」
そして終わったら、どこか食べに行こう。今日は私のご褒美だ!!
「着いたぞ。だが向こうは取り込み中の様だ。」
私達は、アラクネが住む大部屋らしいところにたどり着いたが、アリアは中に直接入らず、外で私達に待機させていた。中を覗いてみると、五匹のタランチュラらしき姿が現れた。其々違った姿をしていたが、種類が違うのかな?
「おかしい?『マリオネットタランチュラ』の『ルイ』がいない?」
「知り合い?」
「ザフィーラ直属の親衛隊、通称『十二鬼月』の下弦の部隊に配属されていた奴だ。」
サーヤは普通にアリアに聞いてるけどあのすいません。それどっかの少年漫画の桃太郎擬きに出て来た悪の組織の幹部の名前では?そんで私は特に著作権的な意味で恐る恐るアリアに聞いてみた。
「あのアリアさん?まさかとは思うけど、あそこにいるのは下弦の蜘蛛さんとかじゃありませんよね?」
「ッ!?お前!?アイツ等の事を知っているのか!?」
当たってたァァァァァァ!!パワハラ会議の犠牲者の名前だァァァァ!!てかあのパクリ作者何やってんだぁ!?これ明らかに著作権引っかかるだろ!!色んな意味でやばい!!
「おい!何か一人動き出した奴いるぞ!」
スレインの方に目をやると、一匹の蜘蛛がソワソワしていた。まさかあれって釜鵺じゃないだろうね。
(十二鬼月の下弦のみが集められている。こんな事は初めてだぞ。下弦の伍はまだ来ていないみたいね。)
彼女が当たりを見渡していると、琵琶の様な音が鳴った。まさかとは思うけど・・・・それは無いか。だが琵琶の音はまるで何かが登場する様なフレーズを鳴らし、鳴り止んだ時には下弦達の目の前に、いきなり和服を身に纏った白塗りの女性が現れた。そしてごめんなさい!!私の勘は当たってました!!これパワハラ会議だァァァァ!!
(何だこの女は?誰だ?)
彼女達が見上げたその時だった。
「首を垂れて蹲え。」
(ッ!?)
「平伏せよ。」
すると全員地べたに這い蹲っていた?いや多分頭下げてるんだろうけど、元々低いからこれ以上下げられないと思うけど、頑張って下げてるんだな。
「『波言』のスキルで無理矢理下げさせているんだ。」
いいなそれ!私も覚えたい!!
(ザフィーラ様だ。ザフィーラ様の声、わからなかった。姿も気配も以前と違う。『人化』のスキルか!?)
「も・・・・申し訳ございません。お姿も気配も異なっていらしたので・・・・。」
「誰が喋って良いと言った。貴様等の腐った脳みそで物を計るな。汚物が。」
うわぁ。何か面白そうだから聞いてみよう。そして読者の皆様さようなら。多分この作品は強制的に閉鎖されると思います。そうでなくても勿論、作者に罵倒をぶちかましても構いません!!感想に誹謗中傷好き放題言ってよし!主人公の私が許す!!
「妾が聞かれた事のみ答えよ。」
うわぁ。ドン引きだわ。どうせ下弦の伍が殺されたから、お前等なんでそんなに弱いの?と問いかけて答える前に殺すんだろ?わかってんだよ。
「ルイが殺された。下弦の伍だ。妾が問いたいのは一つのみ。何故下弦の蜘蛛はそこまで弱いのか。十二鬼月に数えられたからってそこで終わりでは無い。より『人間』を食い、より強くなり、妾の下僕としての始まりだ。ここ100年余り、十二鬼月の上弦は顔ぶれが変わらない。常に冒険者の人間を狩り尽くして来たのは上弦の蜘蛛とその部下達だ。だが下弦はどうだ?何度入れ替わった?仕事舐めてるの?」
あれよくよく思ったら・・・・「うん!OK!三つね!」だよな?一つじゃねーじゃん。
(そんな事私達に言われても。)
「「そんな事私達に言われても。」何だ?声に出してハッキリ言うてみい。」
(思考が読めるのか。マズイ!!)
「何がマズイ?言うてみよ。」
「オッ!?」
釜鵺らしき蜘蛛が弁解しようとした瞬間、一瞬で五体バラバラにされた光景が写った。てか何が起きた!?ザフィーラが右手を引っ張った瞬間にバラバラにされたけど・・・・糸か!あらかじめ糸に括り付けて、引っ張ると同時に締め付ける感じで引き裂くのか!!けど何て素早い仕掛けの技だ!!
てか、サーヤとスレインが青ざめた感じで見てるけど、メッチャ汗ダラダラ!!そんでアリアは不快な感じで機嫌悪そうに睨んでるし!?ヴラドは何か黙ったまま真顔で見てるし!さっきまでのお喋りはどうした!?
(何でこんな事に。殺されるのか?折角十二鬼月になれたのに。何故だ?何故だ!?私はもっと・・・・もっと!!)
病葉らしき蜘蛛も逃げ出したいくらい顔青ざめて汗ダラダラ・・・・って!?他の蜘蛛ちゃん達も同じだったぁ!?何この地獄の光景!?てか!平気な気持ちでツッコミしてるの私だけか!?
「妾よりも冒険者が怖いか?」
「いいえ!!」
ああ・・・・彼女返事しちゃったけど、あれはやっぱり零余子かな?
「お前は冒険者に遭遇した時、逃亡しようと考えておるな。」
「いいえ!!思っておりません!!私は貴女様の為に命を掛けて戦います!!」
「ほほう。つまりお前は、妾の問いかけが全て嘘偽りと申すか。」
「いいえ!!違います!!」
お?何か私の知ってるパワハラ会議と違う方向になって来た。どうなるんだろ。
「では皆に尋ねる。この中にムカゴの言葉が正しいと思う者はおるか。」
あれ?内容違うけどどっかで聞いた様な?てかつい最近使った様な?
「この中に妾の言葉が偽りだと思う者はおるか。おるわけなかろうな。」
何かパワハラ会議に卍リベンジャーズ入れ込んで来たぁぁぁぁ!!その発想は無かったァァァァ!!
「つまりお前は妾の言葉を否定した。」
「違います!!誤解です!!」
「立て続けに妾の言葉を否定するか?外道が。」
零余子蜘蛛ちゃんが「グシャッ!!」と音を立てたら、ザフィーラに踏み潰されていた。まるで蟻を踏み潰すみたいにグリグリとその足を動かしていた。
(ダメ!!もう耐えられない!!思考も読まれてるし、肯定しても否定しても殺される!!なら・・・・逃げるしかない!!)
病葉らしき蜘蛛がザフィーラの目を盗んでこちらに向かって来たが、私達を無視して全速力で私達が通って来た道を駆けて行った。
「逃げても無駄だと言うのに、馬鹿者が。」
だが彼女はこちらに気付かぬまま通り過ぎた。彼女の必死さを見たアリアが悔しそうな表情で、逃げる彼女に同情していた。
(何とか!何とか逃げ切れ!!あのババアの手の届かない所まで!!)
だが、その抗いも無惨様の手によって終わる。
「えっ?」
さっきまで逃げていた病葉らしき蜘蛛が、何かに引っ張られる様にして、戻って来たのだ。そのまま彼女は元の場所に引っ張られ、ザフィーラが左腕を引いた瞬間バラバラにされ、床に落ちた頭部が弾む前に、勢いで踏み潰した。
「もはや十二鬼月は上弦のみで良いと思おとる。下弦の蜘蛛は解体する。」
何事もなかった様に彼女のパワハラ会議はラストスパートに差し掛かった。
「最後に何か言い残す事はあるか。」
「私はまだお役に立てます!!もう少しご猶予を頂ければ必ずお役に立ちます!!」
轆轤らしき蜘蛛はどうなるんだろ?何かこっからは私の知るパワハラ会議になりそう。
「具体的にどれほどの猶予を望む?お前は妾の為に何ができる?申してみよ。」
「ぼ・・・・冒険者の肉を分けて頂ければ、私はより強い蜘蛛となり!貴女様の為に戦います!!」
うわぁ・・・・言っちゃったよ。あれはもうボンだな。
「お前・・・・今何と申した。」
轆轤らしき蜘蛛の爆弾発言で、ザフィーラさんブチギレましたよ!?ゆっくりと彼女に近づき前足を持ち上げて顔を近づけた。あれやられたら流石にビビるわ。
「何故妾がお前の指図で褒美を与えねばならんのだ?」
「おやめ下さい!おやめ下さいザフィーラ様!!」
だがザフィーラは容赦なく、彼女の足の関節をへし折って千切ってしまった。まるでカニを丸ごと食べる時の分け方みたいな取り方をしていた。
「お前はあれか?給料を前払いしたら仕事しますと上司に言っているのか?甚だ図々しい。万死にあたいする。」
「違います!!おやめ下さい!!」
「違わない。妾は何も間違えてない。当たり前の事を申しておる。間違ってるのは貴様のその汚らわしい腐った脳みそだ。今の発言は不敬極まりない。お前は妾に指図した。楽に死ねると思うなよ。」
ザフィーラは彼女の残りの足をカニを食べる要領でもぎ取っていった。やはり激痛が走ってたのか、奇声を上げながらもがいていた。
「申し訳ありません!!お許し下さい!!お許し下さい!!ザフィーラ様ァァァァ!!」
足をもぎ取った後、お腹を引きちぎり、最後に両手で上顎と下顎を持って口を開けてそのまま引きちぎろうとしていた。
「ほひゅるひほ(お許しを)・・・・。」
ザフィーラは聞く耳持たないまま、蜘蛛の口を引きちぎりその場に捨てた。
「最後に何言い残す事は。」
さて、最後は魘夢を名乗る蜘蛛だな。私の知る限りじゃ「他の蜘蛛の断末魔を聞いた後に、最後に貴女様に殺されるなんて夢見心地でございます~。」とか言うんだろ!?わかってんだよ!!
「・・・・ふぁ~・・・・あれ?もう終わった?」
寝てたァァァァァァ!?あれ!?相手を眠らせるんじゃなくて自分から寝るの!?私の知ってる魘夢じゃ無いんだけどぉ!?
「何伯仲堂々居眠りしてるのだお前は。他の蜘蛛共の断末魔を聞いてよく寝られるのう。」
「丁度良い子守唄だった。」
別の意味で夢見心地だったよ!?え!?何この子!?
「それよりアリアお姉ちゃん怒ってるよ。」
彼女に呼ばれたかの様なタイミングで出て行ったアリアは思いっきり叫んだ。
「ザフィーラァァァァァ!!」
彼女は鬼の形相でザフィーラに近づいた。まあ無理もないけどね。こんだけ仲間がやられてるんだ。怒るのも無理もない。
「今までは目を瞑っていたが、今回ばかりは度が過ぎている!!貴様は眷属をなんだと思っているんだ!!」
「それはこちらのセリフだアリア。よくも妾の指図を無視してアラクネなんぞに進化しおってからに!!」
あ~これ一悶着あるぞ。それにアリアに続いてサーヤとスレインも出てしまった。
「下弦の連中は貴様の為に切磋琢磨して来たのだぞ!!それを無惨に殺す事は無かっただろ!!」
「妾の眷属をどうしようと妾の勝手じゃ。そしてそれは貴様も同じよ。アリア!」
アリアやヴラドの言う通り、このザフィーラって奴自分の眷属には厳しい?いや無関心か?でも彼女の性格って・・・・ああ~こいつはあれだ。ゲームプレイヤーに例えるなら味方を捨て駒にしてステージクリアしていくプレイタイプだ。育成ゲームや戦略ゲームでもある様に、育成に失敗したキャラクターを削除したり、弱いキャラや被ったキャラが増えすぎて削除するのも面倒臭いから捨て駒要員でステージをクリアしていく奴だ。ザフィーラはゲーム感覚で群を統制させている。アリアが怒るのも無理は無い。このまま揉めても困るし、早速ザフィーラに同盟の話をつけて来ますか。だから私も彼女の所へ向かった。
「まあまあ、お二人さん!その話は後にしてくれますか。」
「何者だチビ。」
「私、ナターシャ様の使いで参りましたベビードラゴンと申す者です。」
まあ先ずはお客様相手に礼儀は弁えないとね。
「ナターシャの手の物達か。何用で参った。」
「今回はブリタニアの侵攻に関して同盟を結ぶ為に参りました。」
「妾と貴様等が今更何を話す?初対面だが妾は既に貴様の事が嫌いだ。」
え?何で?私何かした?いや何もして無いな。
「おい、ドラ子。そのデカイハンマーはどっから持ってきた?」
おっと行けねえ!スレインに注意されるまで気が付かなかったけど、凶器のハンマーを持って来たの忘れてた!私よりも百倍くらいデカイハンマーを軽々と持って来てしまっていた!
「それにナターシャの従者なら失せろ。話す事など何も無い。」
「なら素晴らしい提案をしよう。お前も同盟を組め。同盟を組まないなら殺す。」
その有名なセリフを聞いたザフィーラは、体をプルプル言わせながら、人間の体をまるで脱皮するかの様に本性を現した。下半身は蜘蛛、上半身は人間の形をしているが、体は虫の外骨格の様になっていて、頭部は蜘蛛の頭そのものでだった。なんか私の知ってるアラクネと違うんだけど!?
「妾を怒らせた事を後悔するがいい!!ナターシャの手の者なら容赦なく殺す!覚悟するがいい!!」
そうか。じゃあこっちも遠慮なくいかせてもらうよ。
「ねえアリア。こいつどうしたらいい。」
「潰せ。」
よっしゃァァァァ!!ゴル○ィオンクラッシャー!!発動!承認!!
「ナターシャの手の者め!本性を現しおったか!!」
クラッシャーコネクト!!ゴル○ィオンクラッシャー!!
「おいウソじゃろ?そんな小さな身体で持ち上げるつもりではあるまいな?」
ウオォォォォォォォォ!!
「持ち上げよった!?どんだけ馬鹿力なんじゃ!?」
光にはならないけどザフィーラよ!!潰れてしまえぇぇぇぇ!!
「イヤァァァァッ!!」
思いっきりハンマーを振り下ろした瞬間に、「グシャッ!!」と音共に、ザフィーラの体は虫の死骸みたいにバラバラに爆散した。そして私はカッコよく決めポーズを取っていた。
「ふー。スッキリしたぜ!ドラ子!」
皆んな不快な気分だったのだろうな。何か代わりに私が一発ぶん殴った様な感じだ。さてと、この叔母さんの遺体を纏めて村に帰りますか。どうせ自己再生で復活するだろうし。その辺りの片付けは、アリアと魘夢らしき蜘蛛ちゃん達に任せますか。
「アリアとそれから・・・。」
「エンム。」
「悪いけどアリアと二人でザフィーラの遺体纏めて糸で包んでくれない。」
「わかった。」
それにしても、あのパワハラ会議見せられたら、とても交渉できる相手じゃ無い。しかもナターシャさんを敵視してるし、だったら実力行使に出るしか無いよな。まさか、ナターシャさん最初からこうなる事わかって私を派遣したのか!?あのナターシャ舐めた真似しやがってぇ!!
「ベビードラゴン。」
うわっ!アリアがいきなり話しかけてくるからビックリした!?
「最初からザフィーラと交渉するつもりなど無かったのか。」
「いや話をしてくれる相手なら良かったけど、ここまで聞く耳持たないんじゃもう暴力で無理矢理にでも連れていくしか無いよ。後はナターシャさんが何とかしてくれるだろうし。」
それにあのクソババアにハメられたってのもあるし。
「そうか。ありがとう。仲間の仇を取ってくれて。」
その時みたアリアの表情はとても穏やかだった。まるで、今まで縛られていた物から解放された様なそんな感じだった。
さて!ザフィーラを連れて村に帰りますか!あっ!でもアリアはこれからどうするんだろ?ここを抜けるのはいいとして、何処か行く宛はあるのだろうか。それとなくサーヤがアリアに聞いてみたが「ナターシャ様の所に世話になる。ベビードラゴンにも借りが出来てしまったし行く宛もない。しばらくは・・・・お前達の世話になる。」と頬を赤く染めながら恥ずかしそうにそう言った。可愛い所もあるのね。
「流石はランドロスのドラゴンです。このヴラド感服いたしましたぞ!」
ヴラドは相変わらずヨイショだな。何が狙いだったんだ?
「しかし残念です。アリア殿が女王の座に着いて頂ければ、このダンジョンは安泰だったものを。」
「それはアリア自信が決める事だよ。てか、アリア以外に候補者いないの?」
「残念ながら、アリア殿の様なお方は今のところいません。」
まあ、何が狙いかはわからないけど、あたしゃ頑張ってとしか言いようないよ。それにしてもヴラドって名前何処かで聞いた事ある様な?落ち着いたら調べてみよう。そう言えばエンムはどうなるんだろ?
「ねえお姉ちゃん。ダンジョンから離れるの?」
「そうだが。」
「私も連れてって。下弦の蜘蛛解散したから。」
「そうか。なら来るか。」
「ありがとう。また夢の続き見れる。」
どうやら一緒に着いてく気だ。私の知ってる魘夢とは違うけど、可愛いからいいか!
「では皆様、またのお越しをお待ちしております。」
こうしてヴラドと別れた私達は、ザフィーラを引きずりながらランドロス洞窟を出てナターシャさんの所に向かった。その頃には彼女は全回復していたが、アリアの糸で雁字搦めに拘束されていた。それを見たナターシャさんはニヤニヤと笑いながらザフィーラを侮辱していた。
「あらザフィーラったらとうとう自分の眷属にまで見捨てられたの?そんな無様な姿晒して面白い事。ね?今どんな気持ち?ね?今どんな気持ち?」
「相変わらず憎たらしい奴だのう。随分見ない間にシワが増えた所為かババアになっとるぞ。」
「そう言う貴女も太陽に当たってない所為かシミが覆い尽くして真っ黒になってるわよ。よくそんな顔で人前に出られたものね。恥ずかしくないのかしら?」
「貴様のシワくちゃな顔よりかはマシだと思うておる。まあ貴様は自覚しとらんじゃがの。可哀想な奴だ。同情する気にもなれん。」
「あらやだこの害虫は眼球が腐ってるのかしら?早いとこ駆除しないと。でもゴキブリ並にしぶといのよね。」
「貴様は脳味噌でも腐っておるのか?なら早い所医者に見せた方がいいぞ。まあ見た目も中身も手遅れだがな。」
「ちょっと誰か殺虫剤持ってきて。私の目の前に目障りなゴキブリがいるから。」
「おい。いい加減脳味噌が腐った死体を処理してくれんか?悪臭は酷いわ、見た目も酷いわでこっちがおかしくなりそうだ。」
「だったら貴女が食べればいいでしょ?それで済む話なんだから。」
「何を吐かすか。腐ったものを喰うなど生き物のする事ではない。妾の腹を壊す気か。」
「お腹どころか二度と再生できない様、五体バラバラにしてモンスターの餌にしてあげるわ。」
「言うてくれるのう?クソババア」
「クソババアはお前だ。ドブス。」
「ストップ!ストップ!醜いオバハンの罵り合いはそこまで!!」
ヤッバ!止めてなきゃ暴れ出すぞおばさん達。この二人って昔っからこうなのか?もうザフィーラだけじゃなくてナターシャさんも面倒臭いな。
「おお!!ドラ子達帰ってたか!!」
うわぁ!!兄貴!?いきなり入ってくるから驚いたけど、やけに慌ててるな。何かあったのか?
「今ブリタニア軍が攻めて来てるんだが、ランドロスのドラゴンまでお出ましだ!しかもそいつお前を指名して来てるぞ!?」
え?私に?もしかしてニワトリの仲間か?まあどっちにしても行くしかないか。
「わかった!直ぐに行くよ!!」
私達は兄貴の後について行った。おっと!ナターシャさんに伝える事忘れてた!!
「ナターシャさん!!ケンカせずに同盟の話進めておいて下さいね!!」
と言い残し、私はそそくさ戦場に向かった。大丈夫かなあの二人。だが自分の心配もしなきゃ行けなかった。着いた先には、ブリタニアの兵士とデカイワニみたいなドラゴンが待ち構えていたが、何か揉めてる?何で?しかも戦闘中かと思いきや両軍睨み合いの状態だった。
「何故止めるのだ!!奴等は目の前何だぞ!!」
「うるせぇぇぇぇぇ!!俺はケンタッキーをぶっ飛ばしたチビドラゴンに用があるんだ!!」
どうやら私を待っててくれたらしく、それまでブリタニアの攻撃も止めてくれていた。あらやだなんて優しいドラゴンなんだろう!!
「え?何これ?どう言う状況?」
「ブリタニアが攻めてくる様子が無いと言うよりは、ドラゴンに止められてるようだな。」
サーヤとアリアも状況がわからない様子でいた。本当は出たくないけど仕方ないから出るしか無いか。
「大変お待たせしました。私ベビードラゴンと申します。本日はどの様なご用件でしょうか。」
「やっと来やがったか!!俺は『紅蓮のサラマンダー』ナツ!!ケンタッキーをぶっ飛ばしたのはテメーか!!」
ケンタッキー・・・・・・ああ!あのニワトリか!カラスみたいな鳴き声してたけど?
「仲間をぶっ飛ばしてくれたんだ!!今度は俺が相手になってやる!!」
「大変申し訳ありませんがお客様。そう言った内容ですと、事前にご予約して頂きませんと受付出来ない場合がございます。」
「戦争に予約もへったくれもあるかぁ!!今ここで俺と勝負しろ!!」
「そう申されても困ります。こちらも都合と言うものがありまして、改めて日時を指定して頂かないと受付できません。」
「ふざけてるのかテメー!!」
私がナツと揉めてる光景を外野は困惑しながら見ていた。
「あれ遊んでるわね。」
「遊んでるな。間違いなく。」
「はぁ!?交渉では無いのか!?」
アリアは初めての事だったからよくわからないで見ていたみたい。サーヤとスレインだけは見抜かれていた。
「強者の余裕って奴だよ。お前も魔眼で見ただろ?ドラ子のえげつないレベルとステータス。もうランドロスのドラゴンですら手に負えないくらいまで強くなってやがる。だからアイツ、ああして遊ぶ癖がついてんだよ。」
「油断大敵。戦闘中に遊ぶなどどうかしている。」
「だから言ってるでしょ。強者の余裕だって。そろそろお仕置きしてもいい頃合いかしら。」
サーヤの怒りが限界が近づいてる事も知らずに、私は相手をおちょくっていた。
「いいから俺と勝負しろ!!」
「だーかーらー・・・・「お受け致しかねます。」って言ってるだろぉがァァァァ!!」
相手の対応に怒りを覚えた私はサラマンダーに右フックをかました。だが私の拳を受けたサラマンダーは平気な顔をしていた。
「何だ?」
私の『殴る』が効いていない!?バカな!?こいつ・・・最強か!?
「おい、加減したぞ。」
「加減したな。」
「そろそろお仕置きとお説教考えなきゃ。」
ヤバっ!?外野に気付かれた!!そろそろフィナーレと行きましょうか。
「何だその攻撃は!!誰かの入れ知恵か!!浅いぞ!!」
「そりゃ・・・・腰が入ってなかったからな!!」
油断したサラマンダーの顔面に渾身の左ストレートをお見舞した。
「ユナイテッド!!ステイツオブ!!スマァァァァァシュッ!!」
「ブッ!?ヘアァァァァァァ!!」
おー!ちょうどいい方角でランドロスまで飛んでったぞ!さてと後はブリタニアを片付けますか。
「て・・・撤退だ!!撤退する!!」
「無理です!!退路を絶たれました!!」
え?いつの間に?本当だ!!サーヤとスレインとアリアが味方を半分連れて敵陣の後方に回ってる!!
「おいおいまさかドラゴンばっかに仕事押し付けて帰る気じゃねえだろうな。」
「この森に入って来た時点で、貴方達の負けです。」
「新参者ではあるが、よもや生きて帰れると思うなよ。」
おーおー。カッコいいね三人とも。その後は敵部隊を壊滅させて終わった。
そんで今回の件でランドロスも流石に増援を送ってこないと見ていたが、諦めていなかった。
「ケンタッキーに続いてナツまでやられるとは、何故赤ん坊のドラゴンにここまで苦戦せねばならんのだ!!」
ランドロス城の広間で人間の姿でパパンドラゴンが冷や汗を流しながら挙動不審になっている姿があった。
「父上!」
そんな彼に娘がつまり私の妹が出て来た。彼に申し出があるそうで訪れたそうだ。
「エルザ!」
「ケンタッキーに続いてナツまでやられたとはどう言う事ですか!!」
「どうやら、私達では手に負えない相手になっているのやも知れぬ。」
うん。メチャクチャ「♪強く~♪なれる~♪理由を知ったあ~。」になってるから。
「そう決断を早めるべきではないのでは?」
「そうそう!まだそのドラゴンを殴れてねえからな!!」
王と娘の所に現れた二人の竜が、次の刺客として私の前に立ちはだかる。
「ナッパ!テンガイ!もうお前達に掛かっているぞ。」
「任せとけ!!完膚なきまでにボコボコにしてやる!!」
「所詮はレベルが高いだけの赤子です。我等の敵ではありません。」
そう、彼等は私にボコられるとも知らずに、特大ブーメランをかますのであった。
そんな私達は、戦いを終えてナターシャさんの所で休んでいた。話を聞くとザフィーラとの同盟の話が纏まり、向こうから増援を送ってくれると言う話だ。有難いが、信用していいのかな。
「今日からよろしくね。アリア。もうあの害虫の所でこき使われなくて済むのよ。」
「感謝します。ナターシャ様。エンム共々お世話になります。」
アリアの背中に引っ付いている蜘蛛がエンムだ。ダンジョンを出てからずっと寝ている。アリアが戦闘中は激しく動いていたのに全く起きなかったもんな。
「そういや上弦の蜘蛛連中って会ってないけどどんな奴等なんだ?」
「ヴラドの合図で出て来た、イルマ達ポイズンタランチュラの三匹がそうだ。」
あの三匹か!!あれが顔ぶれが変わらない上弦達だったのか!!
「因みに上弦の壱は?」
「目の前にいるだろ。私だ。」
いやお前が黒死牟だったんかい!!私もスレインもビックリだよ!!
「そんな訳だ。アラクネに進化した以上、次に手にするのは魔王の称号だ。それなりの振る舞いはさせて貰う!」
新たな仲間は新たな目標へと向かって私達の仲間になった。そんな私達の更なる出会いは、ブリタニア城に幽閉された一人の悪魔の少女だった。
「おい聞いたか。例の侍女を解禁させるらしい。」
「王都の侍女に紛れていた悪魔か。まさか人間社会に紛れていたとは恐ろしい。」
兵士達がヒソヒソ噂話をするくらい有名になっていた。そんな彼女が、とうとうアタランテの攻略部隊に導入される事になった。
「ほら!とっとと降りろ!!」
兵士に乱暴に扱われながらも、護送用の馬車から降りた眼鏡を掛けたメイドの姿があった。両手を短い鎖で繋がれた手錠をしていた。不当な扱いをされていた彼女は兵士を睨み付けていた。
「私に何をしろと。」
「四皇のドラゴン達をサポートしろ。それがお前の仕事だ。」
「それで私の罪は消えるのですね。」
「勿論だ。」
彼女との出会いが、やがて進化した私と一緒に国を創る事になるとは、当時の私や彼女からは思いもよらなかっただろう。そんな先の話を知らぬまま、私は今日もこの異世界で小さなドラゴンとして生きていくのだから。
「そこで交渉人として、ベビードラゴン、サーヤ、スレインの三人に行ってもらいます。」
何とナターシャさんは私達三人を行かせるつもりでいたらしい。てか私達で大丈夫か!?
「サーヤとスレインは護衛よ。交渉するのはドラちゃん貴女にお願いするわ。」
「私?でもなんで?」
「言ってたわね。前世は別の世界で人間だったって。なら貴女のその知識を役立てて欲しいの。」
そう言う事ですか。なら引き受けましょうと思いきや、兄貴がナターシャさんに聞いて来た。
「ナターシャさん。貴女が行った方が良くないっすか?頭領同士で話をする方が礼儀と言うものでは?」
言われてみれば確かにそうだ。使者を送るなら代表同士で話をした方がいいんじゃないか?
「まあ、何て言ったらいいでしょう。彼女凄く面倒臭いの。」
おい!オバサン!仕事サボるなよ!!てかどんな面倒臭い人だよ!!
「それにドラちゃんやサーヤとスレインにはいい経験になるわ。一度彼女に会ってみるのもいいかもね。」
ナターシャさんがそこまで言うなら・・・・何か上手く載せられた感じはあるけど、仕方ない行ってみますか!
それから私達三人は、ダンジョンの入り口へと辿り着いた。普段は立ち入り禁止になっている所だから、私達もこれが初めての洞窟探検となる。勿論灯など一切ないから、薪に火を付けて進むくらいしか無かった。洞窟は狭い空洞と言うより、広い空間が広がっていた。道幅も広く歩く分には申し分なかった。
「でも『ランドロス洞窟』の代表ってどんな人なんだ?」
確かにナターシャさん名前は疎か種族も話さなかったからな。嫌な予感がする。だから私は二つの予測を二人に話した。
「私が思うにこの洞窟を支配しているのは恐らく『アラクネ』か『地龍』だと思う。」
「地龍は聞いた事ないから多分違うと思う。」
「だとしたら蜘蛛の女王アラクネか。ここら辺蜘蛛だらけって事だよな。」
考察しながら進むと人らしき影が座り込んでいた。灯を照らしてみると、なんかくノ一装束を着た女性が座り込んでいたが何か苦しそうだ。しかも怪我をしている。
「貴女!大丈夫!」
サーヤが直ぐに回復魔法を掛けてあげたが、それと同時に千里眼で彼女のステータスを確認していた。するととんでもない事実がわかった。
「この子・・・・アラクネよ!?」
「え!?嘘だろ!?何でダンジョンの親玉が手傷負って倒れてるんだ!?」
何といきなりアラクネと遭遇したのだ。いや確かにそうだ!ダンジョンのボスが何で手傷なんか負って倒れてるの!?因みに彼女のステータスはこんな感じです。
呼称
『アリア』
個体名
『アラクネLv.50』
属性
『闇』『地』
種族
『蜘蛛』
固有スキル
『蜘蛛の糸』『人化』『危機感知』『広範囲視覚』『気配探知』『動体視力』『超直感』『暗殺』『不死』
スキル
『魔眼Lv.5』『加速Lv.5』『超加速Lv.5』『瞬足Lv.5』『貪食Lv.5』『予知Lv.1』『脱皮Lv.5』『産卵Lv.5』『隠密Lv.5』『再生Lv.5』『超高速再生Lv.MAX』
魔法
『毒霧Lv.5』『ポイズンレインLv.5』『ポイズンランスLv.5』『ポイズンマシンガンLv.5』『ポイズンショットLv.5』『硫酸Lv.5』『硬化Lv.5』
武技
『末脚Lv.5』『奥義 全身全霊Lv.MAX』『緊急回避Lv.5』『影移動Lv.5』『音速Lv.5』『奥義 瞬歩Lv.MAX』『回し蹴りLv.5』『飛び蹴りLv.5』『膝蹴りLv.5』『多連脚Lv.5』『毒の牙Lv.5』
固有奥義:あやとり
『蜘蛛の巣』『首吊り』『束縛』『骰子肉塊』『錦糸十連斬死』『あやめ駕籠』『ワイヤートラップ』『黒糸牢』
ウソ・・・・サーヤやスレインより強くない?色々ヤバイよね?何だよどいつもこいつも!!てか何だ固有奥義って!?
「この子凄いわ。独自の固有奥義覚えてる!!」
「アタシ等よりレベル高いな。」
いいな!いいな!私なんて武技がただの攻撃なんだよ!!ふざけてるとしか言いようないよね!!
「あっ!気が付いたよ!」
どうやらアラクネの目が覚めた様だ。何か事情が有りそうだし、話を聞かないといけないしな。
「すまない。迷惑を掛けた。」
「貴女お名前は?」
「アリアだ。助けてくれて感謝する。」
アリアは黒髪でアイシャドウが特徴の蜘蛛?いや今は人か?でもどうやって人の姿に?
「ねえ?貴女アラクネなんだよね?」
「それがどうかしたか?」
「いやアラクネって蜘蛛に人間の上半身がくっ付いた種族の筈だけど?」
「恐らく私の固有スキル『人化』だろうな。それが無かったら、お前の言う通りの姿だぞ。」
いいなあ。私もそのスキル欲しい。何でレベル90で覚えないんだろ?
「それよりお前だ!お前!」
え!?私!?何!?
「何だお前のステータスは!?デタラメなレベルをしてるくせにスキルと魔法も覚えてないのか!それに武技は初期レベルで覚えてるものしか無いってどう言う事だ!!」
「んな事知るかぁ!!ゴミ作者に聞け!!こっちが文句言いたいくらいだ!!」
「いや。すまなかった。」
彼女は申し訳無さそうにしていた。少し言い過ぎたかな?でも魔眼で相手のステータス覗こうなんて不謹慎だな。
「悪い。このドラゴン、最近それが原因で機嫌悪いんだ。勘弁してくれ。」
スレインが私の代わりに謝ってくれた。最近ちょっとイライラしていたかな。反省しよう。
「それはそうと、彼女に大事な話があるんじゃないの?」
おっと!そうだった!さっそく交渉に入らないと忘れる所だった。
「さっそく何だけどさ。貴女をこの『ランドロス洞窟』のリーダーと見込んで話があるんだけど。」
「ん?誰と勘違いしてるかは知らんが、私はここの主人ではない。」
ん?でも彼女アラクネ何だよね?だったらここのリーダーの筈だけど?
「もう一度私のステータスを見てみろ。称号が付いていないのが何よりの証拠だ。」
てな訳でサーヤとスレインに確認してもらったら本当に無かった。そりゃ失礼した。ん?じゃあアリアはここのボスの眷属の蜘蛛なのか。
「いや、おかしくね?眷属がアラクネに進化するか?」
「私も今さっきアラクネに進化したばかりだからな。未だに自分のステータスがどうなっているのか把握もし切れていない。」
そうか。こっちの世界じゃ、眷属が魔王と言う地位に就くのは珍しい話なんだ。その例外が現れた。それがアリアなのかもしれない。それに彼女自身がそれを一番望んでいた。その証拠がさっきの手傷か。明らかに同族に襲われたと言うべきだな。
「アリアは、もしかして自由になりたいの。」
「ッ!?」
反応からしてやっぱりそうだ。彼女は自由になろうとしている。眷属と言う呪縛から抜け出したいんだ。でも私は知っている。蜘蛛に転生した女子高生が異世界の危機を救うお話を!途中まで見てて殺されたけどね!!本当に惜しい事した!!
「流石はランドロスのドラゴン殿。良き観察眼をお持ちだ。」
洞窟の暗闇に紛れて、誰かの声が聞こえた。得体の知れない存在に、私達は警戒していた。だがアリアは呆れた様子でいた。もしかして知り合いか?
「聞いていたなら出て来たらどうだ!ヴラド!!」
アリアが叫ぶと、それに応えて潔くこちらに飛来して来た。その正体はコウモリだった。
「いけませんなアリア殿。ちゃんと三世を付けていただきませぬと。」
何者だ?とアリアに尋ねると嫌な顔されて渋々答えた。
「こいつはヴラド三世!!ただの意地汚いコウモリ・・・・いや害虫だ。」
何で今言い直した!?よっぽど嫌いなの!?確かにあの感に触る喋り方はイラッと来るけどそこまで!?
「いやはや手厳しいお人だ。」
あっさり流したけど?
「お初にお目にかかります。私この『ランドロス洞窟』の案内役を勤めています。『ヴラド』と申します。以後お見知り置きを。」
「正確には、ここに訪れる人間の冒険者を騙して他の魔物に食わせる死の案内人、又は獲物を誘き出す餌だ。」
嫌な魔物だな!!騙された冒険者が気の毒でならないよ!!
「これはまた手厳しい!ですがそれでこそ貴女はこのダンジョンの魔王となる存在です。」
確かにアラクネに進化したアリアなら、魔王としての資格があるけど、こいつ何を企んでるんだ?
「貴女がこのダンジョンを統べる者として、魔王になる素質が有るお方とお見受けしたのです。そうすれば貴女の望みも叶う事でしょう。そう!『自由』を手にする事が出来るのですよ!!」
まあ、アリアがしたい事は何となく予想はしていたけど、こいつの魂胆も何となく理解できた。アリアを利用して裏から実権を握ろうとする世渡り上手な詐欺師みたないなタイプの奴だ。まあこ言う奴は最後は痛い目見るパターンが多いからな。絶対ロクな死に方しかしない。
「差し支えなければ、このヴラド三世が貴女様の願いにご助力すると約束しましょう。」
この悪徳セールスは詐欺働く気満々じゃねえか!?アリアはしっかりしてるし、大丈夫だと思うけど騙されちゃダメだからね!!
「ヴラド。私はお前が嫌いだ。お前の言葉は何もかもが嘘に聞こえる。だが、今のお前からは本心から語ってる様にも聞こえる。魔王になる約束は出来ないが、私を逃す協力をしてくれるか。」
「ありがとうございます!このヴラド三世!貴女の脱獄に誠心誠意協力しましょう。」
ダメダメダメ!!OKしちゃダメぇぇぇぇ!!ヤバイ止めないと!!
「ダメだよアリア!!こんな奴の話に乗っちゃダメ!!」
「ん?何故だ?」
「話聞いてるといい人っぽいけどな?」
「確かに怪しいけど、悪い人には見えないよ?」
「その「優しさに~♪包まれたなら~♪」を信用しちゃダメなの!!詐欺師の手口だから!!」
アリアだけじゃなくてサーヤもスレインも信じようとしてた!?アブなッ!私以外全員騙される所だったよ!?
「なるほど、初対面に対してこの警戒よう。これ程に信用されて無いとは流石の私も傷付きますな。貴女の人生は余程誰かに裏切られて来たのでしょう。お労しい限りです。」
まあ確かにこいつの言う通り、小学校から高校までクラスの男子からカツアゲ、女子からは騙されてお金を取られる毎日だったよ。それもあるけど!お前の話が私や読者にも解りやすいくらいの詐欺の内容なんだけど!?もう騙す気満々だよねってくらい!!
「では何故、私が嘘を付いていると確信していたのでしょうか。」
「アンタへの見返りが無いからよ!そうやって親切心で付け込もうとする奴は必ず約束を破り裏切る。それが詐欺師の手口だからよ!」
「貴女は血も涙も無いドラゴンですね。損得だけで人を選ぶとはあまりに無慈悲!!私はその親切心で動いていると言うのに酷い人だ。ですが、決定権はアリア殿にあります。貴女の出る幕はありません。」
状況が悪くなれば無理矢理話を戻そうとする。ここまで手口が解りやすい詐欺師は初めてだな。
「貴女よりアリア殿とお付き合いが長いのはこの私ですよ?それを今し方お会いしたばかりのドラゴンが何を言いますか。」
そんな言葉で私が動揺するかっての!なんか段々と殴り飛ばしたくなって来た。と思った時だった。
「ヴラド。お前の親切心には感謝する。だが、私はこのドラゴンを信じる事にした。こいつは、私が語らなくても私の願いに気付いた。だから私はこいつを信じる。すまないな。お前の期待に応えてやれなくて。」
アリア!いや騙されなくて良かったよ。信じてくれてありがとう!と感謝している間に、ヴラドの気配が変わった。
「そうですか。それは残念です。では皆さん!出番ですよ!!」
ヴラドの合図で三体の蜘蛛が一斉に飛び出て来た。最初からこうなる事がわかってた様な手際だ。流石は詐欺師、次の手に討って出て来たのだ。私達四人は直ぐに構えたが何てでかい蜘蛛だ。姿形もまるでタランチュラだ。
「こいつ等『ポイズンタランチュラ』だ!」
「かなり上位の魔物よ!!」
サーヤとスレインのその魔眼と千里眼便利だよね!?欲しいよそのスキル!!てかやっぱりアイツ等タランチュラだった!!
「アリアぁぁぁ!!」
すると一体のポイズンタランチュラがアリアに向かって叫んだ。
「イルマ。」
「アンタ!本当にここを出て行く気!!」
『イルマ』と呼ぶ彼女は、アリアに何かを訴えていた。
「悪いな。私は外の世界に出ると決めた。もうお前とも会う事はない。」
「ふざけるな!勝ち逃げする気かコラァ!!」
あの子かなりライバル視してるな。まあアリアのこのステータス見たら同族としては負けてられないか。
「責めて私に倒されてから行きなさい!!」
おいおい、アリアったらアイツにどんだけ負かしてんだよ。彼女も気の毒だな。
「なあドラ子!さっきのコウモリ何だけど、魔眼が妨害されて奴のステータス見れないんだけど!!」
「うそ!?」
「本当よ。『著作権』と『プライバシー』のスキルを使って隠してるみたい。」
抜かりないとは思っていたけど、ここまでやるとは!てか何その日本の法律みたいなスキルは!?
「ヴラドは無視していい!それより目の前の連中に警戒しろ!」
アリアの怪我は多分こいつ等が原因だと思う。それはアリアが集団から抜けるとか言い出したから制裁を受けたんだと思う。こいつ等はアリアを追撃しに来たんだ。なら遠慮はいらない!
「スレイン!あれ行くよ!」
「おお!ドラゴンマシンガンだな!!」
てな訳でトランスフォーム!!スレインと合体!!
「喰らいやがれぇぇぇぇ!!」
はい!火の粉連射!!蜂の巣になりやがれぇぇぇぇ!!と三体のポイズンタランチュラ共に浴びせた。抵抗虚しく三体共立てなくなっていた。
「何あの赤ちゃんドラゴン。反則でしょ。」
「わからない。レベルが以上だから普通の火の粉じゃない。」
「もう・・・・動けない。」
そりゃレベル90の火の粉受けて真面に生きてるのアンタ等くらいだよ。後はヴラドだけだな。
「って!?あのコウモリいねえぞ!!」
嘘!?いつの間に!?引き際うまいと言うか逃げるの早!?
「奴は放っておけ、その内ひょっこり現れるだろう。」
いや・・・・現れても面倒臭いんだけど?それより、早くアラクネのボスに会わなきゃ。
「では行くぞ。」
あれ?アリアさん?そっちは私達が入って来た方角だけど?
「どうした!外に出るのだろ!!」
いや私達まだ用事済んでない!!戻れや!!
「ストップ!!アタシ等まだ仕事があるんだよ!!」
「そう言えば話しが如何とか言っていたな。奴に話をしても無駄だ。」
何で?ナターシャさんの言っていた面倒臭い人?そんなに頑固なの?まあでも帰るわけにもいかないからな。後々ナターシャさんからも面倒臭い事になるし、とりあえずアリアに案内だけでもしてもらうか。
「断る。奴とは顔も見たく無いからだ。」
だがアリアは断る一方だった。彼女の様子からして、このダンジョンのボスは理不尽極まりない様子だ。でもちゃんと話して行かないと後々後悔する。アリアの為にも私は引かなかった。
「独り立ちするならちゃんと挨拶くらいはして行こう。それって凄く大事な事だと思うから。」
「大事?バカバカしい。奴にそんな慈悲は無い。私達を所詮道具にしか見ていないのだからな。」
そう言う奴か。じゃあ逆にこれで吹っかけてみるか。
「だったら尚更だよ!!アリアを殺しに全軍で攻めてくるかもだよ!それもしつこくね!!」
「わかった。ちゃんと話をしてから抜ける。」
「あっさりかよ!?」
スレインはズッコケてたけどこれでいい。このままアリアを連れて帰ったら敵を増やしそうだしな。それだけは避けたい。
その後、私達は彼女の案内でアラクネのいる場所に向かっていた。すると途中から洞窟に灯が灯された場所に出ていた。私達はうっとりとその不思議な輝きに魅了され、眺めながら進んでいた。サーヤ達から聞いた話だと、洞窟が光っているのは『魔鉱石』と言う石が眠っているからだ。魔力を流す事で反応し、その効力を発揮するらしい。因みに洞窟にあるのは『光の魔鉱石』らしい。星の様に埋め込まれた魔鉱石が神秘的でまるでプラネタリウムに来ているみたいだった。こんなに嬉しい光景は無い。
そんな私達は、道中で洞窟を案内しているアリアにアタランテで起きている現状を話した。すると彼女はわかっていたかの様に答えた。
「なるほどな。やはりブリタニアは本格的に侵攻を始めた訳だ。と言う事は、ランドロスの『四皇』の一人、『死神の炎鳥 ケンタッキー』を瞬殺した噂のベビードラゴンは貴様であったか。」
勿論、私の事も噂になって聞いていたらしい。いや~有名になったものだな。てかアイツそんな異名の付いたドラゴンだったの!?私の中じゃただの食い物だよ!?
「そんな強いドラゴン寄越してたのか!?」
「ベビードラゴンがブリタニア兵士を全滅させたのか、よっぽど危機感を感じたらしい。」
スレインが驚くのも無理は無い。更にそのドラゴンを倒しちゃったから、もう諦めてるんじゃ無いか。ん?でも何でその事を知っているんだ?
「常にダンジョン周辺の情報は、把握している。外にいる『スモールタランス』達が偵察に出ているからな。」
ちょっと!それって私生活覗かれてたって事!?覗きは犯罪なんだぞ全く!!にしても情報筒抜けって訳か。そんだけ原始的かつファンタジーな電子ネットワーク張ってたら、情報戦に関しちゃそっちが上手か。ん?でもそれだったら私達が来る事知ってるはずだけど?
「だが、ナターシャ様の集まる家だけは何故か連絡が無い。恐らく、彼女に気付かれて殺されてるだろうな。」
怖っ!ナターシャさん怖っ!小さな蜘蛛でも察知するの!?何その感知スキル!!私も欲しいよ!!
「これはこれは驚きました。まさかあのケンタッキー殿を圧倒するベビードラゴンは貴女でしか。」
そんな時、ヴラドの声が聞こえた。洞窟の天井を見てみると私達の頭上を飛び回っていた。また何しに来たんだ?
「なるほど、通りでポイズンタランチュラの御三方を圧倒した訳ですね。それも、アリア殿と互角に渡り合うイルマ殿まで倒してしまうとは見事です。」
何だこいつ。現れたかと思ったらいきなり私を煽てて来て何考えてんだか。
「何しに来たヴラド!また私達に媚に来たのか。」
「滅相もございません。私はただ忠告と報告に来ただけです。」
私達に忠告と報告?ど言う事?
「単刀直入に申し上げます。御三方はアリア殿を連れてアタランテにお戻りになるべきです。」
何でいきなりそんな話を?何か嫌な予感がする。
「アリア殿言う通り、『ザフィーラ』殿に話をつけるなど無駄な事ですよ。それならアラクネへ進化しているアリア殿の方がよろしいかと。」
なるほど、そのザフィーラって言うアラクネがボスって事だね。でもアリアの方がいいってどう言う事?
「アリア殿が進化した今、魔王の称号を与えられ、やがては眷属を持ちます。その様な方と同盟を結ぶ方が得策と存じますが。」
そう言う事か。そのザフィーラが面倒臭いから、聞き分けがいいアリアが魔王になった方が効率が良いと思ってる訳か。
「それとこれは先程手に入れた情報ですが、既に『四皇』の一人『紅蓮のサラマンダー』ナツ様がアタランテに向かっているそうです。」
また四皇差し向けて来たのかよ。どうせ私よりレベル低いんだから諦めてもいいと思うけど、まだ一体派遣されたばかりだからしばらくは粘るか。まあ、敵の主力を全滅させれば流石に諦めるだろう。
てかヴラドの忠告と報告はこれで終わりか?けどザフィーラさんは会ってみないとわからないし、サラマンダーの方は狙いは私だからしばらく待ってるだろうし、特に問題ないだろう。
「アンタの情報は有難いけど、やっぱり私はザフィーラさんに話付けに行くわ!」
「おや!?それは何故!?」
「私にとってはデカい商談なので、これを逃したら後はない!!」
そして終わったら、どこか食べに行こう。今日は私のご褒美だ!!
「着いたぞ。だが向こうは取り込み中の様だ。」
私達は、アラクネが住む大部屋らしいところにたどり着いたが、アリアは中に直接入らず、外で私達に待機させていた。中を覗いてみると、五匹のタランチュラらしき姿が現れた。其々違った姿をしていたが、種類が違うのかな?
「おかしい?『マリオネットタランチュラ』の『ルイ』がいない?」
「知り合い?」
「ザフィーラ直属の親衛隊、通称『十二鬼月』の下弦の部隊に配属されていた奴だ。」
サーヤは普通にアリアに聞いてるけどあのすいません。それどっかの少年漫画の桃太郎擬きに出て来た悪の組織の幹部の名前では?そんで私は特に著作権的な意味で恐る恐るアリアに聞いてみた。
「あのアリアさん?まさかとは思うけど、あそこにいるのは下弦の蜘蛛さんとかじゃありませんよね?」
「ッ!?お前!?アイツ等の事を知っているのか!?」
当たってたァァァァァァ!!パワハラ会議の犠牲者の名前だァァァァ!!てかあのパクリ作者何やってんだぁ!?これ明らかに著作権引っかかるだろ!!色んな意味でやばい!!
「おい!何か一人動き出した奴いるぞ!」
スレインの方に目をやると、一匹の蜘蛛がソワソワしていた。まさかあれって釜鵺じゃないだろうね。
(十二鬼月の下弦のみが集められている。こんな事は初めてだぞ。下弦の伍はまだ来ていないみたいね。)
彼女が当たりを見渡していると、琵琶の様な音が鳴った。まさかとは思うけど・・・・それは無いか。だが琵琶の音はまるで何かが登場する様なフレーズを鳴らし、鳴り止んだ時には下弦達の目の前に、いきなり和服を身に纏った白塗りの女性が現れた。そしてごめんなさい!!私の勘は当たってました!!これパワハラ会議だァァァァ!!
(何だこの女は?誰だ?)
彼女達が見上げたその時だった。
「首を垂れて蹲え。」
(ッ!?)
「平伏せよ。」
すると全員地べたに這い蹲っていた?いや多分頭下げてるんだろうけど、元々低いからこれ以上下げられないと思うけど、頑張って下げてるんだな。
「『波言』のスキルで無理矢理下げさせているんだ。」
いいなそれ!私も覚えたい!!
(ザフィーラ様だ。ザフィーラ様の声、わからなかった。姿も気配も以前と違う。『人化』のスキルか!?)
「も・・・・申し訳ございません。お姿も気配も異なっていらしたので・・・・。」
「誰が喋って良いと言った。貴様等の腐った脳みそで物を計るな。汚物が。」
うわぁ。何か面白そうだから聞いてみよう。そして読者の皆様さようなら。多分この作品は強制的に閉鎖されると思います。そうでなくても勿論、作者に罵倒をぶちかましても構いません!!感想に誹謗中傷好き放題言ってよし!主人公の私が許す!!
「妾が聞かれた事のみ答えよ。」
うわぁ。ドン引きだわ。どうせ下弦の伍が殺されたから、お前等なんでそんなに弱いの?と問いかけて答える前に殺すんだろ?わかってんだよ。
「ルイが殺された。下弦の伍だ。妾が問いたいのは一つのみ。何故下弦の蜘蛛はそこまで弱いのか。十二鬼月に数えられたからってそこで終わりでは無い。より『人間』を食い、より強くなり、妾の下僕としての始まりだ。ここ100年余り、十二鬼月の上弦は顔ぶれが変わらない。常に冒険者の人間を狩り尽くして来たのは上弦の蜘蛛とその部下達だ。だが下弦はどうだ?何度入れ替わった?仕事舐めてるの?」
あれよくよく思ったら・・・・「うん!OK!三つね!」だよな?一つじゃねーじゃん。
(そんな事私達に言われても。)
「「そんな事私達に言われても。」何だ?声に出してハッキリ言うてみい。」
(思考が読めるのか。マズイ!!)
「何がマズイ?言うてみよ。」
「オッ!?」
釜鵺らしき蜘蛛が弁解しようとした瞬間、一瞬で五体バラバラにされた光景が写った。てか何が起きた!?ザフィーラが右手を引っ張った瞬間にバラバラにされたけど・・・・糸か!あらかじめ糸に括り付けて、引っ張ると同時に締め付ける感じで引き裂くのか!!けど何て素早い仕掛けの技だ!!
てか、サーヤとスレインが青ざめた感じで見てるけど、メッチャ汗ダラダラ!!そんでアリアは不快な感じで機嫌悪そうに睨んでるし!?ヴラドは何か黙ったまま真顔で見てるし!さっきまでのお喋りはどうした!?
(何でこんな事に。殺されるのか?折角十二鬼月になれたのに。何故だ?何故だ!?私はもっと・・・・もっと!!)
病葉らしき蜘蛛も逃げ出したいくらい顔青ざめて汗ダラダラ・・・・って!?他の蜘蛛ちゃん達も同じだったぁ!?何この地獄の光景!?てか!平気な気持ちでツッコミしてるの私だけか!?
「妾よりも冒険者が怖いか?」
「いいえ!!」
ああ・・・・彼女返事しちゃったけど、あれはやっぱり零余子かな?
「お前は冒険者に遭遇した時、逃亡しようと考えておるな。」
「いいえ!!思っておりません!!私は貴女様の為に命を掛けて戦います!!」
「ほほう。つまりお前は、妾の問いかけが全て嘘偽りと申すか。」
「いいえ!!違います!!」
お?何か私の知ってるパワハラ会議と違う方向になって来た。どうなるんだろ。
「では皆に尋ねる。この中にムカゴの言葉が正しいと思う者はおるか。」
あれ?内容違うけどどっかで聞いた様な?てかつい最近使った様な?
「この中に妾の言葉が偽りだと思う者はおるか。おるわけなかろうな。」
何かパワハラ会議に卍リベンジャーズ入れ込んで来たぁぁぁぁ!!その発想は無かったァァァァ!!
「つまりお前は妾の言葉を否定した。」
「違います!!誤解です!!」
「立て続けに妾の言葉を否定するか?外道が。」
零余子蜘蛛ちゃんが「グシャッ!!」と音を立てたら、ザフィーラに踏み潰されていた。まるで蟻を踏み潰すみたいにグリグリとその足を動かしていた。
(ダメ!!もう耐えられない!!思考も読まれてるし、肯定しても否定しても殺される!!なら・・・・逃げるしかない!!)
病葉らしき蜘蛛がザフィーラの目を盗んでこちらに向かって来たが、私達を無視して全速力で私達が通って来た道を駆けて行った。
「逃げても無駄だと言うのに、馬鹿者が。」
だが彼女はこちらに気付かぬまま通り過ぎた。彼女の必死さを見たアリアが悔しそうな表情で、逃げる彼女に同情していた。
(何とか!何とか逃げ切れ!!あのババアの手の届かない所まで!!)
だが、その抗いも無惨様の手によって終わる。
「えっ?」
さっきまで逃げていた病葉らしき蜘蛛が、何かに引っ張られる様にして、戻って来たのだ。そのまま彼女は元の場所に引っ張られ、ザフィーラが左腕を引いた瞬間バラバラにされ、床に落ちた頭部が弾む前に、勢いで踏み潰した。
「もはや十二鬼月は上弦のみで良いと思おとる。下弦の蜘蛛は解体する。」
何事もなかった様に彼女のパワハラ会議はラストスパートに差し掛かった。
「最後に何か言い残す事はあるか。」
「私はまだお役に立てます!!もう少しご猶予を頂ければ必ずお役に立ちます!!」
轆轤らしき蜘蛛はどうなるんだろ?何かこっからは私の知るパワハラ会議になりそう。
「具体的にどれほどの猶予を望む?お前は妾の為に何ができる?申してみよ。」
「ぼ・・・・冒険者の肉を分けて頂ければ、私はより強い蜘蛛となり!貴女様の為に戦います!!」
うわぁ・・・・言っちゃったよ。あれはもうボンだな。
「お前・・・・今何と申した。」
轆轤らしき蜘蛛の爆弾発言で、ザフィーラさんブチギレましたよ!?ゆっくりと彼女に近づき前足を持ち上げて顔を近づけた。あれやられたら流石にビビるわ。
「何故妾がお前の指図で褒美を与えねばならんのだ?」
「おやめ下さい!おやめ下さいザフィーラ様!!」
だがザフィーラは容赦なく、彼女の足の関節をへし折って千切ってしまった。まるでカニを丸ごと食べる時の分け方みたいな取り方をしていた。
「お前はあれか?給料を前払いしたら仕事しますと上司に言っているのか?甚だ図々しい。万死にあたいする。」
「違います!!おやめ下さい!!」
「違わない。妾は何も間違えてない。当たり前の事を申しておる。間違ってるのは貴様のその汚らわしい腐った脳みそだ。今の発言は不敬極まりない。お前は妾に指図した。楽に死ねると思うなよ。」
ザフィーラは彼女の残りの足をカニを食べる要領でもぎ取っていった。やはり激痛が走ってたのか、奇声を上げながらもがいていた。
「申し訳ありません!!お許し下さい!!お許し下さい!!ザフィーラ様ァァァァ!!」
足をもぎ取った後、お腹を引きちぎり、最後に両手で上顎と下顎を持って口を開けてそのまま引きちぎろうとしていた。
「ほひゅるひほ(お許しを)・・・・。」
ザフィーラは聞く耳持たないまま、蜘蛛の口を引きちぎりその場に捨てた。
「最後に何言い残す事は。」
さて、最後は魘夢を名乗る蜘蛛だな。私の知る限りじゃ「他の蜘蛛の断末魔を聞いた後に、最後に貴女様に殺されるなんて夢見心地でございます~。」とか言うんだろ!?わかってんだよ!!
「・・・・ふぁ~・・・・あれ?もう終わった?」
寝てたァァァァァァ!?あれ!?相手を眠らせるんじゃなくて自分から寝るの!?私の知ってる魘夢じゃ無いんだけどぉ!?
「何伯仲堂々居眠りしてるのだお前は。他の蜘蛛共の断末魔を聞いてよく寝られるのう。」
「丁度良い子守唄だった。」
別の意味で夢見心地だったよ!?え!?何この子!?
「それよりアリアお姉ちゃん怒ってるよ。」
彼女に呼ばれたかの様なタイミングで出て行ったアリアは思いっきり叫んだ。
「ザフィーラァァァァァ!!」
彼女は鬼の形相でザフィーラに近づいた。まあ無理もないけどね。こんだけ仲間がやられてるんだ。怒るのも無理もない。
「今までは目を瞑っていたが、今回ばかりは度が過ぎている!!貴様は眷属をなんだと思っているんだ!!」
「それはこちらのセリフだアリア。よくも妾の指図を無視してアラクネなんぞに進化しおってからに!!」
あ~これ一悶着あるぞ。それにアリアに続いてサーヤとスレインも出てしまった。
「下弦の連中は貴様の為に切磋琢磨して来たのだぞ!!それを無惨に殺す事は無かっただろ!!」
「妾の眷属をどうしようと妾の勝手じゃ。そしてそれは貴様も同じよ。アリア!」
アリアやヴラドの言う通り、このザフィーラって奴自分の眷属には厳しい?いや無関心か?でも彼女の性格って・・・・ああ~こいつはあれだ。ゲームプレイヤーに例えるなら味方を捨て駒にしてステージクリアしていくプレイタイプだ。育成ゲームや戦略ゲームでもある様に、育成に失敗したキャラクターを削除したり、弱いキャラや被ったキャラが増えすぎて削除するのも面倒臭いから捨て駒要員でステージをクリアしていく奴だ。ザフィーラはゲーム感覚で群を統制させている。アリアが怒るのも無理は無い。このまま揉めても困るし、早速ザフィーラに同盟の話をつけて来ますか。だから私も彼女の所へ向かった。
「まあまあ、お二人さん!その話は後にしてくれますか。」
「何者だチビ。」
「私、ナターシャ様の使いで参りましたベビードラゴンと申す者です。」
まあ先ずはお客様相手に礼儀は弁えないとね。
「ナターシャの手の物達か。何用で参った。」
「今回はブリタニアの侵攻に関して同盟を結ぶ為に参りました。」
「妾と貴様等が今更何を話す?初対面だが妾は既に貴様の事が嫌いだ。」
え?何で?私何かした?いや何もして無いな。
「おい、ドラ子。そのデカイハンマーはどっから持ってきた?」
おっと行けねえ!スレインに注意されるまで気が付かなかったけど、凶器のハンマーを持って来たの忘れてた!私よりも百倍くらいデカイハンマーを軽々と持って来てしまっていた!
「それにナターシャの従者なら失せろ。話す事など何も無い。」
「なら素晴らしい提案をしよう。お前も同盟を組め。同盟を組まないなら殺す。」
その有名なセリフを聞いたザフィーラは、体をプルプル言わせながら、人間の体をまるで脱皮するかの様に本性を現した。下半身は蜘蛛、上半身は人間の形をしているが、体は虫の外骨格の様になっていて、頭部は蜘蛛の頭そのものでだった。なんか私の知ってるアラクネと違うんだけど!?
「妾を怒らせた事を後悔するがいい!!ナターシャの手の者なら容赦なく殺す!覚悟するがいい!!」
そうか。じゃあこっちも遠慮なくいかせてもらうよ。
「ねえアリア。こいつどうしたらいい。」
「潰せ。」
よっしゃァァァァ!!ゴル○ィオンクラッシャー!!発動!承認!!
「ナターシャの手の者め!本性を現しおったか!!」
クラッシャーコネクト!!ゴル○ィオンクラッシャー!!
「おいウソじゃろ?そんな小さな身体で持ち上げるつもりではあるまいな?」
ウオォォォォォォォォ!!
「持ち上げよった!?どんだけ馬鹿力なんじゃ!?」
光にはならないけどザフィーラよ!!潰れてしまえぇぇぇぇ!!
「イヤァァァァッ!!」
思いっきりハンマーを振り下ろした瞬間に、「グシャッ!!」と音共に、ザフィーラの体は虫の死骸みたいにバラバラに爆散した。そして私はカッコよく決めポーズを取っていた。
「ふー。スッキリしたぜ!ドラ子!」
皆んな不快な気分だったのだろうな。何か代わりに私が一発ぶん殴った様な感じだ。さてと、この叔母さんの遺体を纏めて村に帰りますか。どうせ自己再生で復活するだろうし。その辺りの片付けは、アリアと魘夢らしき蜘蛛ちゃん達に任せますか。
「アリアとそれから・・・。」
「エンム。」
「悪いけどアリアと二人でザフィーラの遺体纏めて糸で包んでくれない。」
「わかった。」
それにしても、あのパワハラ会議見せられたら、とても交渉できる相手じゃ無い。しかもナターシャさんを敵視してるし、だったら実力行使に出るしか無いよな。まさか、ナターシャさん最初からこうなる事わかって私を派遣したのか!?あのナターシャ舐めた真似しやがってぇ!!
「ベビードラゴン。」
うわっ!アリアがいきなり話しかけてくるからビックリした!?
「最初からザフィーラと交渉するつもりなど無かったのか。」
「いや話をしてくれる相手なら良かったけど、ここまで聞く耳持たないんじゃもう暴力で無理矢理にでも連れていくしか無いよ。後はナターシャさんが何とかしてくれるだろうし。」
それにあのクソババアにハメられたってのもあるし。
「そうか。ありがとう。仲間の仇を取ってくれて。」
その時みたアリアの表情はとても穏やかだった。まるで、今まで縛られていた物から解放された様なそんな感じだった。
さて!ザフィーラを連れて村に帰りますか!あっ!でもアリアはこれからどうするんだろ?ここを抜けるのはいいとして、何処か行く宛はあるのだろうか。それとなくサーヤがアリアに聞いてみたが「ナターシャ様の所に世話になる。ベビードラゴンにも借りが出来てしまったし行く宛もない。しばらくは・・・・お前達の世話になる。」と頬を赤く染めながら恥ずかしそうにそう言った。可愛い所もあるのね。
「流石はランドロスのドラゴンです。このヴラド感服いたしましたぞ!」
ヴラドは相変わらずヨイショだな。何が狙いだったんだ?
「しかし残念です。アリア殿が女王の座に着いて頂ければ、このダンジョンは安泰だったものを。」
「それはアリア自信が決める事だよ。てか、アリア以外に候補者いないの?」
「残念ながら、アリア殿の様なお方は今のところいません。」
まあ、何が狙いかはわからないけど、あたしゃ頑張ってとしか言いようないよ。それにしてもヴラドって名前何処かで聞いた事ある様な?落ち着いたら調べてみよう。そう言えばエンムはどうなるんだろ?
「ねえお姉ちゃん。ダンジョンから離れるの?」
「そうだが。」
「私も連れてって。下弦の蜘蛛解散したから。」
「そうか。なら来るか。」
「ありがとう。また夢の続き見れる。」
どうやら一緒に着いてく気だ。私の知ってる魘夢とは違うけど、可愛いからいいか!
「では皆様、またのお越しをお待ちしております。」
こうしてヴラドと別れた私達は、ザフィーラを引きずりながらランドロス洞窟を出てナターシャさんの所に向かった。その頃には彼女は全回復していたが、アリアの糸で雁字搦めに拘束されていた。それを見たナターシャさんはニヤニヤと笑いながらザフィーラを侮辱していた。
「あらザフィーラったらとうとう自分の眷属にまで見捨てられたの?そんな無様な姿晒して面白い事。ね?今どんな気持ち?ね?今どんな気持ち?」
「相変わらず憎たらしい奴だのう。随分見ない間にシワが増えた所為かババアになっとるぞ。」
「そう言う貴女も太陽に当たってない所為かシミが覆い尽くして真っ黒になってるわよ。よくそんな顔で人前に出られたものね。恥ずかしくないのかしら?」
「貴様のシワくちゃな顔よりかはマシだと思うておる。まあ貴様は自覚しとらんじゃがの。可哀想な奴だ。同情する気にもなれん。」
「あらやだこの害虫は眼球が腐ってるのかしら?早いとこ駆除しないと。でもゴキブリ並にしぶといのよね。」
「貴様は脳味噌でも腐っておるのか?なら早い所医者に見せた方がいいぞ。まあ見た目も中身も手遅れだがな。」
「ちょっと誰か殺虫剤持ってきて。私の目の前に目障りなゴキブリがいるから。」
「おい。いい加減脳味噌が腐った死体を処理してくれんか?悪臭は酷いわ、見た目も酷いわでこっちがおかしくなりそうだ。」
「だったら貴女が食べればいいでしょ?それで済む話なんだから。」
「何を吐かすか。腐ったものを喰うなど生き物のする事ではない。妾の腹を壊す気か。」
「お腹どころか二度と再生できない様、五体バラバラにしてモンスターの餌にしてあげるわ。」
「言うてくれるのう?クソババア」
「クソババアはお前だ。ドブス。」
「ストップ!ストップ!醜いオバハンの罵り合いはそこまで!!」
ヤッバ!止めてなきゃ暴れ出すぞおばさん達。この二人って昔っからこうなのか?もうザフィーラだけじゃなくてナターシャさんも面倒臭いな。
「おお!!ドラ子達帰ってたか!!」
うわぁ!!兄貴!?いきなり入ってくるから驚いたけど、やけに慌ててるな。何かあったのか?
「今ブリタニア軍が攻めて来てるんだが、ランドロスのドラゴンまでお出ましだ!しかもそいつお前を指名して来てるぞ!?」
え?私に?もしかしてニワトリの仲間か?まあどっちにしても行くしかないか。
「わかった!直ぐに行くよ!!」
私達は兄貴の後について行った。おっと!ナターシャさんに伝える事忘れてた!!
「ナターシャさん!!ケンカせずに同盟の話進めておいて下さいね!!」
と言い残し、私はそそくさ戦場に向かった。大丈夫かなあの二人。だが自分の心配もしなきゃ行けなかった。着いた先には、ブリタニアの兵士とデカイワニみたいなドラゴンが待ち構えていたが、何か揉めてる?何で?しかも戦闘中かと思いきや両軍睨み合いの状態だった。
「何故止めるのだ!!奴等は目の前何だぞ!!」
「うるせぇぇぇぇぇ!!俺はケンタッキーをぶっ飛ばしたチビドラゴンに用があるんだ!!」
どうやら私を待っててくれたらしく、それまでブリタニアの攻撃も止めてくれていた。あらやだなんて優しいドラゴンなんだろう!!
「え?何これ?どう言う状況?」
「ブリタニアが攻めてくる様子が無いと言うよりは、ドラゴンに止められてるようだな。」
サーヤとアリアも状況がわからない様子でいた。本当は出たくないけど仕方ないから出るしか無いか。
「大変お待たせしました。私ベビードラゴンと申します。本日はどの様なご用件でしょうか。」
「やっと来やがったか!!俺は『紅蓮のサラマンダー』ナツ!!ケンタッキーをぶっ飛ばしたのはテメーか!!」
ケンタッキー・・・・・・ああ!あのニワトリか!カラスみたいな鳴き声してたけど?
「仲間をぶっ飛ばしてくれたんだ!!今度は俺が相手になってやる!!」
「大変申し訳ありませんがお客様。そう言った内容ですと、事前にご予約して頂きませんと受付出来ない場合がございます。」
「戦争に予約もへったくれもあるかぁ!!今ここで俺と勝負しろ!!」
「そう申されても困ります。こちらも都合と言うものがありまして、改めて日時を指定して頂かないと受付できません。」
「ふざけてるのかテメー!!」
私がナツと揉めてる光景を外野は困惑しながら見ていた。
「あれ遊んでるわね。」
「遊んでるな。間違いなく。」
「はぁ!?交渉では無いのか!?」
アリアは初めての事だったからよくわからないで見ていたみたい。サーヤとスレインだけは見抜かれていた。
「強者の余裕って奴だよ。お前も魔眼で見ただろ?ドラ子のえげつないレベルとステータス。もうランドロスのドラゴンですら手に負えないくらいまで強くなってやがる。だからアイツ、ああして遊ぶ癖がついてんだよ。」
「油断大敵。戦闘中に遊ぶなどどうかしている。」
「だから言ってるでしょ。強者の余裕だって。そろそろお仕置きしてもいい頃合いかしら。」
サーヤの怒りが限界が近づいてる事も知らずに、私は相手をおちょくっていた。
「いいから俺と勝負しろ!!」
「だーかーらー・・・・「お受け致しかねます。」って言ってるだろぉがァァァァ!!」
相手の対応に怒りを覚えた私はサラマンダーに右フックをかました。だが私の拳を受けたサラマンダーは平気な顔をしていた。
「何だ?」
私の『殴る』が効いていない!?バカな!?こいつ・・・最強か!?
「おい、加減したぞ。」
「加減したな。」
「そろそろお仕置きとお説教考えなきゃ。」
ヤバっ!?外野に気付かれた!!そろそろフィナーレと行きましょうか。
「何だその攻撃は!!誰かの入れ知恵か!!浅いぞ!!」
「そりゃ・・・・腰が入ってなかったからな!!」
油断したサラマンダーの顔面に渾身の左ストレートをお見舞した。
「ユナイテッド!!ステイツオブ!!スマァァァァァシュッ!!」
「ブッ!?ヘアァァァァァァ!!」
おー!ちょうどいい方角でランドロスまで飛んでったぞ!さてと後はブリタニアを片付けますか。
「て・・・撤退だ!!撤退する!!」
「無理です!!退路を絶たれました!!」
え?いつの間に?本当だ!!サーヤとスレインとアリアが味方を半分連れて敵陣の後方に回ってる!!
「おいおいまさかドラゴンばっかに仕事押し付けて帰る気じゃねえだろうな。」
「この森に入って来た時点で、貴方達の負けです。」
「新参者ではあるが、よもや生きて帰れると思うなよ。」
おーおー。カッコいいね三人とも。その後は敵部隊を壊滅させて終わった。
そんで今回の件でランドロスも流石に増援を送ってこないと見ていたが、諦めていなかった。
「ケンタッキーに続いてナツまでやられるとは、何故赤ん坊のドラゴンにここまで苦戦せねばならんのだ!!」
ランドロス城の広間で人間の姿でパパンドラゴンが冷や汗を流しながら挙動不審になっている姿があった。
「父上!」
そんな彼に娘がつまり私の妹が出て来た。彼に申し出があるそうで訪れたそうだ。
「エルザ!」
「ケンタッキーに続いてナツまでやられたとはどう言う事ですか!!」
「どうやら、私達では手に負えない相手になっているのやも知れぬ。」
うん。メチャクチャ「♪強く~♪なれる~♪理由を知ったあ~。」になってるから。
「そう決断を早めるべきではないのでは?」
「そうそう!まだそのドラゴンを殴れてねえからな!!」
王と娘の所に現れた二人の竜が、次の刺客として私の前に立ちはだかる。
「ナッパ!テンガイ!もうお前達に掛かっているぞ。」
「任せとけ!!完膚なきまでにボコボコにしてやる!!」
「所詮はレベルが高いだけの赤子です。我等の敵ではありません。」
そう、彼等は私にボコられるとも知らずに、特大ブーメランをかますのであった。
そんな私達は、戦いを終えてナターシャさんの所で休んでいた。話を聞くとザフィーラとの同盟の話が纏まり、向こうから増援を送ってくれると言う話だ。有難いが、信用していいのかな。
「今日からよろしくね。アリア。もうあの害虫の所でこき使われなくて済むのよ。」
「感謝します。ナターシャ様。エンム共々お世話になります。」
アリアの背中に引っ付いている蜘蛛がエンムだ。ダンジョンを出てからずっと寝ている。アリアが戦闘中は激しく動いていたのに全く起きなかったもんな。
「そういや上弦の蜘蛛連中って会ってないけどどんな奴等なんだ?」
「ヴラドの合図で出て来た、イルマ達ポイズンタランチュラの三匹がそうだ。」
あの三匹か!!あれが顔ぶれが変わらない上弦達だったのか!!
「因みに上弦の壱は?」
「目の前にいるだろ。私だ。」
いやお前が黒死牟だったんかい!!私もスレインもビックリだよ!!
「そんな訳だ。アラクネに進化した以上、次に手にするのは魔王の称号だ。それなりの振る舞いはさせて貰う!」
新たな仲間は新たな目標へと向かって私達の仲間になった。そんな私達の更なる出会いは、ブリタニア城に幽閉された一人の悪魔の少女だった。
「おい聞いたか。例の侍女を解禁させるらしい。」
「王都の侍女に紛れていた悪魔か。まさか人間社会に紛れていたとは恐ろしい。」
兵士達がヒソヒソ噂話をするくらい有名になっていた。そんな彼女が、とうとうアタランテの攻略部隊に導入される事になった。
「ほら!とっとと降りろ!!」
兵士に乱暴に扱われながらも、護送用の馬車から降りた眼鏡を掛けたメイドの姿があった。両手を短い鎖で繋がれた手錠をしていた。不当な扱いをされていた彼女は兵士を睨み付けていた。
「私に何をしろと。」
「四皇のドラゴン達をサポートしろ。それがお前の仕事だ。」
「それで私の罪は消えるのですね。」
「勿論だ。」
彼女との出会いが、やがて進化した私と一緒に国を創る事になるとは、当時の私や彼女からは思いもよらなかっただろう。そんな先の話を知らぬまま、私は今日もこの異世界で小さなドラゴンとして生きていくのだから。
0
あなたにおすすめの小説
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる