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紫陽花高校生徒会
生徒会と乙女磨き①
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「新田に豆知識を伝授してあげるわ!」
「藪から棒にどうした」
「ねえ、知ってる?
乙女の意味は少女の他に……」
「おいこら止めろ。
突然なに言い出すつもりだ」
「なにって、未婚の女性を意味するって事よ?」
「そっちか」
「あっれれぇ~?
新田氏はなに想像してたんですかねぇ?
デュフ、教えてキボンヌ」
「腹立つから顔面引っ叩いていいか?」
「スイマセンっした!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
此処は生徒会室。
今日も今日とて、放課後に生徒会の仕事を1人で全うする新田。
いつもと違うとすれば、仕事はしなくとも必ず生徒室にいる筈のあの河井が、今は居ない事だ。
「やっぱり、河井が居ないだけで効率が上がるな……」
新田は書類が一段落つくと、固まった筋肉を解す為に、椅子に座ったまま腕を上げ、仰反るように身体全体を伸ばす。
その後、右手側に置いてある手付かずの書類に目を向けると、口から息をゆっくりと吐き出し、ペンを持ち直す。
残る書類もあと2割程。
この調子なら早く帰れそうだ。
現在の進捗を確認し、そう思う新田。
そんな心の余裕からか、新田は良からぬ言葉を口ずさむ。
「このま」
「はい、レディースアンドジェントルメーン!!
さあさあ皆さんお待ちかね!
私が遅れてやって来た!!」
新田が「このまま河井が来なければ」と言おうとした直後、生徒会室の扉が勢いよく開け放たれ、リズミカルに河井已香が現れた。
「もはやフラグすら立てさせてくれない件」
「なに?新しいライトノベル?」
「違うわ」
新田はツッコミを入れると、目の前に現れた人物を見据え、少し落胆しながら口を開いた。
「それで、何しにきた」
「何ってそりゃあ……」
河井は一度、新田に背を向けると扉を閉る。
その後、再度振り返り、新田へと最短距離でゆっくりと歩みを進めると、いつもの定位置の椅子へと腰を掛け、にっこりと新田に笑い掛けた。
「ただ、生徒会室に来ただけよ」
「頼むから、嘘でも仕事しに来たって言ってくれ」
「嫌よ!
私の辞書に“仕事”という言葉は無いもの!」
「お前のその真っ白な辞書に、今すぐナイフで“仕事”って刻み込んでやりたい」
胸を張り、踏ん反り返る河井に、ため息を吐き出す新田。
ただ部屋に入るだけで、こんなに濃い人間がいるだろうか。
「さて、ところで新田」
「なんだ」
書類に視線を戻し、仕事に戻ろうとする新田に透かさず声を掛ける河井。
生徒会室に来るのが遅れていた事も踏まえ、生徒会に纏わる真面目な話である可能性も考慮し、念の為、新田は河井に視線を戻す。
「ちょっと私の相談にのってくれないかしら?」
「無理だ」
少し顎を引き、瞼をぱちぱちさせ、自身の魅力を最大限に発揮した上目遣いを放った河井だったが、新田には全く通用せず、相談事は即座に拒否された。
河井の行動から、明らかに碌な事ではないのが読み取られてしまっていたのである。
「私情の話なら後でもいいだろ。
今は仕事が優先だ」
新田は河井に再度断る旨を伝えると、気持ちを入れ替える為にペンをしっかりと持ち直し、書類へと視線を戻す。
「それでね、相談って言うのがね?」
「話を聞け」
どんなに壁が立ち塞がろうとも、一直線に突き破る自己中の暴走列車。
それが河井已香である。
「私って、女子力を数値化するとカンストしてるじゃない?」
「ああ、マイナス方向にな」
「もう、やれる事はやり尽くした感があるのだけど、更に女子力極めるにはどうすればいいかしら?」
「まずは常識を学ぶ事からだな」
「何言ってるの?
どっからどう見ても常識人よ!」
「お前の中で、さっきの入室から今までの行動は全て常識内なのか」
「当たり前でしょ。
あんなの、老若男女誰しもがやってる事よ。
常識でしょうが」
間違いなく、さも当たり前で、こちらが間違っていると思わせるような、すっとぼけたような表情で新田を見る河井。
常人なら思わず、一瞬でも「あれ、そうだよな?」と思ってしまうところだが、新田はモノともせず、深くため息を吐く。
「河井との常識がズレ過ぎてて、たまにお前が異世界から来た人間じゃないかと思う時がある」
「えっ、ありがとう」
「何故今感謝されたし」
新田は予測不可能な返答に思わずツッコミを入れる。
流石にこれ以上の暴走は更に帰りの時刻を遅めてしまうので、新田はさっさと本題へと切り込み、河井を満足させる方へと頭をシフトチェンジした。
「新田に豆知識を伝授してあげるわ!」
「藪から棒にどうした」
「ねえ、知ってる?
乙女の意味は少女の他に……」
「おいこら止めろ。
突然なに言い出すつもりだ」
「なにって、未婚の女性を意味するって事よ?」
「そっちか」
「あっれれぇ~?
新田氏はなに想像してたんですかねぇ?
デュフ、教えてキボンヌ」
「腹立つから顔面引っ叩いていいか?」
「スイマセンっした!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
此処は生徒会室。
今日も今日とて、放課後に生徒会の仕事を1人で全うする新田。
いつもと違うとすれば、仕事はしなくとも必ず生徒室にいる筈のあの河井が、今は居ない事だ。
「やっぱり、河井が居ないだけで効率が上がるな……」
新田は書類が一段落つくと、固まった筋肉を解す為に、椅子に座ったまま腕を上げ、仰反るように身体全体を伸ばす。
その後、右手側に置いてある手付かずの書類に目を向けると、口から息をゆっくりと吐き出し、ペンを持ち直す。
残る書類もあと2割程。
この調子なら早く帰れそうだ。
現在の進捗を確認し、そう思う新田。
そんな心の余裕からか、新田は良からぬ言葉を口ずさむ。
「このま」
「はい、レディースアンドジェントルメーン!!
さあさあ皆さんお待ちかね!
私が遅れてやって来た!!」
新田が「このまま河井が来なければ」と言おうとした直後、生徒会室の扉が勢いよく開け放たれ、リズミカルに河井已香が現れた。
「もはやフラグすら立てさせてくれない件」
「なに?新しいライトノベル?」
「違うわ」
新田はツッコミを入れると、目の前に現れた人物を見据え、少し落胆しながら口を開いた。
「それで、何しにきた」
「何ってそりゃあ……」
河井は一度、新田に背を向けると扉を閉る。
その後、再度振り返り、新田へと最短距離でゆっくりと歩みを進めると、いつもの定位置の椅子へと腰を掛け、にっこりと新田に笑い掛けた。
「ただ、生徒会室に来ただけよ」
「頼むから、嘘でも仕事しに来たって言ってくれ」
「嫌よ!
私の辞書に“仕事”という言葉は無いもの!」
「お前のその真っ白な辞書に、今すぐナイフで“仕事”って刻み込んでやりたい」
胸を張り、踏ん反り返る河井に、ため息を吐き出す新田。
ただ部屋に入るだけで、こんなに濃い人間がいるだろうか。
「さて、ところで新田」
「なんだ」
書類に視線を戻し、仕事に戻ろうとする新田に透かさず声を掛ける河井。
生徒会室に来るのが遅れていた事も踏まえ、生徒会に纏わる真面目な話である可能性も考慮し、念の為、新田は河井に視線を戻す。
「ちょっと私の相談にのってくれないかしら?」
「無理だ」
少し顎を引き、瞼をぱちぱちさせ、自身の魅力を最大限に発揮した上目遣いを放った河井だったが、新田には全く通用せず、相談事は即座に拒否された。
河井の行動から、明らかに碌な事ではないのが読み取られてしまっていたのである。
「私情の話なら後でもいいだろ。
今は仕事が優先だ」
新田は河井に再度断る旨を伝えると、気持ちを入れ替える為にペンをしっかりと持ち直し、書類へと視線を戻す。
「それでね、相談って言うのがね?」
「話を聞け」
どんなに壁が立ち塞がろうとも、一直線に突き破る自己中の暴走列車。
それが河井已香である。
「私って、女子力を数値化するとカンストしてるじゃない?」
「ああ、マイナス方向にな」
「もう、やれる事はやり尽くした感があるのだけど、更に女子力極めるにはどうすればいいかしら?」
「まずは常識を学ぶ事からだな」
「何言ってるの?
どっからどう見ても常識人よ!」
「お前の中で、さっきの入室から今までの行動は全て常識内なのか」
「当たり前でしょ。
あんなの、老若男女誰しもがやってる事よ。
常識でしょうが」
間違いなく、さも当たり前で、こちらが間違っていると思わせるような、すっとぼけたような表情で新田を見る河井。
常人なら思わず、一瞬でも「あれ、そうだよな?」と思ってしまうところだが、新田はモノともせず、深くため息を吐く。
「河井との常識がズレ過ぎてて、たまにお前が異世界から来た人間じゃないかと思う時がある」
「えっ、ありがとう」
「何故今感謝されたし」
新田は予測不可能な返答に思わずツッコミを入れる。
流石にこれ以上の暴走は更に帰りの時刻を遅めてしまうので、新田はさっさと本題へと切り込み、河井を満足させる方へと頭をシフトチェンジした。
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