14 / 15
紫陽花高校生徒会
生徒会と乙女磨き②
しおりを挟む
「河井が言いたい事は分かった。
それで、生徒会室に来るのが遅かったのと、今の女子力向上について、何か関係があるのか?」
「まあそうね、隣の席の女子生徒さんと恋愛について話しをしていたのよ」
「ほお」
新田は河井の回答に対して、驚いたように少し目を見開く。
そういった話は昔から、河井は興味なくあしらっていたのを新田は見ていた。
なので、今回の状況を聞き、思わず感嘆の声を漏らしてしまった。
「……なに?」
そんな新田の様子を察知したのか、少し不機嫌そうに目を細める河井。
“交流を深める為”、“好きな人が出来た為”、“利益がある人物の為”など、河井にとって放課後の時間を誰かの為に使う理由として、様々な可能性があるが、新田は憶測での決めつけは良くないと考え、一度脳をリセットする。
「いや、なんでもない。
女子力って言っても、普段の外面が完璧じゃないか。
それじゃ駄目なのか?」
「駄目ね!
それでも手に入らないものなのよ!」
「そんな物あるのか」
新田の中では、河井は使える物全て使えば、なんでも手に入るというイメージがあった為、正直な感想を述べる。
実際、今まで自分のやりたいように出来ているのも、自身の魅力を全て使った外面モードがあるからこそだという認識が新田にはあった。
「あるに決まってるじゃない。
私が国とか取れると思うのかしら?」
「まさかお前……国が欲しいのか?」
「そんなわけないでしょ。
例え話しよ!」
「そうか……」
新田は続けて「傾国の美女としてなら不可能ではないんじゃないか?」と言おうとしたが、瞬間、考えを巡らせ口を閉ざした。
それを言ってしまったら最後、本当に実現させてしまいそうな能力が河井には備わっている気がし、最悪の未来が脳裏をよぎった為、新田はそっと言葉を飲んだ。
「まあ、貰えるなら貰うけどね!!」
「頼むからそれだけは考え直してくれ」
懇願する新田に、もし国を貰えたらどんな国名にするかに思いを馳せる河井。
“河井国”や“世界最強国”、“スーパーウルトラハイパーアルティメットかわいい国”など、ネーミングセンス皆無な国名がひとしきり出たあと、満足したのか、新田へと向き直し、口を動かす。
「なんてね、流石に冗談よ。
それに、私が1番欲しいものはきっと、国を取るより難しいものだろうからね……」
そう言うと河井は新田に向けて苦笑いを浮かべる。
この状況で流石に「国よりも難しいって事は世界か?」と、空気の読めない事は言わない。
新田には河井の欲しい物は分からないが、それはとてつもなく難しい事だというのは伝わった。
もし、手伝える事があるのであれば常識内で、新田は手伝うつもりでいた。
「なあ、河井が欲しい物ってなんだ?
手伝える事があるなら手伝うが……」
「そう……。
私の欲しいものはね……」
河井は呼吸を整える為に一度肺の空気を出し切ると、目を閉じ、大きく息を吸い込む。
肺の限界まで空気を取り込むと、口と目を大きく開いた。
「せ・か・い よ!!」
「世界」
「ええ!世界よ!」
新田は冷めた表情で視線を書類へと落とした。
真面目な話しになると思い、気を引き締めたのを後悔し、いつもより深くため息を吐く。
「それで?私の世界征服を実現させる為に手伝ってくれるのかしら?」
「手伝わん。
もう静かにしててくれ」
「やだ!」
「子供かお前は」
新田は置いたペンを持つと、書類を1枚1枚処理を始めていく。
「因みに、犬飼って苗字の子知ってる?」
「なんだ急に?
確か、犬の餌を渡してる近所の人がそんな苗字だった気がするが」
「そう」
「だからなんだ急に」
「別になんでもないですぅ!
仕事に集中して下さーい!」
「お前も仕事しろや」
「嫌よ!
仕事するなら国を手に入れて、仕事の無い国にしてやる!」
「分かった、俺が仕事するから考え直してくれ」
「冗談よ!
それに、今はまだこのままでいたいの」
「それは俺が困る。
仕事してくれ」
「……馬鹿」
「唐突な罵倒」
結局、なんやかんやあり、新田が帰宅するのはいつもと変わらない時間だった。
それで、生徒会室に来るのが遅かったのと、今の女子力向上について、何か関係があるのか?」
「まあそうね、隣の席の女子生徒さんと恋愛について話しをしていたのよ」
「ほお」
新田は河井の回答に対して、驚いたように少し目を見開く。
そういった話は昔から、河井は興味なくあしらっていたのを新田は見ていた。
なので、今回の状況を聞き、思わず感嘆の声を漏らしてしまった。
「……なに?」
そんな新田の様子を察知したのか、少し不機嫌そうに目を細める河井。
“交流を深める為”、“好きな人が出来た為”、“利益がある人物の為”など、河井にとって放課後の時間を誰かの為に使う理由として、様々な可能性があるが、新田は憶測での決めつけは良くないと考え、一度脳をリセットする。
「いや、なんでもない。
女子力って言っても、普段の外面が完璧じゃないか。
それじゃ駄目なのか?」
「駄目ね!
それでも手に入らないものなのよ!」
「そんな物あるのか」
新田の中では、河井は使える物全て使えば、なんでも手に入るというイメージがあった為、正直な感想を述べる。
実際、今まで自分のやりたいように出来ているのも、自身の魅力を全て使った外面モードがあるからこそだという認識が新田にはあった。
「あるに決まってるじゃない。
私が国とか取れると思うのかしら?」
「まさかお前……国が欲しいのか?」
「そんなわけないでしょ。
例え話しよ!」
「そうか……」
新田は続けて「傾国の美女としてなら不可能ではないんじゃないか?」と言おうとしたが、瞬間、考えを巡らせ口を閉ざした。
それを言ってしまったら最後、本当に実現させてしまいそうな能力が河井には備わっている気がし、最悪の未来が脳裏をよぎった為、新田はそっと言葉を飲んだ。
「まあ、貰えるなら貰うけどね!!」
「頼むからそれだけは考え直してくれ」
懇願する新田に、もし国を貰えたらどんな国名にするかに思いを馳せる河井。
“河井国”や“世界最強国”、“スーパーウルトラハイパーアルティメットかわいい国”など、ネーミングセンス皆無な国名がひとしきり出たあと、満足したのか、新田へと向き直し、口を動かす。
「なんてね、流石に冗談よ。
それに、私が1番欲しいものはきっと、国を取るより難しいものだろうからね……」
そう言うと河井は新田に向けて苦笑いを浮かべる。
この状況で流石に「国よりも難しいって事は世界か?」と、空気の読めない事は言わない。
新田には河井の欲しい物は分からないが、それはとてつもなく難しい事だというのは伝わった。
もし、手伝える事があるのであれば常識内で、新田は手伝うつもりでいた。
「なあ、河井が欲しい物ってなんだ?
手伝える事があるなら手伝うが……」
「そう……。
私の欲しいものはね……」
河井は呼吸を整える為に一度肺の空気を出し切ると、目を閉じ、大きく息を吸い込む。
肺の限界まで空気を取り込むと、口と目を大きく開いた。
「せ・か・い よ!!」
「世界」
「ええ!世界よ!」
新田は冷めた表情で視線を書類へと落とした。
真面目な話しになると思い、気を引き締めたのを後悔し、いつもより深くため息を吐く。
「それで?私の世界征服を実現させる為に手伝ってくれるのかしら?」
「手伝わん。
もう静かにしててくれ」
「やだ!」
「子供かお前は」
新田は置いたペンを持つと、書類を1枚1枚処理を始めていく。
「因みに、犬飼って苗字の子知ってる?」
「なんだ急に?
確か、犬の餌を渡してる近所の人がそんな苗字だった気がするが」
「そう」
「だからなんだ急に」
「別になんでもないですぅ!
仕事に集中して下さーい!」
「お前も仕事しろや」
「嫌よ!
仕事するなら国を手に入れて、仕事の無い国にしてやる!」
「分かった、俺が仕事するから考え直してくれ」
「冗談よ!
それに、今はまだこのままでいたいの」
「それは俺が困る。
仕事してくれ」
「……馬鹿」
「唐突な罵倒」
結局、なんやかんやあり、新田が帰宅するのはいつもと変わらない時間だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる