封印魔法の活用方法 ~スキルで自由に生きていく~

アイギス山本

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第39話 ジコル戦その2

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「━━━皆、行くよッ!」

『はいっ!』

「言われなくても!」


 俺、アリア、ユリアさんは…化け物に成り下がったジコルに引導を渡すため、駆け出した。


「ぐぶulaぁぁああ!!!」


 ジコルは雄叫びをあげると、巨大な左腕を残し同じように駆け出した……またあの攻撃をするつもりのようだ。

 それを見て━━ユリアさんが一番前に躍り出て迎え撃つ。そして…彼我ひがの距離が10m程の所で奴の左腕が襲ってきた…!

 やはり物凄い速さで迫り来る拳だが………ユリアさんはスピードを緩めることなく向かっていった。そして━━━


「はぁぁああああ!!!」


 ユリアさんはジコルの拳を完全に見切ると、ギリギリでかわしつつ、ジコルの腕を横から全力で殴り付けた!

 しかし左腕の威力が高すぎたためか、軌道を逸らせるに留まった………だが、そこは予想済みだ。

 ユリアさんの少し後ろに付いていた俺とアリアは、逸らされた腕が通りすぎたところで━━━タイミングを合わせて、アリアの大剣を振り下ろすのと同時に魔法を行使する!


『こんのおおぉぉ!!』

「【圧・殺プレス・キリング】!!」


 格好いい魔法名だが…単に重力魔法で剣を重くしただけだったりする。
 しかし効果は抜群で、あれだけ強固で傷つきにくかった左腕は、ズバンッ!!!と音をたてながら一刀のもとに切り離された。


「ぐbぅrあああaaaalwああ!!?」


 伸びきった状態で切られた為か、反動でジコルは後方に弾き飛ばされた。
 そして、狙い済ましたようにユリアさんがジコルに殴る、蹴るの猛攻を畳み掛けた。


「bあ"、ぎッ、gぅあ"ぁ"、ghぃ…ッ!」


 左腕を失いバランスが取れず、ふらついている所への猛攻に、立ち上がることさえ出来なかった。特に集中的に狙った顔面は、もはや原型を留めていないほどに崩れていた……

 ……おかしい…さっきまではあっという間に回復してたはずなのに……どうして…?

 だが、やはりぐちゃぐちゃになっても、それぐらいでは死なないとでもいうように、残った右腕でユリアさんの蹴りを受け止め、そのまま投げ飛ばしてしまった。


「くっ…!」


 ユリアさんは危うげなく体勢を立て直して着地していたが……大きく距離を離されてしまった。
 そして、ジコルはユリアさんには目もくれずに━━━切り離された左腕に向かって走り出した!

 その突然の行動に皆が驚き動き…一番後ろにいた俺は、肩越しに地面に落ちている左腕を見ると━━━ちぎれた箇所から、たくさんの石が………魔石が詰まっているのが見えた。

 ゾクッ…!

 それを見た瞬間、背筋が粟立ち、一つの可能性が思い浮かんだ。

 ま…まさか、ジコルがあっという間に回復していたのは、あの魔石があったから…?

 その答えにたどり着く頃には、ジコルは左腕まで後少しのところまで来ていた。


「…っ!させるかッ!【四重封印フォースシール】!!!」


 間一髪の所で、ガツッ!とジコルが左腕を取り戻すのを防ぐことになんとか成功した。


「ぐrUaaaあああlあAalaa!!!!」


 目の前で左腕をクリスタルに封印されたジコルは怒りの咆哮をあげ、腹にある口で噛み砕こうと必死になっていた。だが流石レベル4の封印魔法、ジコルの攻撃にもびくともしていない。
 これで凶悪な左腕に加えて、超回復も封じる事が出来た…!

 ジコルが自分の左腕を取り返そうと躍起になっている間に、ユリアさんとアリアもこちらに合流し…互いに頷きあい、合図を送った。

 そうしても破壊できないクリスタルに怒りをにじませるジコルだったが、ユリアさんとアリアが近付いて来るのを感じ取り、首だけ…グリンっ!と回すと、クリスタルの破壊を一旦諦め怒りのままに二人に襲いかかった…!

 切られた左腕程ではないが、人外の膂力りょりょくと硬い体は有利になった状況でもなかなか攻めきれなかった………むしろ左腕が無くなり軽くなった体は動きが速くなり油断すると致命的な攻撃を貰いそうになっていた。そんな中でも二人は息の合った連携でユリアさんが攻撃を掻い潜り隙を作れば、アリアが大剣で斬りつけ、ヘイトがアリアに集中すると今度はユリアさんが足を狙った一撃をお見舞いし、確実にダメージを蓄積していった。
 そんなジコルは、回復しない体と当たらない攻撃に蓄積されるダメージに業を煮やしたジコルは…予想外の行動にでた!

 なんとジコルは、ユリアさんの攻撃の一切を無視して………アリアに大きく飛びかかり、腹にある巨大な口で噛みついたのだ。


『きゃあッ!?』


 アリアは咄嗟に体を捻るが、ゴーレムの右肩から肘にかけて噛みつかれてしまい、地面に倒された。ギャリ、ギャリッ!!と噛まれたところが嫌な音を立てていたが、すぐに喰い千切られることは無く…むしろ噛みついている歯の方が欠けていっているようではあった。


『ひぅっ…!?離してっ!離…して…ッ!!』


 倒されたアリアは、画面越しに映る……潰れてぐちゃぐちゃになった頭を度アップで見てしまい、小さく悲鳴をあげた。


「マスターから離れろ…!このゴミ虫がッ!」


 するとジコルの背後に回り込んだユリアさんが、鋭い蹴りで両足を崩すと、流れる動作でその足を高く上げて…脳天にかかと落としを決めた。
 その威力は強力で、ボグッ!!と音をたて、ただでさえぐちゃぐちゃだった頭が色々撒き散らしながら潰れて無くなった。

 ゴーレムに噛みついてた巨大な口もその衝撃で外れ、アリアはすぐにジコルから距離を取った。

 流石に頭を潰された為か…上手く立つこともままならず、地面を這いずる芋虫のように蠢くジコルに━━━俺はトドメを刺すため準備していた魔法を放った!


「くらえッ!ジコル!【水・封の逆襲ダーク・アクアフリーズ】」


 ━━━その魔法はイリーナと出会い、一番最初に遭遇した魔物…ティラノサウルス森の王者に放ったイリーナの切り札を、俺でも使えるように真似て作った魔法だ。

 頭上高くに氷を作り、尚且つそれを氷山の如く巨大にするのにかなりの時間がかかったが━━━イリーナがやられた分も合わせて、どうしてもこの技で仕留めたかった………そして、見え無くなったからか、その場で暴れまわるジコルの頭上に━━鉄のようにまで硬くなった氷塊を、放った!


「ーーーーーーーッ!!!!!」


 頭が潰れたジコルだが………聞こえないはずの断末魔の叫びが━━━ジコルを変質させた黒く輝く玉が砕けるのと同時に━━━聞こえた気がした………

 それは…ユリアさんとアリアの…長い、長い…因縁が、ついに終わりを迎えた瞬間だった。

 ━━━そこには、ダンジョンの中とは思えないほどの静寂と…優しい空気が流れ…三人を祝福するように包み込んでいるようだった………
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