封印魔法の活用方法 ~スキルで自由に生きていく~

アイギス山本

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第44話 誘拐

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「ね、ねぇ…?本当にこれにするの…?」

「そうですよ!これなら絶対喜んでくれますよ」

「…むしろさっさと覚悟を決めなさい。優柔不断勇者」

「い、いや…優柔不断という訳じゃ………」


 えっと…その…まぁ気持ちを伝えるのに"コレ"以上の物は無いと思うけど……流石に渡すのに勇気がいるというか…


「━━そんな腑抜けた事ばかり言ってると、本当に離れていってしまいますよ?良いんですか?"封印の勇者"」


 封印の勇者……そうだ…俺は封印の勇者なんだ。封印されていたイリーナを助け出した勇者だ…!皆の為じゃない、イリーナの勇者なんだ!


「…ふふ、少しは良い顔をしてきましたね」

「ええぇっ!?」


 ユ、ユリアさんが笑顔だ…!なんというギャップ…!くそぉ…この笑顔は反則だろ…ドキッとしてしまう…


「……褒めたらすぐコレだ……エロ勇者」

「康介様~…そりゃユリアは美人だけど…うぅ~…」

「ご、ゴメン…」


 二人に呆れられつつ、イリーナに渡すプレゼントを買って店を後にした。


「━━康介様、頑張ってくださいね!」

「あぁ、行ってくるよ」


 アリアとユリアさんには、先に宿に帰ってもらい…俺はプレゼントを渡すべくイリーナを探し始めた。


「………とはいっても…何処に行ったのかな…?行きたいところがあるって言ってたけど………コットンさん達に合いにでも行ったのかな?」


 だが薬屋に行ってもイリーナは来てなかったようで、次に市場を探したが…やはりいなかった………

 そこで、もしかしたら孤児院跡に行ってるんじゃないか…?と、ふと思い向かってみると━━━



 ズクンッ…!



 ━━━いた。いたん…だが………俺が目にしたのは、楽しげに話すイリーナと知らない黒髪の男性が二人で歩いているところだった………

 俺はその光景に、愕然とした━━ここしばらく、イリーナの笑顔を見てなかったのと……イリーナの隣を、居場所を、好きな人を取られた気がして━━俺は…胸が締め付けられ、声を掛けることが出来なかった……だが、それでも、認めることが出来ず、二人の後をつけたが━━━高級料理店に入っていった段階で………心が折れた。




   *****




 ━━━雨が…降りだした…

 その事に気が付くと…俺は、いつの間にか宿屋の前で立ちすくんでいた…

 ……あの場所からここまでの記憶が全く無い…まぁ…もう…関係ないか……イリーナは━━━


 ギリッ…!


 そこまで考えたところで悔しさから歯を食いしばったが…それすら無意味なんだと気付き………どうしようもない悲しみが押し寄せてきて…自然と涙が溢れてきた………

 お、男が泣くなんて情けない…!と思いつつも、一度溢れた涙は止まらず…顔を上げ、きつく目を閉じ…せめて声を上げるものかと必死に堪えるのだった………

 しばらくして落ち着くと、部屋に戻ろうと宿へ入った。

 するとそこにはアリアとユリアさんが待っていたらしく…俺の姿を見るなりギョッ!?と驚いた顔をした。


「こ、康介様!?どうしたんですか!?何があったんですか!?」

「何がって………なにも………」

「………そんな顔して、何も無かったなんて事はないでしょう?さぁキリキリ吐きなさい」

「………」


 正直思い出すのも辛かったんだけど……流石に話さない訳にはいかないと思い、何があったのかを話した━━━


「━━━はぁ…大バカ勇者、イリーナと一緒にいたのは"黒髪"の男性だったんでしょ?」

「あ、あぁ………」

「この世界に黒髪を持つのは…異世界から来た勇者達は別にして、"魔族"しかいないのです」

「……あ」

「そして彼女も魔族であり、10年もの間封印され…当時の知り合いはほとんどいなくなっていたと聞いてます。━━━おそらく封印が解けたことを聞いた知人が訪ねてきたのではないですか?」

「そうですよ!イリーナだって康介様と一緒にこれからもいたいって言ってたじゃないですか」

「つまり━━━ただの勘違いです」

「そ…っか………ははっ…なんだ、そうか、勘違いか」


 二人に諭されて、かなり心が軽くなった。相手の男は俺と同い年くらいだった………つまり、イリーナが封印される前は小学生くらいの小さい時な訳で…何も心配すること無いじゃないか!


「━━━二人ともありがとう!おかげで目が覚めたよ。じゃあ俺はイリーナに改めてプレゼントを届けに行ってくるね!」

「はいッ!頑張ってくださいね!」

「…まったく世話の焼ける…」


 二人に背を向け、いざイリーナの元へと行こうとした時……




 バンッ!!!と、音を立てての女の人が駆け込んできた。




「君は………ユリちゃん…?」


 駆け込んできたのはイリーナが初めて再会した魔族の女の子だった━━━ユリちゃんは俺を見つけると悲痛な顔で叫んだ。


「勇者様ッ!大変ッ!大変なんですッッッ!!!おねぇちゃんが……おねぇちゃんが………!」

「イリーナ…?イリーナがどうしたんだ!?」



「おねぇちゃんが━━━拐われたんですッッッ!!!」




   *****




 ~~~少し前~~~


「━━━ねぇ、サライカ…本当にここで食べるの…?私持ち合わせがないんだけど…」

「それなら問題ないさ、僕がおごるから。さぁ行こう」

「あ、ちょっと━━」


 そこは、ここユーカリアでも有数の高級料理店だった。━━実はここ…少し前に成長の実を採りすぎて、受付のヘレナさんから「これ以上は値下がりするので………」と申し訳なさそうに言われ、買い取ってもらえなくなった後に、皆で一度食べに来ていたお店だった。

 ……だから美味しさも知っているが……値段も知っているわけで━━━1日の稼ぎが一瞬で無くなる程なので…凄く申し訳なかった…

 しかし、それでもサライカは強引に進めて来たため、流されるままお店へと入っていった………


「━━━凄く美味しいね!イリーナ!」

「………うん、美味しい」


 どうしてだろ…味は…変わってないはず…この前食べた時と同じ味だし………でも………前と比べると…美味しいと感じれなかった………

 ━━━むしろ、あの時食べた料理の時を思い出すと………凄く美味しく感じれた。



 そこで、気付いた……あぁ…私は、やっぱり皆が…康介が大好きなんだなって。

 

 今も康介を守りたい、パートナーとして頼ってもらいたいと思ってるけど………それは、私が康介の傍にいたい、ずっとずっと…一緒にいたいんだと。そんな気持ちから生まれたんだって…気付けた。

 これはサライカに感謝しなきゃね。多分あのまま1人でいたら絶対気付けないままだっただろうし。


 クスッ…と私が急に機嫌が良くなったもんだから、サライカはいぶかしんで訊いてきた。


「………どうしたの?急に雰囲気が明るくなったけど…」

「ん?えっとね…サライカと合えて、食事に誘ってもらって良かったな…って━━━」「本当かい!?それは良かっ……」

「康介の事が好きなんだと、気付かせてもらったから……」


 私がそう言った瞬間、サライカの………彼の様子が変わった………だけど、私にはどうして変わったのかが分からなくて…なぜか…鳥肌が立つような感じがして…黙ってることしか出来なかった……


「…………今…何て言った………?」

「え、えっと…その………康介が好きだと…あ!康介はね、私を封印から助けてくれた━━」



「黙れ」



「え………?」


 ど、どうして…?なにか怒らせる事言ったのかな…?うつむいて顔がよく見えない…凄く……怖い………


「イリーナ………君は…僕の事を…どう思ってるんだい?」

「ど、どう…って………あんなに小さかったサライカが…こんなに大きくなったんだなって………」

「僕はイリーナの事が好きだ。ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと好きだったんだ。━━いつも僕を守ってくれたイリーナが封印されて、僕が助けると誓い今まで魔物を殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して………やっと助けられると戻ってきたら、他の男が好きだと?………認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない!!!イリーナは━━━誰にも渡さない」

「サライカ…!?うっ…ッ!」


 明らかに様子がおかしいサライカから逃げようとしたイリーナだったが………一瞬で移動して来たサライカに気絶させられてしまった。


「━━━さぁ行こうか、イリーナ」


 騒ぎを聞きつけた店員が駆けつけるものの…既にサライカはイリーナを抱き上げ、窓から姿を消していた………







「うぅ~…雨降ってきた…もう、せっかく帰ってきたなら私にも挨拶してけばいいのに…サライカのやつ~」


 私がコットンさんのお店に戻ったら、コットンさんから「サライカが帰ってきた」と教えてくれて、その日の残りの仕事を切り上げさせてもらったのに………探しても探しても一向に見つからない…サライカのくせに~…

 私は雨宿りするため軒下に避難する事にした。そこはちょうど正面に有名な高級料理店が建っている場所だった━━━


「……いいなぁ~…私もいつか素敵な男性に連れてってもらいたいなぁ~…」


 そんな事を考えながらお店を眺めてると……不意に上の階の方が騒がしくなったと思ったら━━━窓から誰かが飛び降りてきた!


「えぇ!?………えええぇッ!?」


 飛び降りてきたのにも驚いたが………その魔族が腕に抱えているのが、おねぇちゃんだと気づいてさらに驚愕した!しかも、おねぇちゃんは意識がないようでぐったりしていた…

 その男は私に目もくれず、声をかける間もなく…あっという間に雨の向こうに消えてしまった…


「たたたた、大変…ッ!勇者様に知らせないとッ!!」


 私は助けを求め、おねぇちゃんが泊まってる宿に━━━勇者様に、知らせるべく駆け出した!
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