身代わり吸魔が暴君騎士に思うこと

鹿音二号

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敵じゃないです!

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青空に、俺のド好みアエリアーナちゃんのスチル。
不安げに揺れる青い瞳がいいね。
……こんなスチルあったかな。

「……?はっ」

起きた。
今度こそ。

……うっわ、現実……
しっかり覚えてんな、異世界に来てから数分で男に食われたの。
なんかこう、ショックではあるんだけど……
はっ、腹!あ、なんか大丈夫そう、苦しくないし、触ったらぺちゃんこだ。

「あ、あの……」

うなだれていたら、かわいい声が聞こえた。
顔を上げたら、アエリアーナちゃんともうひとり、女の子が俺の近くに膝をついていた。
俺は、どうやら横になっているらしい。身体になんか巻き付けてあるなって思ったら、毛布?っぽい柔らかい布だった。
背中側には大きな岩があって、日陰になってる。なんかさっきと違って晴れてるよな……場所はそう遠くに移動してないっぽいんだけど。

「えっと、大丈夫ですか?あっ、大丈夫じゃないですけど……」

アエリアーナじゃない女の子の方、明るい金髪のボブカットのいかにも魔道士ですっていう子だ。彼女が俺を見て、不安そうな顔だ。

「……うん、だいじょぶじゃないね……」
「うっご、ごめんなさい……」

しゅんとするこの子も、実は陵辱対象だったりする。さっきは男どもの後ろにいてて見えなかったんだろうな。
クリスティナ。見た目通り魔道士で、小柄だけど出るところ出てる……まあいいや、可愛い子だ。金髪に夕日色の目。ちょっとドジっ子設定だったかな?
けど、こんな災禍の近くに来ちゃだめだろ。
あ、もう少し向こうに白い鎧のやつが剣抜いて立ってる。あいつはたしか聖騎士だったな。いちおうアエリアーナの護衛っていう設定。

アエリアーナは――聖女なのだ。

「でも、気を使ってくれてありがとう。まあ……犬に噛まれたと思って忘れるよ……」

もう人間じゃないし、女の子でもないから赤ちゃんがってことにならないのはいいことだ、うん……

「……やっぱり、変……」

ぽつりと、黙っていたアエリアーナが呟いた。じぃっと、俺を見てる。

「……」

俺も、見返しながら、どうしたもんかなって考える。
なんで、この災禍に転生?したんだろう。
たぶん、元の世界では死んでるし、今のところ家族だったり友達だったり、夢だったり、大切なもの、未練になりそうなものは思い出せないから、すごく変だけど諦めがついている。
この先が問題だ。普通異世界行きなら、神様とかがこれこれこういうわけでって、説明してから送り出してくれるもんだが、俺、ぜんぜん、覚えてない。
なにするの?目的は?どう生きればいいの?
っていうか、まず配役が雑魚ボスっていうのがちょっと……

けど、なんだか、生きてるん、だよな。
すっげえなんか、すごいこと、あったけど。
どうしてかアエリアーナもクリスティナも、俺を今すぐ討伐っていう感じじゃないし。
それはすごーくありがたいぞ。

「……えっと、きみって、『第一の災禍』……なんだよね?」

クリスティナが、不安そうな顔をしながらも目がきゅるんって感じ。

「そだな」
「えっと、じゃあ、なんで、瘴気を出さずに吸ってるの?すごいしゃべるけど災禍ってぜんぶこんな感じなの?世界を滅ぼす、ってなんでですか?というか、きみは滅ぼす気があるんですか!?」
「んっとお、興味津々だな」
「待って……」

アエリアーナが前のめりだったクリスティナの腕をぎゅっと掴む。
こちらはものすごく不安そうだし警戒してる。
そりゃ、災禍だもんな。

「……おかしい、わ。どうしてあなたは、そんなに人間のように……」
「うーん……あ、俺、君たちと敵にはならないから!」

まずは改めて宣言しよう。
本当に、討伐されるとか冗談じゃない。

「……話ができるのなら……まずは、お話することを望み……ます」

んー?アエリアーナってこんな感じだったか?
なんとなくおどおどしている。ゲームだと、大人しめではあるけど、聖女として使命感があって、しっかりした感じだったけど。
まあ、伝承にあった災禍の様子がおかしいんじゃ、ビビるのもわけないな。

「うん、俺も話したいんだ」
「……敵ではないと?」

おっと、向こうから待ッタが。
聖騎士が睨みながら、

「なぜだ、伝承では、世界を滅ぼすものとして存在する、と。それに、あの瘴気……」
「うーん……」

そうなんだよな、封印が破れた直後に俺が災禍のなかに入った感じだ。
その時までは、災禍は暴れてやるぞ!って気合い十分だったもんなー。

……えっと、整理しよう。俺もゲームはしばらくやってなかったんだ。
まず、このゲームのことね……ぶちゃけ、エロゲーの名にふさわしく、ストーリーはあってないようなものなんだ!
ここにいらっしゃる討伐隊の方々による、聖女と魔道士の陵辱スチルが豊富で、それしかない……というわけではないけど、ストーリーはフレーバー程度。

それでもおさらいするなら……
世界は、滅びに瀕していた。
伝承にあった世界を滅ぼす『災禍』が、次々と封印を破り、またその猛威を振るい始める。
中でも大きな『災禍』は7つあり、それらを討伐するために、浄化の力を持つ聖女が、供を連れて旅に出る。
様々な災禍と戦い、聖女は平和を取り戻すことができるのか――?
っていう感じ?

乗ってしまった、別に書いたりするオタクじゃないのに。
俺自身そうだとは思ってないけど、世間的にはオタクだったのかな?っていう気はする。面白いものを適当につまみ食いしただけで、グッズとか同人誌とかは触ったことないし。ちょっと他よりアニメとかに詳しいだけ。
で、このエロゲー『聖贄の旅路』は、ストーリーは、これだけである。
あとはちょっとした理由付けして、アエリアーナがひたすらえっちな……可哀想な目にあうのをルート選択しながら見るだけ。RPG要素がありそうな雰囲気だけど、戦闘システムはなかった。
だからなおさら、である。

どうして、ホワイ、俺は、この世界に!?
しかもなんか、男性向けじゃなくて女性向けルートにいきなり入った!?もちろんゲームにそんなルートはない。

っと、脱線した。ルートうんぬんも気になるが、いちおう現実に生きる(はずの)アエリアーナたちに気がかりなのは、俺がどうして、こんなおかしなことになってるのか、だ。
災禍は、世界を滅ぼそうとするものだ。どちらかというとモンスターというより、現象と言ったほうがいいんじゃないかと俺は思ってる。
世界には瘴気という厄介なものがあって、それはよくゲームとかにある、モンスターとかにまとわりついて凶暴化するっていうようなものだ。負の感情からも生まれるらしく……まあ人間でも、自ら生み出したそれに、理性をなくして凶暴化してしまうことはある。
それらが、集まって、大きくなる。
それが、災禍だ。
いちおう集積ポイントみたいなのがあって、それが色んな有形のもの――つまり、媒体ということにもなるんだって。
代表例、第一の災禍――俺だ。
珍しく人型の災禍。元は人間だ。

こういう災禍には、理性なんてものはない。
ただ、破壊衝動があるだけ。だから、実は世界を滅ぼそうとは思っていない。そんなこと考えられる頭がないからな。
力が強い災禍が複数現れて、ガンガン暴れるのがゲームの世界の状態だ。
対処方法はたった一つ。災禍を討伐すること。
――のはず、なんだよね。
ところがゲームだと最初の雑魚ボス、第一の災禍がこんなヘンテコで、肩透かしというかともかく混乱してるのが討伐隊の方々。

……俺としては、死にたくないんだよな、もう。
だから、ともかく、生き延びることが第一だ。
だって神様から何も言われてねーもん。
よし、いちおう、敵ではないと白旗がわりに両手あげとこ。

「『俺』はこんなでおかしいけど、他の災禍は暴れると思う。瘴気の塊だし」
「……油断させて、私たちを騙すつもりではないのか?」

聖騎士はなかなか納得しないようだ。

「ううん、普通災禍がこんなべらべらしゃべんないです。そういうことしない。小さいのはあんたたちも見たことあるでしょ?あれと変わんないよ、7つの災禍も」
「なら、お前も討伐対象だ」

ギラッと剣を光らせた。

「ひぃ!?待って!俺ホントに敵じゃない!」

やめてー!俺はただ生きたいだけなんだー!
と、ここで、アエリアーナが立ち上がった。

「コンラート、やめてください」
「……ですが」

お、今のアエリアーナはゲームと近い。凛としてて、すごくきれいだ。

「私には心当たりがあります。この者も、私のように、神託を受けたのでは?」
「ん?」

神託?
そんなこと、ゲームでは一言もなかったけど……裏設定かな?俺は全回収出来なかったから、知らないだけかも。
ストーリーが単純なのはそうだけど、たまにポロッとこういう思わしげな設定が見られるときがある。普通に選択していったらあんまり見られないけどね。

「ですよね?」

アエリアーナが俺を見下ろす。
その目が、不安がっているように見えるんだけど、妙に強い視線だった。
気がついたら、俺は、頷いていた。

「そう、俺は、神様?に言われて、あんたたちを助けろって」
「大いなる意思を託されたのでしょう。理性はその時授けられたのかもしれません」

俺の嘘に乗っかって、アエリアーナが、つらつらとそれらしいことを言う。
んん?俺を助けようとしてくれてる……?

「俺は、ぼんやりしててよく覚えてないけど……そうだ、このあとの災禍のことなら教えられるぞ」

これ、けっこう重要だと思う。
7つ災禍がそれぞれどんな特徴でどんなステータスなのかは、ゲームでは事前説明が出てこない。
RPG的にいえば、攻略情報いっさいなしで毎回ボス戦に挑む状態。
メタ的にいえばそういう文脈とかフラグとかめんどい、って感じにも見えた。
プレイしていても、第一はこれ、第二はこんなの、って戦闘場面になってやっと分かったんだ。
封印された場所だけ分かってるんだよね……作りがいいかげんだな。
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