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エロゲ的論理
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聖騎士は、少し動揺していた。
アエリアーナに止められたし、災禍が重要なことを教えようって言うのも信じられないんだろうけど……けど、知りたくはあるんだろな。
「それに、私は彼に助けられたのです。瘴気のことも……コンラート、私は彼を信じたいのです」
そういえば、助けたことになるのか……陵辱から。
まあ、後悔はしてない。
なぜかこっちが代役になっちゃったんだけど……誰得だよ。
「……分かりました、聖女。ですが、私の使命は貴方様の身を守ること。少しでもそれがおかしなことをすれば……」
「ありがとう、コンラート。それは貴方に任せます」
……なんだか、感動的なこと言ってるけど、お前も尻馬に乗っかって聖女様を犯すんだぞ、ほぼ確定。避けようと思えば避けられるスチルだけど、エロゲやるやつがそんな面倒なことやんないよ。
聖騎士……コンラート?は剣はしまったけど、じっとそこに立っている。
短い銀髪の、緑色の切れ長の目。美形なんだな、スチルは以下略。
クリスティナが首をかしげた。
「えっと、じゃあ、きみと一緒に行くことになるの?」
「えっと、そうなの?」
「はい。いくら言葉が通じて人間のようでも、災禍は災禍。監視……の意味もあります。もちろん、協力するなら……仲間として、迎えようと」
「……よかったあ……俺、殺されるかと」
「良かったね!」
満面の笑みだね、クリスティナちゃん。
もはや俺がなんだか忘れてないか、クリスティナちゃん。
でも、本当に良かった……
「そういえば……お名前は」
アエリアーナが、ふと聞いてきた。
俺はあんまり安心してて、素直に答えた。
「春崎龍兎……あ」
「すっごい、なんか長い名前。ハルサ……?」
びっくりしたクリスティナの顔見て、やっちゃったなって。
「どういう由来の名前?災禍には具体的な名前ってないよね?」
どうしようかな……今さら、別の世界から来ました、これに取り憑いてる元人間です、この世界は……とか、説明できない。また疑われそう。
「ええと……この、身体の、元の名前かな……」
ごめんな、元の身体くん。
本当は彼に名前はない。1000年前はちゃんとした人間だったけど、名前は、ないんだ。裏設定のひとつ。
「そうだな、リュートって呼んでくれ」
「うん、リュート、ね。わかった、よろしく!」
天真爛漫な子だよな……クリスティナちゃん。かわいいぜ。
……ん?なんか引っかかったような……
「では、リュート。改めてお礼を」
アエリアーナが座って……ん?正座だね?それで深々と頭を下げた。
「仲間の暴力から助けていただき、感謝します」
「えっ、あー、うん。分かりました」
そうだよな、剣は向けられたし、たぶん……見てたしな……
なんかこう、いたたまれない。
すごく恥ずかしい。
顔を手で覆うと、肩に毛布をかけ直してくれた。クリスティナかな。この下真っ裸なんだ……あれ?そういえば、どこも痛くないし、変な汚れとかもないぞ。
「……えっとお……あれって、どういうことなの」
……それらしく聞いてみた。まあ、知ってるんだけど。
そろりと顔を上げると、気まずそうにふたりはそれぞれあっちこっちを見て……おずおずと、アエリアーナが話始めた。
戦士の暴走。
これは実は予想されていたことなんだよな。
元から彼は理性をなくして暴れまわる、暴君騎士とあだ名されるほどの厄介な男だ。
腕は立つので、この討伐隊のアタッカーとして任命された。
だから、途中で暴れるかも……というのはみんな知っていた。
なんでこう、そういう人材がこういう任務に就いてるのか、暴れた時に保険とかかけないのかっていうのは、このゲームでは些細なことなので放り投げられている。
けど、まあ、暴れるくらいは知っていたが、まさか聖女に襲いかかるなんて……!というのは、誰かのセリフで明かされる。
予定外の暴れ方だったんだな。
これも、そのうち裏設定として出てくるんだが――戦士は瘴気に侵されていた。
人間には考えられない、それこそ災禍になってもおかしくないくらいの瘴気を抱えていて、ふとした拍子に理性をなくして、暴れる。
そういう男が、第一の災禍の瘴気にあてられて、パーンとタガが外れたわけ。
で、その襲われる聖女は、浄化の力を持っている。
瘴気を祓える、数少ない人間なわけです。
限界を超えて暴走した戦士は、本能的に、救われるために、聖女を求める。
という、いちおう理由はあるんだなー。
なんかこう、ありがちではあるんだけど……しかもなんで下半身の方で解決するのかっていうエロゲ的論理。
……ということで、聖女を犯して我に返る戦士。
これを繰り返します、第七の災禍まで。
なんでこう、対策とか取らないんでしょうね。すごく不思議。まあ所詮エロゲってことな、はい。
これは、俺が知ってるからこういう説明的なまとめをしたけど、現実のアエリアーナは知らないので、暴走する戦士が瘴気にあてられてもっとひどく暴走しちゃったのでは、くらいの解説をしてくれている間に、俺は思いついちゃった。
(……第一の災禍って、吸魔じゃん)
そういうことかー!?
顔をまた隠して背を丸めると、心配したクリスティナが声をかけてくれた。
「だ、大丈夫!?」
「うん……うん、そうだね……」
「気分が悪くなっても無理はありません……」
アエリアーナも暗い顔になってる。そりゃ、もしかしたら自分がああなってたかも……って思うよね。
「ああ、そこまでじゃないんだ、その、分かったことと思いついたことがあって……」
話しちゃってもいいよな。
戦士のこと。
本人もよくわかっていないんだけど、餅は餅屋で、瘴気そのものの災禍(おれ)が言い当ててもおかしくないよね。
戦士の抱える瘴気のこと。
それと、第一の災禍のこと。
第一の災禍は、吸魔……つまり、エナジードレインをするモンスター型だった。
魔力が最優先なんだが、エネルギー?はぜんぶ吸えるらしい。命まで吸えるようだ。
で、そのエネルギーというものに、瘴気も含まれる。
というか、瘴気にあてられるっていうことは、瘴気を生み出すということらしい。つまり、第一の災禍は自分の瘴気で他のものの瘴気を増やし、それを吸収して力を増す、自己増幅型だった。
「……俺、あの戦士が君を襲おうとしたのを止めたとき、吸収しちゃったんだわ、彼の瘴気」
「そうなのですか?」
「これ」
ぴこんって黒紫の髪がひとふさ跳ねる。
びっくりして目がまんまるになってるよ、クリスティナ。
「って、ものすごく吸収するんだよな……」
「あ、ダインの腕を掴んでたね」
「そうそう」
そういえば、暴君騎士はダインっていうのか。
ゲームではアエリアーナとクリスティナしか名前が出なかった。ウインドウには暴君騎士と聖騎士と僧侶って、野郎どもはモブ扱いだ。
……ということは、やっぱりゲームそのものじゃないんだよな。
「だから、彼は、負担が軽くなった気がして、俺を……その……」
「……つまり、私の浄化の力と同じだと思ったのでしょうか?」
アエリアーナが気付いて、青ざめる。
……そう、このあと、第七まで繰り返される、彼女の身の危機を。
クリスティナも気づいて、言葉を失ってる。
どうでもいいが、ゲームでは第一の災禍が戦闘中にキャッキャと喜んでたんだよな……髪をアエリアーナ達に巻き付けて。
理由が分かった。おいしいんだ。食事と一緒。
アエリアーナとクリスティナの触手シーンはばっちりある。いろんなとこに食い込んで、頬を染めて苦しんでるやつ。半脱ぎの。
……くそう、ゲーム通りにしたら俺がそれできたの!?いや、二次元だったら見るのはいいんだけど、自分が好きな子(推しって意味ね)を苦しめるのはなあ……
「……どうしましょう」
「リアちゃん……」
本気でうろたえているアエリアーナがかわいそう。
「あの、な、それ、俺が解決できるよ」
「え?」
「……え?」
ふたりがはっとこっちを見て……こらこら、何考えてるの、顔赤くして!?
「これ、髪!これで拘束しちゃえば、安全!瘴気も吸える!」
「あ、ああ、そういうこと……ですか」
「ご、ごめん、その………………気持ちよさそうだったし」
「クリス!」
アエリアーナがぴゃっとクリスティナに怒った。
……いや、いいよ……俺もあの時なんかね……
「ごほん、ということで、俺が戦士の暴走を押さえる!きみも離れたところから浄化とかできるんじゃない?」
「え、ええ」
「なら、俺が押さえながら、きみも浄化すれば……」
「その前に、ダインの瘴気をぜんぶ浄化しちゃえば?」
クリスティナがもっともなことを言う。
そう、それが一番いいんだ、本当は。
「……戦士の瘴気は、もうそういう簡単なものじゃない」
「え?」
「根が深すぎるんだ……減らすことはできるかもしれないけど、全部は消えないだろうな、あれは」
だって、吸魔をお腹いっぱいにするくらいなんだ。俺が瘴気にして出さなかったから、昇華ということができなかったせいもあるけど。
「また、災禍に近づけば簡単に増やすだろうな」
「……いったい、彼に何が」
アエリアーナが憂うように眉をよせる。ううん聖女だな。
「でも、定期的に浄化すれば少しはましになるんじゃない?でも、災禍とやりあうときは、そういう方法があるよってこと」
「なるほど……ありがとうございます。本当に……」
「でも、なんで、俺が襲われるの、見てたの?」
「……!」
「ふえっ」
ぎくっとアエリアーナたち。
いやまあ、戦士がなんでああいう行動をしたのか、びっくりして見守ってしまったというのはあるだろう。
それに、災禍だ、助けようという気にはならなかったのだとしても……逆をいえば、ダインを助けようとはしなかったのだろうか?
仲間になって日が浅いから、と、言われれば分かるのだけれど……いやでも、普通にキモくない?BLだもんな、そういう趣味ってわけじゃなさそうなんだよなふたりとも。
それよりも……ゲームのほうがおかしいんだよな。
暴君騎士ダインが、聖女アエリアーナを襲う。
それを、完遂まで見守った聖騎士に女性の魔道士。
僧侶は正直、とある理由から信用がないんだが……
「……何度も、近づこうとしたのです」
アエリアーナがしょんぼりしているな。
「でも、ダイン様の『覇気』が、恐ろしくて……」
「……あ」
ああー、分かったぞ。
暴君騎士が強い理由が。
雑魚程度なら、棒立ちになって、ざっくとやられる。
(……あれ、ただの文章力不足じゃなかったんだ!?)
理由がさっぱり出てこないから、戦闘描写苦手なライターが書いてるのかと思ってた!
『覇気』っていうのはこのゲームには説明がなかったけど、よく格闘系とかの話にはあるよ、威圧感が増したり、敵を吹き飛ばしたり。
それを、暴君騎士が使っていたと。
威圧感に足がすくんじゃうか、オーラみたいなので近づかないようにすんのかな。
なるほど、アエリアーナが完遂されちゃった理由がここに……
……後付けっぽくない?
「なんか……近づけなかったんだな?」
「はい。その……ですが、片方は仲間、片方は災禍です、これ以上何かあってはと、気が気ではなくて……」
最後まで、見守ってしまった、と。
「……ううん、すまんかった」
「ご、ごめんなさい、こっちこそ……」
クリスティナがうろうろと目をあっちこっちにやってる……それも仕方ない……
微妙な雰囲気……聖騎士もなんだか顔が引きつっている。
アエリアーナが、首を振って表情を真面目なものに変えた。
「その、大丈夫ですか、本当に」
「え?あ、体調は悪くないよ」
「仲間の僧侶に手伝ってもらい、魔法で清めたんです。ただ、私も彼も、どちらも聖属性ですから、属性が反対のあなたに何かおかしなところがあったらと」
「えっあっそんなことまで……ありがと、いまのところ何もないよ」
おおう、ありがたい。きれいになる魔法とな。
気持ち悪いものを見せたのにな……
吸魔だからか、その、お腹いっぱいなったせいで、体調はすごくいい。
……美味しかったんだよな……戦士の、たぶん、精気。
美味しいごちそう食った時とまるで一緒。
あと、たぶん……普通に、気持ちよくなってた、な……
今思い出してもよだれが出そう。
ううん、人外の外側に影響されてる気がする。
「ともかく……あなたが話の通じる災禍でよかったです」
「ああ、話を聞いてくれて、ありがとう」
問答無用で消されてもおかしくなかったからな……ジャパニーズ・ドゲザも、効いたかな?
ふと、アエリアーナが口を閉じた。
憂いを帯びた表情で、きゅっと桃色の唇が引き締まって……ううん、かわいい。
「リア?」
クリスティナが彼女に気づいて、声をかけた。はっとしたアエリアーナは、ぎこちなく笑った。
「いえ……その、リュート。これから、よろしくお願いします」
「こっちこそよろしく」
手を出して握手しようかと思ったけど、触っただけで吸っちゃうんだよな。
残念。
アエリアーナは立ち上がった。
「では、これから、ダイン様たちにもお伝えします。その……ダイン様と、お話しになられますか?」
うっそういえば、仲間になるんだから、暴君騎士とも顔を合わせないと……
ハラハラとクリスティナが俺を見つめてくる。
俺は頷いた。
……大丈夫だよ、知ってるんだ。
暴君騎士は、ぜんぜんしゃべらないんだ。
アエリアーナに止められたし、災禍が重要なことを教えようって言うのも信じられないんだろうけど……けど、知りたくはあるんだろな。
「それに、私は彼に助けられたのです。瘴気のことも……コンラート、私は彼を信じたいのです」
そういえば、助けたことになるのか……陵辱から。
まあ、後悔はしてない。
なぜかこっちが代役になっちゃったんだけど……誰得だよ。
「……分かりました、聖女。ですが、私の使命は貴方様の身を守ること。少しでもそれがおかしなことをすれば……」
「ありがとう、コンラート。それは貴方に任せます」
……なんだか、感動的なこと言ってるけど、お前も尻馬に乗っかって聖女様を犯すんだぞ、ほぼ確定。避けようと思えば避けられるスチルだけど、エロゲやるやつがそんな面倒なことやんないよ。
聖騎士……コンラート?は剣はしまったけど、じっとそこに立っている。
短い銀髪の、緑色の切れ長の目。美形なんだな、スチルは以下略。
クリスティナが首をかしげた。
「えっと、じゃあ、きみと一緒に行くことになるの?」
「えっと、そうなの?」
「はい。いくら言葉が通じて人間のようでも、災禍は災禍。監視……の意味もあります。もちろん、協力するなら……仲間として、迎えようと」
「……よかったあ……俺、殺されるかと」
「良かったね!」
満面の笑みだね、クリスティナちゃん。
もはや俺がなんだか忘れてないか、クリスティナちゃん。
でも、本当に良かった……
「そういえば……お名前は」
アエリアーナが、ふと聞いてきた。
俺はあんまり安心してて、素直に答えた。
「春崎龍兎……あ」
「すっごい、なんか長い名前。ハルサ……?」
びっくりしたクリスティナの顔見て、やっちゃったなって。
「どういう由来の名前?災禍には具体的な名前ってないよね?」
どうしようかな……今さら、別の世界から来ました、これに取り憑いてる元人間です、この世界は……とか、説明できない。また疑われそう。
「ええと……この、身体の、元の名前かな……」
ごめんな、元の身体くん。
本当は彼に名前はない。1000年前はちゃんとした人間だったけど、名前は、ないんだ。裏設定のひとつ。
「そうだな、リュートって呼んでくれ」
「うん、リュート、ね。わかった、よろしく!」
天真爛漫な子だよな……クリスティナちゃん。かわいいぜ。
……ん?なんか引っかかったような……
「では、リュート。改めてお礼を」
アエリアーナが座って……ん?正座だね?それで深々と頭を下げた。
「仲間の暴力から助けていただき、感謝します」
「えっ、あー、うん。分かりました」
そうだよな、剣は向けられたし、たぶん……見てたしな……
なんかこう、いたたまれない。
すごく恥ずかしい。
顔を手で覆うと、肩に毛布をかけ直してくれた。クリスティナかな。この下真っ裸なんだ……あれ?そういえば、どこも痛くないし、変な汚れとかもないぞ。
「……えっとお……あれって、どういうことなの」
……それらしく聞いてみた。まあ、知ってるんだけど。
そろりと顔を上げると、気まずそうにふたりはそれぞれあっちこっちを見て……おずおずと、アエリアーナが話始めた。
戦士の暴走。
これは実は予想されていたことなんだよな。
元から彼は理性をなくして暴れまわる、暴君騎士とあだ名されるほどの厄介な男だ。
腕は立つので、この討伐隊のアタッカーとして任命された。
だから、途中で暴れるかも……というのはみんな知っていた。
なんでこう、そういう人材がこういう任務に就いてるのか、暴れた時に保険とかかけないのかっていうのは、このゲームでは些細なことなので放り投げられている。
けど、まあ、暴れるくらいは知っていたが、まさか聖女に襲いかかるなんて……!というのは、誰かのセリフで明かされる。
予定外の暴れ方だったんだな。
これも、そのうち裏設定として出てくるんだが――戦士は瘴気に侵されていた。
人間には考えられない、それこそ災禍になってもおかしくないくらいの瘴気を抱えていて、ふとした拍子に理性をなくして、暴れる。
そういう男が、第一の災禍の瘴気にあてられて、パーンとタガが外れたわけ。
で、その襲われる聖女は、浄化の力を持っている。
瘴気を祓える、数少ない人間なわけです。
限界を超えて暴走した戦士は、本能的に、救われるために、聖女を求める。
という、いちおう理由はあるんだなー。
なんかこう、ありがちではあるんだけど……しかもなんで下半身の方で解決するのかっていうエロゲ的論理。
……ということで、聖女を犯して我に返る戦士。
これを繰り返します、第七の災禍まで。
なんでこう、対策とか取らないんでしょうね。すごく不思議。まあ所詮エロゲってことな、はい。
これは、俺が知ってるからこういう説明的なまとめをしたけど、現実のアエリアーナは知らないので、暴走する戦士が瘴気にあてられてもっとひどく暴走しちゃったのでは、くらいの解説をしてくれている間に、俺は思いついちゃった。
(……第一の災禍って、吸魔じゃん)
そういうことかー!?
顔をまた隠して背を丸めると、心配したクリスティナが声をかけてくれた。
「だ、大丈夫!?」
「うん……うん、そうだね……」
「気分が悪くなっても無理はありません……」
アエリアーナも暗い顔になってる。そりゃ、もしかしたら自分がああなってたかも……って思うよね。
「ああ、そこまでじゃないんだ、その、分かったことと思いついたことがあって……」
話しちゃってもいいよな。
戦士のこと。
本人もよくわかっていないんだけど、餅は餅屋で、瘴気そのものの災禍(おれ)が言い当ててもおかしくないよね。
戦士の抱える瘴気のこと。
それと、第一の災禍のこと。
第一の災禍は、吸魔……つまり、エナジードレインをするモンスター型だった。
魔力が最優先なんだが、エネルギー?はぜんぶ吸えるらしい。命まで吸えるようだ。
で、そのエネルギーというものに、瘴気も含まれる。
というか、瘴気にあてられるっていうことは、瘴気を生み出すということらしい。つまり、第一の災禍は自分の瘴気で他のものの瘴気を増やし、それを吸収して力を増す、自己増幅型だった。
「……俺、あの戦士が君を襲おうとしたのを止めたとき、吸収しちゃったんだわ、彼の瘴気」
「そうなのですか?」
「これ」
ぴこんって黒紫の髪がひとふさ跳ねる。
びっくりして目がまんまるになってるよ、クリスティナ。
「って、ものすごく吸収するんだよな……」
「あ、ダインの腕を掴んでたね」
「そうそう」
そういえば、暴君騎士はダインっていうのか。
ゲームではアエリアーナとクリスティナしか名前が出なかった。ウインドウには暴君騎士と聖騎士と僧侶って、野郎どもはモブ扱いだ。
……ということは、やっぱりゲームそのものじゃないんだよな。
「だから、彼は、負担が軽くなった気がして、俺を……その……」
「……つまり、私の浄化の力と同じだと思ったのでしょうか?」
アエリアーナが気付いて、青ざめる。
……そう、このあと、第七まで繰り返される、彼女の身の危機を。
クリスティナも気づいて、言葉を失ってる。
どうでもいいが、ゲームでは第一の災禍が戦闘中にキャッキャと喜んでたんだよな……髪をアエリアーナ達に巻き付けて。
理由が分かった。おいしいんだ。食事と一緒。
アエリアーナとクリスティナの触手シーンはばっちりある。いろんなとこに食い込んで、頬を染めて苦しんでるやつ。半脱ぎの。
……くそう、ゲーム通りにしたら俺がそれできたの!?いや、二次元だったら見るのはいいんだけど、自分が好きな子(推しって意味ね)を苦しめるのはなあ……
「……どうしましょう」
「リアちゃん……」
本気でうろたえているアエリアーナがかわいそう。
「あの、な、それ、俺が解決できるよ」
「え?」
「……え?」
ふたりがはっとこっちを見て……こらこら、何考えてるの、顔赤くして!?
「これ、髪!これで拘束しちゃえば、安全!瘴気も吸える!」
「あ、ああ、そういうこと……ですか」
「ご、ごめん、その………………気持ちよさそうだったし」
「クリス!」
アエリアーナがぴゃっとクリスティナに怒った。
……いや、いいよ……俺もあの時なんかね……
「ごほん、ということで、俺が戦士の暴走を押さえる!きみも離れたところから浄化とかできるんじゃない?」
「え、ええ」
「なら、俺が押さえながら、きみも浄化すれば……」
「その前に、ダインの瘴気をぜんぶ浄化しちゃえば?」
クリスティナがもっともなことを言う。
そう、それが一番いいんだ、本当は。
「……戦士の瘴気は、もうそういう簡単なものじゃない」
「え?」
「根が深すぎるんだ……減らすことはできるかもしれないけど、全部は消えないだろうな、あれは」
だって、吸魔をお腹いっぱいにするくらいなんだ。俺が瘴気にして出さなかったから、昇華ということができなかったせいもあるけど。
「また、災禍に近づけば簡単に増やすだろうな」
「……いったい、彼に何が」
アエリアーナが憂うように眉をよせる。ううん聖女だな。
「でも、定期的に浄化すれば少しはましになるんじゃない?でも、災禍とやりあうときは、そういう方法があるよってこと」
「なるほど……ありがとうございます。本当に……」
「でも、なんで、俺が襲われるの、見てたの?」
「……!」
「ふえっ」
ぎくっとアエリアーナたち。
いやまあ、戦士がなんでああいう行動をしたのか、びっくりして見守ってしまったというのはあるだろう。
それに、災禍だ、助けようという気にはならなかったのだとしても……逆をいえば、ダインを助けようとはしなかったのだろうか?
仲間になって日が浅いから、と、言われれば分かるのだけれど……いやでも、普通にキモくない?BLだもんな、そういう趣味ってわけじゃなさそうなんだよなふたりとも。
それよりも……ゲームのほうがおかしいんだよな。
暴君騎士ダインが、聖女アエリアーナを襲う。
それを、完遂まで見守った聖騎士に女性の魔道士。
僧侶は正直、とある理由から信用がないんだが……
「……何度も、近づこうとしたのです」
アエリアーナがしょんぼりしているな。
「でも、ダイン様の『覇気』が、恐ろしくて……」
「……あ」
ああー、分かったぞ。
暴君騎士が強い理由が。
雑魚程度なら、棒立ちになって、ざっくとやられる。
(……あれ、ただの文章力不足じゃなかったんだ!?)
理由がさっぱり出てこないから、戦闘描写苦手なライターが書いてるのかと思ってた!
『覇気』っていうのはこのゲームには説明がなかったけど、よく格闘系とかの話にはあるよ、威圧感が増したり、敵を吹き飛ばしたり。
それを、暴君騎士が使っていたと。
威圧感に足がすくんじゃうか、オーラみたいなので近づかないようにすんのかな。
なるほど、アエリアーナが完遂されちゃった理由がここに……
……後付けっぽくない?
「なんか……近づけなかったんだな?」
「はい。その……ですが、片方は仲間、片方は災禍です、これ以上何かあってはと、気が気ではなくて……」
最後まで、見守ってしまった、と。
「……ううん、すまんかった」
「ご、ごめんなさい、こっちこそ……」
クリスティナがうろうろと目をあっちこっちにやってる……それも仕方ない……
微妙な雰囲気……聖騎士もなんだか顔が引きつっている。
アエリアーナが、首を振って表情を真面目なものに変えた。
「その、大丈夫ですか、本当に」
「え?あ、体調は悪くないよ」
「仲間の僧侶に手伝ってもらい、魔法で清めたんです。ただ、私も彼も、どちらも聖属性ですから、属性が反対のあなたに何かおかしなところがあったらと」
「えっあっそんなことまで……ありがと、いまのところ何もないよ」
おおう、ありがたい。きれいになる魔法とな。
気持ち悪いものを見せたのにな……
吸魔だからか、その、お腹いっぱいなったせいで、体調はすごくいい。
……美味しかったんだよな……戦士の、たぶん、精気。
美味しいごちそう食った時とまるで一緒。
あと、たぶん……普通に、気持ちよくなってた、な……
今思い出してもよだれが出そう。
ううん、人外の外側に影響されてる気がする。
「ともかく……あなたが話の通じる災禍でよかったです」
「ああ、話を聞いてくれて、ありがとう」
問答無用で消されてもおかしくなかったからな……ジャパニーズ・ドゲザも、効いたかな?
ふと、アエリアーナが口を閉じた。
憂いを帯びた表情で、きゅっと桃色の唇が引き締まって……ううん、かわいい。
「リア?」
クリスティナが彼女に気づいて、声をかけた。はっとしたアエリアーナは、ぎこちなく笑った。
「いえ……その、リュート。これから、よろしくお願いします」
「こっちこそよろしく」
手を出して握手しようかと思ったけど、触っただけで吸っちゃうんだよな。
残念。
アエリアーナは立ち上がった。
「では、これから、ダイン様たちにもお伝えします。その……ダイン様と、お話しになられますか?」
うっそういえば、仲間になるんだから、暴君騎士とも顔を合わせないと……
ハラハラとクリスティナが俺を見つめてくる。
俺は頷いた。
……大丈夫だよ、知ってるんだ。
暴君騎士は、ぜんぜんしゃべらないんだ。
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シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
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初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
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